「ケン、私だけを見て。アンタが私だけを見てくれないと、私は、幸せに、なれない」
そういわれて、俺は混乱してしまった。
飛鳥に告白されたのは嬉しい。だけど、幸せにできない。
俺は、大切な人に順番を付けることはもうしないと決めたからだ。
彼女だけを見て、会長を、知弦さんを、深夏を、真冬ちゃんを、林檎を切り離したくない。
だけど、彼女たちを全員見て、飛鳥にまた辛いおもいをさせたくない。
ちくしょう、なんで俺は飛鳥と一緒に旅行に出かけたんだよ。
そうしたらこんな辛い選択をしないで済んだのに。
「ケン、どうしたの?もしかしてのぼせちゃった?」
女風呂では飛鳥が心配そうな声で俺のことを呼んでいる。
どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?
どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?
どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?
どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?
どうしたらいいんだよオオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!
「...帰る」
「え?ちょっとケン、どうしたの?」
「飛鳥、こればかりは止めないでくれ。俺に考えさせる時間をくれ」
俺はそう告げると、急いで服を着て旅館から出た。
幸い、特急列車はまだ運行していたから、俺はそれに急いで乗った。
(アンタにハーレムは、作れないよ)
飛鳥のその言葉が脳内中に響き渡っている。
俺は、大切な人を全員幸せにすると決めていた。でも、そうしたら飛鳥が幸せにならない。
じゃあ、飛鳥を見捨てる?そんなの無理だ。俺はもう、2年前の悲劇を起こしたくない。
何より、彼女をもう二度と傷つけたくない。
じゃあ、生徒会と林檎を切り捨てる?それも無理だ。一年間育んできた絆を絶対に切り捨てた
くない。
そして、林檎を悲しませることはもう、したくない。
どっちかを選んで、どっちかを捨てる。また、俺に2年前のことをさせる気なのか?
気がついたら朝になっていた。朝日が凄く眩しく、俺を嘲笑うかのように、小鳥たちは鳴いていた。;午後になって、卒業式が始まろうとした。だけど、俺はまだ悩んでいる。
でも、今は悩まない方がいい。この生徒会で過ごせる最後の日だから。
「なにしてたんだよ鍵!心配したぞおい!」
「ごめん、心配かけて」
「一晩もどこに行ったんだよ?」
「飛鳥とちょっと旅行にいってただけだ。心配するな、変なことはしてないぞ!」
自分なりに元気を出してみた。けど、やっぱりいつもの俺と違っている。
せっかく、生徒会メンバーと過ごせる最後の機会なのになんで元気ださねえんだよ俺。
深夏は勘が鋭いのか、俺が元気ねえことに気がついた。
「どうした鍵、元気ねえぞおい。あ、もしかしてその飛鳥と喧嘩したとか?」
「いや、違うんだ。...ごめん、今はほっといてくれ。」
「なんだよ、人が心配してんのに!」
「ほっといてくれって言ってんだろ!!」
俺は自分でもびっくりするくらい大きな声で深夏を怒鳴った。
「ご、ごめん...」
「俺こそごめん。いきなり怒鳴って」
俺はすぐにその場から逃げた。
サイテーだな俺。自分のハーレムメンバーに意味もなく怒鳴りつけるとは...
俺は今、かなりきているのかもしれない。
飛鳥を選ぶか、飛鳥を見捨てるか。俺はどっちを選べばいいんだ?
もうハーレムをどうとかを言ってられなくなった。
どちらを選んでも、どちらかは傷ついてしまう。少なくとも林檎と飛鳥のどちらかが傷つく。
ちくしょう、これじゃあ2年前と一緒じゃないか!
「杉崎、なにしてるこんなのところで。ていうか、今までどこにいたのよ!?」
「会長...」
俺は反射的に会長の目を逸らした。今、彼女を見てしまうと俺の心が痛むから。
「まあ、そんなことは後でもいいわ。もうすぐ卒業式が始まるから早く行きましょ!」
「は、はい...」
そうだな、もうすぐ卒業式だ。せめて笑って送らないとな。
でも、会長は鋭かった。
「どうしたの杉崎?悩み事?」
やめてください会長。今はやさしくするのは、やめて...ください.....
「なんの悩みかは知らないけど、これでも食べて元気を出しなさい!」
差し出されたのは会長がいつも食べているうさまろだった。
無理だ、俺は飛鳥を見捨てるのも、会長達を切り捨てるのも無理だった。
例え、ハーレムを作るのが自傷行為だったとしても、この生徒会メンバーを切り捨てるのは無理だ。
俺はいつの間にか、涙を流していた。
「ちょっ、どうしたの杉崎!何で泣いてるの!?」
「失礼します!」
俺は全力で走った。どこへいけばいいか分からないけど、全力で走った。
もうこれ以上傷つきたくない、悩みたくない、もう何もかもいやだ。
いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!
いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!
もういやだアアアアアァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!
俺はいつの間にか屋上についていた。まるで、俺を誘うかのように。
「もう苦しむのは、つかれたよ...」
会長、知弦さん、深夏、真冬ちゃん、林檎、そして飛鳥.....
「ごめんな...」
そして、俺は、身を、投げた
杉崎鍵のお葬式は静かに行った。
誰一人泣いてなかった。だが、全員目の周りが赤くなっている。
だが、一人遅れてきた松原飛鳥は違った。
杉崎鍵の棺桶を見てから様子が変わった。
「何やってんのケン?ねえ早く起きてよ?一緒に遊ぼうよ?今度は囲碁でもやろっか。
だから、早く起きてよ?あんまりふざけると、私も怒るよ?ねえケン?起きてよ?アハハ!
アハハハハハハハ!!!!!」
「飛鳥お姉ちゃんやめて!もうやめて!!」
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!
何で、私は、生きているのですか?
END