優しい世界


作者:wikiの人◆SlKc0xXkyI
※女性推奨。
BGM:物悲しいピアノ曲など。


 私が欲しかったものは、お金なんかじゃないの。
 流行りの服やCD。そんな物じゃ何も満たされやしなかった。
 本当に欲しかったのは、〝おかえりなさい〟を言ってくれる家族だけ。
 ねえ、どうしてこんな家になったの?
 私、悪い子だった? 何か、怒らせるような事した?
 私頑張ったよ? いい子になろうって、たくさん頑張ったよ?
 ……なのに、どうしてお父さんとお母さん、ケンカばっかりなの?
 ごめんね。私、確かに迷惑かけてばっかりだった。
 でも、悪いのは私なの。
 私が歩けないのは、お父さんやお母さんに責任があるわけじゃないの。
 だからお父さん。お母さんを殴らないで。
 私でいいなら、いくらでも謝るから。そんな事しないで。
 お母さんも、悪くないんだから笑ってよ。
 私を無視したり……そんな、冷たい目なんかしないでよ。
 精一杯、やってきたのに。
 こんな体だけど、精一杯生きてきたんだから!!
 私が生きてる事……ちゃんと認めてよ。
 もっと、もっとちゃんと、私を見てよ……お願いだから、私を見てよ!
 私を無視しないで。
 私を産んだ事まで、否定しないで。
 誰からも必要とされないなんて……寂しいよ。

 ……神様っているのかな。
 ねえ、神様? 本当にいたら、一つだけ教えてよ。
 どうしてこの世界に――私の居場所を作ってくれなかったの?

 私が欲しかったのは、〝おかえりなさい〟を言ってくれる家族だけ。
 ご飯の時には、皆で笑いながら、温かいご飯を食べたかったの。
 ……でも、もういいや。
 私はちょっと、疲れちゃったから。
 こんな優しくない世界じゃ、生きてたって辛いだけだから。
 私を必要としない皆は、これからも頑張ってね。
 私は一足先に、ずっと眠らせてもらうね。
 もし生まれ変わったら、私は優しい世界に生まれるから。
 ずっと、ずっと、バイバイ。

 ……歩けない私。
 最後は動かない足で、空を飛んだ。

 効果音―何かが潰れる音


【あとがき】実はギャグよりも、こういう話の方が好きだったりします。