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『寂しいウサギ』


ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ
彼女はぽつりとそう言った。

サークルの連中5人で俺のアパートに突然押しかけて、
材料買ってきたからチゲ鍋つくれ。そう怒んな、君の分の酒は奢りだからさ。
平らな胸を突き出して彼女がそんなことをのたまったのは、もうかれこれ4時間も前になるのか。

散々などんちゃん騒ぎに疲れ果て、酔いつぶれて死屍累々、
4匹の巨大なイモムシどもの間を掻き分け掻き分け、後片付けをする俺に向かって、
彼女がそう、言ったのだ。

ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ

その言葉は、いつも仲間を引き連れて騒いでいる彼女にはあまりにも似合わない言葉で、
どうせ彼女なりの冗談だろうと思った俺。

それ、迷信らしいぞ
そんな無神経な言葉を平気で吐いた。

それでも、ウサギは寂しいと死んじゃうんだよ

しつこく繰り返す彼女の言葉に、
思えば、酒に弱くいつも真っ先に寝ていた彼女の言葉に、
いったいどれほどの気持ちが隠されていたのか。

今ならわかる。ああ、よーくわかる。ありゃフラグだったんだな!畜生、もったいない!

あの頃、彼女は俺にとって天使だった。俺を楽しい日々へと導いてくれた天使だった。
ウサギなんかじゃない、もっと気高く、孤高で、力強い存在だった。
俺は見誤っていた。
孤独に苛まれる夜が等しく誰にでも訪れるという事実を知らなかった。
あの夜が最初で最後の夜だった。
あの夜が彼女の本当の心に触れることが出来る最初で最後のチャンスだった。
あれから彼女は俺と2人きりの夜を過ごしてくれることはなかった。

今なら言える。
お前が好きだったと。他の誰でもない、お前のことだけをずっと見ていたと。

今となってはもう、笑い話でしかないけれども。