カルピス、くし、ペリカン

作者:◆BY8IRunOLE

夏の陽は、長い。
まだ明るい神社の境内は、早くも人が大勢いた。

屋台で彼女にわたあめを買ってあげ、僕もラムネを飲みながらお祭りを見物して歩いた。

こういう、ジャンクなものを食べたり飲んだりしていると、思い浮かぶのは……


「あ」

僕は、真剣な眼差しでいけすの金魚を狙っている幼馴染の横顔を見た。


「フン、このオレの手から逃れられると思うなよ……水中型キメラが」

金魚すくいのおじさんは呆れ果てていて、
もうこいつには何も言うまい、というセリフを全身で表現していた。


「ライス・サルベージ、ウォータープルーフヴァージョン!!」


――あちゃあ、やっぱり……

僕は頭を押さえた。

セコい。セコすぎる。

水飴を挟む薄焼きせんべいをどこからともなく出しては、金魚をすくう柄杓が破れてもすぐに復元して……



僕はつかつかと陽太のそばに寄り、耳を引っ張った。

「痛ててててててててて!!」
「こら陽太! セコい真似しない!!」


「ふざけんなよ晶!!」
「ふざけてんのは、あんたでしょ!」

陽太は耳を真っ赤にして、僕を見上げる。

と、そのとき。

一瞬、陽太の目が見開いたと思うと、黙ってしまい、さっきの威勢はどこへやら。

視線が僕の顔から下に降りて、タンクトップのロゴのあたりを見て、
さらに下に降りて、それにつれて顔が真っ赤になっていって、僕のスニーカーまで下りたあと、

「へ、へん、と、とにかく、オレの邪魔はすんなよな!!」

顔と耳を真っ赤にしながら、目も合わせずにぷいっと顔をそむけると、陽太は逃げるように去っていった。


――(屋台のおじさんの)邪魔をしてるのはあんたでしょ。

僕は呆れて、幼馴染の後ろ姿を見送った。

傍らでは彼女が、僕らのやりとりをぽかんと見ていた。

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最終更新:2010年07月16日 19:28
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