目が覚めたとき、隣に全裸の美女が寝ていたらどう思うだろうか。
昨日連れ込んだ記憶も酒を飲んだ覚えもまったく無い。
歳は二十代前半といったところか。僕と同じくらいだろう。
腰まで伸びた長い黒髪が……って何観察してるんだ僕は!
「ん……。」
ヤバい、彼女が気づいたぞ。
「おはようございます。」
あれ? 反応があっけなさ過ぎる。
僕はおそるおそる尋ねてみることにした。
「あ、あの……。」
「どうかしたんですか?」
「その、服……。」
「あっ、ごめんなさい。私、能力のせいで裸に抵抗無くて。」
「いいからっ! 男物しか無くて申し訳ないですけど、
そこのクローゼットから適当に選んで着替えてくださいっ!」
もちろん男として興味が無いわけではない。
でも、生まれてこのかた二十五年、全く女っ気も無く、
しかも一人っ子の僕には、この状況は刺激が強すぎる。
「くぅーん。」
レトリバーのハナが膝の上に乗ってきた。
「おまえたちにはモテモテなんだけどね。」
と、つぶやく。
「おまたせしました。」
再びベッドの上に座った彼女はぶかぶかのジャージに身を包んでいた。
さて、どこから聞こうか。
「えーっと、僕はタク、
犬飼拓。」
「ミヨです。三つの世界って書いて三世。」
まずは無難に名前を教えあう。
それで、ここからどうするんだ?
どうして隣で寝てたかなんて聞いたら変態扱いされかねないし。
いろいろと悩んでいるうちにミヨさんの方から声を掛けられた。
「動物、好きなんですか?」
実は、この狭い部屋にはハナだけではなく十匹もの犬猫が放たれている。
「昼は『犬に好かれる能力』、夜は『猫に好かれる能力』。
たまに野良がついてきてそのまま玄関の前で居座られて、
他の入居者の迷惑になるから部屋に入れたのがこいつらですよ。」
「……。」
あら、期待してた答えと違って、呆れちゃったかな?
「ミヨさん?」
「……運命って、あるんですね。」
はい?
「たまにはおさんぽコース変えてみるものね。」
何をおっしゃっているのか分かりかねます。
「昨日黒猫がここに入ってきたでしょ?」
「あ、そういえば朝起きたときにはもういなかったですね。出ていったのかな?」
「あれ、私。」
今度は僕の方がフリーズする番だった。
「それに……。」
彼女が目をつぶると、その体がだんだん小さくなっていって、ジャージの中に隠れてしまった。
中を覗こうとしたら、黒毛の柴犬がしっぽを振って現れた。
かと思うとその柴犬がだんだん大きくなっていき、再び裸のミヨさんが……って!
「というわけなんです。」
「と、と、とにかく服っ!」
「遠慮しなくていいんですよ。」
そう言ってミヨさんは僕に抱きつく。
「遠慮とかそういうことじゃ……。」
「だって、私、あなたと結婚するって決めましたから!」
もう……限界……。
「あれ? タクさん? タクさん!」
僕の意識はそこで途切れた。
おわり
登場キャラクター
最終更新:2010年06月15日 20:14