彼らの道に宿はない。
あれからまだ、彼は歩く。
「異世界の果て」-後日談-
彼は歩いていた。砂まみれの町を。
血をかぶった頬はなお紅く紅潮し、足元は赤く。朱のついた煙草をふかしながら。
あれから3年。未だに彼は黒き城・チェルノボグを倒せない。
そして今日、また挑みにいくのだ。たった一人で。
彼は空を仰ぎ、遠く離れた異世界に思いを馳せる。
たしか帰るときも、雲一つない空だった事を思い出した。
「ハルシャード、ハルシャード!」
かつて異世界で「ハシュルド・マルセイユ」を名乗った、紺の髪に金色の目をした男は振り返る。
前よりも目つきは幾分か穏やかになった。その代わり傷は沢山ついた、前よりも、沢山。服装も幾分か変わり、今は真っ黒だ。
彼の相棒のウテナは、鮮やかなポピーレッドのワンピースを揺らしながら、手を振っている。
彼女はもちろん、彼の戦いには干渉しない。彼の「足」となるだけだ。
「・・・あれからちょうど3年か。」
「今でも信じられないね・・・夢みたい。」
それをきくと、彼はふっ、と笑った。
「夢なんだろ?・・・現実っていう名の、な。」
ウテナは黙って微笑んだ。
異世界での出来事は、アレは夢かもしれないほど、恐ろしく充実していた。
様々な人に出会った、しゃべった、助けられた。その一つ一つが恐ろしいほどに覚えていても、夢だったかも知れないと思えた。
ただ、これは夢ではないといえることがあった。
「・・・元気にしてるかな、あいつ。」
「またあの人?・・・大丈夫だよ。」
そうだな、と彼は自分に言い聞かせるようにつぶやく。
異世界の「彼女」は、恐ろしく自分によく似ていた。夢の中で闘った記憶がくっきりと思い出される。
アレはもしかしたら・・・と思ったところで、彼は考えるのを止めた。
地面が、ずしりとゆがんだからだ。
「・・・いくか?」
「うん!」
そのとき、ふいに涼しい風が吹いた。
彼が目を閉じた、その一瞬に「彼女」が彼の横を通り抜けたきがした。
慌てて彼が振り向いても、居ない。当たり前ではあったが。
「ハッちゃん?」
「・・・ははっ」
居たらよかったのに、とおもった自分を彼は嘲笑った。大きなガトリングを担いで、彼は世界を滅ぼす、黒い城へと歩いていく。
狗は荒野を歩く。
異世界の、滅びに向かう世界の最果てで。
END