ぬくもり織り手の口上

いいかぃ、小僧。よ~くお聞き。
織り手は感情に踊らされたらいけないのさ。

心ってやっちゃ、いい加減なもんでねぇ。
昨日、「これはいい!」と思ったものが、
翌日にゃ、見るのも嫌になることだってある。
嬉しいと思った時間が、狂おしく悲しさを縫い付けたりする。

愛情も哀愁も、
心は無制限に、勝手に織りなすもんさ。

だから、忘れちゃいけない。目をそらしちゃいけないのさ。
織り手は自分の感情で織っちゃいけないのさ。

織り手の糸は、心の巻き糸。
ほどけるほどに、引き出すほどに枯渇する。

織り手の布は、心の生き写し。
織り込まれるほどに、生々しく。
包み込まれるほどに、ありありと。

織り手を結ぶは、我らが法。
くだらない、法律なんかじゃ縛れない
織り手の法さ。

いいかぃ、小僧、よ~くお聞き。
織り手が感情で布を織り込むとき、きっと誰かが泣いちまうのさ。

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最終更新:2010年10月19日 15:43