思い出には早く、悔やむには遅過ぎて


作者:wikiの人◆SlKc0xXkyI

 特別なドラマがあったわけではない。
 ただ、失恋したという事実がある。
 高嶺の花を望んだわけでもなければ、叶わぬ恋をしたわけでもない。
 勇気を出した告白は受け入れられて、蜜月の日々を過ごした事もある。
 だが些細な行き違いからケンカになり、そのまま別れてしまった。
 どうしてだろう、と思う。
 今だって、こんなにも好きなのに。
 どうして別れてしまったのだろう。
 あの時、素直に謝る事ができていれば。
 あの時、もっと相手の話をよく聞いていれば。
 あの時、――恋に落ちなければ。
 こんなにも辛い思いを、しなくてよかったのだろうか?
 後悔はいつだって遅過ぎる。
 もう取り返しがつかなくなって、何一つ元に戻せなくなってから。
 自分には何も残っていないと気付いてから、初めて後悔が襲ってくる。
 あるのは虚しさと、神経が引き千切れるような胸の痛みだけ。
 こうして後悔をするたび、こうして思い出すたびに、胸が軋んで血を流す。
 女々しいな、と思う。
 もう終わってしまったものに、いつまでもこだわっているなんて。
 しかし、この痛みがある限り。
 全てを思い出にするには、まだ早いのだろう。
 眠れぬ夜を、あと何度越えればいいのか。
 どれほどの月日があれば、全てが思い出になってくれるのだろう。
 全ての、痛みが。
 この、痛みが……。