『追え!あっちだ!』
夕方のため、慌ただしい商店街。
ロボットのように手足を動かし、人混みを掻き分けて素早く走る服部。
それを追いかける黒服の男達。
服部が時々後ろを振り返り、男達の様子を伺う。
ショーウインドーに服部の顔が写りこむ。
(くそ!こんなときに……)
服部が思わず舌打ちする。
細い路地に隠れると、コメカミに中指を当て片膝を地面につく服部。
(まさか自分を見ても発動してしまうとは)
以下ビジョン
銃を構えた黒服達に囲まれ両手を挙げている服部。
「良し、そのまま手を頭の上に乗せて、地面に膝をつけ」
後ずさりする靴の踵がコンクリートの壁にぶつかる。
「抵抗するのか、やむを得ん撃て!!」
銃声が鳴り響く。
ここまでビジョン
「うぉぉ」
眉間に皺を寄せ頭を抱える服部。
カツンカツンという複数の足音が規則正しいペースで近づいてくる。
服部が周囲を見回す。
人通りの無い路地。
(隠れる場所はないか)
右手と右足を同時に出し、足音を殺して小走りで走る服部。
「きゃ!」
服部が曲がり角で何かにぶつかり地面に倒れる。
グレーのジャケット姿の真実が見える。
そのまま意識を失う服部。
紅い満月。
黒い雲が月を隠す。
血塗れの真実が地面に転がっている。
舌舐めづりしながら、それに近づく中年の男性。
(誰だこいつらは?)
ぼんやりと目に映る景色。
(夢か?)
徐々に景色がハッキリとしてくる。
整理整頓された殺風景な部屋。
黒い上着(服部の着ていた物)がクローゼットのハンガーに掛けられている。
真実が部屋に入ってくる。
ベッドからガバッと勢いよく起き上がる服部。
素早く構え取る真実。
体に激痛が走り、服部が頬を引き攣らせる。
「あら、お目覚め?」
真実が服部の顔をのぞき込む。
「ここはどこだ?」
部屋を見回す服部。
「安心してアタシの部屋よ」
服部の肩を押さえつけベッドに寝かせながら微笑む真実。
「俺に関わるな……」
「そうはいかないなぁ。
鍛えられた体、やたら強い警戒心、
そして何より質の悪い連中に追われてたんだからね」
「質の悪い連中?」
「知らないのか?ドグマって犯罪組織……」
「俺はただ背後に立たれたから排除しただけだ」
「殺したの?」
呆れた様子の真実。
「咄嗟だったから、加減が出来なかった……」
服部がバツ悪そうに顔を逸らす。
「アイツ等の仲間意識半端ないから、死ぬまで追いかけてくるよ」
「俺は牙を剥く奴に容赦はしない。ところでお前は何者だ?」
不気味な笑みを浮かべる真実。
「硝煙の臭いがする。それも一発二発じゃない。体に染みついた臭いだ……」
「ああ、アタシ刑事だから毎日500発くらい訓練で撃たされんのよ。
あんまり上手じゃないんだけどね」
エヘヘと笑う真実。
服部が冷めた目でそれをみつめる。
突然、着うたが流れる。
真実が険しい表情で携帯に耳を当てる。
「松尾です!」
しばらく会話をし、頷く真実。
「ちょっと出掛けてくるわ」
「助けられたのも何かの縁だ……、俺の目を見ろ」
「え?何よ?」
服部の黒い瞳が真紅に変わる。
ムクリと半身を起こす服部。
「今日では無いかもしれない。しかしこのままでは近い将来お前は死ぬ」
「はぁ?寝ぼけてるの?ちょっと離しなさいよ」
真実の肩をグッとつかみ、引き寄せる服部。
「離せ!婦女暴行で逮捕するよ!」
「安心しろ、もう終わった……」
ベッドに寝転がり、目を瞑る服部。
怒ったような様子で部屋を出て行く真実。
ドアの閉まる音。
誰も居なくなった部屋で、時計の時を刻む音だけが静かに響く。
しばらくして目を開ける服部。
(借りは返した。長いは無用だな……)
フラフラと部屋を出て行く服部。
人通りが少ないビジネス街。
アタッシュケースを抱えた石川を追いかける真実。
(くっそぉ……)
真実は息を切らせながら走り続ける。
(もう少しなのに……)
グッと手を伸ばすが石川の襟には届かない。
ヘラヘラと笑いながら走る石川。
(こいつ、わざと……)
真実の胸に怒りがこみ上げてくる。
勢い余って地面に派手に転ぶ。
石川が振り返ってそれをあざ笑う。
「ヒャハハハハ!ここまで追いで~」
大きくジャンプしてビルの屋上に移動する石川。
『ここまでだ!無駄な抵抗はよして、投稿しろ!』
ヘリコプターのスピーカーから機械的な声が聞こえる。
ライトが石川を照らす。
旋回する3台のヘリコプターが石川を包囲する。
「残念でしたぁ~~~」
石川がヘリコプターのメインローターをキックで破壊する。
次々に墜落するヘリコプター。
「やめて、やめてよ……、誰かアイツを止めて……」
真実の目から涙がこぼれたそのとき、真実の体が青白い光に包まれる。
(な……、なに??)
真実が大きく首を傾げる。
頭上に落ちてくるヘリコプター。
「しゃーしゃっしゃ……」
石川の高笑いが響く。
真っ二つに斬れるヘリコプター。
「はい?」
白袴姿の真実が姿を見せる。
屋上に可憐に着地する真実。
右手には日本刀らしき刀を持っている。
「何だお前?能力者か?」
「こっちが聞きたいわ。あの男、アタシに何をしたの?」
「あの男?何の話だ?」
「こっちの話……、悪いけど加減出来そうにないから……」
刀を鞘に納め、柄に指を当てる真実。
不気味に笑いながら間合いを取る石川が呟く。
「たく、ついてねぇな」
ヒュウウという風の音。
一気に間合いを詰めた真実が抜刀し、石川を真っ二つにした。
「危ない危ない」
どこからか石川の声がする。
「逃げるの?」
「お宝はいただいた。また会おうサムライガール」
「ちょっとサムライガールって……、アタシどうなっちゃうの?」
不安そうに掌を見つめる真実を月が怪しく照らす。
登場キャラクター
最終更新:2010年10月03日 14:05