熊と槍


作者:グレイト


【熊と槍】


山の頂上に眠る、真っ白の槍。
馬に乗った騎士が使う、馬上槍。
墓標のように突き立てられた、騎士の槍。
だけど、その槍は決して触れてはいけなかった。

心優しき熊がいた。
熊は人間と話をしたかったが、人間は熊の姿を恐れて逃げてしまい、仲間には腰抜けと蔑まれ、いつも独りだった。
それでも諦めなれなかった熊は、何度も何度も人間へと近づいたが、石を投げられ追い返された。
熊はとうとう耐えきれず山へと逃げてしまった。

ある日、熊は足の不自由な少年と出会う。
誰もいない、木枯らしの吹く秋の山道で。
杖を無くしてしまい、道がわからなくなってしまった少年を、熊は何とか助けてやろうと思った。
熊は彼を背中に乗せると、村のふもとまで降りていったのだ。

子供が襲われたと思った大人は、槍を手に熊へと向かった。
山へと帰ろうとしていた熊が、それに気付いたのは、さっき助けた子供が自分をかばって串刺しにされてからだった。
絶望した熊は村を襲い、人間を爪で引き裂き、牙でかみ殺した。
そして全て終えた後に、子供を串刺しにした槍で、自らの命を絶った。

山の頂上に眠る、真っ白の槍。
馬に乗った騎士が使う、馬上槍(ばじょうやり)。
墓標のように突き立てられた、騎士の槍。
だけど、その槍は決して触れてはいけなかった。
今でも心優しき友人がその下に眠っているからだ。