「ここが、そうなのね…?華菜っ」
「そうです、キャプテン…」
画面を見つめながら嬉し涙を流すあなたの顔を見て、チクリと胸が痛みだす。
だけど、それでも…あたしは笑顔であなたの背中を押さなければならない。
ああ、にゃんて残酷なのだろうか。
「上埜さん…やっと、あなたに会える…!嬉しい…嬉しいわ…っ」
「キャプテン…この部屋に入るには、まずHNを決めなきゃいけないんですよ」
「HN…?それはなにかしら?」
「キャプテンがこれから使うことになる、もう一つの名前…みたいなものです」
「そう…名前、ね…何にしようかしら」
頬杖をつきながら頭を悩ませるキャプテン。その頬はほんのりと赤く染まっている。
にゃんて可愛いんだ。今すぐ抱きしめてしまいたい。でも、駄目だ。
今日あたしがここに居るのは他でもない、キャプテンのためなのだから…。
ギュッとこぶしを握る手に力をこめながら、あたしは自分の気持ちをおさえつける。
「華菜、決めたわ…」
「はいっ。何にするんですか?」
「Sapphire、よ」
「Sapphire、ですか…」
その名前は、一体何を意味するのだろうか。
一瞬頭に疑問が浮かんだが、まぁ…あまり気にしないでおこう。
カチャカチャカチャ
S a p p h i r eっと…。よし、入力完了だ。
『登録が完了しました。ようこそ、Sapphireさん!』
「キャプテン、これでもう大丈夫です。さあ、始めましょう」
「ええ…ありがとう、華菜。私、頑張るわっ」
「まずは、このボタンを押すんです」
「これね…」
まるでカエルを睨みつけるヘビの目のように、マウスを熱く見つめるキャプテン。
珍しく、その目は両方とも開いている。
「あっ…」
キャプテンの手があたしの手に触れそうだ…。近い…近い!!
だめだ!だめ!だめー!!にゃあああー!!!
「ふにゃあっ………」
「か、華菜!?どうしたのっ!?」
「ハッ…!あ、ああ…なんでもありません…っ。よし、続けましょう…!」
いけないいけない。あやうく失神するところだったし。
「えいっ…!」
「にゃあっ!?…キャプテン…マウスをクリックするのに、どうしてそんなポーズをとるんですか…?」
「え…?あ、ごめんなさい…。どうすれば良いのかよく分からなくて…」
「たった今、お手本を見せたじゃないですかぁー!」
「ご、ごめんなさい…っ!ううっ…」
「ああー!泣かないで!泣かないで下さい!!ほら、こうですよ!こう、指でカチカチっと…」
「こうするのね!!えいっ…カチカチ…!」
ピロン♪
キャプテンの前に立ちふさがる扉が、今開かれた…!!!
『深刻なエラーが発生しました。システムを強制終了します』
「あ、あれ…?」
「華菜、画面が真っ暗になっちゃったわ…!」
*
翌日
「さあ、キャプテン!」
「ええ…華菜!リベンジよ!!」
サイトにアクセスし、IDを入力して部屋に入室する。
ピロン♪よし、今日は画面が黒くならないぞ!ここまでは全て順調だ。
あとは、キャプテンが文字をタイピングするだけ。
「は……じ……め……ま………し……t」
「…んん?!」
ポチ、ポチ、ポチッ。非常にゆったりとしたリズムがキーボードに刻み込まれていく。
はじめまして、と打ち込むだけで既に3分が経過。これはちょっと遅すぎる…。
のどっち:ちょwwwなにこいつwww荒らしかおww?
紫炎姫:荒らしUZEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!とりあえず強制退出でおk?
のどっち:おk
「華菜…この人たちはなんて書いているのかしら?私にはよく分からないわ…」
「さ、さあ…なんでしょうね、きっと何かの暗号ですよ…あはは」
『エラー:強制退出措置をとられました。本日から一週間、この部屋に入ることができません』
「あっ…」
「あら?また画面が変わっちゃったわよ、華菜!」
*
一週間後
「キャプテン!練習の成果を見せて下さい!」
「ええ!まかせてっ」
カタカタカタカタカタ…!
『初めまして、こんにちは。よろしくお願いします』
「おお!すごいじゃないですかっキャプテン!!たった一週間で、よくぞここまで…!」
「うふふ…上埜さんに会うために、頑張っちゃった♪」
グサリ。ああ、やっぱりあなたの目には清澄の部長しか映っていないんですね…。
胸が苦しい。でも、せっかくここまで来たんだ。
ここまで来たからには、なんとしてでもキャプテンに幸せになってほしいし!
「それじゃあ、キャプテン…私はもう帰ります」
「あら、帰っちゃうの?」
「はい…。キャプテン…幸せになってくださいね…!!!」
「華菜ー!!」
キャプテンの叫び声を背中で受け止めながら、あたしは走った。後ろは振り返りません。
だって、振り返って目が合ってしまったら…そしたら、あたしの心が揺らいでしまいそうだから。
*
Sapphireさんが入室しました
Sapphire:こんにちは、初めまして。初心者ですが、どうぞよろしく
のどっち:荒らしキター!こいつ、懲りねえなwwいつまで粘着すりゃ気が済むんだよww
紫炎姫:まあまあ…こないだは強制退出させたけどさ、どうせ暇なんだし、今日は少しだけ話相手でもしてやろうぜww
のどっち:おkwwww
Sapphire:よろしくお願いします
のどっち:で、あんたのそのHNはなんなんだ?ww
Sapphire:サファイア、と読みます
紫炎姫:いやいやwそれは聞かなくても分かるからww
のどっち:何でそんなHNにしてんだって聞いてるんだよwもしかしてカッコいいとでも思ってんのww??
Sapphire:はい、思ってます。これは、私の好きな人が教えてくれた、素晴らしいお話に基づいて決めたのです
Sapphire:その人に会うために、ここに来ました。そのために大切な人を失ってしまった
のどっち:・・・・・
紫炎姫:・・・・・・なんだ?急に語り始めたぞ
Sapphire:うえnさん…どこに居るのかしら…
Sapphire:うう…っ…早くあなたに会いたい…!うえのさん…
のどっち>紫炎姫:おい・・・どうするよ、これ
紫炎姫>のどっち:参ったな・・・。だが、うえのってどこかで聞いたことある名前だ…
のどっち>紫炎姫:知るかwwとりあえず、こいつはほっといて、別部屋で打ってこようぜw
紫炎姫>のどっち:了解w
*
一時間後
Sapphire:ああ、うえnさん…あなたはあの時、私に何を言いたかったのですか?
Sapphire:あれからあなたのことが、ずっと忘れられないんです…
Sapphire:個人戦であなたに思い出してもらえた時は、本当にうれしかった…
Sapphire:そういえば、こんど4校合同合宿がありますね…
Sapphire:またあなたに会えると思うと、緊張して夜も眠れません…
Sapphire:次こそは、あの話の真相を教えて下さいね…!
Sapphire:そして、できることならあなたと一緒に温泉に…うふふ♪
のどっち>紫炎姫:まだやってたのか・・・orzってゆーかこいつの正体特定したんだがw
紫炎姫>のどっち:私も特定した・・・・。
のどっち>紫炎姫:どうしよ・・・
紫炎姫>のどっち:なんだか見てて可哀想だから、おまえんとこの部長との仲を取り持ってやったらどうだw
のどっち>紫炎姫:ああん?なんで俺様がそんなことをwww
紫炎姫>のどっち:こいつと仲良くなれば、合宿で色々とSさんの件でお前に協力してくれるかもよw
のどっち:その手があったか・・・!!!
紫炎姫:おい・・・
のどっち:Sさぁああああああん!!!待ってて下さい!!!
のどっちさんが退出しました
紫炎姫:冗談のつもりだったのにorz
おわり。
ってゆーかぶっちゃけキャプテンがのどっち予備軍になりかけている…!
- GJです。キャプテン参戦か……大事な所で落ちるんですねよくわかります -- ※の人 (2009-12-08 20:44:02)
- 乙!キャプテンついに「ゲスト(1)」卒業できたのかw -- 名無しさん (2009-12-09 22:45:19)
最終更新:2009年12月09日 22:45