タイトル:きみのてのひら
コメント:相手への慰めではなく、自分のよろこびを。
台本登録:不可

 冷たいね、君の手は。
 そっと握りしめて言った。
 寒い寒い、冬の夜に、泣き疲れた君の手を。
 いまのわたしには、それくらいしかできないから、
 だから、その手を握りしめてあげる。

 冷たい君の手が、たまらなく愛おしい。
 ごめんね、わたし、喜んじゃってるね。
 君がこうして泣いていることを、うれしいと思ってしまっているよ。
 わたしの手で君をあたためてあげられることに、どうしても顔が微笑みをかたち作ってしまう。
 不謹慎だね。でも、君のことを笑いたいと思って笑っているんじゃないことは、わかってほしい。

 冷えた手を手であたためて。わたしは思う。
 ああ、わたしは、ずっと君とこうしたかったんだなって。
 もっともっと、やさしくしたいよ、もっともっと君の心の中まで。

 どうしてかな。わたしがやさしいから?
 ううん、それは違うね。
 たまらないほど君が、愛おしすぎるから。

 ずっと君とこうしたかったよ。君の髪に顔をうずめて目を閉じる。
 君をほんとにダイスキだよ。君の耳にそっと囁く。
 ごめんね、慰めの言葉じゃなくて、こんな言葉で。
 でも、何度でも言うよ。何度言っても言いたりないから。

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最終更新:2008年01月20日 08:19