聞くだけで彼女ができる?「奇跡の着うた」の謎に迫る (1/2)
聞くだけで集中できる、巨乳になる、はては彼氏ができる……そんな“奇跡の”着うたが登場した。カギになる技術は、脳波のコントロール、サブリミナル効果など。開始以来、1週間で1万ダウンロードがあったというが……?
聞くだけで集中できる、記憶力が高まる、やせる、巨乳になる、彼氏ができる、彼女ができる……そんな“奇跡”をうたう着うたが登場した。
ティー・オー・エスはiモードとEZweb向け「魔法のメロらんど」で、上記の効果をもたらすという「奇跡の着うた」を各種提供している。脳機能学者、苫米地英人氏の長年の研究成果を応用し、脳に特殊な刺激を与える音源を着うたに埋め込んだという。
着うたを聞くだけで女性にモテるなら、非常に興味深い話。ただしにわかには信じがたい、なかなかに「アヤシイ」話でもある。どういった仕組みの着うたなのか。それを探るべく、研究を行った
苫米地氏本人に聞いた。
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苫米地英人氏
異能の研究者、苫米地英人氏
苫米地英人氏とは、どんな人物なのか。
同氏は、「脳機能学者」という肩書きを持った研究者。催眠術や洗脳のプロセスに詳しく、“洗脳原論”という著書がある。外部から依頼されて、オウム真理教の信者を「脱洗脳」(=洗脳状態を解除する)したこともあり、オウム関連の話題でしばしばマスコミに登場している。
苫米地氏はまた、P2Pの技術にも詳しい。自身、著作権保護機能付きのP2Pプレイヤーの開発を手がけているほか(2002年5月30日の記事参照)、日本MMOのP2Pサービス「ファイルローグ」が著作権侵害だとする訴訟が法廷で争われていた際には、「日本の健全な発展のためにP2Pを禁止すべきではない」とする意見書を地裁に提出している(2002年12月の記事参照)。
ポイントは「同調」とサブリミナル効果?
それでは、着うたがどうやって視聴者に“影響”をもたらすのか。苫米地氏の話を聞く限り、原理としては「脳波を同調させる」こと、それに「サブリミナル効果」を用いるようだ。「プラシーボ効果」も利用するという。耳慣れない言葉にとまどうユーザーもいるかもしれない。
順番にいこう。苫米地氏は、「人間の脳波は、外部の刺激に応じてバイオフィードバックにより同調を起こす」と説明する。
「たとえば、左耳に440Hzの音を聞かせ、右耳に448Hzの音を聞かせる。そうすると、その差分である“8Hz”のうねりが生じる。この8Hzに、脳波が誘導される」
人間の脳波にはいくつかの種類がある。眠くなったときに表れるシータ波、精神活動していることを表すβ波などがあるが(2003年11月13日の記事参照)、このうちリラックスしているときに表れるといわれるα波は、8Hz~13Hz未満の周波数を持っている。前述の方法により脳波を8Hzに誘導すると、α波が出ている――すなわち、リラックスした状態になるという。
「もちろん、α波だけを出すというのではない。脳内では全周波数帯が出ているが、α波が強い、『α波優位』の状態にする」
実は、このような手法を用いてα波を出させる「癒し」グッズはほかにも存在する(2003年6月20日の記事参照)。苫米地氏は、機器によっては、脳波をシータ波優位にして(すなわち眠い状況にして)――それからデルタ波優位に切り替え(ぐっすり眠っている状態)――それからα波支配に切り替える(リラックス)など、精神状態を変遷させるプログラムを持つ機器もあると紹介する。
今回の研究は、それを“さらに進めたもの”だと苫米地氏は強調する。
「複数の周波数帯に、同時に“立体的”な仕掛けをする。これにより、人間の意識状態をコントロールすることができる」
意識状態をコントロールすれば、ド―パミンやセロトニンといった神経伝達物質の分泌量を変化させることも可能だと同氏。同氏はここで、コルチゾール(cortisol)と呼ばれるホルモンが、脳細胞に与える影響を解説する。
「コルチゾールは『ストレスホルモン』とも呼ばれている。個人的にはこの呼び方は嫌いなのだが、とにかく強いストレスを受けた時に、コルチゾールが出る。これが脳細胞に作用すると、海馬(=側頭葉にあり、記憶を司るとされる部位)が壊されることが分かっている。細胞が、物理的に死ぬわけだ」
当然ながら、海馬の脳細胞が死ねば、記憶に悪影響がある。その逆に、「脳波を誘導して、コルチゾールを出せなくする、あるいは出しづらくするよう働きかければ、記憶力が向上することになる」。
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同氏はまた、音源には
サブリミナル(閾下知覚)効果も含まれていると話す。
人間の脳は、ある一定レベル以下の知覚情報は「なかった」ものとみなし、意識レベルに上らせないようにする。それでも、その情報が脳に影響を与えることがある。
映画で、30コマのうち6コマほどコーラの映像を割り込ませると、コーラの売上が伸びた……という話が有名だ。この場合、サブリミナルなコーラの映像が、無意識に「コーラを飲みたい」と思わせたのだといわれている。
奇跡の着うたの場合、たとえば「やせる」ための着うたに「意志を貫くよう促す、人間の声であり声でないようなもの」(同)が挿入されている。これにより、ダイエットの決心を鈍らせないよう働きかけるのだという。
プラシーボ効果も利用する。プラシーボ効果とは、簡単に言ってしまえば「思い込み」。例えば、「これは飛び切り高級な薬ですよ」と言われてただのお菓子(偽薬)を飲まされた場合、患者が「これで治る」と信じて精神状態が安定し、肉体にも影響して病状が回復することがある、というものだ。
「“代替医療”とかいって、病原菌をやっつけるイメージを膨らませるイメージ療法があるが、これも同じこと」(同)
脳波を「コントロール」し、サブリミナル効果やプラシーボ効果で精神状態を明確に“ある方向”に持っていく。それが、身体にも物理的に明確な影響をもたらす……という一連の効果があり得るとして、話を進めよう。その場合には、なんと人を巨乳にすることもできるという。
「女性の、胸の筋肉に働きかける。そうすると、胸が上にひっぱられて、バストアップしたように見えるわけだ」
どうでもいいことだが、男性がこの着うたを聞いても巨乳にはならない。男女の脳には、たとえば脳梁の太さなどで違いがあることが知られている。着うたにも「男性用」と「女性用」があるのだ。
恋人ができるメカニズムは?
記憶力がよくなったり、巨乳になったりするメカニズムは分かった。しかし、聞くだけで恋人ができる音源は、さすがに無理ではないのか。
苫米地氏は、女性向け「彼氏ができる」着うたを例にとって、2つの効果を狙っていると解説する。1つは、積極性を高めること。もう1つは、相手に自分を「魅力がありながらそれを抑えている」と認識させることだという。
前者は、比較的分かりやすい。苫米地氏は「動物行動学的に見ても、メスがオスにボディタッチする(ここでは、スキンシップと言い換えてもいいだろう)ことが生殖行為のきっかけになる」と解説する。動物の場合は特に、発情期があるので「自分は準備が整っている」ことを相手に知らせる必要がある。人間にしても、アプローチを起こさないことには恋愛は始まらないだろう。
後者はどうか。苫米地氏は、いわゆる“いい女”の特徴は「淑女でありながら――同時に性的魅力をかもしだしていること」だと解説する。
極度に「お堅い」イメージは逆効果。かといって、あまりに遊び好きなイメージも問題だ。これをどう両立させるかが問題だと同氏。
彼氏ができる着うたでは、男性が聞くと目の前の女性が「ああ、淑女でありながら性的魅力が抜群だ」と感じられるよう誘導する音源が入っている。つまり、女性側は自分で聞きつつ、スキを見て意中の男性に「着うたを聞かせる」必要があるわけだ。用意周到な計画が、求められるといえそうだ。
推奨環境は?
果たしてこの着うた、効果のほどはいかがなものか。「脳波に直接影響があるわけだから、かなり効果はあると考えられる。実際、私もヘッドフォンでこれを1時間、2時間聞いていたら、ぶったおれた」(苫米地氏)。
もっとも、いくつか気をつけなければならないこともある。まず、着信して「着うた」がなり始めても、すぐに電話に出ないこと。
「携帯の着うたに設定すれば、毎日継続して聞くことができる。そこがポイントだ。できれば10秒程度聞いてから応答するのが望ましい」(同氏)
もうひとつは、イヤホンで聞くべきだということ。先に説明したとおり、脳波に影響を与えるには左右の耳から聞こえる“差”を検出する必要がある。「推奨環境は、イヤホンを通してステレオで聞くこと」。
奇跡の着うたは、サービススタート以来1週間で1万ダウンロードを記録した。“売れ筋”は、やはりモテる音源のようす。苫米地氏は、今後ニーズに応じて「目の疲れがとれる音源」や「髪の毛が生える音源」も開発を検討すると話した。
最終更新:2010年05月26日 05:46