我らが放課後暇人部


タイトル:我らが放課後暇人部
作者:熊谷春樹
掲載号:2013年文化祭特別誌「citrus」



【登場人物紹介】
  • 黒沢樹……二年生。俺。
  • 折田詩織……三年生。部長。眼鏡。クール。
  • 御園楓……二年生。低身長。陽気。
  • 早川流太……三年生。眼鏡。思春期。
  • 二ジェーロ……一年生。黒人。サングラス。


 一

 そのとき、部室の中の空気は重く、淀み、沈殿していた。
「彼は……黒沢樹は、死んだわ」
 我らが眼鏡部長、折田詩織先輩は厳然とした雰囲気で言葉を紡ぐ。
「良い人でした……なんで……なんでっ!」
 低身長系女子の御園楓は、悲しみと怒気を孕んだ声色で叩きつけるように言った。
「彼は……所詮その程度だったということさ」
 ずれた眼鏡をくいっと直しながら冷淡に言い放った男は、早川流太先輩その人だ。
「そんな言い方っ……ないじゃないですかっ……!」
 御園は激昂したかのように早川先輩に詰め寄る。
「殴るなら殴ればいい。だが、そんなことをしても黒沢は戻ってこないさ」
「くっ……」
 そんな二人を薄く開けた目で見やり、折田先輩は落ち着いた口調で語る。
「とにかく、今の私達にできるのは……考えることよ。亡くなった黒沢くんのために、何をするべきか」
 その言葉で再び部屋はしんと静まり返った。
 そろそろ頃合いかな、と御園の隣に座っている俺。
 すなわち黒沢樹はつっこむ。
「いや俺死んでないですよ!」



 二

「二学期ね」
「そうですね」
 折田先輩は独りごち、俺はそれに相槌を打つ。
「この時期になったらそろそろ始めないといけないわね」
「何ですか? あ、もしかして文化祭の準備とか――」
「サピルヌス」
「…………」
 何それ。
 戸惑う俺を尻目に、他の部員二人は口々に言いだす。
「そういえばもうサピルヌスの季節か……」
「今年も秋の風物詩、サピルヌスですねっ」
「何その共通認識!」
 え、知らないのって俺だけ?  人生において聞いたことないよ、サピ……サパ……言いづらいな畜生。
「よし、今日は私達もサピりましょうか」
「サピる!? 専門用語!?」
 折田先輩の台詞を皮切りに、早川先輩と御園がスプーンを振り上げて叫ぶ。
「「FOOOOOOO!」」
「なんかめっちゃアガってる!」
 そしてそのスプーンは何だ!  サピルヌスに用いるのか!  サピルヌスって何だよ!
「私もうサピりたくてニリニリしてきましたっ」
「ニリニリってどういう状態!?」
「サピルヌスは知と力……そして運の祭典」
「どんな祭典か一ミリもピンと来ないです早川先輩! ええいスプーンを置け!」
 すると御園がチッチッチッと指を振り、握っていたスプーンをこちらに渡してくる。
 まさか……まさかこれは……!
「先割れですっ」
「心底どうでもいい!」



 三

「黒沢くん」
「はい」
「カリスマ医師を自称する引きこもりって、八割方ニートだと思うのだけれど、どうかしら」
「十割方です」



 四

「黒沢くんって、いつもつっこんでばかりいるわね」
「部長、下ネタNG」
「ノットグッドは早川先輩の頭です」
 冷ややかに言った後、
「そうですね……たまにはボケてみたいかもです」
「じゃあじゃあっ」
 しゃしゃる御園。
「今日は私達でつっこみますから、黒沢はボケていいですよっ」
「お、マジすか」
 これは嬉しいサプライズだ。
「でも改まってボケるとなると難しいですね」
「別にいいわよ、さほど期待してないから」
「おっと先輩後輩の垣根を越えて殴りたい☆」
 軽くイラっときた後、しばらく黙考。 
「そういえば俺、昨日から調子悪いんですよね」
「どこが?」
「尾骶骨」
「具体的すぎるわよ!」←折田先輩
「何基準で調子悪いんですかっ!」←御園
「繊細かっ!」←早川先輩
「いやつっこみ多いですよ!」
 結局つっこんじゃった。



 五

「大変だ!」
 放課後、早川先輩が部室の静寂を突然打ち破る大声を発する。ちなみに今まさに部屋に駆け込んできたっぽい台詞だが、十分前くらいからずっとここにいた。
 彼は通学カバンから葉書を取り出し、机の上に置いた。
「果たし状が届いたぞ!」
「既に茶番の香りがする!」
 しかし折田先輩と御園は「「な、なんだってー」」とデュエット。俺アウェー。
 俺達は身を乗り出して文面を確認する。

『朝夕に秋風を感じることができるようになってまいりました今日この頃ですが、未だ続く残暑に少しばかり閉口しております。いかがお過ごしでしょうか。
立秋ということで、蝉時雨の音も遠くなってまいりました。本物の秋が待ち遠しいですが、もう少しの辛抱です。
夏の疲れが出やすい時期ですから、お体に障らぬようくれぐれもご自愛ください』

「びっくりするほど残暑お見舞いだ!」



 六

「黒部くん、これ」
「黒沢です。あー、生徒会に提出する書類ですね」
「活動してるかどうかのチェックみたいなやつですかっ、黒川」
「これ出さないと部費おりないんだよな、確か。あと俺黒沢」
「俺達大して活動してないから書くことないな、黒木」
「そうですね。黒沢です」
「白沢くん、書いてくれないかしら」
「おっと趣向を変えてきましたか、でも俺は黒沢です。一応部長なんですから自分でやってくださいよ」
「赤沢は事務仕事向いてなさそうですよねっ」
「黒沢です。色彩シリーズやめて」
「顧問の判子貰うのはシャア専用沢の仕事だな」
「黒沢ですよ。連想ゲームやってんじゃないんですから」
「エメラルドマウンテンくん」
「もう原型ないじゃないですか。あと正直書類のことどうでもよくなってるでしょ、あんたら」



 七

 俺はいつも通り部室のスライド式ドアを開ける。
 するとぱぱぱん!  と三連続で破裂音が鳴り響いた。どうやらその音の正体はクラッカーだったようで、さながらパーティの花形のように俺の顔やら肩やらに紙吹雪が降り注ぐ。
「「「黒沢くん、誕生日の七十三日前おめでとう!」」」
 …………。
「……ありがとうございます!」
 つっこみ放棄。



 八

 ある日の折田先輩と早川先輩の会話。
「私、コンタクトに変えようかと思ってるのよ」
「(ん? よく聞いてなかった。とりあえず相槌打っとこ)そうなのか」
「でもちょっと悩んでてね」
「なるほど」
「初めては痛いらしいし」
「(!? まさかのそっち系話題か?)え、それって男……みたいなことか?」
「違うわよ。単なる気分転換」
「(女同士……だと……? しかも単なる気分転換……。やばいことをさらっとカミングアウトされたぞ。でもまだ処女なわけだし)あんまり軽々しく手を出さない方がいいと思うが」
「確かにドライアイとかだとかなり辛いみたいね」
「(何が!? どういうプレイ!?)は、激しいのか?(俺は何を言ってるんだ。落ち着け)」
「激しい? まぁソフトかハードかならハードを考えてるわ」
「(マジで!?)ソフトからにしておけよ」
「まぁ、使い捨ても便利よね」
「(怖ぇ! この女、相手を使い捨てる気だぞ!)駄目だ! 真摯に向き合わないと」
「繰り返し使えるタイプにしろってことかしら?」
「(なんで基本上から目線なんだ、こいつ)そ、そう。それがいい」
「でも私、今の眼鏡にも愛着あるのよね」
「(……? ……!)夜のお供的な?」
「いや、寝るときは外すわよ」
「?」
「?」
 はい、そろそろ俺行きます。
「二人の噛み合わなさが奇跡的すぎる! てか早川先輩の思春期っぷりがぱねぇ!」



 九

「新入部員を紹介するわ。ニジェーロくんよ」
 その言葉で部室に入ってきたのは、黒人でスキンヘッド、グラサンをかけた屈強な体つきの男。
「馴染める気がしないです!」
「何言ってるんですか、昨今の創作物を見てください。スキンヘッドの黒人なんて絶対良い奴じゃないですかっ。もしくはマフィアですっ」
「マフィアじゃん! だってグラサンだもの!」
 その時、新入部員(仮)のニジェーロがゆらりと立ち上がる。
「コニチワ。ボクニジェーロデス」
「なんてわかりやすい片言表現なんだ!」
「好キナモノハ切リ干シ大根デス」
「予想の三倍親日家だった! グラサンなのに!」
 部員が一人増えた。



 十

「落馬がしたいわ」
「ノーコメントでお願いします」



 十一

 ずびー、と鼻をかむ音。
「風邪か? 御園」
「そうかもしれないですねー。鼻水が止まりません」
 そのとき「失礼します」と一人の男子生徒が入ってくる。
「御園、ちょっといいか?」
「? あ、はいー」
 どうやら彼女のクラスメイトだったご様子。
「すいません、ちょっと席外しますっ」
 と伺いを立て、先輩二人が首肯するのを確認して教室から出ていった。
 折田先輩は机の上に置きっぱなしになっていた、御園が鼻をかんだちり紙をつまみ上げる。
「現役女子高生使用済みティッシュ……売れるかしら」
「知りませんよ!」
 先輩はチラッとこちらを一瞥。
「いる?」
「いりませんよ!」



 十二

「ニジェーロくんは日本に来てどれくらいなのかしら?」
「セヤナァ。半年位ヤロカ。セヤカラ未ダニ知ラン日本語トカ多イネンデ。ユックリ喋ッテクレントヨウ聞キ取レヘンワ」
「嘘つけ!」



 十三

折「折田詩織と」
御「御園楓と」
早「早川流太と」
ニ「ニジェーロト」
黒「黒沢樹がお送りする」
折「オールナイト八時間睡眠!」
黒「あらま健康的!」

 オープニングテーマ

ニ「サ、トイウワケデオープニングテーマ『ドナドナ』カラ始マリマシタオールナイト八時間睡眠。今週モ皆サンノオ耳ノ恋人、私ニジェーロガオープニングトークヲ致シマス」

ニ「今週気付イタコト」

ニ「ペットボトルノキャップニ付イテル未開封ヲ証明スルプラスチック製ノワッカ。アレノ正式名称ガワカンナイ」
黒「知らねぇよ! なんで初っぱなから片言の長台詞で入るんだよ!」
折「いやー元気にやっていきたいわね。さて、最初のコーナー」
黒「さらっと進行しないでくださいよ」

黒沢以外「ふつおたー」

黒「いつ打ち合せしたんですか、これ」
折「このコーナーではリスナーの皆さんから送られてきた普通のお便りを紹介していくわ。御園さん、お願いね」
御「はい、まず最初のお便りは、東京都にお住まいの『三段腹』さんからメールで頂きましたっ」

御「『このメールをあなたが読んでいるとき、既に私はこの世にいないでしょう。パソコンのハードディスクの中身は世間の目に触れないように処分しておいてください』」

黒「いや、どこが普通のお便り? 遺書の類じゃん」
折「ハードディスクの中身はなんなのかしらね」
早「三段腹さんが男性なら、まぁ八割方……否、十割方エロに関する何かだろう。『システム』みたいな名前をつけてカモフラージュしているものと考えられる」
黒「至極どうでもいい考察ですよ、それは」
ニ「続イテノオ便リー」
黒「喋ることないからって仕切ろうとしなくていいよ」
御「東京都にお住まいの『セネガリスト』さんからファックスで頂きましたっ」

御「『オールナイト八時間睡眠、いつも楽しく聞かせて頂いてます! 黒沢くんのツッコミが絶妙です! これからも頑張ってください!』とのことで」

折「…………」
御「…………」
早「…………」
ニ「…………」
黒「……続いてのお便りー」
御「サンテグジュペリにお住まいの、『肋骨戦隊折れレンジャー、焦げ茶』さんから伝書鳩で頂きましたっ」
黒「どこから片付ければいいかわかんないけど、一つだけ言っとくとサンテグジュペリは確かに地名っぽい」

御「『おいらってば釣りが趣味。君は?』」

黒「いやにフランクだな」
折「最後のお便りー」
黒「質問答えないんですか」
御「千葉県にお住まいの『御園楓』さんから頂きましたっ」
黒「お前発信じゃねぇか」

御「『このコーナーのお便りはフィクションです』」

黒「言っちゃったよ!」
ニ「一旦cm入リマース」

 ジングル

早「早川流太のっ?」
黒沢以外「恋愛相談ー」
黒「僕もその打ち合せに同席したかったですよ」
折「このコーナーではリスナーに送って頂いた様々な恋愛相談に対し、恋の伝道師こと早川流太がどんどん答えていくわ」
黒「只の思春期の間違いですよね、それ」
ニ「最初ノオ便リー」
御「東京都にお住まいの『バス通勤の電車男』さんから頂きましたっ」

御「『父親の従兄弟の叔父の知り合いの姪の隣人は私とほぼ他人』……あ、これコーナー間違ってますねっ」

黒「そのお便りはもし間違わなければ一体どのコーナーに行き着くんだい?」
折「次のお便りに行きましょう」
御「武蔵藩にお住まいの……あ、これ時代間違ってますねっ」
黒「もう訳がわからない!」
ニ「ソンナ感ジデ次ノオ便リ」
御「東京駅にお住まいの」
黒「ホームレスじゃねぇか」
御「ラジオネーム『地球は俺の家』さんから頂きましたっ」
黒「現実見ろよ」

御「『毎日決まった時間に僕の前を過ぎる彼女に恋をしました。しかし僕は自分に自信を持つことができません。どうしたらいいでしょうか?』」

黒「……まともかっ!」
折「じゃあ早川くん、答えてあげて」
早「自分に自信がない……それは自分の今の姿に不満足だと言うことだ。まずは手に職をつけよう。毎日仕事をこなしつつ、また彼女と話すきっかけを作るんだ。道行く人を好きになってしまうだなんて、きっと茨の道になるだろう。でも大丈夫、恋は大きなモチベーションになってくれるから。頑張れ」
黒「……まともかっ!」
折「以上、早川流太の恋愛相談でした」

 ジングル

折「さて、残念ながらそろそろお別れの時間よ」
黒「嬉しい限りです」
折「皆でフリートークをしながら終わりましょう」
ニ「私先日ノ朝目ガ覚メマシテネ、アレ、ッテ気付クンデスヨ。イツモツケテルサングラスガナイ、ッテ」
黒「ニジェーロくん、その話長くなりそう?」
ニ「探シテタラ東京湾ニ沈ンデタンデス」
黒「あ、聞く気がない」
ニ「私モウビックリシチャッテネ。ダイブシテ取リニ行ッタンデスケドモ、ココデマタ気付クンデスヨ。アレ、グラサンジャナクテオバアチャンダ」
黒「おばあちゃん!? なんでサングラスだと思ったの!?」
ニ「オバアチャンガ東京湾ニ沈ンデルナンテ、オカシイナト思ッタンデスケドネ、ホットク訳ニモイキマセンカラ、オバアチャンノ土踏マズヲ掴ンデ引キ上ゲタンデス」
黒「手を掴めよ!」
ニ「岸ニアゲタラ幸イ息ガアリマシテ、オバアチャン言ッタンデス。アリガトヨ、コレデ心残リナクアノ世ヘイケル」
黒「え、何、ちょっと待って」
ニ「嘘ダ、オバアチャン、昨日マデアンナニ元気ダッタノニ、ドンドン冷タクナッテイッテ……」
黒「おい! 嘘だろ!?」
折「さて、そろそろ本当にさよならよ」
黒「このタイミングで!?」

黒沢以外「さよーならー」

黒「おばあちゃああああああん!」

 エンディングテーマ




 十四

 部室に入ったらいたのはニジェーロくん一人だった。
 あまりの気まずさに咄嗟にスライド式のドアを閉めたくなる。やべぇ。ニジェーロくん明らかにこっち見てるよあれ。グラサンだからわかんないけど。やっぱ見てないかも。いや見てるよあれ。絶対見てるよもう。逸らせよ。
 俺はいつもの定位置に腰掛ける。定位置というのはすなわち普段御園が座っている席の隣。つまりこの状況、ニジェーロくんと完全に向き合う形。気まずい空気に拍車がかかるのみだった。
 俺は顔を上げることができない。なぜならニジェーロくんがこっちを見ているかもしれないからだ。ただひたすらに木製の長机の木目を見つめることしかできなかった。
 彼は今何を思っているのだろう。この時、この瞬間。俺とニジェーロくんは物理的には一メートルと離れていないが、お互いの心の距離はフルマラソン級だった。
 俺は探りを入れるという意味で、ちらりと目線を上にあげた。
 目が合った。
 目線を下げた。
 やべぇ。半端ねぇよこれもう。
 悠久と紛わんばかりに緩慢に過ぎる時間。さしもの俺も長机の木目に諸行無常を見出し始めていたが、ここでニジェーロくんはアクションを見せる。
 それは言うなれば胎動だった。我々二人の間にある停滞しきった空間が、再び色づき動き始めた瞬間だったのである。
 彼は自らのバッグの中に手をつっこむ。
 彼が取り出したものは――ネギだった。
 ネギ科ネギ属に分類される、あの長ネギである。
 やべぇ。超やべぇ。
 彼がそのネギをどうするのか。そんなこと知りたくもない、と思うのに反し、俺は彼の動向から目を離すことができなかった。
 二ジェーロくんはそのネギを……柔らかに食んだ。
 そして、ここで彼は口を開く。
「深谷ネギ」
 俺にどうしろというのだろう。というか彼は俺にその情報を提供することによって一体どのような対価を求めているのだろう。
 彼が咀嚼する音のみが虚しく反響する。
 気まずさもそろそろ堂に入り、感覚が麻痺してくる頃……二ジェーロくんは。
 食べかけのネギを折る。
 そして自らが口をつけてない方を俺に差し出してくる。
 もはや脊髄反射と形容してもいいくらい。それほどまでに即座に俺は思った。
 やべぇ――と。
 俺はそれを無視することもできず、また逆らうこともできず、ネギの片割れを受け取る。手の中のネギは、ほんのりと熱を帯び、またネギ臭かった。
 ――――嗚呼、神様……っ!



 十五

「結局、暇人部ってなんなんですか?」
 俺はいつも通りの部活中、部長に疑問を呈する。
「そうね……世の中、意味という言葉の定義が曖昧になっていることが、この部活が存在する理由かしらね」
 なんか小難しいことを言われた。
「意味は何か……そんなことを考えるのは、無駄だってことなのよ。だって、考えようによっては全てに意味なんてものはないし、また全てのことに意味があるわ」
「つまり暇人部というものに果たして意味があるかないか、それはひとえに考え方次第だということですか?」
「そういう言い方もできるわね」
 夕焼けが部室の中に差し込み、部長の黒い髪にきらきらと反射する。
「すいません、よくわからないです」
 正直な俺の言に対し、彼女は答えた。
「そうね……ただ一つ言えることは、私たちはラストシーンってことでうまいことまとめようとしてるけど、失敗してるってことなのよ」
 俺は言った。
 台無しです、部長。
最終更新:2013年12月28日 18:15