はじめての縁日


作者:どらいも ◆5osweXTmkM


【キャスト】
俺(♂) 高校1年生
四王寺ハルカ(♀) しおうじはるか。クラスメイト。お嬢。


SE (お祭りの環境音、お囃子など)
SE (下駄の音)
ハルカ01 「ごめん。お待たせっ」
俺01 「おせーよ。おまえから誘っといて、いつまで…ひとを…待た……せ……」
ハルカ02 「仕方ないでしょっ! 浴衣なんか着たの生まれて初めてなんだからっ。
       ……ん? なに? なによ、じろじろ見て。…なんか、変……かな?」
俺02 「いや…変じゃ、ないんだけどさ…。なんかその、雰囲気がいつもと全然違うってか……」
ハルカ03 「あー、髪アップにしたからね。おばあさまにやってていただいたの。どう? 大人の色香漂うハルカ様は」
俺03 「サプライズ(?)的な、何かを感じるな、うん」
ハルカ04 「むきー!! どうして素直に似合ってるって言えないのよっ!! これだから日本人は海外の社交界でバカにされんのよ!!」
俺04 「俺に社交界なんて関係ねーだろ!」
ハルカ05 「ふん、あんたにそこまで望んだ私がバカだったわ。
       まあいいわ、ほら、私とこんな風にして二人で歩けるなんて機会滅多にないんだから、ちゃんとエスコートしてよねっ」
俺05 「……おまえが連れてけって、さんざん駄々こねたんだろうが」
ハルカ06 「あんたが、縁日に行ったこと無いって私をバカにしたからでしょっ。…ちゃんと責任とってよね」
俺06 「いやいや。勝手に話をでっち上げないでください」
ハルカ07 「どーでもいいから、早く行くわよっ!」

SE (お祭りの環境音、お囃子など)
SE (下駄の音)
俺07 「――まぁ、縁日が初めてってのは本当らしいし……、無理もないよな……。
       なあ、四王寺は日本で夏を過ごすのって、今年が初めてなんだろ?」
ハルカ08 「そうね。中学まではずっとロンドンの学校だったから。高校の3年間だけは日本で暮らせって、父の方針なの」
俺08 「おまえもいろいろと大変そうだな……」
ハルカ09 「そう? 普通だと思うけど……」
俺09 「おまえが普通なら、俺はただのダンゴムシだよ。なんたって、四王寺財閥のお嬢様だからなぁ。
       四王寺カンパニーっていったら、新聞とか読まない俺でも知ってるよ」
ハルカ10 「……そう……かな……」
俺10 「うちの親父も四王寺の関連企業で働いてるらしいから、おまえが同じクラスにいるってばれたらどうなることか……」
ハルカ11 「…ふつうだと、おもうけど……」
俺11 「四王寺…?」
ハルカ12 「……意外ね。あんたも、私のことお嬢様扱いしてくれるんだ……」
俺12 「……?」
ハルカ13 「うあーー!! なにあれ! 道ばたにお店がいっぱい!!」
SE (下駄の音)
俺13 「おーい、おいてくなよ」
ハルカ14 「すごーい!! こんなに人がいっぱい」
俺14 「あんまりはしゃぎすぎるなよ…」
SE (こける)

ハルカ15 「ひゃん! ……痛ーーい」
俺15 「おい、大丈夫か?」
ハルカ16 「…うん、だいじょぶ」
俺16 「下駄なんかはいて走るから……けが、してないよな?」
ハルカ17 「へーき。……あれっ」
俺17 「あちゃー、鼻緒切れちゃったみたいだな……」
ハルカ18 「直して」
俺18 「直せるかよっ! けど、…こまったな」
ハルカ19 「おんぶ」
俺19 「へっ」
ハルカ20 「聞こえなかったの? おんぶしてちょうだい」
俺20 「ったく……仕方ないな……ほら。……よっと……んぁ!?」
ハルカ21 「よーし、いけーー!!」
俺21 「ばっ…ばかっ、おい、あんま…あんまり動くなって! む…むねが……」
ハルカ22 「いま、えっちなこと考えてたでしょう」
俺22 「ぐっ、…く、首閉めるな…くるし…。つか、浴衣でおんぶされてんのに、そんな、暴れんな…足が…うがぁっ!」

┌ハルカ 私は父以外の男の人がずっと嫌いだった。
│ 私たち家族の周りにいる男の人は、いつも皆一様に薄笑いを浮かべ、ことあらば私の機嫌をとろうと近寄ってくる。
│ それはパブリックスクールの同級生も、…そう、先生たちだって例外ではない。
│ それは、私が四王寺の一人娘だから。そう…きっと、彼らには私のことが見えていない。
│ 彼らが見ているものは30億ユーロの総資産と、45の四王寺関連企業。
① 私はたまたまそこに生まれただけ。彼らにとっては、そこにいるのが私でなくても関係ないのだろう。
│ …けれど、こうして今、私をおぶってくれてるコイツだけは何かが違った。
│ 日本での初めての学校生活。
│ この冴えないクラスメイトは私の失敗を本気で笑って……本気で心配してくれる。
│ そうして、悔しいけれど、何の打算も下心もなくこうやって私をおぶってくれている。
│ ほんとに悔しい……悔しいけれど、どこか心がホッとする。
└ ほんとに…変な奴……。


┌ハルカ23 「なにあれ」
│俺23 「金魚すくいだろ。しらねーのか?」
│ハルカ24 「悪かっわねっ。あれ…やってみたい」
│俺24 「おお、いいぜ。…これで、こうやって…そう、下からゆっくり……あーっ!」
│ハルカ25 「もう、うるさいっ! あんたが横からぐちゃぐちゃ言うから!!」
│俺25 「――ほらよっ。ちっこいの1匹しかとれなかったけど……」
│ハルカ26 「うわーっ、ちっちゃいけどかわいい! …大事に育ててあげるからねっ、ぎょぴちゃん!」
②俺26 「いきなり名前付けんなよ」

│ハルカ27 「あれはなに? たべもの?」
│俺27 「わたあめだな。 ……なんだよ、食べたいのか?」
│ハルカ28 「わっ、私は別に…そんなもの……」
│俺28 「そっか、いらないのか」
│ハルカ29 「せっかくだから…いただくわ!」
│俺29 「はいはい……」
└ハルカ30 「えへへー」

※①と②はオーバーラップするように編集してください。

俺30 「四王寺……」
ハルカ31 「…えっ?」
俺31 「重いよ……」
ハルカ32 「うるさい」