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追う者

作者:◆PLwTfHN2Ao

あれから数ヶ月、真実の生活は一変していた。
乞われてきたはずの刑事課から外され、今は能力犯罪を取り締まるパフ課へと出向になってしまったのだ。
ある日の昼下がり、押収物や捜査資料があちこちに置かれた1班隊員室。
誰も居ない部屋の片隅で、
一見眠っているように見える真実がガイアブックを発動させている。

図書館のような部屋の真ん中に立つ真実。
「さて始めますか」
真実がゆっくりと本棚と本棚の間を歩き出す。
「鋭い目……、身長は176cmくらい……、人の能力を覚醒させる……」
真実の言葉に連動して、部屋の本棚が減っていく。
「ロボットみたいな歩き方……」
減った本でスカスカになった本棚。
「変化無しかぁ……」
ため息をつきながら、真実が両手を上げる。

真美が目を開けると、横の机ではトトが目にも写らぬ速さで書類に次々と判子を押している。
「姐さん!いつのまに……」
「そんなことより、何かわかったんどすか?」
首を横に振る真実。
「これじゃぁ、いつまで経っても元に戻れないですよ……」
「受け入れなはれや、もう戻れんのやさかい」
真実が悲しそうに顔を俯ける。
「アタシの能力と違って、姐さんの能力は実用的で良いですよね」
「そうどすか?何か時間が減ってくようで嫌なんもよ」
「昼間は時間の流れを自分だけ早く出来て、
 夜は自分だけ遅く出来るんだから、プラスマイナスゼロじゃないんですか?」
椅子の向きを変え、真実が羨ましそうにトトを見つめる。
「時々不安になるんどす。このままみんな動かなくなったらどなしようって」
「みんな悩みがあるんですねぇ」
「そうどす……」
不意にトトが大きなため息をつく。
「姐さん!どうしたんですか!」
珍しく動揺しているトトに駆け寄る真実。
大量のブラウザが表示されているディスプレイ。
「どないしましょ」
トトが慌てる。
「こうなったら、一度電源落とすしかないですよ」
「ほな」
躊躇無くポチっとボタンを押すトト。
ディスプレイが真っ黒になる。

「一体何を見てたんですか?」
トトが大きく胸を張る。
「いつものように、恋愛相談の返信を書いてたんどす」
下戸で不器用だが、誠実で姉御肌のトトは自分の隊だけでなく、
多くの女性陣から絶大なる信頼を置かれているのだ。
「姐さんアドバイスは上手いんですけどね」
「大きなお世話どす、いつかウチにも春がくるんどす」
「それで?」
「メールで先日はどうもユウキですってメールがあったんどす」
「ユウキなんて名前聞いたことありませんよ?」
「何言うてはりますの?8班の新人さんでしゃろ」
首を傾げる真実。
「マミはんと同じ時期に来たはずでしゃろ」
真実が大きく首を傾げる。
(歓迎会のときに居たっけ?)
トトがゴホンと咳払いをする。
「後輩の相談に乗るのは先輩の務めやろ?」
「ちょっと待ってください。
 面識も無いのに、そんなメールがくるわけ無いじゃないですか」
「何いうてますのん。
 隊長各の連絡先は、イントラネットで公開されてまっしゃろ」
「まぁ、そうですけど……」
憮然とした表情を浮かべる真実。
「で!メールクリックしたら、
 メッセージはこちらってアドレスが出てたんで、クリックしたんどす」
大きくため息をつく真実。
「どないしましたん?」
「どう考えても、出会い系サイトのメールじゃないですか」
「どれから情報漏れたんでっしゃろ」
指を一つ二つ三つと折るトト。
「一体いくつの結婚紹介サイトに登録してるんですか!」
「最近のはようできてまっせ、細かく条件設定出来るんでっせ!
 マミはんも登録してみなはれ!」
「この前、妻子持ちのオヤジに弄ばれたのにまだ懲りてないんですか」
「あれは安い所だったから、審査が甘かったんどす」
「姐さん、頼むからもっと身近な所で探して下さいよ~」
「何言うて張りますね。女から積極的にいくなんてはしたないどす」
(だからってネットでアグレッシブにいかなくても)
トトが滔々と結婚相談サイトのすばらしさを語っているのを聞き流しながら
小さくため息をつく真実であった。

すると眠そうに欠伸をしながら、イサミが隊員室に入ってくる。
「相変わらずデパートの1階のような部屋じゃのぉ」
「んん?」
真実とトトが顔を見合わせて首を傾げる。
「化粧くさいって意味じゃい」
「上手いこと言いはりましたなぁ」
「仕方ないですよ。1班はアシュラさん以外みんな女性なんですから」
「浦島太郎の童話のようじゃ」
「今日は冴えてまんなぁ」
感心したように頷くトト。
「で何の話じゃ?廊下にまで聞こえておったぞ」
「姐さんがまた出会い系に填ってるですよ」
「結婚紹介どす。全然レベルが違いまんねん」
トトが頬を膨らませる。
「あんなのファンの子が聞いたら、
 怒り狂って向こうの職場襲撃しちまうんじゃろうから
 もう少し静かに喋るもんじゃろ」
「そういえば、アシュラさん今日は遅番じゃないんですか?」
「遅番じゃい!じゃが昨日能力使いすぎて、仮眠室で今まで寝とったんじゃい」
3時を指す時計。
それをボーッと見つめる真実。
「仮眠どころか本寝じゃとでも言いたそうじゃの」
苦笑いを浮かべる真実。
「そんなに強敵だったんどす?」
素早く首を横に振るイサミ。
「またですか……」
呆れた様子の真実。
「良いか小娘よく覚えておけ。犯罪者はどこまでいっても犯罪者だ。
 一瞬で殺しても良いんじゃけど、あいつらにやられた被害者が報われんじゃろ?」
「でもそれじゃぁ、単なる私刑と変わらないじゃないですか!」
にらみ合う真実とイサミ。
「職務じゃからのぉ、法にはなんら違反してないけんのぉ」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「まぁまぁ、そなことより次の任務どす」
トトがいつものように二人の間に割ってはいる。
石川の指名手配写真が机の上に置かれる。
「何でワシが小娘の尻ぬぐいされるんじゃい!」
イサミの肩に手を回し、トトがそっと耳元で囁く。
「これ以上取り逃すと対外的にもまずいんどす。
 それに最近どうも捜査情報が漏れとるようどすから、鬼監察官の出番でっしゃろ」

潜入捜査と良い、面倒な事ばっかり押しつけるんじゃのぉ」
「ウチかて色々根回しとかして、大変なんどす」
「どうかしたんですか?」
真実が不思議そうな表情を浮かべる。
「大人の話じゃい、さっさと始めんかい」
「始めるって?」
首を傾げる真実。
「唯一の取り柄で次のターゲット探して、先回りちゅう話に決まっとるじゃろ!」
資料を見つめながら、
ヤレヤレという表情を浮かべ、真実が瞑想を始める。

それを頼もしそうに見つめるイサミ。
「小娘はこの能力を発動させてるときが、一番価値が高いんじゃい」
「若いんやからまだまだこれからどす」
「にしても、能力に目覚めたばかりとはいえ、
 小娘が三度も取り逃すとは、確かにおかしな話じゃな」
「この件以外にも他の班でも同様の事が起ってるいうて、
 隊長会議で議題に上がってますんや」
「また隊長会議か。良い思い出がないんじゃけどのぉ」
「しゃーないやないですか。何とかせいと総隊長から言われましたんやさかい」
「かつての盟友と決着をつけるときが来たんじゃろうか」
「どこで三人バラバラになってしまったんやろ」
寂しそうにため息をつくトト。
「もう若気の至りで済む歳じゃないけんのぉ」
イサミが鋭い目つきになる。
「わかっとりやす、アシュラに任せやす」
窓には夕日が差し込む。

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最終更新:2010年10月03日 14:13
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