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『明日もし晴れたら』

会話文:男性。先天性お涙頂戴型不治の病症候群の患者。ドSに違いない。
地の文:女性。誰かに必要とされたい病の患者。あ、ひとつだけ「」付きのセリフあるね。


「明日もし晴れたら」

部屋の隅の小さなテレビを熱心に見つめていた彼が、突然、そうつぶやいた。
彼は時間をかけてゆっくりとこちらへ向き直り、なにやら愉快そうに、もう一度話した。

「明日もし晴れたら、ピクニックに行こうよ」

彼の頭越しにテレビの画面が覗いた。
天気予報。降水確率100パーセント。明日は傘を持ってお出かけください。……。

「明日もし晴れたら、町中の人たちが傘を持って歩くなか、僕たちだけがバスケット抱えて歩い
たら、きっとスカッとすると思うんだ」

真っ白な部屋、
真っ白なカーテン、
真っ白なベッド、
真っ白な服。
彼はここ以外の世界を知らない。生まれつきの病が、彼をここに縛り付けているからだ。
だからだろうか?彼は昔から何も望まない子どもだったそうだ。おもちゃも、絵本も、友達も。
私が初めてここに来たときもそうだった。一緒に遊んでとも、また来てねとも言わなかった。
だがそれでも、私が遊びに来ると、彼はいつも満面の笑顔で迎えてくれた。
日が暮れるまで私の遊びに付き合ってくれた。
私を必要としてくれるのがうれしくて、私を必要としてくれないのが悔しくて、
気がつけばもう何年も、私はここに通い続けている。
……もしかすると、この奇妙な提案はつまり、彼なりの反抗なのかもしれない。
理不尽な神様に対する、彼の精一杯の反逆なのではないだろうか。

「ね、約束してよ。明日もし晴れたら、ピクニックに行こう。弁当係は君。荷物持ちも君。電車
の切符は僕に買わせること。それと、2人きりのピクニックだからって照れないこと」

いたずらっぽい笑顔。実現不可能な願い。ついでに、私への理不尽な要求。
それでも私は頷いた。
だって、どうせ叶わない約束なんだから。

翌日。

「見事な土砂降りだねえ」

私たちはいつもの白い部屋で、サンドイッチを食べていた。もちろん私の手作りである。
彼はずっと窓の外を眺めていた。
意外なことに、彼に残念がっている様子はなかった。むしろ、どこかうれしそうにさえ見えた。
もしかして、本当は私の弁当だけが目当ての回りくどいやり口だったのだろうか。
……いや。

「ね、私、明日もここに来るから。絶対に」

「へ?急にどうしたの」

わざわざ宣言しなくたって元々毎日来ているんだけどね。
それとこれとは、きっと別のお話なのですよ。

「……うん。約束だよ」