リリーマルレーンと兵士の会話


作者:タウト ◆oXFOdNeHtA


A01「知ってるか?」
B01「なんだよ」
A02「オレのふるさとじゃあ、お前みたいなヤツはモテない」
B02「バカ言ってんじゃねえよ」
A03「だってそうだろ」
B03「お前のイナカでモテたって嬉しかねえさ!」
A04「今みたいにすぐキレる」
B04「はっ、やってらんねえよ。火ィくれ」
A05「タバコを吸う」
B05「俺だって元々は吸っちゃいなかったさ……(タバコの吐息)」
(BGM開始:Lili Marleen(1939ver.)by Lale Andersen)
A06「すぐに言い訳をする」
B06「ふざけんじゃねえ」
A07「……」
B07「いい曲だ」
A08「ああ、いい曲だ」
B08「この曲を聴いてると、お袋が好きだった近所のレストランを思い出す」
A09「どうせ、そこのウエイターの女に惚れてたんだろ」
B09「はっ……」
A10「……」
B10「いい曲だ……」
A11「で、どんな女だった?」
B11「そうだな。……ブロンドで……瞳はグリーンだ」
B12「俺のガキの頃によくダチと行ってた秘密の湖の色さ。碧を湛えて静かなんだ」
A12「……」
B13「シュガーシティっつー甘い名前の町でな。でも何にも甘い事なんて転げてねえイナカで」
A13「コロラドだったか?」
B14「ああ。まあそんな町に、あんないい女がいるって、それは奇跡だと思ったね」
B15「町中の男が彼女に会いに来てた。彼女を笑わせに行ってた。笑顔が見たかったんだな」
A14「そしてお前は見てるだけ。帰ってマスでもかいてたか?」
B16「うるせえ」
A15「くっくっく」
B17「……じゃあお前はどうだ」
A16「いるさ。いるとも。結婚を約束してる」
B18「本当か」
A17「嘘ついてどうすんだよこんなこと。ちょっと待て」
(SE:服をまさぐる音。ロケットを首から外す)
B19「へえ、こりゃ美人だ。今ごろ別のおとこの――っと。冗談だよ冗談。睨むなよ。悪かった。な? ほら。ほらこれ返す」
(SE:ロケットを付け直す。)
A18「……子供の名前も決めてある」
A19「男だったらジョン。女だったらリタ」
B20「また冴えない名前だな」
A20「いいか、これには意味がある。」
B21「……どんな」
A21「俺の一族は代々、自分の子供の名前をつける時は男だったら自分のジイサンの名前を。女だったら、好きな女優の名前をつけるんだ」
B22「じゃあお前の名前はお前の曾ジイサンから頂いてるってことか」
A22「そういうこと。ちなみに女の名前はリタ・ヘイワースからだ」
B23「リタ・ヘイワース? 誰だそれ」
A23「しらねえヤツがいるのか。全くやってらんねーぜ。あの映画を知らないのか? ニューヨークの天使」
B24「ああ、軍キャンプでもやってたあれか。もう何回も見てたのに忘れちまってた。でもよ、今ふと思ったんだ」
A24「なんだよ」
B25「男だったらジイさんの名前をつけるんだろ? だったらよ。お前の一族は3種類しか名前がないって事じゃないのか?」
A25「さあ。わからねえ」
B26「なんだよそれ。気になるじゃねえか。ってまあ、いいか」
(BGM終了)
A26「……」
B27「……」
A27「歌詞覚えちまった」
B28「俺もだよ。糞ナチ野郎は嫌いだが、この曲はいい。ドイツで許されるのはこの曲だけだ」
A28「さて、そろそろだ」
B29「死ぬなよ」
A29「お前もな。ああ、タバコ1本置いといてくれ」



【コメント】
これは第二次世界大戦中のドイツでの話をイメージしました。
リリーマルレーンという何気ない日常を唄った曲なんですが、
これが放送で流れてくる間は、両軍、この曲に聞き入って戦争が中断されたという伝説が残っている曲らしいです。
きっとこの何気ない情景を描いた歌詞が郷愁感を誘って、兵士たちはしばしの休息を得たのではないでしょうか。
ちなみに、この曲の存在はアニメ・マクロス7から知りました。
※この掛け合いは、3分11秒のリリーマルレーンが始まり、終わる位の尺で収まるように想定して書きました。