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ぼくらの恋人ごっこ



静:彼氏。
瞳:彼女。
A:女子生徒。


瞳01「――ねえ、静。あなたのこと、好きになったみたい」
静01「そう。じゃあ付き合ってみる?」

静02「始まりはそんな会話だった。
   ぼくらはこれといったドラマもなく、ごくごく平凡な流れで恋人同士になった。
   瞳――ぼくの恋人について、少し話そう。
   彼女は可愛いと言うよりは美人と言った方が似合う。
   刃物を思わせる鋭い眼差しが若干、いやかなり近付き難いオーラを出している。
   ぼくとは小さな頃からいつも一緒で、お互いのことはなんでも知っている。
   そう、本当になんでも知っていた。
   ――そして今日も、ぼくらは放課後の教室で話していた」

瞳02「静。あなた今日、わたし以外の女と16回も話してた」
静03「人付き合いってものがあるから。
   クラスで孤立したくないし、愛想笑いぐらいはしなきゃね」
瞳03「あれが愛想笑いなの?」
静04「そうだよ?」
瞳04「お腹を抱えて笑ってたけど」
静05「素晴らしいジョークを聞かされてね」
瞳05「呼吸困難になって泡まで吹いてた」
静06「そこまで笑ってないから!」
瞳06「挙句の果てには、悪役みたいに三段笑いまでしてた」
静07「冗談言われて、そんな笑い方したら変人だ!」
瞳07「そうね、ごめんなさい。
   あなたが変人だってこと、忘れていたわ」
静08「お前はぼくに恨みでもあるのかよ!?」
瞳08「恨みなんて、そんな。ただの趣味なのに」
静09「そんな趣味は捨てちまえ!」
瞳09「趣味まで束縛するの? あなた何様のつもりよ」
静10「お前こそ何様のつもりだ!?」
瞳10「ご主人様よ。違った?」
静11「違ってて欲しいな!」
瞳11「残念ね。論外だわ」
静12「論外って何が!?」
瞳12「はいはい。いつまでも騒いでないで、そろそろ帰るわよ」
静13「騒がせたのはお前だと思うんだけどな……」

SE:戸の音

A01「あれ? 二人とも、まだ残ってたんだ」
静14「ノックぐらいしてくれよ」
A02「なんでよ?」
静15「今さっきまで、瞳と愛し合っていたからさ。
   君も扉を開けたら、いきなり濃厚なラブシーンとか嫌だろう?」
A03「はは、そんなことあるわけないでしょ」
静16「見たいのか……!?」
A04「そっちじゃなくて、ラブシーンが」
静17「よーし、そこまで言うなら見せてやろうじゃないか。なあ瞳!」
瞳13「一人でやってなさい、この変態」
静18「一人でやれないこともないけど」
瞳14「……わたしで発情したら殺す」
静19「えー? じゃあ仕方ないや、君で発情していいかな?」
A05「っていうか、鏡でも見ながらやれば?」
静20「何その拷問!? 自分を見ながらとか嫌過ぎる!」
A06「だってさー、静と瞳って、顔、同じじゃん」
静21「……まあ、そりゃあ確かに双子だし、同じ顔だけどさ」
瞳15「静、いつまで馬鹿な話をしてるの。帰るわよ」
静22「ああっ、待ってよ瞳!」

静23「そう、ぼくらは双子だった。
   付き合うまでの過程にはドラマも何もない。
   とても平凡で、特に語るべきことだってない。
   ただ、世の中の恋人達と違うのは、性別と血縁関係ぐらいなもので。
   愛しているかどうか、分からないのも――きっと、同じだと思う」

瞳16「ねえ静。あの子、わたし達のことをどう思ったのかしら」
静24「それは恋人同士に見えたか、ってことかな?」
瞳17「ええ。ただの双子じゃなくて、ちゃんと恋人同士に見えたかしら」
静25「無理だと思うよ? だってぼくら、別に恋人だって主張してるわけじゃないし」
瞳18「そう――ねえ、静。あなたはいつまで、続けるつもりなの」
静26「急にどうしたのさ。ぼくを好きになったって言い出したのは、お前の方だぞ?」
瞳19「でも、付き合おうなんて言い出したのはあなた」
静27「そこで頷いたのもお前じゃないか」
瞳20「……っ、もう嫌なのよ! こんなの、やっぱり間違ってる。
   双子なのに付き合うだなんて――わたし、あなたを愛していたわけじゃないのに!」
静28「――いいんじゃない? 別に愛なんかなくたってさ」

静29「ぼくは知っている。
   瞳のことなら、なんでも、知って、いる。
   ぼくを好きになった理由も、知っている。
   瞳はただ、ぼくを手放したくなかっただけだ。
   あの頃、ぼくには別の恋人がいたから――ぼくを繋ぎ止めたくて、言った。
   好きでもないのに、好きになった、と」

静29「ねえ、瞳。お前はぼくを愛しているわけじゃない。
   ぼくだってそうさ。お前を愛してるわけじゃないんだよ」
瞳21「なら、どうして……!
   どうしていつまでも、わたしに恋人でいることを求めるのよ!?」
静30「あー……なんて言うか、さ。
   ぼくが愛しているのは、ぼくだけなんだ」
瞳22「……どういう、意味?」
静31「自分が大好き、ってことさ。
   でもね、瞳。お前はどういうわけか、ぼくと同じ顔なんだ。
   自分と同じ顔の女が、他の男に抱かれるなんて我慢ならない。
   だからぼくは、お前を恋人にし続けようかなって、そう思ったんだ。
   ぼくの恋人でい続ければ――誰にも手出し、できないだろ?」

静32「愛はいらない。向けられる感情が、恐怖や憎しみでも構わない。
   瞳を縛ることができるのなら、どうだっていい。
   瞳の瞳が映すのが、ぼくでさえあればいいんだ」

静33「そういうわけだからさ。
   これからも、恋人ごっこを続けようか」
瞳23「やだ……もう、こんなのやだ……!!」

静34「泣き崩れる瞳。その感情は分からない。
   でも安心していいよ、瞳。
   ぼくはぼくと同じ顔のお前だから、恋人にしているんだ。
   いつか、その内に――お前の顔を、別物にしてあげる。
   その日が訪れるまでは、恋人ごっこを続けよう――――」


終わり
最終更新:2010年10月18日 04:40