「思いを形にする、それは覚悟の現れなのよ!」

    アカちゃんがいつものように胸を張って名言を言う。今日はキー君に来ないようにアカちゃんが昼休みに言ったため、生徒会室は4人だけだった。それにしてもアカちゃんは分かりやすい。今日の名言は多分あれのことだと思った。
    もう2月、女の子の時期である。会議を進めて良いか確認を取ろうと深夏に目を向けると、深夏は拳を握り締め立ち上がった。
    「そうだぜ会長さん。力って奴は覚悟を決めてこそ初めて使えるようになるものもあるんだぜ。」
    「え?いきなり何のことよ深夏!!」
    「今言ったじゃねえかよ。思いを形にするってのは覚悟の現れって。で何を覚えたいんだ?竜破斬か?〇王炎殺黒龍波か?あたしに出来ることがあるんだったら遠慮せずに言ってくれってんだ。」
    「深夏に言うことはないよ!!暗黒〇踏会にもでないから黙ってて。はあはあ。」
    アカちゃんは息を切らしながらホワイトボードにチョコレートと書いた。まあ、そう来るとは予想していた。
    「チョコレートですか?」
    真冬ちゃんが何か迷いながら声を挙げた。
    「うん、みんなでいつも頑張ってる杉崎に作ってあげようかと思って…」
    アカちゃんが頬を紅くして俯いた。何故かキー君に対して嫉妬に似た感情を抱いた。
    「アカちゃんはキー君に気持ちを伝えたいのよね?」
    「う、うん。って恋愛とか好きだとかじゃなくて……いつもありがとうって伝えたいんだからね!!別に杉崎なんか…杉崎なんか…」
    「アカちゃんも素直じゃないわね。」
    「知弦なに言ってるのよ。ついでよ、ついで。」
    耳まで紅くなったアカちゃんを堪能しつつ、自分にはチョコレートをきっとくれないだろうと思い、心の中に嫉妬に似た感情が生まれた。実際、私もキー君にチョコレートをあげるのだけど…
    「でも会長さん。チョコレート作るのはいいが作ったことあるのか?」
    「え?ないけど?」
    予想した答えだった。多分、このメンバーは誰も作ったこと無いだろうと思う。私だってない。
    「あたしはねえし、真冬だって作ってるとこみたことねえけど知弦さんはあるか?」
    真冬ちゃんも今回ばかりは反論せず私に視線を向けた。
    「残念だけど、私も無いわね…本みれば作れると思うけど。」
    「そうですか…真冬は本をみても作れるとは思いわないです、作れそうな人なら心当たりがありです。」
    「真冬ちゃん誰々?」
    真冬ちゃんの言葉を聞き、アカちゃんが机に乗り出して反応した。私は真冬ちゃんの狭い交友関係的にあまり期待を持てず、真冬ちゃんをみた。
    「それは……」

    翌日、私たちは調理室にいた。なぜか真義留先生もいるがこの人のことだ、「試食」しにでも来たのだろう。
    「それにしても、真冬ちゃん遅いね。」
    アカちゃんが我慢できず目の前の板チョコに手を伸ばしながら言った。もちろん私はその手を叩き「メッ」と言う。
    「仕方ねえよ。まだ終わってないんだろ。それか探してるかだ。」
    深夏は昨日プリントアウトして来たらしい、チョコレートの作り方が書いてあるコピー用紙を見ながら言うと。
    「「遅くなりました。すいません(です。)」」
    真冬ちゃんと中目黒善貴君が調理室に入ってきた。

    「えっと、チョコレートの作り方でしたよね?」
    エプロンに着替え終わり集まると中目黒君は何か考えるように言った。
    「はいです。来る途中に言いましたが、中目黒先輩に作り方を教えてほしいです。」
    「作り方は知ってるよ。教えられるかわからないけど真冬さんがどおしてそれを知ってるの?」
    「ふふ…真冬の想像通りでした。これで新しい章がかけます。ふふ…。」
    「え?え?」
    ハ〇ヒ的能力を開花させた真冬ちゃんが脱線し中目黒君が困惑し始めた。
    「善貴悪いな。真冬はほっといていいから、教えてくれるか?」
    「何かわからないけどわかったよ。ところで深夏さんは杉崎く…」
    「バカ野郎!!」
    深夏が突然中目黒君を叩いた。手には電子レンジ用手袋をはめていた。
    「深夏さんいきなり…」
    「いきなりも耳鳴りもあるか!!これは…丈○郎の分だ。」
    「そ、そうなんだ…。」
    中目黒君が半泣きの目で私に助けを求めてくる。私は笑顔で返してあげた。まだこの二人をみてたいし。
    「そうだぜ。善貴。なんで鍵なんかに作らなくちゃいけ…いんだよ…あたしがさ。」
    「は、はぁ…」
    深夏が頬を紅くして俯くも、中目黒君は流してくれるらしい。この子は優しい子だと思った。
    「ところで、中目黒君は私達に付き合ってくれて大丈夫なの?」
    私は遅いけれど、中目黒君に助け船をだしてあげることにした。
    「何がですか?」
    「あなたも誰かにチョコレート作ってあげるのでしょう?」
    「ぼ、僕はもらう側です!!」
    「あ、女の子だと思ってたわ。」
    急に顔が真っ赤になり中目黒君は取り乱した。
    一瞬、アカちゃん並みに可愛く見えてわたしはついつい鑑賞してしまっていると今まで静かだったあの人が口を開いた。
    「おい、中目黒。お前は間違っているぞ。」
    「真義留先生いつからいらしたんですか?」

    「お前…そう、お前まで私の影が薄いというのか…だいたい私はこの学校の教師…蛍だって…巫女娘だって……最近はサリーまで……ぶつぶつぶつ。」
    真義留先生を壊してしまうなんて中目黒善貴なんて恐ろしい子…。
    中目黒君はここ一番におろおろとする。もちろん私達にはどうすることもできず、ただ見守ることにする。真義留先生に関わるのは邪の道に蛇のようなものだからだ。
    「なんでもしますから、真義留先生戻って来て下さい。」
    困りきった挙げ句、真義留先生に言ってはならないことを言ってしまった。
    「今の言葉、忘れないぞ中目黒。そうだな…欧米のバレンタインは男がプレゼントをあげるという。だから私にチョコフォンデュを食べさせろ。それと板チョコ20枚分の手作りチョコも寄越せ。」
    「そんなぁ!!」
    逆チョコを決定づけられた中目黒君の顔に絶望の色が見えた。
    この子も不憫なこのようだ。
    それと同時に先生は本当になんでもありだとみんなが肝に銘じたのは言うまでもない。
    「ちょっと!!早く作り方教えなさい。」
    中目黒君が絶望に打ちひしがれていると、アカちゃんが板チョコ片手に声を挙げた。
    その板チョコにはアカちゃんの歯形がついていた。静かにしていると思ったらこれ何だから…。
    『アカちゃん(会長さん、桜野、桜野先輩)!!』

    私たちはアカちゃんを叱ると、アカちゃんは「ごめんなさい」といい、板チョコを買い直しにいった。
    中目黒君も真義留先生のためにアカちゃんについて行った。
    「ところで、真義留先生はチョコを作らないんですか?」
    私が適当に話をふると真義留先生は、興味なさげにアカちゃんの歯形がついたチョコを口に入れる。
    「私か?私は…必要ないな。」
    「必要ないってことはねえんじゃないか?良好な職場関係を保つなら義理くらいは用意するもんだろ?」

    深夏はコピー用紙をテーブルにおき、話に参加してきた。
    「私が義理をあげた方が関係がギクシャクするだろう。なんたって私は美しすぎる。義理を本命と勘違いするような輩がでると困るしな。」
    「義理です。とか書いて渡せばいいんじゃねえか?」
    「椎名(姉)、月の生活費を削ってまで私がなぜチンケなジジイ共にあげなければいけないんだ?」
    「確かにそうだな。けど友チョコ…ほら焼き肉食べた時に一緒にいたあの人とか。」
    いつになく深夏は真義留先生に食いつく。深夏も深夏で思うことがあるのだろう。
    「私が巫女娘にか?冗談はよせ。奴は私の敵だ。」
    「何の敵か知らねえが……。って大事なもんねえじゃねえか!!」
    深夏は何かに気づき教室を飛び出した。真義留先生はその後ろ姿をみてため息をつき、深夏を追うように教室を後にした。
    私は一人になっ……
    「一人じゃないですよ。紅葉先輩!!」

    真冬ちゃんに地の文が読まれてしまうとは紅葉知弦、今世紀最大の失敗なのではないだろうか。
    「なんかとてつもなく失礼な気がしますがいいです。紅葉先輩はバレンタインに林檎さんがくると思いますか?」
    真冬ちゃんはどこか張り詰めた表情で私を見る。実際、林檎ちゃんはくるだろう。けれど、そんなに心配なことはないと思う。
    「真冬ちゃんは何か不満があるの?私は林檎ちゃんが来たって真冬ちゃんの核となるものは変わらないと思うの、だから真冬ちゃんは真冬ちゃんらしいチョコをあげればいいのじゃないかしら。」
    真冬ちゃんは可愛らしく唸りながら考え込み、名案が思いついたのか笑顔で「ありがとうございますです」と言いゲームをし始めた。
    「たっだいまあ!!」
    と元気な声を響かせ、アカちゃんが帰ってきた。なにやらチョコを買いにいっただけとは思えないほど大量の袋を手にぶら下げていた。
    「アカちゃん要らないものは買っちゃダメってあれほどいったでしょ?」
    私はそんなアカちゃんを労いの言葉をかけてあげた。
    「うん…けど…けどって必要だから買ってきたんだよ!!知弦だってわかるでしょ!!」
    「中目黒くんお疲れ様。」
    「私は何か痛い子になってない?」
    「あれ深夏さんと真義留先生は?」
    「分からないわ。多分買い物だと思うけど。」
    「ねえってば知弦!?」
    「さあ準備始めるわよ。」
    「「はーい」」
    「うえーん!!」
    アカちゃんには悪いけど作る段階までは大人しくしていてもらうことにした。
    包丁をアカちゃんに持たせたらなにが起こるか分かったものではないからだ。
    「えっと…じゃあこのプリント渡しますから分からない所があったら聞いてください。分かりやすくコメントも入れておきました。」

    「(ねえ中目黒くん?アカちゃんをちゃんと見ててくれるかしら?)」
    私はプリントを受け取り中目黒くんに声を潜めて話し掛けた。
    中目黒くんはチョコをフライパンで焼こうとしているアカちゃんを見て苦笑しながら頷いた。

    そう言えば真冬ちゃんは…まだゲームを夢中でやって居た。私は見なかったことにした。

    「まずはお湯を沸かすのね……」
    プリントにはトリュフなど様々なチョコの作り方が精細に乗っていた。
    私はプリントを一通り見て明暗を思いつき、包丁でチョコを刻み始めた。
    ……………
    作業は順調に進み、後は固めるだけだった。
    深夏はまだ帰ってきていないがこんな短時間で作れるなら大丈夫だろう。
    時間が大量に余ってしまったため、私は何か出来ないかとテーブルから離れふとあることに気がついた。
    そう、デコレーションに使うものがないことだった。今から買いに行ったんじゃ時間の余裕がない。
    私が少し焦っていると教室の扉がバーンと開いた。
    「たくっ。真義留先生が余計なことするからこんな時間経っちまったじゃねえか。」
    「それを言うなら椎名(姉) だって可愛い箱…」
    「それは言うなぁああ!!」

    深夏が紙袋を片手にやって来た。私より先に深夏が気がついて行ってくれたらしい。
    「深夏?もう私のチョコ出来ちゃうよ。深夏も早く作りなよ!!」
    「会長さんはデコレーってなんだこれ!!」
    「えっへん!!ウサマロにチョコレート塗ってみたの♪」
    チョコまみれになったアカちゃんが胸を張る。
    私はアカちゃんに抱きつき、頬についたチョコを舐める。
    「アカちゃんたら甘いわね。」
    「って知弦なにするのよ////」
    「うふふ、おいしっ。それより、それをキー君にあげるの?」
    「知弦に食べられて流された!!うん、私が一生懸命作ったんだから!!」
    「どこからどうみてもウサギじゃないわね。」
    アカちゃんの目の前には石のようなものと、ところどころ白い物が無残に置いてあった。
    「ウサマロいりなだけだからいいの!!杉崎なんかのために手間はかけないもん。」
    「アカちゃんの覚悟は浅いわね。」
    アカちゃんは涙目になり始め私から離れた。
    「そんなことないもん!!私の覚悟はすごいんだから!!」
    アカちゃんはせっかく作った石を口にいれお湯を沸かせ始めた。
    「知弦さんもデコレーションするならこれ使ってくれ。」
    「深夏偉いわね。有り難く使わせてもらうわ。」
    深夏からナッツや口金、ホワイトチョコを受け取り私は完成に取りかかった。

    「あの…中目黒先輩にお願いがあるんですがいいですか?」
    「なあに真冬ちゃん?」
    「あのですね…」


    「よっしゃあ。アタシもやるか!!」

    「んにゃ!!熱いよー」

    「私も巫女娘と…作ってやるか。」

    …………………

    「できたぁ!!」
    私達から遅れること一時間、やっとアカちゃんのチョコも出来上がった。
    アカちゃんの手にはウサギの形をした真白なチョコがあった。アカちゃんらしい可愛らしいものだ。
    ほぼ私達が作ったのは言うまでもない。
    「見なさい。この自信作を。私の覚悟の壮大さを!!」
    「はいはい、さあラッピングして早く帰るわよ。もう20分も使用時間過ぎてるんだから。」
    「少しは褒めてよ知弦ー」
    「早くしなさい。」
    「うん。」

    アカちゃんはシュンとなり、テキトウに袋の中にいれ紐を結んだ。

    ………………
    さあ、今日はバレンタインだ。きっとハーレムメンバーからチョコが貰えるだろう。
    俺としてはチョコフォンデュしながら「私をた・べ・て♪」なんて会長に言われたいんだが、それは同棲初めてからにとっておいて欲しいとかおもっちゃってたり。
    そんなことよりまずはげた箱だ。
    学校についた。げた箱が目に入る。ほらすぐそこだ!!
    いざ、オープン!!
    「あれ?」
    俺はアホな声を出し、もう一度げた箱を確認した。
    なぜだろう上靴しかないように見える。
    あ、そうか。直接渡してくれるのか。
    なんて健気な女の子たちなんだろう。
    放課後を楽しみにしながら、教室に向かった。

    「杉崎くんおはろう。」
    「おう、中目黒。なに食べてんだ?」
    中目黒が頬に何かを溜めている。まさかあれは…
    「深夏はんからほらったチョホだよ。」
    「なんですとー!!」
    「よお、鍵。朝からうるせーぞ。」
    俺が中目黒の胸ぐらを掴み事情を聞き出そうとした時、深夏と巡、それにチョコを頬張りながら泣いている守が入って来た。
    「おい深夏!!俺に渡すものがあるだろ?」
    「は?お前にか?特にないが…おう、あるあるとうとう着てくれるのか!!」
    深夏は廊下のロッカーに向かった。着てくれるか?チョコじゃなくてセーターか?
    「とうとうお前にこれを託す時がきたのか…思い切って渡すぞ?今日から碧陽学園に番長誕生だ!!」

    バサッと広げたものには世露死苦やら喧嘩上等やら刺繍があって……

    「まだ諦めてないのかよ。てかいつ作ったんだよこんなもん!!」
    「いつでも音吹高校に乗り込めるように夜なべで紡いだかいがあったってもんだぜ。」
    見るからに業者が施した刺繍なのはこの際置いとこう。まず言うことがある。
    「俺のチョコはどうしたぁ!!!!!」
    「チョコの代わりにこれがプレゼントだ。受け取ってくれ!!」
    黙っていた深夏の控え、もとい中目黒達がこぞって俺に励ましの言葉を送り始めた。
    「杉崎くん…頑張って。」
    「杉崎、お前のことは忘れないぜ。」
    「負けんじゃないわよ。杉崎!!」
    「行くワケねえだろ!!」
    深夏から特攻服を奪い、床にたたきつけた。
    「チッ、ホワイトデイには音吹の番長の首が欲しかったんだけどな。」
    「うっせえよ!!」
    深夏は丁寧に特攻服をひろいロッカーに戻しに行った。てかまだ鍵盤連合作ろうとしてるのか。
    「杉崎は深夏からチョコ貰えなかったのか。」
    守が哀れむかのようにア●ロを口に入れた。
    「おい、守どういうことだ?」
    「これ深夏からのチョコ。」
    アポ●を掲げ見せた。
    「アンタは俺が討つんだ!!今日ここで!!」
    俺は守に襲いかかり、●ポロ必死に奪おうとした。しかし守は袋を逆さまにし自分の口にア●ロを全部流し込んだ。
    「杉崎。死ぬほどうまいぜ。」
    勝ち誇ったような目を守は俺に向ける。
    「アンタって人は!!!」
    俺は机に突っ伏し泣きわめいた。
    「元気だしなさいよ杉崎。自分だけ深夏からチョコ貰えなかったからってなによ。ほらチョコならあげるから。」
    「め、巡…」
    「なによ?」
    「深夏のチョコか?」
    「違うわよ。私が作ってあげたチョコよ。」
    お世辞にも綺麗とはいえない残骸が袋の中にこれでもかと詰まっていた。
    「中目黒…俺は死ぬかもしれない……」
    「杉崎くん…頑張れ」
    「ちょっとどういう事よ!!」

    巡にズタズタにされ、毒物を食べさせられた俺は……もうバレンタインが嫌いになりかけていた。そうだ!!血のバレンタ…これ以上意識が保てそうになかった。
    ………………

    放課後。
    ダルい体を引きずりながら生徒会室に向かっていると、生徒会室前にはリリシアさんがいた。
    「待ってましたわ、杉崎鍵。」
    「はあ、どうしてですか?」
    「貴方に持って言ってほしいとエリスから懇願されましたの。私は杉崎鍵なんかに渡すくらいならホームレスにあげなさいと何回も言って聞かせましたのに……貴方エリスに何をしたんですの??」
    「色々言いたいことはありますが……何もしていないですよ?」
    「そうですの、ならいいのですが…杉崎鍵の口にはクッキーが合えばいいと思いますわ。それじゃあお返しは100倍返しをエリスは期待していると言って私はおいとまさせてもらいますわ。」
    リリシアさんは少し頬を赤くさせると、背を向け新聞部へ向かった。
    「リリシアさん、ありがとうございます。」
    「貴方は何を言っていますの ///。私は貴方にチョコをあげてないですのよ!!」
    「そうでしたね。エリスちゃんに伝えておいてください。お返しはちゃんとしますね。」
    「エリスが期待していますので、がっかりさせないでくださいまし。それでわ。おーほっほっほっほ。」
    リリシアさんを見おくり、ハーレムメンバーが待つだろうドアを開けた。
    「みんな!!早くチョコを俺にあげなくていいのかな?あ、あれ?」
    ドアをあげると、生徒会室は蛻の殻だった。まだみんな忙しいんだよね。
    一人で雑務を片付けながら待っていると来なくていい人がやって来るもんだ。
    「なんだ、杉崎一人か。」
    真義留先生がやって来た。今日はどんな厄介ごとに巻き込むつもりだろうか。
    「おい、今日の私はいつもと違い天使のつもりだぞ?」
    「何を言ってるんですか。と言うか何時もは悪魔だと自覚してるのかよ、あなたは。」
    「そうだな。何時もはどの様に杉崎を料理してやろうかそればかり考えている。私の頭の中は杉崎…お前だけだ。」
    俯き顔を赤らめて真義留先生が告げた。
    「あの…、端から見たら真義留先生フラグが立ったように見えますが、ただ弄びたいだけですよね!?それ!!」
    俺の顔を見つめる真義留先生…顔が近づく。え?急展開?まさかの真義留先生end?そんな?そんな危ない関係に……

    「たーのしっ♪」
    真義留先生はそういい、席を立った。
    どういうことだ?これは……。
    「真義留先生…?」
    「お前の言いたいことは分かる。まあ聞け。読むぞ?
    突然のお手紙と小包申し訳御座いません。この度は「生徒会の二心」を読み真義留紗鳥様と言う方に深く感銘を受け、疼く気持ちを書かせていただきました。率直に言わせていただきます。私の代わりにケンを弄んであげて下さい。その時は以下の手順で…………。後、早る14日に小包を与えて下さい。その時は懇願したらあげて下さい。それでは真義留様のさらなるご活躍を願い、この辺でペンを置かせていただきます。ps、ケンには伝えないで欲しいのですが、全ては貴方にお任せします。松原飛鳥より。
    と言うことだ。後チョコは私が美味しく食べたからないぞ。」
    真義留先生は手紙を俺の前に置いた。見慣れた文字が文字を見ながら俺は感動に震え、それを言葉にしてみた。
    「あの女はなにしてんだあああ!!!」
    「私を敬って居るだけだろう。」
    「知らないですから!!て言うかどうしてチョコ食べちゃったんですか!!」
    「それはな……」
    「それは?」
    「単に私が甘いものに目がないからだ。」
    「どうでもいいわ!!」
    「そうだな。杉崎の存在よりどうでもいいことだな。」
    「あっさり俺の存在を否定しないで下さい。」
    「…………てへ。」
    「ドジっこじゃないから、先生のは確信犯だから!!そこまで棒読みなてへを初めて聞きましたよ!!」
    「まあ、そう言うことだ。帰りは教室の机を調べたら、隠しアイテムが見つかるかもしれないな。それじゃあな。屋上にいますぐ行け。」
    「どういうことですか!!カビ生えたパンと悪意が詰まってそうですね。」
    真義留先生の去り際の言葉に俺は屋上を見ると誰かいるみたいだった。まさかな…。何か危うさを感じ生徒会室を飛び出した。

    「早まるな!!」
    俺は屋上のドアをあげるとともに叫んだ。今日はこればっかりな気がするのは気のせいだろうか。
    「杉崎先輩待ってましたです。」
    「真冬ちゃん?」
    「はい、真冬です。杉崎先輩…このSS真冬のターンが少ないと思いませんか?」
    真冬ちゃんは何かさらりともの凄いことを言った。別に真冬が書けないとかじゃないんだから!!
    「は?今のは?そんなことより真冬ちゃん久しぶり。」
    「ずっといました!!むしろ先輩より描写されるべきです!!影が薄い的なことは二回目ですよ先輩。」
    また痛いところを抉る真冬ちゃん。この子の破壊力は侮れない。改めて俺は思う。
    「そんなこと知らないよ!!それより今日の生徒会は?」
    「知って下さいです。真冬だけなんですよ。杉崎先輩に告白したのは。真冬フラグ立ってるんですから早く攻略してほしいです。」
    真冬ちゃんの勢いに押され、黙ってしまう。真冬ちゃんは待って居たのだろうか…。
    「余りにも遅いんで真冬は考えたました。フラグを分かり安くしようすようと思う…です。」
    真冬ちゃんは後ろに組んでいた手を差し出した。
    そこには彼女らしい白い包装紙に包まれた箱があった。
    「真冬ちゃん…」
    「ハッピーバレンタインです。先輩。」
    真冬ちゃんは笑顔で俺を見つめた。
    俺はそれを受け取り包装紙から箱を取り出し、開けた。
    「これは?」
    「糸付き飴ならぬ糸付きチョコです。」
    様々な可愛らしいチョコに茶色がかった細いものが伸びていた。多分何かにチョコを付けたのだろう。
    一本の糸をとり口に加えた。

    「味はどうですか?」
    当然おいしかった。なんせ真冬ちゃんの手作りが不味いワケない。
    「おいしいよ。ありがとうって髪の毛?」
    「気づきました?中目黒先輩のです。先輩が口に含み中目黒先輩の……をなめる姿……ご飯三杯いけます!!」
    俺はせっかくの真冬ちゃんのチョコを吐き出した。
    「気持ちわるっ。ごめん真冬ちゃん…気分悪くなった……」
    「あっ、他のはイカそうめんなんで食べて下さい。次は保健室です。先輩」
    真冬ちゃんはコーヒーを差し出し、微笑んで階段へと向かった。俺は真冬ちゃんの後ろ姿を見送りながら新しいチョコを口に入れる。とても甘いチョコとイカのしょっぱさが絶妙に混じり合ったそれは優しく儚い味に思えた。

    「知弦さんお待たせしました。」
    窓辺に座り薄暗くなった空を眺める美人が振り向いた。
    「別にいいわよ。待つ間に恋する乙女は綺麗になるのよ。キー君こっちに来て。」
    知弦さんのもとに行くと、知弦さんは物憂げにベッドを眺める。
    「確かここで初めて会いましたね。」
    「そうね。あの時と私達はだいぶ変わったわね。」
    俺はベッドに座り知弦さんと目を合わせた。
    「これも知弦さん…いえ、生徒会のみんなが居てくれたからです。」
    「キー君は優しいわね。私はキー君が居てくれたから…前を向けたわ。だからお礼に受け取って。」
    柔らかな赤色の袋を受け取る。
    「食べていいですか?」
    「ええ、初めてにしては美味しいと思うのだけれど……」
    袋を開けるとそこにはハート型の大きなチョコに「I like you」と書いてあった。
    その言葉はきっと…。気をつけて取り出しチョコをかじった。
    「どお?」
    カカオの香りが口の中に広がり、仄かな甘味を苦さが引き立てる。やっぱりビターな大人な味だった。
    「もちろん美味しいです。知弦さんの手作りチョコ。」
    「キー君に初めてを奪われるなんて思わなかったわ。」
    「何か、奪ってもない物を奪った気がするのは俺だけですか?」
    「ふふ…どうかしらね。ひょっとすると……ふふ…。キー君次は廊下…わかるかしら?」
    「大丈夫です。行ってきます。」
    「ええ、私は帰るわね。気をつけてねキー君。」

    俺は保健室を出て行った。

    続く
    「お前はここか。」

    壁により掛かり腕組みをした深夏が俺をみた。
    「おせーよ。ほらチョコだ。欲しかったんだろ?」
    水色の箱が宙に浮かび俺の手の中に収まった。
    「俺にもア●ロなのか?俺ア●ロ好きなんだよなぁ。」
    「ア ●ロが良かったのか?ならそれ返せ。一応あたしの…手作りなんだから。」

    小さな声で呟いた声は静けさに満たされた廊下に響く。
    「深夏の手作りかよ。ちゃんと食えんのか?」
    「てめえ!!それを作った人に言うとか最低だな!!」
    殴るかかろうとする深夏を宥め、俺は深夏に確認する。
    「鍵盤連合のゴロ入りじゃないよな?」
    「ちげえよ。トリュフだ。まあまあな出来のはずだから味わって食えよ。次は生徒会室だぜ」
    「ありがとな深夏。」
    「うるせえよ!!早く行けってんだよ。」
    顔を真っ赤にする深夏に追撃を与えてみよう。茹で蛸が茹でガニになりそうだ。
    「愛してるぜ深夏。」
    「お前を殺して私は生きる!!」
    「やめろおおお!!」

    ふう。危なかった。恥ずかしさで壊れた深夏の戦闘力はスカ●ターを持ってしても計れないだろう。肋にひびが入ってるかもしれない。ってより飛び膝蹴りが上から降ってくるってあり得ないだろ。
    生徒会室前までつくと、俺は深呼吸する。いよいよ会長の出番なのだから。
    扉を開けると汐らしく座っている会長がいた。
    「杉崎……。」
    「会長、ちょっと用事がありまして、今日の会議遅れてしまいました。すいません。」
    「いいよ。それより早く席に座りなさい。」
    言われるままに席に着くのを確認し、会長が立ち上がった。
    「バレンタインはお菓子会社の陰謀なのよ!!」

    モテない主人公にありがちな名言を会長はない胸を張り言った。え、この流れでチョコなしなの?
    「だから欧米のバレンタインでいくよ。杉崎受け取りなさい、それで私の気持ちに答えなさい。」
    会長は透明な袋を俺に…
    「なんで、なんで割れてるのよ!!」
    多分ウサギの形なんだろう。それが無惨にも両耳が割れ、白いチョコの間から白い何かが見えて居るものが入っていて、せっかくの手作りが台無しだった。
    「なんで、なんで。ヒック、ヒック、うええん。」
    会長の目から大粒の涙が溢れだす。
    しかし俺は袋をじっと見て、手に取り中のチョコを口に含んだ。
    「会長、会長の手作り美味しいです。本当にありがとうございます。」
    どこまでも甘いチョコのように会長を引き寄せ、頭を撫でながら抱きしめた。
    今の俺は何の甘さを味わって居るのか分からなかった。
    「杉崎…今までありがと。」
    「会長たちがいたから、俺は頑張れたんです。」
    俺の目を見つめる会長。なんて凄まじい破壊力なんだ。今日の日のためにわざわざエロ5割引にした俺の精神があああ!!
    「お礼に…チューくらいなら……。」
    「会長… はあはあ、会長……。」
    「杉崎どうしたのよ。いきなり!!」
    やべえ、もう俺は自分を抑えられなくなりそうだ。
    「す、杉崎。何かお腹にあ、当たってるわよ。」
    恐る恐る下をみた会長。そこにはチョコの甘さにやられた俺がいた。
    「俺のチョコバー食べ…」
    「いい、やああああああ!!」
    碧陽学園に今世紀最大の悲鳴が木霊した。
    「「アカちゃん(会長さん)!!」」
    悲鳴を聞きつけたのか、生徒会役員全員集合♪時計は6時なんだけどなぁ。

    「おい、鍵。てめえは何をしているんだ?」
    元気になっている俺を一瞥し、深夏が指を鳴らしながら近付いてきた。
    「深夏落ち着け!!これは生理現象であって、不可抗力なんだ。」
    「言いたいことはそれだけか?」
    「おい、なんだその雑魚キャラと敵最強キャラが戦った時のセリフは!!」
    「鍵は何時だって雑魚キャラだ。死ね!!」
    深夏の右ストレートが顔面に迫りくる。今まで楽しかった景色が浮かぶ。ああ、走馬灯ってヤツか。
    「あれ?ぎゃやあああああ!!」
    走馬灯を見ていると、深夏の右ストレートが紙一重で止まり、元気な俺に渾身の蹴りが炸裂したのだった。

    キー君が泡を吐きながら気絶する様をみた私は悦に浸っていた。アカちゃんのチョコの中に、こっそり媚薬を入れて正解だったみたいだ。
    「みんな、こんな変態置いてさっさと帰るわよ。」
    「そうですね。真冬も今の杉崎先輩を踏んでやりたい気分です。」
    「真冬ちゃんやっちゃって大丈夫!!私が許すわ。」
    「はいです。」
    真冬ちゃんは机に乗り、そこからキー君目掛け飛んだ。膝を曲げ舞う姿は天使のように慈悲深いようだった。
    「げふっ!!」
    膝が当たったキー君はそのまま天使によって、あちらの世界に召されたのだった。


    「もしもし、巫女娘か?なんだその不満そうな声は。せっかく私がお前にプレゼントをやろうと言うのに。そうだ、チョコだ。どうせお前はあげる人いないだろ?陽慈にあげるのか。悪いことは言わないやめておけ。じゃあ来週そっちにいく。帰宅部の奴らによろしくな。」

    ある書記による立ち聞きを最後にのせてみました。

    ………
    同じ頃、俺は真っ暗な生徒会室で目を覚ました。
    「痛た少しは手加減してくれよ。って会長のチョコ食べたら体が火照ったなぁ……なにいれたんだか。」
    テーブルの上に置いてあるチョコの袋を結び直し、鞄の中にいれ教室に向かった。
    真義留先生曰わく何かあるらしい。
    教室につき電気をつけると俺の机の上にはチョコが置いてあった。てか剥き出しでかなり大きい。20枚くらい使ってるのではないだろうか。
    そのチョコの横に真義留先生からの書き置きがあった。
    「喜べ。私からのチョコだ。味わってたべるといい。」
    他の二つにはbyRINGO、byASUKAとメモがあった。
    俺は林檎からの箱を開けると中には、カルピスの瓶と手紙が入っていた。どうして林檎は事あるごとにカルピスなんだろう。しっかり教育し直す時なのかもしれない。
    「お兄ちゃん、今日はお菓子会社の陰謀の日だよ。だから林檎はお兄ちゃんにカルピスを送ります。飛鳥お姉ちゃんはハムにしろって言ってたけど、林檎はお兄ちゃんにカルピスを飲んでほしくて送りました。それでは入院しても見舞いに行かねえよ。また遊べることを楽しみにしています。林檎」
    うん、また新しい語彙が増えたことだけは激しくわかった。多分今しかないだろう。林檎を助けるには。

    次に飛鳥の手紙を読むことにした。手紙には何か栓らしきものがされていたのでそれを取る。
    「うっ…なんだこれ。」
    プシュッと言う音とともに何かが吹き出しアンモニア以上の腐臭が広がった。
    「ヤバい!!窓、窓。」
    手遅れに近いが窓を前回にし、教室には冷たすぎる2月の風が吹き込んだ。

    「ケン久しぶり!!今ケンは寒さに震えていると思うと、…たーのしっ♪」
    「うぜえ。何でわかんだよ。」

    「何でわかんだよって言ったケンにだけ、特別に箱の中身を教えちゃう優しい飛鳥ちゃんに感謝して敬いなさい。」

    「できるかあ!!てか確信犯過ぎて笑えないし」
    「ケン、いくら寂しいからって手紙にツッコンでばかりじゃだめだぞ!!では箱の中身を発表します。ドキドキ、ドキドキ。箱の中身はチョコじゃないよ。」
    「んなことわかるわ!!」
    「ケンもまだまだ甘いなぁ。私はあける前に気がつくと期待してた犬と同じ生活をしてた貴方には……」
    「どんな記憶を捏造してんだよ。」
    「たーのしっ♪箱の中身はシュールストレイミングだよ。部屋の中じゃ開けちゃだめだからね。飛鳥より。」

    「あの魔女が!!」

    「ps、魚の身をかき分けると、密閉容器に入ってる手作りチョコが入ってるから食べなさいよ。お返しは温泉旅行がいいな。」
    腐臭を放ち続ける箱を見てため息をつき、俺はとりあえず持って帰ることにした。
    お返しは大変だと寒空の下、財布を見ながら思ったのだった。

    true end

最終更新:2010年04月06日 21:15