夏祭り


作者:ちゃま ◆A3zAmH5eqc


女性パート

 夏祭りって本当に大好き。浴衣なんて日常的に着られるものじゃないし、大勢の人が同じような楽しさを感じているなんて素敵で、知らず知らずのうちに顔がほころんじゃう。
 金魚掬いの金魚はみんな可愛いし、ちょっとベタベタする焼きソバなんてまさに夏って感じがしちゃう。リンゴ飴、綿菓子、焼き玉蜀黍。彼はボッタクリなんてぼやいているけど私は全部好き。
 くじ引きだって本当に楽しい。外れたら少し残念だけど、欲しい物が当たった時なんか震えちゃうほど嬉しい。そういえば昔、たまごっちを当てた事があったなぁ。あの時は品薄で整理券貰わないと買えなかったくらいなのに、たった300円で手に入れられたときは涙が出ちゃったっけ。
 私は楽しいのに、隣りを歩く彼は文句ばっかり。やれ歩くのがしんどい、だとか、花火なんて一々見なくてもいいだとか。夏祭りの最大のイベントじゃないの? 打ち上げ花火って。
 でも、楽しそうに金魚を追いかける彼は楽しそうに笑っている。実は好きなんじゃないの? 素直じゃないから困っちゃう。
 夏祭りはそれだけで楽しいけど、彼が居る今年の夏祭りは何時もより、十倍、いや百倍も楽しいなぁ。


男性パート

 夏祭りっていうのはどうも好きになれない。何と言うか行きかう人々みんな浴衣、特に女性なんて同じ髪型に同じだし。はっきり言って俺はあんまり好きになれない。皆猿真似すればいいってわけじゃないんだ。
 第一、金魚掬いの金魚の飼育環境は劣悪だし、出店の焼きソバはやたらベタベタするし、リンゴ飴のリンゴはすっぱい。
 人ごみの中を歩くのは疲れるし、くじ引きなんて生まれてこの方一度も当たったことがない。簡単に当たれば利益は出ないんだろうけど、たかだか紙一枚ひくだけで300円もするんなんて馬鹿げている。要らない景品を貰うくらいならお金を払って欲しいものを買うほうが絶対にいい。
 ハイパーヨーヨーが流行ってたときなんて、ふざけるなって叫びたくなるくらいボッタクリな値段で売られていた、なんていう思い出もある。泣きながら買って欲しいなんて頼み込んだ過去の自分が恥ずかしい。
 それでも、隣りで笑う彼女と一緒に居るのは悪くない。普段では見られない浴衣姿も綺麗だ。
 だから、五十歩、いや百歩譲って、今年の夏祭りは楽しいと言うことにしておこう。


あとがき

朗読用です。適当に読んじゃってください。