夏の陽は、長い。
まだ明るい神社の境内は、早くも人が大勢いた。
屋台で彼女にわたあめを買ってあげ、僕もラムネを飲みながらお祭りを見物して歩いた。
こういう、ジャンクなものを食べたり飲んだりしていると、思い浮かぶのは……
「あ」
僕は、真剣な眼差しでいけすの金魚を狙っている幼馴染の横顔を見た。
「フン、このオレの手から逃れられると思うなよ……水中型キメラが」
金魚すくいのおじさんは呆れ果てていて、
もうこいつには何も言うまい、というセリフを全身で表現していた。
「ライス・サルベージ、ウォータープルーフヴァージョン!!」
――あちゃあ、やっぱり……
僕は頭を押さえた。
セコい。セコすぎる。
水飴を挟む薄焼きせんべいをどこからともなく出しては、金魚をすくう柄杓が破れてもすぐに復元して……
僕はつかつかと陽太のそばに寄り、耳を引っ張った。
「痛ててててててててて!!」
「こら陽太! セコい真似しない!!」
「ふざけんなよ晶!!」
「ふざけてんのは、あんたでしょ!」
陽太は耳を真っ赤にして、僕を見上げる。
と、そのとき。
一瞬、陽太の目が見開いたと思うと、黙ってしまい、さっきの威勢はどこへやら。
視線が僕の顔から下に降りて、タンクトップのロゴのあたりを見て、
さらに下に降りて、それにつれて顔が真っ赤になっていって、僕のスニーカーまで下りたあと、
「へ、へん、と、とにかく、オレの邪魔はすんなよな!!」
顔と耳を真っ赤にしながら、目も合わせずにぷいっと顔をそむけると、陽太は逃げるように去っていった。
――(屋台のおじさんの)邪魔をしてるのはあんたでしょ。
僕は呆れて、幼馴染の後ろ姿を見送った。
傍らでは彼女が、僕らのやりとりをぽかんと見ていた。
登場キャラクター
最終更新:2010年07月16日 19:28