A(君)臆病で卑屈
B(私)淡々と思慮深い
C(彼)感情的、暴力家(*登場せず)


B「こんにちは…と」
A「……おはよう、じゃなくて?」
B「ふうん、まだ朝か。今日はまた随分早く癇の虫が出たのだね」
A「母が部屋を片付けたんだ、だから…上手く保てなかった」
B「そうかい。じゃあ彼が表に出ているのだね?」
A「そうだね。君がここにいるから……」
B「私でもなく、また君でもなければ彼しかいないね」
A「そうだね…」
B「少し頭を休ませるといい。ここはそういうためにある場所だ」
A「お言葉に甘えるよ。今は何も考えたくない」
B「そう……」

(時間経過)

B「彼は辛いと言っていたよ」
A「何が」
B「君が精神の異常をきたしたときに、こうして入れ替わるのがさ」
A「彼がそう言っていたのか」
B「言わない。でも君はわかっているはずだ。
  彼もまた君だ。そして私もまた彼で君だ。」
A「でも……彼はそのために作った役だ。」
B「そうだよ。そして私は、君の精神安定のための語り手だ。
  これは君が考えていることだ。私の口を通して、君は彼を憂慮している。
  そのことを確かめようとしている」
A「君は日を重ねるごとに辛らつになっていく。
  前はもっと優しかった」
B「変わったのではない。君は自分すらも扱えなくなってきている。。
  君の日常の不確定要素に対する反応は、日を追うごとに増している。
  君は自然治癒では治らない所にまで来ているのだよ」
A「でもどうしようもない」
B「そう……どうしようもない。
  それでも彼は泣いていたよ」

(時間経過)

B「おはよう 久しぶり」
A「……(ため息)」
B「落ち込んでいるね。
  それもそうだろう、君の審判の日は近い――君はついに」
A「うるさい。お願いだ静かにしてくれ」
B「……ひとつだけ聞かせてくれ。これは私と彼にもかかわりある問題だ」
A「なに」
B「審判の日に裁きの庭に立つのは、君か?私か?それとも彼か?」
A「……」
B「彼がこのまま表に出ているならば、君は異常快楽殺人鬼の称号を賜るだろう。
  私ならば精神薄弱で詭弁の激しい狂人
  君ならば……酷い鬱屈症の臆病な人間」
A「……」
B「なるほど、君は出る気がない。私を表に出す気力もない。
  彼が表舞台に出ずっぱりか」
A「……」
B「君、彼は泣いていたよ。
  ありし日に、君はなぜ彼を作ったのだ。
  君は彼に、自分を虐げる強者から守ってもらいたかったのではないのか。
  彼は君の理想形だったのではないのか?」
A「……」
B「そうしているならいい。だが忘れないでくれ。
  私の言葉は、君の言葉だ。
  君は私の口を借りて、彼の死を嘆いている」
A「彼は……何からも守ってくれたんだ。
  傷つけるすべてから守ってくれた」
B「そう……そして、今も」
A「彼は僕のヒーローだ」
B「かわいそうに、孤独な英雄」
A「強くて、何にも負けない、ヒーローだったんだ……」


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最終更新:2010年10月21日 13:31