ミュージックウォー・序


作者:タウト ◆oXFOdNeHtA


あるバーで歌っていた男が殺された。
音楽を愛し、そして敬意を払っていた男だった。
道端で口笛を吹いた少年が殺された。
音楽コンクールに出場する前日のことだった。
料理教室で鼻歌を歌った女が殺された。
新婚で、食卓のメニューを増やそうと通い始めた所だった。
町は、世界は荒れ荒み静かになった。だが、みなの心は大音声(だいおんじょう)で泣いている。
泣き続けている。
なんでだって?
知りたいか。この物語を。


(SE:どしゃぶりの雨。▲~▲までずっと)

(SE:けたたましくドアを叩く音)
男「おい! あけろ! いるのは分かってんだ!」
(SE:けたたましくドアを叩く音)
男「ったく……おい、やれ」
(SE:銃声)
(SE:扉のきしむ音。ギイイイ)
(SE:床板を歩く音)
爺「止まれ」
男「いるじゃねえか、ジイサンよぉ。手を煩わせるな」
爺「……お前等を招き入れた覚えはない」
男「モウロクしたかジイサン。拒む拒まないに関わらず、こちとらアンタらしょっぴく理由はいくらでもあるんだぜ」
爺「はやく立ち去れ」
(SE:男が床板を歩く)
男「ジジイ! 分かったらさっさと吐きやがれ!!」
爺「知らん!」
(SE:孫が床板小走り)
孫「じいちゃんから手をはなせー!」
爺「こっこら! 出てくるなと言ったじゃろ!」
男「なんだ、このガキ! 糞! はなさねえか!」
孫「じいちゃんから手をはなせよおー」
爺「はやく向こうに行きなさい!」
男「うるせえっ」
孫「うわっ」
(SE:孫は蹴られて壁にたたきつけられる。モノが散乱)
爺「ああっ! 貴様子供に手を上げるとは!」
男「黙れジジイ。オレァもう勘弁してやらねえ。今ここで吐くか、それとも死ぬか! 選べ!」
爺「知らんと言ったら知らん!」
男「シラきったって、こっちは分かってるんだ。テメーんとこの地域から勝手に流してるってコトをな! 言え! どいつがやってる!」
爺「おお、大丈夫か?」
孫「う……うう」
男「ふぅ。分かった。こうしよう。あんたが吐けば、そのガキは助けてやる」
爺「ふざけるなっ!」
男「おいおい、早くしねえと、もしかしたら骨折れてるかもしんねえぞ。けっこう思いっきり蹴ったからなぁ」
孫「い……たいよ。じいちゃん……」
爺「おお……そんな」
男「で、万が一折れた骨が臓器にでも刺さってたら、こりゃもう持たないだろうな。でも。ジイサン、あんたが吐けばそのガキは助けてやる」
爺「……くっ」
(SE:複数の足音)
男「なんだてめーら!」
隠れていた民1「長!」
隠れていた民2「はやく治療してやらないと!」
男「っと、みなさん仲良くお集まりですか。やっぱりここがきな臭いと思ってた」
爺「お前達まで!」
隠れていた民3「早く! オレたちは覚悟はできてます!」
男「……泣けるねぇ」
爺「……分かった。この子を治療してやってくれ。ただし条件はこちらがつける」
男「そりゃあダメだ。場所吐いてもらわなきゃ――」
爺「ワシの命をくれてやる。それで終わりにしろ。やっていたのはこのワシじゃ。ワシが死ねばお前等の問題も解決じゃろ」
隠れていた民1「長! そんな」
爺「黙っていろ! これが最善なんじゃ!」
(SE:雷の音)

まだ知りたいか?
……(溜息)正直な所。ここから先、オレは話せない。
いや、続きを知らないからじゃない。結末は知っているが、覚えていないんだ。
オレが幼い頃の記憶さ。
じいちゃんは、オレを、町のみんなを庇って、あの男に殺された。
あの男は、オレの敵だ。
あの男は、世界を滅ぼした悪の組織の幹部だ。
その組織の名は、カスラック。
カスラックのせいでこの世から音楽が消えた。
みな抵抗したものは殺された。
オレはあの男に復讐を必ず果たす。そしてこの世に、自由だった音楽を取り戻してみせる。
そう。
これはオレの物語だ。
聞く気はあるか?
(SE:扉がしまる音)