「「小萌「魔法名は『smilers100』【生徒達の笑顔のために】ですよー」1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
上条当麻はまたボロボロになって帰ってきた
その報告がいつもの病院から、いつもの人からかかってきた
小萌「か、上条ちゃんは大丈夫なんですか!?」
カエル医者『とりあえずは心配ないようだね。それと土御門君と言う子もこちらで療養中だね』
小萌「よ、よかったです…」
カエル医者『今回はフランスのアビニョンからのご帰還らしいよ?』
小萌「……………」
フランス アビニョン
確か学園都市に対する大規模なデモ、もとい暴動がおきた場所である
小萌「と、とにかくまたご迷惑かけてごめんなさいなのですっ」
カエル医者『いやいや、一番心配なのは先生の方でしょう。あの少年は無茶が過ぎるからね』
小萌「は、はい…」
まるで自分が怒られるかのように丸くなる月詠小萌の内心は、それでも安心していた
小萌(上条ちゃん…また…)
月詠小萌だってバカではない。上条の怪我の原因くらいは、さすがに推測はつく
そしてそこにはいつも、『魔術』というワードがあった
小萌(私の生徒が毎回毎回死ぬような目にあっているのです…。それは教育者、いや、先生として…簡単に見過ごせるわけ……)
月詠小萌は知っている
『魔術』というワードに詳しい人物達を
インデックス、姫神、ステイル…
そして月詠小萌も『魔術』を使った人間の一人でもある
小萌(それなら…私にも…)
たったそれだけ
たったそれだけで十分なのだ。
難しくはないはず
とあの時の『魔術』を思い浮かべ
私が無力だった
と姫神が血の海で横たわる情景を思い出して――
後日
ステイル「で……なんで貴女が僕の携帯番号を知っているのかは置いといて…、僕に用事なのかい?」
小萌×2=ステイル、と言う式が成り立つ程身長差がある2人がボロアパートの中にいた
幸いステイルは土御門との連絡で学園都市に来ていたのだ
小萌「あ…あの…上条ちゃん達のことなんですけど…」
ステイル「って僕は上条当麻の親じゃないぞ!何で二者面談をやらなくちゃ…」
小萌「上条ちゃんもシスターちゃんも…いつも『魔術』に巻き込まれてるんですよね?」
ステイル「っ!?…………」
この小さい教師から『魔術』と言うワードが出てくることに、ステイルは違和感を顔に出せざるを得なかった
小萌「この前も上条ちゃんと土御門ちゃんはフランスのアビニョンから、ボロボロになって帰ってきました…」
ステイル「……貴女は知らない方がいい。彼らの背負ってるものは重い」
月詠小萌は知らないが、ステイルから見れば彼らの背負うものは重い
学園都市の学生をしながら、自分以上に魔術関係の事件に関わっているのだから
小萌「それは分かってます!分かっていて見過ごせればどれだけ簡単なことか…」
ステイル「………で、用事はなんだい?」
小萌「単刀直入に言うのです。私を魔術師にして欲しいのです!!」
ステイル「」
ステイル的には学園都市入りをしてからタバコを吸ってない。だから今の台詞はその幻覚だ。うん
小萌「魔術師ってこうなんか…呪文を覚えてパッとやれば行けますよねー?そうそうシスターちゃんの時もちょいちょいとやって…」
ステイル「ふざけるなよ!」バン
突発的に大声と物音をたててしまった。それでもこの分けのわからない動揺と感情はうやむやとしている
小萌「私は、先生は本気なのですっ!!」バン
バンッと小さな手の平を机に叩きつける。ステイルがその瞳を見ると、うっすらと涙がある
小萌「先生は…子供達が…目の前で死にそうなところを何度も見てきました…。でも先生は……何もできずに…」グスッ
そうか、大覇星祭の時にも――
吸血殺しの少女は血の海に伏せ、上条当麻のクラスの女子も一人倒れた。
血まみれのインデックスも、ボロボロの上条や土御門…
そんな情景がステイルの頭を駆け巡る
ステイル「…わかった……貴女は本当にその気のようだ」
小萌「…………」グスッ
ステイル「駆け回ってみるよ。貴女が魔術師になれるように」
小萌「あ、あ、あ…ありがとうなのですー!」ウェーン
ステイル「……」(…もうどうにでもなれ…orz)
その日のステイルの服は、月詠小萌の涙でグショグショになってしまった
ステイル「はぁ……」
タバコを吸えないストレスとあの小さな教師との約束が重なり、ステイルはこの上ない悩みに襲われている真っ最中である
ステイル(月詠小萌との約束では『土御門と上条当麻には教えるな』ということだったが…)
ステイル(僕としてはあのようなタイプの人間はこっち側に来て欲しくないが…ん~…)
実に困った。しかしそれ以上に困るのが小萌のやる気だ。多分断固拒絶したら次は超能力開発でも受ける覚悟なのだろう…
ステイル(まったく…土御門も上条当麻もどれだけ心配かけて……)
と愚痴ろうとしたがそれの半分程は自分のせいでもあるのでやめた
ステイル(にしてもあの人は何者なんだ?年齢も意味不明だし、まるで不老不死のような…………!?)
刹那、いくつかの連想を経て辿りついた一つの記憶に、ステイルは顔色を変えた。
それはとっても不快な響きだったからだ――
イギリス凄教
ローラ「ステイルから?」
神裂「はい…、それの報告が…魔術師を希望する人間についてです」
ローラ「は?」
神裂火織からの意味不明な報告について、ローラは不快な表情を見せる
ローラ「魔術師を希望?それならステイルがその人間に魔力の練り方でも教えて、それから手品もどきの魔術でも仕込みたれば良いのよ」
魔術師になりたいと言う人間はよくいるものだ。そういう人間は魔力を練るところまでは出来ても、そこから先は鍛練の世界。それをクリアした者が魔術師になる、という職人に近い世界なのである
しかし神裂も神裂でしかめっつらをし続けている
ローラ「何かおかしけりなの?」
神裂「いや…その魔術師を希望する人間に関しても…ステイルから報告があって…」
ローラ「?」
神裂「その人の名前は月詠小萌。上条当麻と土御門のクラスの担任です」
ローラ「ほー。合縁奇縁とはこのことなりけるのね」
座ったまま足をぶらぶらとさせながらおどけているローラ
神裂「ステイルの報告によると、この月詠小萌は実年齢は不明ですが見た目は小学校低学年」
ローラ「ほぇ?いや教師でありけるのでしょ?」
神裂「ああいや…だからその……」
何故か目を回す神裂
神裂「噂では学園都市の最先端技術を用いた不老不死の治療ほ施されているようで…」
ローラ「」
とりあえずローラも頭が回らないが、実年齢は大人だが見た目は子供の教師らしい
ローラ「は?それどこの名探偵の設定なりけるのよ?」
残念ながら学園都市は黒の組織ではない
神裂「さらに詳しい報告によると、月詠小萌はテロメア手術による不老不死が有力とされています」
ローラ「てろめあ?」
神裂「はい。テロメアと呼ばれる染色体の中の一部分です」
テロメアとは染色体にある、DNA修復や細胞分裂などを管理する一種の司令塔なようなものである
神裂「つまりここさえどうにかして制御できれば、不死はともかく、不老はできるようです」
難しい話をすればテロメラーゼ酵素の活性や制御修復因子などを調整すれば、学園都市でも出来ないことはなさそうな話である
ローラ「つまりは科学における不老不死ってこと?」
神裂「そうですそうです」
慣れない科学の話をさせられた神裂は、二つ返事でだるそうに戻っていった…
その後もこの部屋に残るローラは先ほどの資料に目を走らせていた
ローラ(ステイルの奴、ちゃーんといい報告をしてるのよね♪)
ローラ(不老不死~♪)
ローラの様に魔術的に肉体を若く保つことができても、それ以外に肉体を若く保つことはできない。
しかし、魔術世界での生き物に『不老不死』の生き物がいた
吸血鬼
『不老不死』という最大のエネルギー、つまり無限の魔力を持つ存在は魔術師に恐れられた
ならばこの月詠小萌はどうだろう
吸血鬼のように不死とはいかなくとも『不老』である。となれば無限に『近い』魔力を手にすることができる…
ローラ(月詠小萌……)
ローラ(こやつが『最強の魔術師』になる日も近きことなのよん~♪)
そしてこの日はまだ10月10日。
後方のアックア襲来まで、あと数日であった―――
ステイル「はぁぁぁ…………」
前回よりも重い溜息をついた炎の魔術師は公園のベンチでだらけていた
ステイル「彼女にはインデックスを助けて貰った恩もある……だからこそ、魔術サイドには関わって欲しくなかった…」
ここ数日、このような台詞を四六時中呟いている
ステイル「…それに最大主教までノリ気になってしまって…」
ステイル「これじゃあ土御門や上条当麻に顔を合わせられない……」
それに加え、吸血鬼と似た『不老不死』であることも分かった今、ステイルはただただ後悔の一言であった…
ステイル「………ああもういい!」バッ
鳥のように、急にベンチから飛び上がると、ステイルの顔はあの時のような顔になっていた
そう
とあるシスターを追いかけ回していた、あの頃のような
ステイル「これは全て僕の責任だ。あの人の命も、僕が命をかけて守る」
命をかけて守る
そういえる人が2人になってしまった炎の魔術師は、これからとある決意を表そうとしていた―――
イギリス
小萌(ここが……イギリス清教…)
聖ジョージ大聖堂、と言えば響きは良いが、なにぶん小さい教会である
外見や中の一部は簡単な観光名所と言った感じで、特に着目すべき点もない
生唾を飲み込んで入ってゆく小萌に、一人の女性がひょろっと現れた
ローラ「おっ、あなたが月詠小萌なりけるのね?」
小萌「は、はい!ステイルちゃんからご紹介頂いた月詠小萌ですぅ!」
ローラ「ん~…想像以上にプリティーな容姿なるわね…」
表現に困るローラだったが、そのまま奥の部屋に連れてゆく
ローラ「ステイルから大体の話は聞きゆのよ。魔術師って言ってもそう難しいものではないわよん」
小萌「そ、そうなんですか…」
ローラ「ふむ、小萌の場合はちょっと『特殊』なりけるから、まずは簡単な検査をしけるのよ」
小萌「検査…ですか?」
着いた部屋には3つの簡単な魔法陣が床に描かれている
ローラ「ではここの真ん中に」
小萌「はい」
小萌が真ん中に立ち、ローラが紙切れを一枚パラッと飛ばすと魔法陣が光る
ローラ(ほほぉ……)
ニタニタとするローラを尻目に小萌は不安そうに声をあげる
小萌「あのぉ…私は大丈夫なんでしょうか…」
ローラ「心配無用なるわよ!小萌、あなたは魔術師の『優秀』な才能がありけるわよ!」ビシッ
小萌「本当ですかー!?」
単純に喜ぶ小萌だったが、ローラは些か腹黒そうにも見える
ローラ「本当よ本当のよ!」
事実小萌の生命力はやはり『不老不死』レベルであり、それを魔力に換算しようものならそれは化け物レベルの魔力なのである
ローラ「おーい神裂はどこかー?」
神裂「はい、何ですか」
長身ポニーテールの神裂火織がすぐに現れた。一度小萌とも面識はあるので軽く会釈をした
ローラ「あのーあいつ、スマートヴェリーを呼んでほしいのよん」
神裂「スマートヴェリーを?」
スマートヴェリー
空中要塞ガヴン=コンパスの部隊に所属する、一人の『魔女』である
神裂「スマートヴェリーは『魔女』ですよ?」
ローラ「知ってるのよ」
小萌「『魔女』?」
ローラ「そう『魔女』。箒に乗って空を飛ぶ」
小萌「へ?」
小首を傾げる月詠小萌。まだ状況が分からないようだ
ローラ「もう鈍感なるわねー。小萌はこれから『魔女』になりけるのよ~♪」
小萌「」
小さな教師と魔女が交差する時、物語は始まる―――
2日後
スマートヴェリー「そう、その調子よコモエー!」
小萌「ほいっ!」ヒュル
ミニサイズの人間にミニサイズの箒。何とも可愛らしい魔女が聖ジョージ大聖堂の中庭を飛ぶ
月詠小萌はたった2日で魔女の基本的な術式や飛行法もマスターしていた
しかしそれには訳がある
つい先日、ローマ正教後方のアックアから送られてきた手紙と物品
それは上条当麻を粉砕すると言う果たし状と、テッラの遺体
そのためイギリス清教は急遽天草式を上条当麻の護衛のため学園都市へ。そして小萌もそのために今猛特訓しているのだ
ローラ「おー小萌、もう一人前の魔女になりけるのよ!」
スマートヴェリー「コモエは私より素早い動きをしますからねー」
小萌「スマートヴェリーさんのお陰ですー!」
ちなみに、小萌がたった2日間の間でイギリス清教内でもマスコット的な存在になったのは言うまでもない
ローラ「後方のアックアの宣戦布告から見ても、猶予はあと2日…」
ローラ「その間に次は小萌の使う術式を考案しけるのよ」
小萌「私の…魔術…」
魔女の基礎を習得したとは言え主力になる魔術はまだ持っていない
ステイルなら炎 神裂なら肉弾戦 シェリーならゴーレム、と言う具合に
ローラ「小萌は『五大元素』を知りたるかしら?」
小萌「はい。確か…火、水、土、風、空だったと…」
ローラ「ん~それは仏教などが混ざるもので少し違いたるわね」
スマートヴェリー「十字教での『五大元素』は火、水、土、風、エーテルとなるわ」
小萌「エーテル?」
ローラ「確かにエーテルを空と規定する場合もあるけど、厳密には違いたるものなの」
エーテルと言う概念が生まれたのは宇宙と言う存在から。地球には空気、つまり風が満たされ、宇宙にはエーテルが満たされていると考えられていた
ローラ「それらのことからエーテルは光の媒質と考えられていたのよ」
宇宙空間のエーテルを媒質として光は通ると考えられていた
スマートヴェリー「しかし科学が発展してから、光と電磁波は同一とものてした扱われた」
ローラ「となると…どうなるか分かりたる?」
小萌「科学による…エーテルの実験?」
ローラ「そう、エーテルは科学議論の的になった。そしてエーテルは、唯一科学によって否定、消された元素となりたことなのよ」
マックスウェルの電磁気学の発展から始まったエーテル論争は、最終的にあのアインシュタインによって否定されることとなった
科学によって消された元素…
スマートヴェリー「そのために『五大元素』自体は残っていても、魔術サイドでエーテルの属性術式を持つものはほとんどいないの」
ローラ「そう、あの『神の右席』を見ても分かるように、あの組織にエーテルの属性はいない」
小萌「つ…つまり…エーテル属性の魔術って難しい魔術なのですか?」
ローラ「そういう訳ではなきのよ。エーテルの霊装は存在するけど、今では『科学に侵食された元素』としてエーテルを忌み嫌うのが魔術サイドの風習になってしまったるのよ」
スマートヴェリー「それにエーテル属性の術式を使うには科学的知識も必要不可欠なのよねー」
小萌「そ、それって…」
ローラ「そう、学園都市の先生の小萌に最も相応しい属性が『エーテル』なのよん♪」
過去にはエーテル術式も流行った時期があったが、今のように科学によって否定されたエーテル術式はほとんどない
しかし霊装は別である
古来から残る霊装は依然機能し、それを使う魔術師も普通に存在する
ローラ「しかしさっき言った通りエーテル属性の霊装を使う者は普通にいる」
ローラ「まぁぶっちゃけ私よりその霊装を使う者の方がエーテル属性には詳しけるのよねー」
小萌「と言うことは……」
ローラ「そう、エーテルを理解するにはその者について学んだ方が良いのよ。例えば、エーテルの象徴武器『蓮の杖』を使う者とかに…」
後方のアックアが学園都市に襲来するまで、あと2日―――
翌日
アニェーゼとローラを師に仰ぎ、小萌はエーテル術式を学んでいた
アニェーゼ「魔術的なエーテルの要素は万物に似ていることと、宇宙を満たす元素だと言うことですかね」
ローラ「そしてエーテルが使われにくいものの一つとして極端な魔力消費が上げられたるのよ」
アニェーゼ「それは小萌の魔力なら問題ないですがね」
小萌「……………」
ローラからも自分の魔力は莫大なものだと伝えられたが、小萌自身には全く実感できない。事実生命力から魔力への精製を行ったときも実感を得ることはなかった
小萌「ま、魔力が多いと…そのコントロールとかできなくなったりしませんか?」
ローラ「そんな話は聞いたことはないのよ。魔術って言うのは自身の魔力に制限があるから、効率のいい術式を考案したり、霊装を作り出したりしけるのよ」
アニェーゼ「つまり早い話は魔力=魔術の強さと言っちまってもいいってことです」
とにかくその道のプロの二人が断言するからには間違いないのであろう
ローラ「そうそう、小萌はもっと自信を持ちたりければ良いのよ♪」
アニェーゼ「昨日1日でエーテル元素は理解しちまいましたし、この分だと術式のマスターもチョロいもんです」
小萌「わ、分かったのです!これも上条ちゃん達を守るが故!先生頑張るのですよー!」フンス
熱血教師、月詠小萌は魔術師になった今も健在であった
ローラ「その意気なのよ~小萌~♪」
小萌「頑張るのです!!」
ステイル「…………」
その様子を見つめる炎の魔術師は、今日もまた『ステイル専用』の柱から様子を伺っていた
ステイル(…うまくやっているようでなによりだ…)ホッ
ステイル(とりあえず今回ばかりはあの女狐にも感謝だな…)
ドキドキハラハラのステイルの気持ちもいざ知れず、時は無情に過ぎてゆく…
後方のアックア襲来まで、あと1日と迫っていた――
翌日
土御門「最大主教ッッ!!」ドン
声を荒げた土御門が聖ジョージ大聖堂の荘厳な雰囲気をぶち壊しながら入ってきた
ローラ「あらら~どうしけるのかしら土御門元春~」
土御門「どういうことだッ!月詠小萌は学園都市の人間のはずだ!」
ローラ「あ~ら、それが特別問題でも?」
土御門「こんなことをして…科学サイドとの関係は破綻するぞ!あまりにもやり過ぎだ!」
ローラ「ふむふむ、しかし土御門が怒りたるのはそこではなく、小萌を魔術師にしたることを怒っているように見えたるわね~」
土御門「ッ…………」
まさか自分の担任を科学と魔術の争いに巻き込むことになるとは考えていなかった土御門の興奮は収まらない
ローラ「今回の後方のアックア襲来は幻想殺しに関する、科学と魔術の関係を含む問題。しかし相手が『神の右席』だと言うのに、建前上天草式の連中しか派遣できない今、動けるのは『学園都市の人間』である小萌だけなるわ」
土御門「だからと言って…何故月詠小萌を選んだ?」
ローラ「んーそれには二つの理由がありけるわ。一つは小萌が『不老不死』の魔力を得ていること」
土御門「!?…まさか…」
ローラ「さすがに絶対不死とまではならなきものけど、魔力は通常の魔術師とは比較にならないわね」
ローラ「そしてもう一つの理由は…」
ステイル「彼女自らが魔術師に志願してきた」
土御門「!?ステイル…」
のそっと柱から出てきたステイルが口を挟んできた
ステイル「彼女が魔術師になりたいと、僕に頼んできたんだ」
土御門「そんな…バカな…」
ステイル「いや、妥当だね。あの人は学園都市の人間の中でもかなり魔術との接点は多かった…」
ステイル「インデックスの回復魔術、僕や神裂、大覇星祭の時のドタバタも」
土御門「…………」
ステイル「そして決定打になったのは、『魔術』というトラブルに巻き込まれ、ボロボロになって帰ってくる君や上条当麻だ」
それは土御門にとって嫌なほど身に覚えのあることばかりだった
土御門「…………」
ステイル「安心しろ、なんて無責任なことは僕には言えない。だが神裂も不穏な動きを見せている」
今回の学園都市との密約では天草式は動けても、聖人である神裂は動けない。その神裂が『不穏な動き』を見せているというのは十中八九今回の襲撃についてだ
ステイル「そしてあの人に万が一のことがあれば、責任は全て僕にある。僕の『名』にかけてね」
土御門「………ステイル、お前の覚悟はよくわかった」
ステイルの説明で全てを理解した土御門の怒りは収まっていた
ローラ「ま、でも小さな小さな『エーテルの魔女』には『神の右席』に対抗できるくらいの術式は習得させたし、天草式も覚悟を決めているようだから心配なきことなのよ~♪」
いつにも増して腹黒い雰囲気を醸し出すローラに、土御門もステイルも決して心地好い心境ではなかった――
第二二学区
建宮「あ…が………」バタリ
アックア「ふん…鎧袖一触とはこのことであるか…」
周囲に展開する天草式を無力化することは、この男にとって実にたやすいことであった
アックア「……………」
大して感傷に浸る時間もなく、後方のアックアはそのまま進む
アックアは思う
アックア(上条当麻…。その右手はあまりにも危険である…)
今まで科学と魔術は対立していたと言えば戦争のようにも聞こえるが、逆に言えばお互いの領分を弁えていただけにすぎない
表があり裏がある。宗教があり科学がある…
それは勢力均衡、パワーオブバランスとも言うべき状態だった
アックア(しかしあの右手はそれを軽々と壊していった)
結果として、神の右席のアックアから見れば科学と魔術の本格的な対立は上条当麻が生み出したとしか言えないのである
アックア(だからこそ、潰す)
上条当麻は科学サイドのいいように扱われているにしか過ぎず、しかし自身の影響力をまるで理解していない
だからこそ『争いの元凶』を潰さなければ、この争いは終わらない。
絶対に終わらない。戦争が始まるまで…
後方のアックアは強い
あまりにも強い敵は、上条に感傷の暇さえ与えなかった
そして気付いた時にはこの有様である
(ああ……俺死ぬのかな…)
体に蓄積された、いや一気にのしかかってきたダメージは――しかしダメージと呼ぶにはあまりにも重い――上条の体を縛り付ける。
動かない。そしてこの戦いで苛立ちを覚える頃には自分は無くなって消えてしまっているのではないだろうか、という絶望感
しかし隣にいる五和は諦めずに何やら止血や包帯やらを巻いている…
回復魔術を実行しようとしているらしい
(やめろよ五和………どうせ俺の右手が邪魔をして……)
バギン
五和「うわああああああああああああッ!」
五和の悲鳴が叫び終わる頃には、上条の決心はついていた
(……でも…五和まで死ぬことねぇよな……)
「もう良いであるか」
問い掛けと同時に、アックアのメイスが横一線に襲いかかる
が
上条「ぐっ、がぁ…ォォおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
死力を尽くした上条が五和の盾になる。薄くて頼りない盾だ
上条「ありがとう五和。お前の回復魔術のおかげで、ちょっと元気が出た」
上条はその言葉を最後に決してこちらを振り向かなかった
五和「待―――ッ!」
上条「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」
向かい行く上条に対し、アックアのメイスがありえない速度で横一線に薙ぎ払れ――――
ガギィッッ!!
アックア「!?」
「ふーっ…危ないところでしたねー……」
巨大なメイスは見えない『何か』の力で動きを止められ、その真上からは、小さな魔女がおりてきて―――
それは『神の右席』後方のアックアの力すら凌駕していた
アックア(メイスが…動かない…)
あの天草式の女でもなければもちろん上条当麻の力でもない。何か別の力が働いている
そう思考を巡らせた時には空に一閃が走った
「ふーっ…危なかったですねー……」
干渉魔術を使って束縛されたメイスを解放し、アックアは目の前の人物を見た
小さくてピンク色の髪、小さな箒を持ち格好は魔女そのもの――
小萌「あなたが…後方のアックアさんなのですねー…?」
アックア「そうであるが…。イギリス清教の者であるか」
小萌「ん~厳密に言えば私は上条ちゃんの先生なのですよー」
アックア「先生…であるか…」
気絶する上条を尻目にアックアも五和も驚愕の表情を隠せずにいる
小萌「魔法名は『smilers100』【生徒達の笑顔のために】ですよー」
そしてここに、『エーテルの魔女』と『後方のアックア』の戦いの火蓋が切って落とされる――