話を聞くということ


作者:ビャク ◆Byaku14MAo


A:夫。ギリギリまで静かに、最後の方で徐々にボルテージをあげて。
B:妻。ヒステリックだけど、知的な面もある。

B1「離婚、ですって? 何よ、それ……なんで突然!!」
A1「ごめん。いきなりですまないとは思ってるけど、でも……もう決めたんだ」
B2「だからどうして! なんで私の言い分を何も聞かずに、そんな大事なことを
   一人で勝手に決めちゃうのよ?! 私はいつもあなたの話を聞いてたじゃない!」
A2「ああ、その通りだ」
B3「私はいつもあなたの話をちゃんと聞いたわ。仕事のこと、友達のこと、家族のこと、
   趣味のことや家のことも全部! どんな相手の話でも、きちんと聞く。だって、
   それが私のポリシーだもの。相手の話を聞かなきゃその人のことはわからないしね」
A3「ああ、素晴らしいポリシーだ」
B4「自分勝手だわ。いつも自分の意見を言いたいだけ言ってたくせに、
   どうして私の意見はちゃんと聞いてくれないのよ! ふざけないで!」
A4「それは認めるよ。どんな話でもお前はちゃんと聞いてた」
B5「じゃあなんで?!」

A5「――聞いてるだけだった」
B6「……え?」
A6「お前はいつも俺の話をきちんと聞いてくれる。でも、それ以上のことをしてくれたか?
   俺が何か意見を言っても、お前は結局聞いてるだけで何も受け入れてはくれなかった」
B7「そ、そんなことないわよ! いつだってちゃんと……」
A7「聞くだけ聞いて、俺の意見を実際に反映してくれたことはあるか? 自分の考えを
   変えたことはあるか? 相手の話を聞いているというポーズを取ってるだけで、
   最終的には何も変わらないじゃないか! そうやって肝心なことはいつも自分一人で
   決めてしまって……そんなの最初から聞いていないのと同じだ!!」
B8「ね、ねえあなた。私の話を……!」
A8「俺はお前の崇高で頑固なポリシーに耐えられなくなったんだよ!!」
B9「あなた……!」
A9「とにかく、離婚の意志を変えるつもりはない。話を聞くつもりもない。さよならだ」
B10「ねえ、待って、待ってよ! 悪かったわよ。今度はちゃんと聞くから。
    今度からは全部あなたの意見を優先するから! だから私の話を聞いて!
    お願いよ! ねえあなた!」(徐々にフェードアウト)

A10「俺が求めていたのは……! 俺のいうことをなんでも肯定することじゃない。
    なんでも否定することでもない。ただ、俺を対等の存在と認めて、受け入れて、
    そして――向き合って欲しかったんだ」