※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

うたかた


あっ……!
君は、もしかして、うん、そうだ。やった。やっと来てくれた!
約束、覚えていてくれた!
よかった!
……え、覚えてないの?
約束も、この場所も、ここに来るまでの道筋も、今までの記憶も、自分の名前も、私のことも?
……そっか。しょうがないよね。約束を守ってくれただけでも僥倖だよね。
へへっ。ムズカシイ言葉知ってるっしょ。ムカシとは違うのだよ、ムカシとは。
え、約束?さてー?なんだったかなー。へへへっ。
いいの。約束なんかなくたって、君が今ここにいる。
それだけで充分です。私、満足です。ご満悦です。へへっ。
ね、ね、私ね、ずっとこの原っぱで君と追いかけっこするのが夢だったの。
私ね、ずっとこの木の陰で君と一緒に絵本を読むのが夢だったの。
私ね、ずっと日だまりで君と並んでお昼寝するのが夢だったの。
私ね、ずっとこうして君といつまでもおしゃべりするのが夢だったの。

……嘘です。
約束。嘘です。
初めからそんな約束なんてありませんでした。
原っぱ。嘘です
ここには柔らかな地面も土の匂いもありません。
木の陰。嘘です。
ここには腰掛けるのにちょうどいい根っこも木の葉が風でこすれる音もありません。
日だまり。嘘です。
ここにはまぶしさも暖かさもありません。
君という存在。嘘です。
……嘘なんです。
初めに私が在りました。次に太陽が、土が、草が、木が、風が、小鳥たちが。最後に君が。
今はもう無い。
時計が12の時を刻みます。
魔法は解けて、何もかもが嘘に変わります。
私と私の世界が終わります。
さようなら。
自分勝手なおままごとに付き合わせてしまってごめんなさい。
さようなら。
さようなら。
だけど。それでもきっと。どうかお願い、たったひとつだけは嘘じゃありませんように。