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飼い主、はじめました。

作者:◆KazZxBP5Rc

目が覚めたとき、隣に全裸の美女が寝ていたらどう思うだろうか。
昨日連れ込んだ記憶も酒を飲んだ覚えもまったく無い。
歳は二十代前半といったところか。僕と同じくらいだろう。
腰まで伸びた長い黒髪が……って何観察してるんだ僕は!
「ん……。」
ヤバい、彼女が気づいたぞ。
「おはようございます。」
あれ? 反応があっけなさ過ぎる。
僕はおそるおそる尋ねてみることにした。
「あ、あの……。」
「どうかしたんですか?」
「その、服……。」
「あっ、ごめんなさい。私、能力のせいで裸に抵抗無くて。」
「いいからっ! 男物しか無くて申し訳ないですけど、
 そこのクローゼットから適当に選んで着替えてくださいっ!」
もちろん男として興味が無いわけではない。
でも、生まれてこのかた二十五年、全く女っ気も無く、
しかも一人っ子の僕には、この状況は刺激が強すぎる。
「くぅーん。」
レトリバーのハナが膝の上に乗ってきた。
「おまえたちにはモテモテなんだけどね。」
と、つぶやく。

「おまたせしました。」
再びベッドの上に座った彼女はぶかぶかのジャージに身を包んでいた。
さて、どこから聞こうか。
「えーっと、僕はタク、犬飼拓。」
「ミヨです。三つの世界って書いて三世。」
まずは無難に名前を教えあう。
それで、ここからどうするんだ?
どうして隣で寝てたかなんて聞いたら変態扱いされかねないし。
いろいろと悩んでいるうちにミヨさんの方から声を掛けられた。
「動物、好きなんですか?」
実は、この狭い部屋にはハナだけではなく十匹もの犬猫が放たれている。
「昼は『犬に好かれる能力』、夜は『猫に好かれる能力』。
 たまに野良がついてきてそのまま玄関の前で居座られて、
 他の入居者の迷惑になるから部屋に入れたのがこいつらですよ。」
「……。」
あら、期待してた答えと違って、呆れちゃったかな?
「ミヨさん?」
「……運命って、あるんですね。」
はい?
「たまにはおさんぽコース変えてみるものね。」
何をおっしゃっているのか分かりかねます。
「昨日黒猫がここに入ってきたでしょ?」
「あ、そういえば朝起きたときにはもういなかったですね。出ていったのかな?」
「あれ、私。」
今度は僕の方がフリーズする番だった。
「それに……。」
彼女が目をつぶると、その体がだんだん小さくなっていって、ジャージの中に隠れてしまった。
中を覗こうとしたら、黒毛の柴犬がしっぽを振って現れた。
かと思うとその柴犬がだんだん大きくなっていき、再び裸のミヨさんが……って!
「というわけなんです。」
「と、と、とにかく服っ!」
「遠慮しなくていいんですよ。」
そう言ってミヨさんは僕に抱きつく。
「遠慮とかそういうことじゃ……。」
「だって、私、あなたと結婚するって決めましたから!」
もう……限界……。
「あれ? タクさん? タクさん!」
僕の意識はそこで途切れた。

おわり

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最終更新:2010年06月15日 20:14
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