俺の名は岬 月下。
神に叛く力、叛神罰当【ゴッド・リベリオン】をこの手に宿す能力者だ。
両手を突き合わせ精神を集中する。離した両の手の間に光の粒子が渦巻き、一振りの剣を形作る。
一瞬にして実体化するそれは、純白の輝きを持つ魔剣。数多の敵を共に屠ってきた相棒、その名は…
「魔剣…レイディッシュ!」
召喚と同時に、目を血走らせ斧を頭上に迫りくる男のガラ空きな脇腹へと叩きつけた。
不意の攻撃を喰らい呻く男の無防備な顔面に、渾身の力を込めたトドメの一撃を叩きこむ。
レイディッシュが軋むほどの衝撃を額の一点に受けた男は、悲鳴を上げる間もなく仰向けに倒れ沈黙した。
白目をむき当分目は覚まさないだろう男の様子を確認すると、魔剣を担ぎ男に背を向ける。
視線の先には二つの影。棍棒を振り上げる大柄な男に、対峙するは異形の姿。それは言うなれば、人間の体格を持ったカマキリだ。
力任せに振り下ろされた棍棒は直前までカマキリの居た空間を素通りし、アスファルトの地面を穿つ。
回避と同時に懐に踏み込み繰り出されたカマキリの肘打ちが男の腹に突き刺さった。
そのまま伸ばされた男の腕を掴み、次の瞬間男の巨体が空中に弧を描く。
見事な一本背負いを受け、硬い地面に背中全体を打ちつけられた男は一瞬にして意識を刈り取られるのだった。
「終わったか、ライダー」
「うん、何とかね。そっちは大丈夫?」
「ふん、こんな雑魚なんざ俺の敵じゃねえよ」
「ハハハ、君は相変わらずだな」
昆虫の乏しい表情で笑うこいつの名は
鎌田之博。獣人が当然のように存在する異世界からある事情でこの世界に召喚され、俺の仲間となった蟷螂人だ。
今の虫人状態こそ鎌田の真の姿だが、普段は余計ないざこざを避けるために能力によって昼は昆虫、夜は人間の姿に変身している。
ライダーはあだ名だが、俺は便宜上戦闘中のこの姿をライダー、それ以外は鎌田と呼びわけていた。
「でも本当、気が休まる暇もないなあ」
「ああ、だいたい想像通りの場所だったな」
薄い雲に隠れてぼんやりとした月明かりに照らされた周辺を見回す。
所々ひび割れたアスファルトの道路。倒壊したビル、ねじ曲がった標識に、焼け焦げた車。
「いやーしかし……まさかここまでテンプレ通りな世紀末世界が広がってるとは思わなかったよ」
それらを気にかける者など誰もいない。全ては見捨てられ、見渡す限りに廃墟は続く。そう、ここは法の届かない、暴力だけ支配する世界。
「仕方ねえさ。なんたってここは能力者の世界だ。ここは正真正銘、弱肉強食の世界……」
この俺も、いつか来る宿命だとは思っていた。
ついに来たこの場所は、全てを拒絶する巨大な壁に囲まれ、隔離された土地。政府指定D13隔離地域。通称…
「『魔窟』だからな」
顔を上げれば、流れる雲から顔を出し始める満月。
やってやるさ、どんな困難があろうとも。決意を新たに込めて。
俺の守護者たる白銀の月へと腕を伸ばし、この手に握りしめた。
ドォン !
そうしていたところに突然、背後から響いた大音量。同時に地面が激しく揺れ始める。
振り返れば、さっき倒したはずの男が膝をつき左拳を地面へと叩きつけていた。
即座に召喚すべき武器を考え右手を握りしめる。だが男は間を置かず右拳を振り上げ、地面に叩きつけた。
ド ォ ン !!
再びの大音量。地面の振動はさらに増幅し、もう立つこともままならない。
不完全に召喚された武器は投げることができず手から零れ落ちる。
「ぐっ……てめぇ!何してやがる!」
「ひゃああああははははー!! みんな死んじまええええああああ!!」
男は高らかに叫びながら両拳を振り上げ、同時に地面へと叩きつけた。
ド ォ ン !!!!
脳を芯から揺さぶるような最大音量が響き、そして地面が……消えた。
「なっ!!!!??」
地の底まで続く、巨大な地割れ。その真上に、俺はいた。
空を飛べない俺は、当然いつまでもそんな場所に居られるわけもなく。
身体を精一杯伸ばしても、手足は空を切るばかり。
地の裂け目から覗く守護者の光は見る見るうちに遠ざかり。
一片の光も届かない暗黒の世界へと、俺はどこまでもどこまでも落ちて行った………
少年は目を覚ました。
少年の目に最初に映ったのは、見慣れた自室の天井。
背中に感じるは、座り慣れたカーペットの感触。
横を向けば、少々埃の溜まったベッド下とその脚が目に入る。
少年はぼんやりとした目で上半身を起こし、あくびを一つ。
月明かりに照らされた時計の針は深夜二時を指していることを見て、のそのそとベッドによじ登る。
適当に掛け布団を引き寄せ、少年は再び夢の世界へと飛び立って行こうとした。だが………
ド ォ ン !!!!
夢の中で聞いた大音量と同じ音が響き、
岬陽太はビクリと跳ね起きた。
音の衝撃で頭にかかった靄は一瞬で消し飛び、冷静に取るべき行動を判断する。
出所は恐らく家の外。階段を二段飛ばしで駆け下り玄関を飛び出す。
自分の家に異常は無い。異常は隣の家、幼馴染の
水野晶の住む家にあった。
「なん…だと…!?」
それは酷い有様だった。
道路沿いに建つ水野家のその塀は半分以上が崩れて、小さな庭はぐちゃぐちゃに踏み荒らされている。
多くの窓は割れ、ヒビが入り、屋根瓦が何枚も庭に落ちている。
そして何より酷いのが、二階の一角に空いた巨大な穴。その先にあったのは、晶の私室だったはず。
そして、断続的に続く地響き。巨大な何かが、だんだんと遠ざかっていく。
何よりまず晶の安否確認と二階の大穴へ顔を向けたその時、穴から飛び出す人影を見る。
背中の翅を鳴らして目の前に着地したのは、蟷螂人の姿に戻った鎌田だった。
「陽太君!」
「ライダー! 晶は!?」
「いない!」
「ならあっちか!」
叫ぶなり、遠ざかる地響きに向け駆けだす陽太に鎌田も続く。
「状況わかるか!?」
「いや僕も音に驚いて飛び出したらこれだ。何か遠ざかるのが見えたけどまず家を確認したんだ」
「親居ねえ日狙ってきやがったな。クッソ乱暴な手ぇ使いやがって!」
「これって…やっぱり
比留間慎也の…」
「いや…単純にそうとも言い切れねえな」
不幸中の幸いと言えるか、晶を連れ去ったと考えられる何かの速度はあまり速くはなく、地響きまでの距離は次第に縮まりつつあった。
はっきり聞こえるようになってきた音から推測するに、あの地響きは足音だ。四本足でかなりの体重を持った生物。
そして角を曲がりついに視界に捉えた影は、小型トラック以上の巨体を揺らす動物だった。その姿が露わになるにつれ、追う二人は言葉を失う。
やがて鎌田が遠慮がちに口を開いた。
「…ねえ陽太君。一つ参考までに聞いておきたいんだけど」
「…何だよ」
「この世界ってさ」
体毛はなく、月明かりに照らされるは灰色の肌。巨体を支える太い脚。横に広がる大きな耳に、口から少し飛び出した牙。
「野良象とかいたりするの…?」
それは、象。
動物園ではお馴染みの、むしろ居ない方が珍しい動物。その中でも平均以上のサイズを持ったアフリカゾウだった。
「いねえええええよ!! んなの見たことも聞いたこともねーよ!!」
「うん。そりゃあそうだよね」
そんなことを言いながらも追跡を続ける二人は、ついに地を揺らし走り続ける象の真横に追いついたのだった。
真横から見れば想像通り、その長い鼻を胴体に巻いて運ばれる寝巻姿の少女、晶の姿があった。
「おい晶あああ! 起っきろ晶ああああっ!!」
気絶しているのか、大声で呼びかけても反応が無い。
晶までの距離はほんの数歩。だがこれ以上近づいて象の巨体に跳ね飛ばされ、踏み潰されるようなことがあれば、
車に轢かれるより酷い惨状になることは想像に難くない。まずはこの象の足を止めなければならない。
「一発かますぞ! 合わせろライダー!」
「わかった!」
陽太は両手を胸の前に合わせ、離した手の間に白く丸いハンマー、のような桜島大根を生み出す。
鎌田は背中の翅を広げ、道の脇に向けジャンプ。ブロック塀を踏み台にさらに上空へ跳ぶ。
「喰らえっ! レイディッシュ・桜島【ロゼオ】!!」
ズシリと重い重量6kg、直径30cm。世界最大の根菜が
「ライダーキィィック!!」
全身を一本の槍と化した蟷螂人の飛び蹴りが
「おおおおおっ!!!!」
「はああああっ!!!!」
二人の全身全霊を込めた同時攻撃が今、炸裂する。
ぺちーん
そして見事に弾き返されるのだった。
何かあったのか気付いてもいない様子で走り去る象。
うつ伏せに倒れた二人。砕けて散らかる桜島大根。
「………」
「………」
大層な技名は付いているが結局のところ、ちょっと小さめ中学生と体重軽めな高校生の肉弾戦攻撃である。
当然と言えば当然か、5tを超える体重を持った地上最大の哺乳類、象の巨体を揺るがすことはできないのであった。
「っだあああああっ! ちっきしょうやりやがったなっ!!」
「やられたっていうか…うん…やっぱ無理だったね」
即座に立ち直って追跡を再開する陽太に、少々テンション低く鎌田も続く。
「はぁ……そりゃあ常識的に考えて無理だよね。僕としたことが陽太君のテンションに乗せられてしまった」
「無理じゃねえよ! さっきのはタイミングが完璧じゃなかったんだ!」
「いやいやそれにしたってさっきのやり方は無理臭いと思うよ」
「ハッ! だったら別の技でいくまでだ!」
「別の技って言っても力技はもうね」
「ふん、黙って見てな。無限の可能性を持つ俺の能力、叛神罰当を舐めんなよ」
すぐ立ち上がり追いかけた甲斐あって、あっさり象の真横に追いつくことはできた。
陽太は再び両手を突き合わせ、精神を集中する。離した両手の間で渦巻く光は、小さめなバレーボール大に固まっていく。
やがて実体化したそれは、灰緑色で見るからに凶悪な刺に覆われた、非常に凶器然とした物体だった。
「ええぇ何その極めて物騒な……ってあれ、何だっけ見たことあるような……」
「キングニードルだ」
「確かにそれで殴られたら痛そうだけど象止めるのは無理じゃ?」
「勘違いすんなよライダー、こいつは打撃武器じゃない。こいつは空間を支配する広域拡散兵器、キング・ニードルだ」
「広域拡散……?」
首を傾げる鎌田の嗅覚に、以前確かに嗅いだ覚えのある異臭が届く。
それは多量のガス漏れのような、或いは玉ねぎの腐敗臭のような。
「何これっ……って、あっ! 思いだした!」
独特の刺激によって、おぼろげだった鎌田の記憶が鮮明に蘇る。
それは南国の果実。濃厚な味わいと優れた栄養価、そして非常に強烈な臭気を放つ、果物の王様。
「ドリアン!」
「キングニードルっつってんだろーが!」
その実の表面は刺だらけだが、手で掴むのにちょうどいい茎が残っている。陽太はそれを掴んで大きく腕を振った。
「息止めとけよライダー! こいつは完熟だから、なっ!」
上投げで放たれたドリアンは、象の進行方向へ大きな放物線を描いて飛ぶ。
硬い刺に覆われたドリアンだが、完熟状態の実は衝撃によって容易く割れる。またその臭いは熟するほどに強くなる。
陽太の想定した通り、一本道の先に激突した実は真っ二つに割れ、周囲に凄まじい臭気を振り撒いた。
走る勢いのまま、象はキングニードルが支配する空間に突入。無防備に息を吸い込み、その臭気に激しく咳きこんだ。
主に晶が。あと陽太も。
そして肝心の象は速度を落とさず、何ともなかったように支配空間を走り抜けていった。
自滅攻撃に咳きこみながら、信じられないといった様子で陽太が叫ぶ。
「ゲッホゲホ馬鹿なっ!キングニードルが効かなウエーッホ!」
「……むしろ自分自身と晶君に攻撃してたね。そりゃ悪臭くらいなら構わず走り抜けちゃうよね普通」
「ゲホッ…よしっこれで晶が無事ってことがわかったな! オーケー!?」
「……おーけー」
強がる陽太。強烈な臭いでちょっと涙目になっているのは見なかったことにしてあげよう。
余談だが、鎌田は以前とある教師の悪戯でこの臭いの直撃を喰らって大変な目に逢い、その苦い経験から
悪臭に対して被害の少ない呼吸法を身につけていたりする。
故郷の学園の小さな数学教師に、苦々しくも感謝のようなものを感じる鎌田であった。
変わらず象の鼻に揺られる晶は一時的に咳きこみはしたが、今改めて呼びかけても反応がない。
鎌田はいよいよ困り果てて陽太を見る。
「…これ本当にどうしようか陽太君」
「ふっ。なに、まだ手はある。キングニードルが効かねえってんなら…今度はこいつだ!」
期待していいのか微妙な所だが、自分には不可能なことができる陽太をとりあえず見つめる鎌田の前で
合わせた手からさっきより小さめの物体を生み出す。
「沈め…サブマリン・クラッシャー!」
今度はわかる。すぐにわかった。陽太が生み出したのは猛毒を持つ魚、フグである。
「3m級の異形さえ倒す最終兵器だ。こいつにかかりゃ象なんざイチコロだぜ!」
「異形って何。3m級って何。どんだけ設定作りこまれてんのさそれ」
「何を失礼な。こいつは俺が異空召喚術で異世界に呼び出された時にだな」
「オーケーわかったよくわかった。確かにフグは猛毒だ。それ食べさせれば象だって止められるかもしれない」
「おお、だろ?」
陽太が妄想設定を語り出したときには、ツッコミはほどほどに適当にわかったことにしてさっさと別の話題に移す。
しばらく行動を共にして、鎌田が身に付けた厨二病患者への対処法である。
「でもそれどうやって食べさせるの?」
そして鎌田はそれを見た時から思っていた疑問を口にする。
「どう……って……」
陽太は手にしたフグと象の横顔を見比べる。体のサイズの割に牙が短いことを見るに、この象は雌だろうか。
いやそれはどうでもいい。牙が飛び出すその口は少しだけ開かれてはいるが、長い鼻に隠れて下を向き
とても何かを放り込めるようなものではない。
「………」
その口元をじっと睨みつけても、それで何かが変わるわけでもなく。
「つーかライダー! お前もなんかやれよ!」
「ちょっ、ええっ!?」
極めて強い猛毒を持つ陽太の最終兵器、サブマリンクラッシャー。
その威力を発揮する機会に恵まれなかった最終兵器は、道路の真ん中にポツンと置き去りにされていくのだった。
誤魔化すように陽太は声を上げる。
「なんか技ねえのかよライダービームとかライダーフラッシュとか!」
「そんなこと言われても僕の能力って普段やってる変身だけだし」
「お前ライダーだろ! なんか装備とか派手な必殺技とかあるんじゃねえのか!?」
「いやあ僕は装備が豊富な平成ライダーより、どっちかって言うと徒手格闘命の初期ライダー寄りなわけで……あ」
突然話を振られた鎌田は困惑するばかり。だが、陽太が発した単語の一つにピンと来るものがあった。
「ライダーフラッシュならあったかも……」
そう言って鎌田はズボンのポケットを探る。
取り出したのは、ガシャポンのカプセルのようなボールに引き抜くピンが刺さった代物だった。
「何だそれ?」
「卓式閃光玉」
「なるほど閃光玉……って、そりゃわかるがスグル式って何だ?」
「御堂卓って友人のお手製マグネシウム閃光玉だよ。昔から改良に改良を重ねたその光量たるや軍用閃光手榴弾に匹敵するとかしないとか」
「……お前それどういう奴だよそのスグルってのは」
「ん? 別に普通の友達だよ? ケモ学じゃ珍しいけど君と同じ人間だし……」
故郷の友人を思いだし、目の前の少年を見て……鎌田はポツリと呟く。
「……君とはなんだかんだで気が合う気がする」
「は? なんだそりゃ?」
「いやなんとなくそんな雰囲気がね。……さて」
鎌田は弛緩した気持ちを引き締め、並行して走る象をキッと睨みつけた。
これでダメならいよいよもって手段がない。ゴクリと唾を飲み込み、閃光玉のピンに指をかける。
「じゃあ……行くよ。直視しないように気をつけてね」
「わかってる。やっちまえライダー」
陽太に一度目線を送ると、ピンを引き抜き投げた。
山なりに投げられた閃光玉は象の目と鼻の先で「ポム」と乾いた音を立てると――
パシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
太陽光を何倍にも強烈にした様な閃光が、夜の闇を白一色へと染め上げた。
視界を覆った鎌田の耳に届いたのは、静かな爆発音の直後、興奮した象の鳴き声と、一際大きな地響き。
そして、ここまでずっと続いていた足音が途切れる。視界を開けば、閃光に目を眩ませた象が必死で頭を振っていた。
「よっしゃコラァ! 晶返せこの野郎!」
その事実を一足早く確認し、すでに晶奪還へ向かっている陽太。鎌田も急いでその加勢に向かう。
苦労しながらもなんとか晶の腕を掴み、二人で息を合わせて引っ張ることで、ついに晶を象から引きはがすことに成功した。
象の様子は変わらず、まだ少しは時間を稼げそうではある。とりあえず鼻が振り回されても届かない位置まで離れた。
「晶! 起きろ晶! 寝てる場合じゃねえぞ!」
陽太は意識のない晶の頬をペチペチ叩きながら大声で呼びかける。
「……うぅ…ぅん…? えぇ?」
ほどなくして目を開く晶。上半身を起こし、寝ぼけた目でゆるゆると首を振る。
「あれ? なんでようたがいるの? おもちはどうしたの?」
「よし起きたな! はい立って!」
「なにそれこわい。あ、バッタさん」
「カマキリ! はいこれ靴持ってきたから」
「おおライダーグッジョブ」
寝ぼすけの意味不明な供述はとりあえず無視。
用意周到な鎌田に感心して、晶に靴を履かせ脇から持ちあげて立たせて、その手を引いて来た道を歩き出す。
「んん……えっと……どこ行くの? っていうかここどこ?」
その顔を見ると、どうやら正気を取り戻したらしい晶。陽太は小さく溜息を吐く。
「…はぁ。やっと起きたか。走れるな? 逃げるぞ」
「逃げるって何からわあっ!?」
手を引く陽太の突然の加速に一瞬つんのめりそうになったが、なんとか持ち直して速度を合わせる。
そして聞こえてくる地響き。晶は走りながら音の聞こえてくる背後を振り向いて……
「わあああぁ! ええええっ!? 何あれ何なのあれ!?」
「象だよ! いいから走れ!」
「何で象!? 鎌田さん!?」
「僕たちにもわかんないんだって!」
大きな満月が照らす真夜中の住宅街。逃れた晶を取り戻さんと、象は再び走り出す。
一体どうすればいいのか。どこへ逃げればいいのか。何もわからないまま、三人の逃走は始まった。
<続く>
ドリアン:原産地は東南アジアのマレー半島。「フルーツの王様」や「悪魔のフルーツ」さらには「フルーツの魔王」とも呼ばれる。
玉ねぎの腐敗臭のような独特の香りを放つ。果肉は甘みがありねっとりとしていて、舌触りはクリームチーズに近い。
ドリアンの果実は臭いが強烈なため、飛行機内への持込みは禁止されている。
フグ:フグ目フグ科の海水魚の総称。多くの種類が卵巣や肝臓などに持つテトロドトキシンは、青酸カリの500倍の毒性を持つ猛毒である。
調理には専用の調理師免許が必要な高級魚。丸くユーモラスな見た目からキャラクターとして、淡水性のフグの一部は観賞魚としても人気がある。
御堂卓:獣人スレでは数少ない人間キャラクターであり、主要キャラの一角。席順は鎌田の前でその触角被害をフルに受ける苦労人。
閃光玉は悪戯ざかりの子供の頃から常備している設定の一部なのだが、なまじ平和な学園生活が主流なだけに活用される機会は少なかったりする。
登場キャラクター
最終更新:2011年05月05日 01:34