#image(第5話1.jpg,right) #image(第5話2.jpg,right) アンカーの町には1人の名物船大工がいる。 いや彼を安直に船大工と言い切ってしまうには説明が足りない。 彼は本業は船大工であったが、同時に腕のいい鍛冶屋であり、斬新な発想をする発明家でもあり、そして何よりとびきりの変わり者である。 名前はゲンジ。元はレディ・ダイヤモンドダストの船団にいたクルーであったらしい。 偏屈で気難しく、喧嘩っ早い男であるが腕前は超一流で、それ故に彼に仕事を任せる冒険者は後を絶たない。 もっとも、その半数は彼に気に入られずに怒鳴りつけられて追い返されるのだが・・・・・。 私も彼によく冒険に使う数々の愛用品の手入れを任せる。 やはり命を預ける品々は一流の腕にメンテナンスを任せたいものだ。 「先生よォ。こいつぁ砥ぎ終わったぜ」 ゲンジがダガーを私に手渡す。 もう何年も使い込んだ愛用の品だ。 刀身を見る。磨き上げられて見事な光沢を放っている・・・・・・? なんだこの柄の部分にあるボタンは。 ゲンジに尋ねてみる。 「先生よォ、俺っちを誰だと思ってるんでぃ。そいつを押してみな。生まれ変わった姿を見ることになるだろうよ」 何だというのだろうか、とりあえず言われた通りボタンを押してみる。 すると・・・・。 突然ダガーが大きく振動し始めたかと思えばガチャガチャとけたたましい音を立てて変形を始めたではないか! 何すんの君人の愛用の品に!!! 微妙に人型に変形したダガーが私の前に立っている。 ていうかデカい。何でダガーが変形して私と同サイズなんだ。 「役立つぜぇそいつあよぉ。何か命令してみねぃ」 よし、とりあえずそこの爺さんを殴れ。 ボガ!!!! 「いってぇな!何しやがんでぃ!!」 人の思い出の品を一瞬にして愉快な悪夢にしてくれた報いだ。 なるほど命令には忠実なようだ。 「言葉は喋れねえがよぉ。モンスターに対して警告音は出せるようにしてあるぜ」 ほぉ、やってみろと命令してみる。 『エビフライぶつけんぞーエビフライぶつけんぞー』 ボガ!!!!! もう命令するのも面倒になった私は自分でゲンジを殴ったのだった。 ~探検家ウィリアム・バーンハルトの手記より~ [[第4話 Lady Diamond Dust]]← →[[第6話 緑の魔術師と人喰いキュウリ>第6話 緑の魔術師と人喰いキュウリ-1]]