発生国 |
台湾・台北市 松山駅 |
犯人 |
林英昌 |
死者数 |
なし |
発生日 |
2016/7/7 |
現在 |
解決済み |
2016年7月7日午後10時前、台北市の台北・松山間を走行していた、台湾鉄道の区間車 1258号の6号車が突如爆発を起こした。火災が発生し、松山駅到着後に駅員や乗客により消火された。奇跡的に死者は出なかったが、25名の乗客が負傷し、うち6名は集中治療室に送られた。列車は松山駅2番ホームに停車、待っていた乗客と列車から脱出する乗客がもみくちゃとなり、ホームは大混乱となった。
この際、救急搬送された負傷者のうち、林英昌という男がいた。捜査当局が列車のトイレに残されていた、犯人のものと思われるリュックサックの指紋を調べたところ、林のものと一致した。これにより警察は林をこの事件の犯人として逮捕した。ただこの時点では、本人も気管にやけどを負った危険な状況であり、話を聞くことができなかった。
林は爆弾を荷物棚にしのばせておき、それを走行中の車内で炸裂させたのである。
爆発物は手製で、直系6センチ、長さ47センチのパイプを使ったパイプ爆弾であった。林が引導を引っ張って、しばらくすれば爆発するものであった。林は荷物をいったんトイレに持ち込み、爆弾を運び出すと、座席に戻ってその時を待った。林の計画では、引導を引っ張った後に放り出す予定だったらしいが、予想に反し早く爆発してしまったという。

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爆弾の残骸(左)と林英昌(右)
林の動機は、人生に絶望したことによる自殺であった。林は当時住所不定であり、犬を連れバンで放浪していた。さらに扁桃腺に疾患を抱えていた。かつては妻と息子がいたが、離婚、しばらくは息子と一緒に暮らしていたが、引っ越し後はバンで放浪を始めたとされる。事件当日、林は犬と遺書をバンの中にのこし、バンを南投の山岳地帯に放置した。遺書の中には、疾患の影響で非常につらい日々を送っている、という趣旨の文章が残されていたという。
台湾の林全行政院長は、これは組織的なテロ攻撃ではなく、個人による事件と強調することで、国民が過度に不安を持たないよう図った。これは当時海外で爆破テロが頻発していたため、本件もそのひとつなのではないか、という憶測が飛び交うのを防ごうとしたのが理由と思われる。
林は同年11月、殺人未遂と日本でいうところの銃刀法違反の罪で起訴された。林は法廷内で質問に答えることを拒否し、弁護側は、爆発物を乗客に投げつけることは未遂に終わっていること、精神障害を患っていることを根拠とし、元妻・息子とともに保釈を要求した。なお、精神障害については、のちに精神鑑定によって否定された。第一審では懲役30年の刑が宣告されたが、林側はこれを不服として上訴、2017年、最高裁判所は林に殺人未遂などの罪で30年と11カ月の懲役、また被害者への680万ドル相当の賠償命令を宣告した。
記事:東海林めぐる
最終更新:2023年04月07日 21:50