たたら村



時代は現代だが村の文明レベルは昭和初期~中期程度、もしくはもっと古いかも知れない。
電気ガス水道はない。
そんなある廃村寸前の村で起こる物語。

この村は8つの大樹に囲まれており、上空からでも容易に入ることは出来ない。
しかしとある昔に、マレビトという集団がやってきて、
この村に宇宙でも珍しい鉱石があると告げる。
それは、彼らの食料であるタタライト鉱石であった。
マレビトは村を守る代わりにこのタタライト鉱石を寄越すように言ってきた。
排他的な住民は部外者を寄せ付けないためにその提案に乗った。

しかし、資源は尽きるもの。
村人は不安と苛立ちを募らせ、次第に鉱石を奪い合うようになっていった。
尽きかけたとき、マレビトは考えた。

「あの凍星が天上の頂点に輝くとき生まれた子供を、生贄として用意すれば、時間を巻き戻すことが出来る」

斯くして生贄の少年、縁つぐみが誕生したのだが、
巻き戻る時間は15年。
その間にも鉱石は尽きかけ、村人は次第に殺気立っていく。

――どこからともなく声がする。

「縁つぐみを教祖として奉ろう! そうすれば鉱石も増えるはずだ!」

少年は教祖となるべく、マレビトから5億年分の時間を瞑想する何もない部屋に幽閉される。
悟りを開き損ねた少年は精神的に不安定になり、部屋に引きこもる。

毎日祈りを捧げに来る村人たち。
しかし少年が15を迎える時には資源がなくなり、とうとう最初と同じく生贄として村の中心の広場で燃やされる。

そして凍星の輝く日に縁つぐみは死に、新しく縁つぐむが生まれ、村は時間が巻き戻る。
縁つぐむを新たな教祖として、村は同じ歴史を繰り返し、そして縁つぐむも焼かれるのであった。
そうしてまた、縁つぐみが生まれ――

歴史は永遠に繰り返される。








2015年07月16日
最終更新:2015年07月16日 22:19