著:3スレ目>>775殿



永禄三年八月。「越後の龍」こと長尾景虎は上杉憲政を擁して関東に出陣した。
越軍は上野に入るや否や北条方の諸城を抜き関東の諸将を引き連れて小田原城を攻めた。
しかし、堅城小田原城は落ちることなく、政虎は北条を攻めきることができなかった。
一方、鶴岡八幡宮で姓を関東管領の「上杉」、上杉政虎と名を変え、永禄四年の春にようやく
越後へ戻ってきた。この長い戦いで政虎の勢力範囲は上野と武蔵北部にまで至った。
 その間、信濃の支配権を完全なものにしたい信玄は、川中島で山本道鬼斎に海津城を普請させ、
城代には高坂弾正が入っていた・・・



(’ー’*)「・・・・」
従侍「どうされました?」
(’ー’*)「政虎が近いうちにこの信濃を切り取るために兵を出すかもしれぬ」
従侍「政虎が、でございますか?しかし越軍は昨年からあれほどの大遠征を行っており越兵は相当疲れているとのことにございますが」
(’ー’*)「いや、あの男はこの川中島に城を築かれたことで激怒しておろう。それにあの男は常識ではおよそ考えもつかないことをやってのける。稲刈りの時期も近い。掠奪も兼ねて大掛かりな軍勢を差し向けることは十分に考えられる。」

昌信は、かつてこの信濃に兵を出し幾度も武田を苦しめ、荒らしまわった政虎のことを考えると冷や汗をかいていることに気づいた。そして、その危惧はすぐに現実のものとなった。

 伝令「申し上げます!越軍、春日山を発しこの信濃を目指している模様。その数およそ一万数千かと。」
(’ー’*)「あい、わかった。すぐに甲府の御屋形様に知らせねばなるまい。狼煙で本国へ知らせよ。
それからより詳しい情報が透破より入り次第早馬を出せ。(・・しかし一万を超えるほどの兵を出すのはこれが初めて。
政虎め、此度の戦で雌雄を決するつもりか。)」
越軍来襲の報は狼煙台によって葛尾、杖突峠と次々と引き継がれてわずか二時間後には
甲府に届いたという。信玄は諸将を集めた。



(´∀` (彡信玄「皆心して聞け。政虎が兵を出した。」
諸将はさして驚きの表情を見せていない。政虎の来襲は予想の範囲内なのだろう。
虎昌 (`メω・)「やはり出てきましたか。していかほどの軍勢を差し向けてきましたか?」
(´∀` (彡信玄「・・一万八千じゃ。これまでとは違ってかなりの人数を引き連れておる」
その数を聞いた時に場の緊張感が増し、諸将は政虎が今回の戦にかけている想いを読み取った。



信茂 (-@∀@)「一万八千ともなるとこれまでの戦と同じようには行きますまい」
(´∀` (彡信玄「うむ。それほどの大軍ならば鋭鋒を避け続けることも難しいかもしれん」
信繁 ヽ(´ー`)ノ「となると乾坤一擲の大戦を仕掛けることも?」
(´∀` (彡信玄「いや、既に信濃の九割は武田のものじゃ。信越国境の城も
小谷は落とし、割が岳も破却しておる。無理に正面から当たりたくない。」
昌豊 ( ^ω^)「しかしぐずぐずしていては海津城を越軍に奪われますお」
(´∀` (彡信玄「その心配は要らぬ。何せあの城は北信を押さえるに相応しい
城にするために道鬼斎が心血を注いで作った城じゃ。そうであろう?」
勘助 (メД゚)「その通りにございます。あの城は千曲川がそのまま堀の役割を担っており
越軍ごときに簡単に落とされるようなものではござらん。」
昌景 (`・ω・´)「ということは後巻に出て越軍の背後を脅かせば・・・」
信春 彡`Д´ミ「政虎は兵を退かざるをえない、というわけですな。」
(´∀` (彡信玄「うむ。全て思い通りにいくとは思えぬがそれが最善の策であろうな。
すぐに陣触れを出せ。目指すは海津を囲むであろう政虎の首よ!」

こうして十六日には一万を超える軍が甲府を出発した。しかし、十五日に既に信越国境を越え
善光寺に着陣した政虎は武田の誰もが予想だにしない行動をとっていた。



<八月十五日>
政虎 < ノ ゚∀゚)彡「よし、全軍無事に到着したな。
これより荷駄隊と後詰五千を残し残りの兵で犀川を渡る!」

越軍は足軽から重臣達まで皆海津城を囲むものと思っていた。しかし政虎は犀川を渡った軍勢に更に千曲川を渡るように命じた。

直江実綱(@盆@)「御館様!」

政虎 < ノ ゚∀゚)彡「ん?」

実綱(@盆@)何故海津城を攻めないのでございますか。あの城はこのあたり
一帯を押さえるのに重要な城にございまする。」

政虎 < ノ ゚∀゚)彡「いや、あの城は軒猿の報告によるとそう簡単に落とせる城ではないようだ。
何より時間をかけていると信玄坊主に背後を脅かされる。だからこそあの山に登るのだ」

柿崎景家(大`д´蕪)「しかし敵地に深く入りすぎているのでは・・・」

猛将柿崎景家や、政虎のブレーンとも言える直江実綱までも呆気にとられる今回の政虎の行動。
当然武田方にとっても全くの予想外の状況で、その行動の意味はまだ政虎のみぞ知るところであった・・・



甲府を発した武田軍は西上野、信濃の各地からの兵を合わせて既に二万近い数に達して
いた。信玄は行軍を急かせることなくじりじりと佐久まで進軍していた。

信玄ミ) ´∀`)「今年もそろそろ稲刈りの時期じゃの。今年はどうかのう?」

信繁 ヽ(´ー`)ノ「永禄に元号が変わってからは飢饉が続いておりましたが今年はどうにか

信玄ミ) ´∀`)「ならば尚更政虎にこの信濃の地を荒らされるわけにはいかんな」

伝令「申し上げます。越軍、千曲川を渡り妻女山に陣を張っている模様」

信玄ミ) ´∀`)信繁 ヽ(´ー`)ノ「!!」

信玄ミ) ´∀`)「御苦労。引き続き越軍の動向を探ってくれ」

伝令「ははっ!」

信玄ミ) ´∀`)「(妻女山だと!?あの辺りは奴にとっては敵地の奥深く。何を考えているのか相変わらず読めぬ男よ。)・・・隼人佑を呼べ!」

ここで信玄は全幅の信頼を置いている原昌胤を呼んだ。



昌胤{´昌`}「どうされました?御屋形様」

信玄ミ) ´∀`)「うむ。政虎はどうやら海津城ではなく妻女山に陣取ったらしい」

昌胤{´昌`}「そりゃまことでございますか」

信玄ミ) ´∀`)「そうだ。そこで越軍の出方を見てとれる場所はないか。」

昌胤{´昌`}「・・ならば茶臼山が良いかと存じます。」

信玄は即断した。千曲川と犀川に挟まれた八幡原の西方の茶臼山なら越軍の退路を断つ
ことになり善光寺からの越軍の補給路も断てるからである。二十四日、武田軍は茶臼山に
陣取った。



しかし越軍は動く様子を見せない。忍びを放っても大した情報は得られない。

昌景(`・ω・´)「御屋形様。既に対陣して六日になりまする。何故に政虎は動かないのでございましょう。」

信玄ミ) ´∀`)「分からん。挑発行為も行ってみたが全く効果はない。」

義信 ミ・A・ミ「さればこちらから攻めたててはいかがでござろう。」

信春 彡`Д´ミ「しかし越軍を攻めるとなれば千曲川を渡らねばならず、坂上からの強襲を受ければ
御味方が崩れる恐れがございまする」

義信 ミ・A・ミ「なんの越軍ごとき。この義信が見事大将首を取ってくれよう!」

信玄ミ) ´∀`)「落ち着かぬか義信。ともあれこの状況で野営していても兵の士気は
下がる一方じゃ。どうしたものかのう。」



信君 ('A`)y- 「・・・・・・」

昌豊 ( ^ω^)「ならば兵を海津城に入れてはいかがでございますか?」

昌景(`・ω・´)「それがしも賛成にございます。士気が下がっているのは越軍も同じでございます。いずれ向こうから兵を退くのは必定かと。」

信玄ミ) ´∀`)「よし!全軍を海津へ入れよ。越軍が山を下って横槍を入れてくる可能性もある。千曲川の岸にも人を詰め、横槍に備えよ。」

武田軍は二十九日行動を開始した。それを山上で見ていた越軍の陣中では下山する意見が飛び交った。


10
実綱(@盆@)「御館様、敵は八幡原を行軍中でございます。今こそ仕掛ける好機にございます!」

景家(大`д´蕪)「某に先鋒を申しつけ下さい。信玄入道が首、必ずやとってまいりましょうぞ。」

妻女山に陣を敷いてからというもの政虎は琵琶を心地よさそうに奏でるだけで全く打って出る気配はない。
野営していることもあり兵の士気も下がる。兵糧も少なく心許ない。
越軍陣中では将兵の間に不満の声が上がっていた。その状況で武田方が動いたのである。しかし政虎は笑みを浮かべながら

政虎 < ノ ゚∀゚)彡「今ここで襲い掛かってみろ。奴らはただ慌てて城に逃げ込むのみよ。」

実綱(@盆@)「しかし」

政虎 < ノ ゚∀゚)彡「よいか、今回の戦は信玄の首を挙げねば意味がない。これまで幾度もこの地に兵を出した
が奴は俺がいない間にこの地を侵食し、俺が出てくればのらりくらりとはぐらかされて
結局善光寺平一帯は奴のものになっている。ここで敵を一蹴しても信玄が生きていれば
意味がないのだ。」

景家(大`д´蕪)「・・・・」

政虎 < ノ ゚∀゚)彡「それに今山を降りても川を渡るところを弓や鉄砲の的にされるだけよ。
今回甲軍が動いたのもこちらとできるだけ戦いたくないことの表れだ。
しかし、いずれはこちらと正面から当たらなければならないのだ。それまで鋭気を養え。」

政虎がそう言うと軍議は終わった。「いずれ武田と正面きって戦う機会が訪れる」と政虎が自信を持って言ったことを上杉方の諸将は理解できずにいた。


未完

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最終更新:2009年12月15日 21:14