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***グール怪談 作者:名無し 『[[無題]]』や『[[無題2]]』の隊長の一人語りです 隊長:一見好々爺な鬼畜。アラカンと言い張るが多分それより上。普段はまったり明るいイメージだが、キレると反面、静かに怖い。 ……ん? どうしたの、皆。雁首揃えちゃって。 …………暑くてしんどいから? 皆で怖い話して涼んでるワケ? で、皆ネタが尽きたから、わざわざ僕のところに来た、と。 ……いいねえ、若いねえ。そんなこと、時間を持て余してないと出来ないよね。 僕もそんなにヒマになるくらい、仕事が出来るようになりたいなあ。皆みたいに、さ。 ヒマでヒマでしょうがなくて、実際にバケモノ狩ってご飯もらう仕事してるのに、ワザワザ怖い話するくらいの余裕が、僕にも欲しいなあ。 …………あれ、どうしたの皆。固まっちゃって。 え、何? 「ごめんなさい」? ヤだなあ、何で謝るの? ヒマがあっていいなあ、って話してるだけだよ、僕は。 ……え、「仕事に戻ります」? 「真面目にします」……って? 真面目に仕事してそれでもヒマだから、怖い話で暇つぶしてたんでしょ、君達。 それなのに、謝るのはおかしいなあ。 …………ああ、ちょっと待ってよ。 僕もちょうど今、仕事が片付いてヒマになった所だしさ。話してあげるよ、……怖い話。 昔むかし、山奥に小さな村があった。 そこに住む人々は、みんないつもどおりの営みの中で過ごしていた。 しかしある日、村の中でルールを破る者が現れた。 そこで村人達は自治体を組み、ルールを破るものには罰を与えるようにした。 そして、村は平和になった。……めでたし、めでたし。 ……それのどこが、怖い話なのかって? 「普通に自治を行っているだけ」「罰はやりすぎだけど」……ね。 でも。キミ達。 どんなルールか、まだ、聞いてないでしょ? その村の人々が、一体、どんな倫理観の元で動き、どんな掟の元で、ヒトを裁いたのか。 知らないよねえ、キミ達は。 ……その村は、ね。――“屍食鬼”、グールの村、だったんだ。 迷い込んできた他所の人間を捕まえては食って暮らしてた。 いつ、どうして村人殆どがグールに変わっちゃうような事態になったのかは、解ってない。 ただ気がついたときには“そう”なってて、誰も疑問に思わなかったんだそうだよ。 ……まあ、グールに「疑問に思う」頭があったかどうかなんて、甚だ疑問だけどね。 …………そんな状況の中、ね。奇跡的に感染せず、“まだ”生きてる人間がいたんだよ。 彼はグールのフリをすることで何とか生き延びてきたけど、ある日遂に決意したんだ。 捕まったアワレな人間を、逃がしてやろうって。 作戦は決行されて、成功した。捕まっていた人間は、食われずに逃げる事が出来た。 そしてグールのフリをしていた男は、もう、フリをする必要はなくなった。 だって、男は。グールそのものになったんだから。 え、その村? もうないよ。全員始末したから。この話も、その唯一逃げてきた人間が証言したものだ。 後はいつもどおりのお仕事をして、一件落着、ってわけ。 …………で、どう? 面白かった? ……「グールだらけの村を想像すると身の毛もよだつ」? まあ、そうだろうね。 でもいつも見てるし、平気じゃない? メンドウとは思っても、怖いとは思わないでしょ。 「それは隊長だから」? ……ま。メンドウとも、思わないけどね、僕は。 実を、いうとね。グール達は、自分たちが既に死んでバケモノになっている、ってことに、全く気づいてなかったみたいなんだよ。 彼らは自分たちがバケモノだっていう自覚もないまま、日常の営みのように、人間を食っていた…… ――さて。じゃあ。ちょっと、聞こうかな。 今、ココにいる君たちは。本当に、人間かい? 自覚がないまま、自分たちがバケモノだってわからないまま、人間を喰らってたんだよ、彼らは。 果たして。今、ここにいる君たちが、本当に、人間である、と。……君達には、言い切れるのかなあ? ――ねえ。どう、思う?
***グール怪談 『[[無題]]』や『[[無題2]]』の隊長の一人語りです 隊長:一見好々爺な鬼畜。アラカンと言い張るが多分それより上。普段はまったり明るいイメージだが、キレると反面、静かに怖い。 ……ん? どうしたの、皆。雁首揃えちゃって。 …………暑くてしんどいから? 皆で怖い話して涼んでるワケ? で、皆ネタが尽きたから、わざわざ僕のところに来た、と。 ……いいねえ、若いねえ。そんなこと、時間を持て余してないと出来ないよね。 僕もそんなにヒマになるくらい、仕事が出来るようになりたいなあ。皆みたいに、さ。 ヒマでヒマでしょうがなくて、実際にバケモノ狩ってご飯もらう仕事してるのに、ワザワザ怖い話するくらいの余裕が、僕にも欲しいなあ。 …………あれ、どうしたの皆。固まっちゃって。 え、何? 「ごめんなさい」? ヤだなあ、何で謝るの? ヒマがあっていいなあ、って話してるだけだよ、僕は。 ……え、「仕事に戻ります」? 「真面目にします」……って? 真面目に仕事してそれでもヒマだから、怖い話で暇つぶしてたんでしょ、君達。 それなのに、謝るのはおかしいなあ。 …………ああ、ちょっと待ってよ。 僕もちょうど今、仕事が片付いてヒマになった所だしさ。話してあげるよ、……怖い話。 昔むかし、山奥に小さな村があった。 そこに住む人々は、みんないつもどおりの営みの中で過ごしていた。 しかしある日、村の中でルールを破る者が現れた。 そこで村人達は自治体を組み、ルールを破るものには罰を与えるようにした。 そして、村は平和になった。……めでたし、めでたし。 ……それのどこが、怖い話なのかって? 「普通に自治を行っているだけ」「罰はやりすぎだけど」……ね。 でも。キミ達。 どんなルールか、まだ、聞いてないでしょ? その村の人々が、一体、どんな倫理観の元で動き、どんな掟の元で、ヒトを裁いたのか。 知らないよねえ、キミ達は。 ……その村は、ね。――“屍食鬼”、グールの村、だったんだ。 迷い込んできた他所の人間を捕まえては食って暮らしてた。 いつ、どうして村人殆どがグールに変わっちゃうような事態になったのかは、解ってない。 ただ気がついたときには“そう”なってて、誰も疑問に思わなかったんだそうだよ。 ……まあ、グールに「疑問に思う」頭があったかどうかなんて、甚だ疑問だけどね。 …………そんな状況の中、ね。奇跡的に感染せず、“まだ”生きてる人間がいたんだよ。 彼はグールのフリをすることで何とか生き延びてきたけど、ある日遂に決意したんだ。 捕まったアワレな人間を、逃がしてやろうって。 作戦は決行されて、成功した。捕まっていた人間は、食われずに逃げる事が出来た。 そしてグールのフリをしていた男は、もう、フリをする必要はなくなった。 だって、男は。グールそのものになったんだから。 え、その村? もうないよ。全員始末したから。この話も、その唯一逃げてきた人間が証言したものだ。 後はいつもどおりのお仕事をして、一件落着、ってわけ。 …………で、どう? 面白かった? ……「グールだらけの村を想像すると身の毛もよだつ」? まあ、そうだろうね。 でもいつも見てるし、平気じゃない? メンドウとは思っても、怖いとは思わないでしょ。 「それは隊長だから」? ……ま。メンドウとも、思わないけどね、僕は。 実を、いうとね。グール達は、自分たちが既に死んでバケモノになっている、ってことに、全く気づいてなかったみたいなんだよ。 彼らは自分たちがバケモノだっていう自覚もないまま、日常の営みのように、人間を食っていた…… ――さて。じゃあ。ちょっと、聞こうかな。 今、ココにいる君たちは。本当に、人間かい? 自覚がないまま、自分たちがバケモノだってわからないまま、人間を喰らってたんだよ、彼らは。 果たして。今、ここにいる君たちが、本当に、人間である、と。……君達には、言い切れるのかなあ? ――ねえ。どう、思う?

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