ハイパー黒歴史たいm
設定は適当。多分、先輩ズvs後輩ズの後日あたり
左目で店内の時計を見る。
ちょうど午後2時30分を過ぎた頃の、ファミリーレストラン。
昼時のピークは過ぎても、まだ店内は多くの人で賑わっている。
大学が近いからだろう。大学生と思われる若者が大半を占めていた。
何となく、雰囲気で分かる。
右隣りのテーブルに目をやると、リクルートスーツを着た女性が二人、愚痴を言い合っていた。
休日だというのに、企業の面接を受けてきたらしい。………両者とも、憂鬱な顔をしている。
将来のことは、まだ分からない。
でも、私もいつかスーツに身を包み、会社回りをする時がくるのかもしれない。
その時までには、日本経済がもう少し上向きになっていてほしい。
左隣りのテーブルには、英語で書かれた文献を熱心に読む男性がいた。
所謂「論文」というやつだろう。高校生には縁がないものだ。
右目を少しだけ開き、ちょっとだけ内容を盗み見てみる。
………やはり、専門用語は分からない。
「gene」は確か「遺伝子」という意味だ。どうやら、科学論文らしい。
私の目の色も、遺伝的な要因からきているのだろう。
詳しいことは分からない。昔は調べようとさえ思わなかった。
でも今は、それほど抵抗を感じない。
何故かと言われれば、彼女のおかげなのだろう。
………少しだけ、脈拍が上がった気がする。
なるほど。そういった道に進む、という選択肢もある。
今からでも遅くはない。
試しに、白衣を着て実験に勤しむ自分を想像してみる。………似合っていない。
「本当、どうして忘れていたのかしらね」
後ろから聞き慣れた声がした。
いや、聞き慣れてはいない、か。今でも敏感に反応してしまう。
「そんなに綺麗な目なのに。ボケちゃったのかしら」
「まだ高校生だろう。早過ぎだ」
上埜さん―――いや、今はもう上埜さんではない。
清澄高校麻雀部部長、竹井久。
そしてもう一人。
鶴賀学園麻雀部、加治木ゆみ。
~~~
あのネット麻雀を利用するようになってから、この面子でお茶を飲む機会が増えた。
初めて「オフ会をしよう」と声をかけられた時は、正直なところ、かなり迷った。
………あの部屋に入ると、自分でも考えられないような発言ばかりしている。
初めてのオフ会で、二人が「Sapphire=私」だと知った時、唖然としていた。
当たり前だ。
それほどまでに、私はあそこでとんでもない発言を繰り返していたから。
………今でも恥ずかしい。
「今度会う時には、蒲原にも声をかけてみようと思うのだが」
「賛成。人は多い方がいいに決まってるしね」
「じゃあ、私は
弓野さんにも」
自分で言うのもなんだが、私は同い年の友人が少ない。
多分、私の性格が原因だ。
だから、こういう場は本当にありがたい。何て居心地がいいんだろう。
………こんなことを言うと、また弓野さんに怒られてしまうかもしれない。
『私は友達じゃないのか』
「………そうだ。忘れないうちに渡しておこう」
「あら、何かしら」
「牌譜だ。合宿の時に、いくつか渡しただろう?あの時に渡し忘れたものがあってな」
「………渡し忘れたにしては、結構な量ですね」
「いつもありがとう。ここまでされたら、何かお返しをしないといけないわね」
「なら、全国での成績で返してもらおうか」
「一回戦突破ぐらい?」
「今すぐ牌譜を返せ」
「冗談よ」
「………相変わらずですね」
この二人はどこか似ている。
と言っても、ほとんどの人には分かってもらえないと思う。
お互いに、何か通じ合うものがあるのだろう。
ネット麻雀でも、二人は一緒にいることが多い。
そういえば、紫炎姫さんは「畑と
マグロコンビ」なんて言っていたっけ。
不思議と、二人の関係を羨ましいとはあまり思わない。
この二人は、何か特別な絆で繋がっているのだと思う。
それが何なのかは、うまく形容できない。
「やれやれ。東京へは、福路の応援のためだけに行くとするか」
「え、私ですか?」
「ちょっとちょっと、私は?清澄は?」
「呼び出しボタンを押してもらえるか。注文がしたい」
「………意地悪しないでよ」
「冗談だ」
………やっぱり、似てる。
~~~
「というわけで、作戦会議」
「え?」
「今度は負けるわけにはいかないわよ。対1年生ズ団体戦!!」
「………またやるのか。君も好きだな」
「あら、ゆみだって結構ノリ気なくせに。また参加してくれるんでしょ?」
「断る理由はないさ」
「美穂子はどう?」
「あ、はい!ぜひ参加させて下さい!!」
「おぉっと。やる気満々ね」
………名前で呼ばれる度に、一々心を弾ませていても仕方ない。
でも、一向に慣れる気配がない。
「次はきっと咲が出てくると思うから、前よりも強いわよ」
「問題ない。前回は向こうの作戦がたまたまうまくいっただけだ。次はそうはいかない」
「………やっぱり貴女もノリノリじゃない」
「私も次は絶対に勝ってみせます!前回のように……は………」
「………あはは。前回はねー、その、あれはやっぱり私のせいよね」
「当たり前だ。急にあんなことを言われたら、誰だって動揺する」
「……………」
後で聞いた話だが、あれは弓野さんの提案だったらしい。………弓野さん。ありがとう。
「む、もうこんな時間か。すまないが、私はこの後用事があってな」
「そう。じゃあ、続きはまた今夜にやりましょう」
「分かりました」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
でも、また次があるから名残惜しくはない。
あの部屋に行けば、また久さんに会える。
………一々名前で呼ぶ度に照れていても仕方ない。しかも、心の中で。
~~~
Sapphireさんが入室しました
Sapphire:こんばんは
紫炎姫:使えない子ノシ
のどっち:ようゴミクズ
いつも通り。もうこの挨拶にも慣れた。
ここではかなり名が知れている、有名なコンビだ。
………挨拶には慣れても、リアルとのギャップにはまだ慣れない。
のどっちさん。
いつも年増扱いしている畑石さんが久さんだと知ったら、どんな反応をするんだろう。
ちょっとだけ興味がある。
ステルスモモ:こんばんはっす宝石さん
namber:こんばんは、Sapphireさん
ステルスモモさん。
加治木さんとはとてもいい関係だそうだ。少しだけ羨ましい。
namberさん。
どうしてこんな真面目な子が、この部屋の常連になりえたのか。今でも不思議だ。
畑石さんが入室しました
畑石:こんばんはー
紫炎姫:使えない子ノシ
のどっち:出やがったな
ステルスモモ:こんばんはっす
namber:こんばんは、畑石さん
畑石:かじゅさんはまだ来ていないみたいね
Sapphire:そうですね
紫炎姫:まーたこの部屋で待ち合わせかよ。いい加減、別部屋建てろっての
のどっち:「年増部屋」とかな
ステルスモモ:先輩は年増じゃないっす!!
namber:畑石さんは年増じゃありません!!
畑石:ありがとうnamber。ホントいい子ね、貴女は
namber:そ、そんな
紫炎姫:シッシッ!!!あっち行け!!
ステルスモモ:あれ?待ち合わせってことは、また先輩と連絡取り合ってたんすか?
畑石:というか、今日リアルの方で会ってたのよ
ステルスモモ:・・・・・・うー。またっすか
………この部屋の面子の関係はややこしい。久さんも、ややこしくしている一人なのだが。
畑石>Sapphire:さて。私達は向こうの部屋に移動しましょう
Sapphire>畑石:分かりました
清澄部屋。久さんと一緒に、二人っきりで別室へ。
別に深い意味はない。
~~~
超会長:なかなか来ないわね、ゆみ
Sapphire:そうですね
Sapphire:・・・・・・あの、久さん
超会長:何?
Sapphire:将来のことって、考えたことがありますか?
超会長:いきなりな質問ね・・・・・・
Sapphire:あ、そんなに難しく考えないで下さい。卒業したら、どうするか、とか
超会長:あー、なるほど。そうよね
超会長:結果はどうあれ、今年の夏が、麻雀部としての最後だしね
以前久さんは、将来はファンド会社を立ち上げる、なんて話をしていた。
秘書は加治木さん。私にもお誘いがきた。
さすがに、あれは冗談だったらしい。それもそうだ。
………加治木さんは今でもノリノリだ。
久さんは進学を希望している。具体的な大学名は分からない。
私も同じだ。進学を希望してはいるが、私は大学に入って何を学びたいのか。
高校3年生にはありがちな悩みだろう。
弓野さんは「そのうち見つかるでしょ」なんて言っていた。
………説得力がない。
文系か理系かを、あそこまで適当に選んでしまう人がいるとは思わなかった。
超会長:今は麻雀のことしか考えられないっていうのが、正直なところよね
超会長:私って結構不器用なのよ
Sapphire:そうですか
超会長:あ、でもね
Sapphire:?
超会長:最近、たまに想像するの。大学に通う自分の姿をね
Sapphire:・・・・・・私はまだ想像できません
超会長:私だって、そこまで突っ込んだ想像はしないわよ
超会長:想像というか、願望なのかもしれないわ
Sapphire:願望?
超会長:貴女がいるのよ
Sapphire:
Sapphire:え?
超会長:大学に通う自分の隣には、貴女とゆみがいるの。ただそれだけ。そんな妄想
Sapphire:・・・・・・
超会長:ごめんなさい。こういうことを言うのって、よくないわよね
超会長:美穂子は真剣に、進路について考えているのに
Sapphire:・・・・・・いえ、あの
Sapphire:ごめんなさい。少し席を外します
超会長:え?どうして?
涙脆いにも程がある。また華菜に笑われてしまう。
………何故泣いているのかすら分からない。
いや、嘘だ。
分かりきっている。理由は簡単だ。
どんな大学にいくのかはまだ分からない。
何を学ぶのかも分からない。
大学に入ったら、やっぱりバイトをするのかもしれない。
何のバイトかは分からない。
サークルに入るのかもしれない。
何のサークルかは分からない。
沢山の講義を見て回るだろう。
何の講義を受講するかはまだ分からない。
もしかしたら合コンなんかにも参加するのかもしれない。
………いや、それはさすがにないか。
ゼミに入り、専門的な知識を身につけることになるかもしれない。
どんなゼミなのかは分からない。
白衣を着て、試験管をいじっているのかもしれない。
似合っていないことは確かだろう。
就職するために、色々な企業を見て回るかもしれない。
どんな企業なのかは分からない。
分からないことだらけで。
不安だらけだ。
でも、私の隣には久さんがいるのかもしれない。
加治木さんもいるのかもしれない。
弓野さんや蒲原さんもいるのかもしれない。
ただそれだけのことが。
この涙の理由なのだろう。
………説明になっていない。
超会長:おーい。美穂子ー
いまだに涙は容赦なく溢れてくるが、これ以上心配をかけてはいけない。
そろそろ戻った方がいい。
いつもの日常。いつも通りの生活へ。
涙を堪えつつ、慎重にマウスをクリックする。
………ガガガガガガ
いつも通り。突然パソコンのハードディスクは不吉な音を出し始め、
―このプログラムは不正処理を行ったので強制終了されます―
―――いつも通り。謎の強制終了に悩まされた。
- いい話GJ! -- 名無しさん (2010-04-16 22:44:35)
- いい話なのにやはり落ちはいつも通りwタイトルはそこかw -- 名無しさん (2010-04-17 01:56:57)
- ジーンとさせといて最後の最後で…w -- 名無しさん (2010-04-17 02:43:13)
最終更新:2010年04月17日 02:43