新・HNリレー小説【第六回】
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1 名前:天塚銀樹 2009/05/31 12:28 ID:9U.MAObm
親愛なる諸君、ネタの貯蔵は十分だろうか?
数度にわたり壊滅的被害を被ってきたこのスレッドだが、辛うじて息吹を保ち続けている。
この物語の先にあるのは邪神の復活による支配だろうか?それとも異常者たちによる新秩序だろうか?
或いは…隣人が隣人を食らう混沌か?
混沌に言い寄られるほどに愛される皆様、眠る際は混沌に這い寄られ無いようご注意を。
2 名前:森本 2009/06/04 23:54 ID:.E3cBBOP
(中の人)「新スレおめでとう!」
(?) 「いやあ、僕、このまま消失するかと思いましたよ。」
(中の人)「おや?新キャラかい?」
(?) 「ちがーーう!」
>>(前回の)285
黒田は泣きそうな顔になっていた。それを見たリタの顔は、いつもの通りだった。しかし、彼女の眼だけは、驚いたかのように開かれていた。
黒田の真ん前でリタは歩みを止めた。
「…私は、リタ・エイブナーだ。」
前半は小さく、後半はハッキリと言った。
3 名前:Ⅳ 2009/06/05 00:12 ID:/F9fL11v
別スレでも言ったがあえて言おう。新スレオメ!!!!
>>2
「ッ!!お前ッ!」
今まで何処に行っていた!?そう恫喝しようしたが、そうじゃないだろと頭の中で冷静な自分が言ったのが分かった。
そのときやっと黒田は自分の醜態に気づく。
「ッ!」
急いで言葉を飲み込み目元をドレスの袖で拭き、
「・・・ああ、知ってるよ。」
ふぅーと息を吐き呼吸を整える。そして真っ直ぐに視線を向け、
「・・・何処か行くならせめて行き先を告げてもらいたかった。
そして・・・・」
そして・・・次の言葉を言うとき黒田は顔を赤くし、
「「行ってきます。」の一言も欲しかった。」
そこだけ目を逸らして言った。
4 名前:森本 2009/06/05 00:31 ID:Kx4F/024
「!」
リタは、てっきり黒田から、「お前、今さらなんだ?」くらいにしか言われないだろうと、勝手に思っていた。
しかし、実際は自分を、見て、泣いて、照れながら、『「行ってきます。」の一言も欲しかった。』なんて言葉まで言っている。
「ごめんなさい。」
普段の彼女からは絶対に出ないであろう言葉が漏れた。そして、冷たい印象すらあった顔は、赤くなり、今度はリタが泣きそうになる番だった。しかし、黒田と違って顔は黒田に向けたまま、
「ただいま。」
と、無表情で泣きながら言った。
そして、リタはそっと、黒田の左袖を自分の右手で握った。
十一年ぶりに彼女は人に甘えた。
5 名前:Ⅳ 2009/06/05 00:42 ID:/F9fL11v
>>4
「ああ、お帰り。」
相変わらず真っ赤な顔で目も合わせられない状態、おまけに服装はゴスロリとかいうカオスで情けない格好の自分に黒田はため息をつく。
だが、その表情は何処か穏やかであり、
ーー嬉し泣きがしてみたい。
かつて少女が言った言葉を思い出し、心が満たされるのを感じていた。
6 名前:森本 2009/06/05 00:51 ID:Kx4F/024
>>4
しばしの、静寂。リタは何かを言おうと口を開いた。しかし、それよりも先に口を開いた人間がいた。
「あ!いたいた。ここにいたの。」
なんとも、空気の読めない声が屋上に響いた。
屋上の入口から、黒い簡素な軍帽をかぶった男子生徒が出てきた。
「どうも、久し振り。黒田君。」
背は高くも低くもない男子生徒は、黒田になれなれしく声をかけた。
7 名前:森本 2009/06/05 00:52 ID:Kx4F/024
>>6
↑上記の>>4は>>6の間違いです。
8 名前:Ⅳ 2009/06/05 01:01 ID:/F9fL11v
>>6
「・・・おお!あれ!?なんでお前こんなとこに居るの!?」
馴れ馴れしく声をかけてきた男子生徒に対し、少しの間を置いてから驚いた顔を『作って』応じる。
そしてリタの頭に手を置き、
「悪い。ちょっとこの格好も着替えたいし、ちょっと待っててくれ。」
そう言ってやってきた男のほうに向き直り、
「おいおいおいおい、久しぶり。なんだよお前。その格好・・・転校してきたのかよ。」
負けず劣らず馴れ馴れしい態度で近づいていき、
「下で話そうか。」
耳元でそう呟くと、下に落ちていた制服を拾い強引に下に連れて行く。
9 名前:森本 2009/06/05 01:08 ID:Kx4F/024
>>8
「え?」
リタは慌てた。黒田には、待てと言われたが、しかし……。
「え?嬉しいなあ。わすれられていなかったんですね。」
黒田に引きずられながらも軍帽は話し続ける。
「しかしまあ、久しぶりに見た、君の姿にはびっくりしたよ。まさか、ゴスロリの趣味があったなんて!あ~でも、まあ、リタはそんな事は気にしないよ。あの娘は、女の子だけど服装には無頓着でねえ。いや、それよりも驚いたのが……」
いつまで喋っている気なのだろうか?
10 名前:Ⅳ 2009/06/05 01:21 ID:/F9fL11v
>>9
「黒田清隆、久しぶりにあった人間の名前が変わっていた。
姓だけで無く名前までも・・・か?」
陽気に話す男の喋りに割り込む。
「・・・さしもの『魔王』も人の記憶までは消せないからな。いつかはこんな日が来るとは思っていたさ。
まぁ不審に思うのは当たり前だよな。両親は海外に出張、『兄』も4年前から海外に居るなんて・・・そんなギャルゲみたいな設定いくらなんでもおかしいもんな。」
自嘲気味に笑い黒田は、
「んで?『僕』のことを知ってる君は何しに来たのかな?
どういうご用件かな?出来ればシンプルに言ってくれると助かる。」
『昔の口調』で目の前の軍帽の男に尋ねる。
11 名前:森本 2009/06/05 01:28 ID:Kx4F/024
>>9
「え?君、名前が変わってたの?それと家族設定も嘘なの?」
男子生徒は万歳をするかのように手を上にあげた。
「それと、なんか勘違いしてはいませんか?」
男子生徒は軍帽を頭から取った。
「やっぱり、忘れていましたね。」
軍帽の下から、森本の顔が出てきた。
12 名前:Ⅳ 2009/06/05 01:36 ID:/F9fL11v
>>11
「・・・べッ!別に忘れてなんか居ないわよぉ!!かッ勘違いなんかしてるとジャッジャンクにするわよぉ!!(やっべ~、昔の知り合いだと思ってやっちまったよ・・・orz)」
顔を真っ赤にして銀様化、本日の黒田君は戦力7割減です。
「あ~・・・で、なんか用っすか?つか何しに来たのマジで?
つ~かいい年こいて学生服っすか?キツイ!!キツイよもう!!」
反撃の為に言ってみるも、銀様コスじゃぶっちゃけオマエモナ~である。
13 名前:森本 2009/06/05 01:46 ID:Kx4F/024
>>12
「う!?あのさあ、一応君らと、同い年だよ?君の火が好きな友人からも、『本当に17歳!』とか言われたんだよ……。」
黒田の力のない反撃は、以外と利いたらしい。その証拠に森本のテンションは下がった。
「どうせ、老けていますよ……」
森本はいじけた。
「だから、会いたくなかったんだ。畜生。やっぱり逃げときゃよかった。冷血漢が……」
しゃがみ込んで、八の字を書いていても、黙る気はないようだ。
14 名前:Ⅳ 2009/06/05 01:52 ID:/F9fL11v
>>13
「(ふ・・・勝った・・・)ま・・・まぁまぁそんなに凹まないで下さいよ。俺もちょっと言い過ぎました。」
優越感丸出しの営業スマイルでそう言いながらひとまず着替えを始める。
「いやぁびっくりしましたよ。まさか森本さんがリタと一緒に現れるなんてね。
しかし詮索するようで悪いですけど、リタとはどういう関係で?」
まぁ同僚だとかそんなもんだと思うけど一応訊いてみる。
15 名前:森本 2009/06/05 02:02 ID:Kx4F/024
>>14
「あら?聞いてない?」
森本は手弄りをやめて黒田を見た。そして、後悔した。
ああ、こんないい顔しちゃいますか。
森本の表情は、また曇った。
「まあ、同僚みたいなもんですかね。まあ、仲は悪いけど。」
そこで、彼は言葉を切った。
「まあ自分がここにいるのは、リタだけじゃ、次回の戦争があれだから『こっちに来い!』って無理やり連れてこられたんだよね。」
森本は苦笑した。
16 名前:Ⅳ 2009/06/05 02:12 ID:/F9fL11v
>>15
「次回の戦争?ああ、ラッパがどうのとかいう騒ぎのことですか?
まぁ森本さんが戦力として来てくれるなら心強いといえば心強いですけど。」
プロの戦闘屋がこちらサイドで動いてくれるなら好都合だ。
「まぁ上の理不尽な命に振り回されるのは現場の宿命ですよ。
もっとも、俺は主に振り回す方の人間ですけど。」
だからいざとなったら馬車馬の如く働かせ、使えなくなったらボロ雑巾のように捨ててやるよ・・・とまでは言わなかった。
17 名前:森本 2009/06/05 02:31 ID:Kx4F/024
>>17
「やっぱり、君は鬼だよ。」
森本は立ち上がって、溜息をついた。
「本当は来たくなかったんですよ。それを、無理やり、本部の連中が、『組織から半分抜けているとはいえ、今のところ空いてるのは、お前だけだ。だから行け!断ったら付きまとってやる!』って言ってきたんですよ。そりゃあ、酷いったらありゃしない。本当に付きまとってきたんですよ!簡単に殺せないからって、嫌がらせしてきたんですよ!鬱陶しい事この上ない。そんでもって、最後の最後にゃあ、呪い付きの奴らまで引っ張りだしてきた。まあ、そこまでは、良かったんだけどね。断れたから。」
森本は、黒田の顔を見ながら言った。
「本当の最後に、リタがやって来て、頭下げたんだよ。自分に向って。お願いだから来てくださいって。だったら、来るしかないよねえ。」
黒田を見る森本の顔は、相変わらず苦笑していた。
18 名前:Ⅳ 2009/06/05 02:54 ID:/F9fL11v
>>17
「・・・アイツが頭を・・・ふ、どうやら俺は道化にならずに済んだようですね。」
森本が苦笑するのを見て同じように笑う。仲の悪い人間に頭を下げてまで来てもらう理由・・・思い当たるものなんて一つしかないし、その答えは自分と彼女の立場を逆にしてみれば簡単に出てくる。
「そうですか。そうですよね。アイツが何も無しに居なくなるわけないですからね。うんうんよ~し。」
最高に機嫌よく笑うと、
「最も信頼できる近しい人物が頭を下げてくれてまで呼んでくれた戦力だ。存分に使わせてもらわないとダメだよな?
そういや森本さん簡単には死なないんだよね?つまり『とっても長持ち』っつーわけだよね?
いやぁ丁度欲しかったんですよ。新たな戦力(敵陣にぶっこませてかき乱す『駒』)が。」
アハハハハと笑い森本の肩を叩き、
「リタががそこまでして来てくれた戦力です。(戦果を)期待してますよ。」
先ほどよりもと~~~ってもいい笑顔を森本に向け、期待の眼差しを送る。
誰かが言った。『目は口ほどにモノを言う』と・・・
そう確かにその目は・・・
(俺の下に来たからには楽に死ねると思うなよ?)
確実にそんな感じの内容を映していた。
19 名前:森本 2009/06/05 11:56 ID:Kx4F/024
>>18
やっぱり、森本は後悔した。
なんで、あの女(リタ)は面倒な事しか持ってこないんだ!そして、この魔王みたいな奴は何だ?本当にただの一般民衆なのか?絶対違う!ああ、何でこんな奴が学生なんてやってんだ?まあ、いいや。考えてもしょうがない。
確かに、自分は『敵襲撃の際の遊撃をせよ、そして可能な限り黒田の言うことに従え。ただし、彼が敵に加担した場合、リタ共々これを殺害せよ。』との命令だから、今のところ黒田からは逃れられない。
どうして、本部は時間が経てば経つほどに、黒田を重要視するんだ?こいつに何があるんだ?この冷血漢に何があるんだ?まあ、いいや。考えても分かんないから。しかし、まあ、
「意外だ。君に信頼できる人間がいたなんて。」
森本はぽつりと、それだけを口から漏らした。
「それが、あいつだなんて。」
20 名前:Ⅳ 2009/06/06 01:00 ID:d.zRhunP
>>19
「意外・・・か。そこには同意しますよ。俺も少し驚いていますし。」
少し前の自分だったら軽々しくそんな言葉は吐かなかったし、何より派遣されてきた人間など駒としか思わなかったはずだ。
なんだかんだで自分は変わっている。そしてだんだん離れてしまっているのだろう。
『魔王』の後継である自分から・・・
「ただ・・・良いものですよ。家に帰ったときに「お帰り」と言ってくれる『家族』が居るのも。
俺はここ数年間それを忘れてしまっていましたから。」
21 名前:名無しさん 2009/06/06 15:59 ID:mi3drV/j
>>20
「いいなあ。」
森本は一言だけ、地面に向かって無表情に言った。しかし、彼の内心は無表情からはほど遠かった。
皮肉だ。とても皮肉だ。何かの冗談じゃないか?この冷血漢が家族の温かみを知っていて、リタの方が家族の暖かみを知らない。いや、むしろリタは家族に裏切られている。皮肉すぎるよ、神様。もう、いいや。
彼はここで、思考を止めた。そして、露骨に嫌そうな顔をしながら
「とりあえず、よろしく。」
と握手もお辞儀もなしに言った。そして、その顔のままこう言った。
「それで、まあ、早くリタを迎いに行ってやってください。あれはきっと、あなたの命令に忠実ですから。それと自分は、ここで待たせてもらいますよ。」
森本はとても面白くなさそうだった。そして、学生服には似合わない軍帽をかぶった。
22 名前:森本 2009/06/07 01:12 ID:Irve5alB
>>21
名前を忘れていました。
23 名前:Ⅳ 2009/06/07 02:46 ID:mVgkvUxG
>>21
「そうですね。せっかく再会できたのに放置ってのも流石に悪いし・・・」
そう言って歩き出して森本とすれ違う際に一旦止まり、
「ああそうそう、そういえば『よろしく』の前に言っとくことがあった。」
突然黒田は敬語を止めて口を開く。
「俺の下につくっつーなら敬語は此処でお仕舞いだ。ついでにこの際『森本さん』っていう堅苦しい呼び方も止めさせてもらう。
その代わりそっちも好きに俺のことを呼んでくれてもかまわない。」
ニヒルに笑いそれだけ言うと、
「よろしくな、『織部』。」
片手を上げてスタスタとリタの方へ向かい、
「お待たせ。」
すぐにいつもの笑顔に戻して彼女に声をかけた。
24 名前:森本 2009/06/08 01:44 ID:qTwO9O/3
>>23
黒田が屋上からいなくなったあとに、リタはしばらく悩んでいた。黒田に事情を説明すべきか、そうしないべきなのかを。
結局、彼女は黒田からの命令を遵守することにした。
「はあ。」
リタは今まで緊張していた体をほぐすように息を吐いた。同時に柔らかい風が彼女を包んだ。そして、彼女は自分の頬が冷たい事に気づき、そっと右手で頬をなでた。その手には水が付いていた。
「うそ…。」
彼女は初めて自分が泣いていたのを知った。知ると同時に彼女は制服の袖で乱暴に涙をぬぐった。鼻の頭と、目の周りが少し赤くなった。
彼女はなぜ自分が泣いたかが、分らなかった。分かるはずもなかった。彼女は泣きたいから泣いたという事実を無意識に否定した。彼女は不安になった。はたから見れば、ただ立っているだけだ。そこに、
「お待たせ。」
黒田が人当りのいい笑顔をして帰ってきた。
「別に、待ってはいない。」
無表情で(鼻の頭が赤いが)彼女は言った。
確かに、彼女自身の感覚から言えば待たされてはいなかった。
黒田の後ろでは、森本がその様子を見て、『そんな返し方があるか?少しは笑えよ』と声に出さずにあきれていた。
25 名前:Ⅳ 2009/06/08 02:11 ID:pbQWmoSk
>>24
(こういうところは変わってないないんだなぁ・・・コイツ。)
そんなことを考えながらも、変わらないリタの姿を微笑ましく感じる。
そんな自分はやっぱり変わったんだなぁと考えながら目の前の赤毛の少女に目を合わせる。
「織部から話は聞いた。姿を消している間に色々と動いてくれていたようだな。」
そう自分は変わった。本来ならばその後に『ご苦労』と続けるはずなのに・・・
「ありがとう。」
そんな言葉を口にしてしまうのだから。
ただ一つだけ不安に思う。自分はいざというときに・・・
「それじゃあ行くか。」
自らが生き残るために目の前の少女を切り捨てることが出来るのだろうかと・・・
26 名前:森本 2009/06/08 15:15 ID:qTwO9O/3
>>25
「ありがとう。」
そう言われたリタは、疑問とともに、わずかに嬉しさを感じた。
「…必要な事をしただけです。」
リタは戸惑っていた。黒田は自分を部下ではなく、別のもので褒めたのだ。そのため、わずかに返答が遅れた。
なんで?なんで、お礼なんて言われるのだろう?あなたは上司なんですよ?そして、それが、なぜだか嬉しい。人から褒められて嬉しいなんて、お母さんが……。
彼女はそこで、思考を切り上げた。その先にある結末を回避した。
その思考を森本は邪魔をした。
「まあ、それで、これからどうします?校内に持ち込まれている爆薬を廃棄しますか?それとも、連中が動くまで待ちますか?それとも打って出ましょうか?ねえ、黒田さん?」
相変わらずの下手な敬語で森本は尋ねた。しかし、その口調とは裏腹に、壁にもたれかかり手をだらりと下げた、だらりとした姿勢で物を言っていた。ちなみに、その顔はニヤニヤと笑っていた。
27 名前:Ⅳ 2009/06/08 19:50 ID:pbQWmoSk
>>26
「無理して敬語を使わなくていい。むしろ同年代で敬語を使っていては周りが不審がる。
んでもって繰り返し言うが、呼び名も好きにしていい。もっとも、『さん』付けが好きなら止めないが。」
スパッと切るように森本にそう言い放つ。
「んでもってそうだな・・・ひとまずは静観することにしようと思う。
理由は3つ、たとえ今持ち込まれている爆薬を廃棄しても相手はまた新たに持ち込むだけ。
そしてひとたび回収すれば相手に警戒心を与える上に俺達の存在を匂わせることになる。
そして・・・」
ふうっと息を吐いて爽やかに笑うと、
「『その程度』の雑事、わざわざ俺達が動く必要はない。連中が校内に爆薬を持ち込んでいる理由はまだ不明だが、
こんな早期から情報が漏洩している時点でその器量はたかが知れる。
連中が動いているなら好きにさせておけ。こっちはこっちで他にやることがあるしな。」
森本とリタに背を向けて屋上から出る。
「授業後に少し行きたい場所がある。恐らくそちらにとっても有益なものになると思うが・・・ついて来るか?」
28 名前:森本 2009/06/09 12:12 ID:Yra60O5g
>>27
森本とリタは黒田の後を自然と続いた。リタは黒田の右斜め前に、森本は左斜め後ろについた。
「付いてきますよ。」
森本はニコニコしながら言った。そして、
「まあ、そっちは言わずもがな、行くんでしょうね。」
リタにも声をかけた。
リタはこくりと頷いた。
29 名前:Ⅳ 2009/06/09 20:52 ID:Cn3JPSV6
>>28
「それじゃあ帰りに校門集合で。まあやることと言っても大それたことじゃない。」
めんどくさそうに頭を掻いて黒田は言った。
「唯の見舞いだ。」
30 名前:森本 2009/06/09 22:24 ID:Yra60O5g
「?」
森本の顔には見事な、?が浮かんだ。
「まあ、分かりました。それじゃあ、後ほど。」
森本は黒田から離れていった。
31 名前:アス 2009/06/11 16:51 ID:HDYIytMu
詠子は、大量のラジコン飛行機に紙を貼り付けていた。傍らには、『サルでも分かるルーン文字』の本が開いてある。
丁寧に、丁寧に紙を切り取り、糊で貼り付ける。
紙の正体は、高性能の爆薬。
詠子は紙を貼り付けたラジコンに『く』に似た文字を書きこむ。火のルーンである。
「これでよし・・・っと。」
詠子は、山積みにされたラジコン飛行機を見ながら、背伸びをする。
32 名前:ハバネロ 2009/06/11 18:49 ID:7XfuiYvS
みんなすまん。こっちがお留守になっていたようです。
>>前スレ279
「……あ」
アリスとアブドゥルは同時に声をあげた。
「クトゥルフ!」 「九頭竜!」
クトゥルフに九頭竜―呼び方は同じだが同一の存在である。
「それならば知っている。……それがどうかしたか?」
アブドゥルもさすがに警戒する。いきなり旧支配者の話題だし。
>>前スレ280
「……あ、マドちゃんか」
星宮の顔が暗くなる。
「……最近学校きてない」
>>前スレ281
「……!!」
京岡は眼を見開いた。何か大きな何かが自分に入り込んでくる。
―我■名はク■ゥル■―
(なに? なに? これってまさか私が倒した……!!)
―汝の肉体を寄■せ、そ■■れば我は■動でき■―
「……ぅ……!」
京岡の肉体と精神の全てが、何者かに浸食されていくのを京岡は感じた。
33 名前:Ⅳ 2009/06/11 19:13 ID:midDLQgI
>>30
「ああ、それじゃあまた後で。」
そう言って森本が去るのを確認するとこちらもスタスタと歩き出す。
さてさて、爆薬の持込とはまた派手好きなのがいたものだ。
どっから得た情報化は分からんが、彼ほどの男がいい加減な情報を持ち込んでくるとは思えない。ならば・・・
「こっちはこっちで手を打っておくか。」
その程度の雑事と言って捨てたものの、またナチ公みたいな馬鹿騒ぎを起こされてはこちらもたまったものではない。
考え無しの馬鹿ほど最高にめんどくさい面倒ごとを起こすのもまた事実なのだから・・・
34 名前:天塚 銀樹 2009/06/11 20:21 ID:kMnGCe2u
>>32
「…来てない?じゃあ…お姉ちゃん何かしたのかな…帰り道で浚ったり家にいったり…」
考えるが、拉致があかない。
「じゃあ、こんな人見なかった?帰ってこないから困ってるんだけど…」
沙耶の写真を取り出して星宮に見せる。
日記も取り出して再度京岡に関する記述を読み直す…
~洞窟~
沙耶にはさほど熱くなれないが、同族はこのまま死んでしまうのではないかと思うほどに…熱狂している。
不思議と理解できるなぞの呪文が響き、召喚の儀式は続く。
35 名前:西涼の錦 2009/06/11 23:34 ID:YFdQMWKe
「(・・・!、この感じは・・・)」
隼人は気配を感じ取った
「(奴が復活するのか・・・。)」
36 名前:Ⅳ 2009/06/12 02:53 ID:w8JgjlML
「なぁエリス・・・」
「なに?兄さん。」
「・・・二人しか居ないんだから『姉さん』でいい。実際この様だし。」
病院の個室、部屋の半分が見舞い客の見舞い品で埋め尽くされたその場所で兄妹・・・いや、『姉妹』は和気藹々と喋っていた。
まあぶっちゃけ・・・
「んで、その怪我人の姉からお願いだ。エリス~いい加減この拘束服脱がしてくれよ!!」
「言葉遣いが男っぽいから減点、明日までその格好決定で。」
「エリスちゃ~ん!!お姉ちゃんからのお願い☆このキツイ服脱がして(はぁと」
「・・・きもッ」
「ちょ!?今キモつった!?実の姉に向かってキモって言った!?なんたる反抗期!!」
「実の妹が人質に取られているときに、自分がなんて言ったか思い出してから同じ台詞を吐いて欲しいわね。」
「・・・っく・・・悪かったよ。」
エリスのその一言にカノンは罰の悪そうな顔をすると顔を背けた。
「・・・分かってるわよ。あれがⅣさんを本気にさせるために言ったことってのも。
もっとも、そうやって挑発しておいて負けてちゃ世話無いけど。」
「・・・負けてない。第一あれはヘンリーとの一戦の後に連戦だったからであって・・・」
「戦場ではそんな言い訳は通じるのかしら?まあいいわ。ほら口開けて。リンゴ切ってあげたから。」
「サンキュ~。はいぁ~ん。」
・・・書いてて恥ずかしいなこういうシーンって。
37 名前:森本 2009/06/12 22:13 ID:iYwsjfon
「ふーん、まあ、あれだねえ。面白いかな?」
森本は校舎の中をうろついている。しかも軍帽をかぶったまま。周りの生徒からは、「おい、日本兵がいるぞ!」とか「戦争帰りだ!」とか、こそこそ言われている。彼も気が付いているだろうが、無視している。
「まあ、クラスによって力の入れ具合が違うねえ。それは面白いかも。」
成功するにも、失敗するにも準備がいる。準備している様子を見れば力の入れ具合も自然と分かる。そして、その失敗の仕方も。
「意外と、面白いかも。」
38 名前:西涼の錦 2009/06/12 22:31 ID:wK0kN4Dq
「あれ?あんたは確か・・・」
隼人は森本を見かけたので声をかけた。
39 名前:特攻屋 2009/06/12 23:55 ID:WKUHJZ4W
>>32
「クトゥルフに……九頭竜…それが『深海の大破壊竜』の名前ですか…」
いきなり大声をあげた二人に少し驚きながらも手に入った情報を反芻する。
ルウもジト目を止め、表情に喜色が見える。
「実は私たち、そのクトゥルフを探しているんですが……どこにいるか知りませんか?」
アブドゥルの警戒も意に介さずさらに質問を続ける拳護。
40 名前:森本 2009/06/13 00:50 ID:12fmmVnQ
>>38
「あらまあ。どうも。」
森本はぺこりと隼人にお辞儀をした。
「元気そうですね。」
>>黒田サイド
森本が去り。清隆は何か考えているようだった。
「どうするの?」
リタは清隆に指示を仰いだ。そして、森本がいなくなった事により、若干だが声音が柔らかくなった。
41 名前:Ⅳ 2009/06/13 01:35 ID:HtwdnMw7
>>40
「ん?ああ、悪い。ちょっと考えごとをしていた。」
森本が去り、放置気味だったリタに意識をやる。
「さっき言ったとおりこの後ちょっと見舞いに行く予定だ。その見舞いの相手というのがまたアレなんだけどな。」
ため息と共に彼はその名を告げる。
「『処刑人』カノン=リーデベルト、先日特殊課の前で『一にして千の軍勢』とドンパチやって負けた馬鹿だ。
そっちの筋ではそれなりに有名らしいが・・・お前は知ってるか?」
42 名前:森本 2009/06/13 03:25 ID:12fmmVnQ
>>41
「『処刑人』はよく知らない。『一にして千の軍勢』は間接的に知っている。」
森本の報告にあった、能力未知数の男のことか。あの男の名前が、なぜここで出てくる。疑問浮上。
「死んでないんだ。」
なぜ負けたのに生き残ったのだろう?私なら負かした敵は必ず殺す。敵が、強ければ強いほどに。
43 名前:アス 2009/06/13 14:10 ID:T9SsO8D.
蓮田高校
「う~ん。こんなもんか。」
エマがプロジェクターを校庭の桜の木の中にくくりつける。
この桜の木以外にも、3つの箇所に同じプロジェクターが設置してある。
「よーし。竹原。プロジェクターは設置完了。試運転としゃれこもう。」
エマが携帯越しに、蓮田高校敷地外の発電車の中で待機している竹原に合図を送る。
すると、校庭のど真ん中に一羽のハトの立体映像が現れた。
「これでよし。」
どうやらこのプロジェクターは、ほかのプロジェクターと連動して、一定の地点に立体映像を作り出す仕掛けになっているようだった。
44 名前:Ⅳ 2009/06/13 15:10 ID:HtwdnMw7
>>42
「間接的に知っている?」
意外な接点に反応を示すが、まあ今はいいだろうと思考を打ち切る。
「ああ、実はお前が消えた後にその場に俺も居たんだが、どうも手心を加えられていたみたいだった。
まあ人それぞれ事情があるってことだ。そこは深く考えても仕方ないさ。」
そこに関してはどうでもいいといった感じでそう言うと、再び話を戻す。
「『処刑人』・・・まあ俺はカノンって呼んでるが、そいつの所属先である『呪い十字』に少し用事がある。
恐らくそこにはエリスさんも居るだろうし、文化祭時の警備等色々聞いておきたいこともあるんだよ。
それにカノンには米国での一件で預けているものがあるんだ。いい加減返してもらいたいものがな。」
要するに用事は腐るほどあるってわけだとリタに言った。
45 名前:西涼の錦 2009/06/14 02:06 ID:UZlntWDl
>>40
「そちらこそ・・・」
隼人は森本に言った。
「それにしても、どうしてここへ・・・。」
46 名前:森本 2009/06/14 21:36 ID:fDCoNEAx
>>44
「分かった。」
リタは返事を返した。
しかし、この男は本当に顔が広い。どうして、こんな高校生なのだろう?
>>45
「それがですねえ、ちょっと黒田清隆のパシリを死ぬ気でしてこいと言われました。」
そこで、森本は言葉を区切り苦笑して、
「とても、嫌なんですけど。」
と続けた。
47 名前:西涼の錦 2009/06/14 23:08 ID:09AXqXLM
「それは大変だな・・・」
隼人はそう言うと。
「所で、その帽子は?・・・」
48 名前:森本 2009/06/14 23:20 ID:fDCoNEAx
>>47
「あ、これ!軍服きてないと落ち着かなくて、それでかぶってるの。」
森本は何でもない事のように言った。
「まあ、ある意味で、お守りというか、ジンクスかな?」
ハッキリ言って、一般人からすれば理解しがたい趣味だ。学生服に軍帽という取り合わせは、いろいろな意味で危ない。
「まあ、色も黒で無地ですし、工場の制帽にも見えなくはないですよね?」
確かに、森本のかぶっている帽子は一昔前の工場の工員の武士に似ているが、兵隊がかぶる帽子である。
「まあ、変なのは重々承知なんですけど。」
だったらかぶらなければいいのに。
49 名前:天塚銀樹 2009/06/15 00:02 ID:DorNHAO4
「俺には帰る場所がない…!!」
信濃燈哥が恋人だと、彼女だというのがクラスメートの一般認識だがそれは違う。
信濃燈哥の世話係はしていて多少気心は知れるなかだが…信濃燈哥には恋人が別にいる…
いや、別にいいんだ。
今気になることは…いや。まだ八神のことが気になる。
小心者だと笑えばいいさ。でもな、人ならぬもんなら…正直言うと側にいて欲しくない。
ファンタジーに巻き込まれるのはごめんだ。
生きる力がないからね…
50 名前:Ⅳ 2009/06/15 02:27 ID:R.Olb/gm
>>46
「とはいえ授業後までって言ったのは少し失敗だったかもしれないな。よくよく考えたらぶっちゃけ今から学校抜けて行っても良かったし。」
黒田はそう言うとすぐ傍に座りハァ・・・と息をつく。
しかしまぁなんと言うかアレだ。俺って高校生なんだよな?なんか流れでやってるけど、よくよく考えれば最近変なことに自分から首を突っ込んでいる気がする。
つーか高校生って言ったらもうちょっと青春してるもんじゃね?ほらギャルゲみたいな?
休み時間に女の子とワイワイ学園イベントとかさ。それに引き換え今の俺・・・アレ?
はっと気がついたように黒田はあることに気づいた。
そういや俺現在進行形で女の子と二人っきりではないか!と。
いや待て待て。リタは別にそんなんじゃないし。うんそんなんじゃないって。学校にも親戚ってことにしてるし・・・ってアレ?でもそれよくよく考えたら別に・・・
「いや違うって!!」
ガッと頭を抱えて思わず口にした瞬間、黒田は我に返り顔を真っ赤にしうずくまった。
そう違うんだ。少なくともリタはそんなんじゃない。彼女はあくまで派遣されてきた・・・ん?いや待て。そういやリタってなんで・・・
ふとリタのほうに視線を向ける。同い年で同じ学校の制服に身を包んでいる少女。しかし彼女はどうして・・・
「そう言えばリタ・・・」
ふと思った疑問を黒田はリタに問いかける。
「そういえばお前ってなんで『こっち』の世界で仕事していたんだ?いやまぁそっちから見れば俺もそうなんだろうけど・・・」
51 名前:森本 2009/06/15 20:17 ID:VLQsJw2A
>>50
黒田の言葉をリタが聞いた瞬間、リタは一度震えた。眼はカット見開かれ、手は開かれず固い拳が作られていた。
まるで、空き巣の最中に警官に見つかった泥棒のようだ。
「…………。」
彼女は知らず知らず、何かを呟いた。
そして、彼女は固まった。
リタの意識は九年前に飛んだ。
記憶の断片が彼女に降りかかった。彼女は息をするのも忘れていた。
『………ごめんね…』
記憶の底で、『 』が謝った。微笑しながら。
52 名前:Ⅳ 2009/06/16 02:29 ID:8D/bLzA2
>>51
「リタ?・・・おーい・・・ちィッ!。」
触れちゃならないとこに触れたかと思い、瞬時にリタの目の前で両の手をパン!と叩き、意識をこっちに戻す。
「リタ!言いたくなければいい!無理に訊く気はないから!!」
53 名前:森本 2009/06/16 21:53 ID:SghsZz.7
>>52
「!」
目の前で何かが弾けた。
「リタ!言いたくなければいい!無理に訊く気はないから!!」
目の前で黒田が焦っていた。
「…そう。」
リタは、静かに言った。そしてほっとした。それでもって、自分が彼にこの事を話したくないことを知った。しかし、彼女は黙っている事が出来なかった。
清隆はリタの上司的なものであると、同時にリタにとっては大事な人になりつつあった。そして、彼女は彼に言いたくなかった。そこで彼女の精神は折衷案を見つけた。
そして半分は真実である言葉を弱弱しく言った。
「……親に捨てられた。」
この言葉はある意味では事実でもあり、また違った。
54 名前:Ⅳ 2009/06/16 22:11 ID:8D/bLzA2
>>53
「親に・・・」
リタがやっと吐き出したその言葉に対し、同情する自分が居た。
しかしだからと言って慰めの言葉をかけようとは思わなかった。
黒田清隆にとって慰めの言葉は所詮糞の役にも立たない偽善に過ぎず、哀れみは所詮優越感の裏返しでしかない。
故に彼は・・・
「そうか・・・」
「苦労してきたんだな。」だとか「つらい思いをしたんだな」等といった余計な言葉はかけなかった。ただ彼は、
「よく言ってくれた。」
それだけを口にした。そう言って彼はそれ以上は訊こうとはしなかった。
55 名前:森本 2009/06/16 22:21 ID:SghsZz.7
>>54
「よく言ってくれた。」
黒田は確かにそう言った。今まで言われたことはなった。慰めも同情も今まで言われたことはなかった。そして、この男もまた「そういう事か」で終わると思っていた。または、もっと詳しく聞かれると思った。しかし、それはなかった。
リタは驚いて黒田の顔を見つめていた。こんな接し方をする人間に彼女は出会っていなかった。だから戸惑った。
棒立ちのまま清隆を見つめるリタ、背の低い彼女には見上げるに近い行為だった。
56 名前:Ⅳ 2009/06/16 23:15 ID:8D/bLzA2
>>55
「俺には・・・」
急に黒田は口を開く。
「『黒田清隆』には親は居ない。父親も母親も居ない。俺は『僕』だったときに全てを失ったからだ。だが・・・」
彼は意を決したような目で自分を見上げるリタの目をまっすぐ見つめる。
「『兄』と呼べる男が居た。そいつとは血の繋がりも無かったし、歳もひとまわり離れていた。
だが・・・俺にとってそいつは全てだった。」
懐かしむように黒田は記憶にある『彼』を浮かべる。
「名を与えられた。知識を与えられた。そして何より・・・俺にとってアイツはたった一人の『家族』だった。」
恐らくリタと自分の違いはそこだろう。自分にはそれが与えられて彼女にはそれが与えられなかった。
「そいつは俺を受け入れてくれた。金も無ければ力も無い。
溝鼠同然の俺を何も言わずに受け入れてくれた。だから・・・」
だからこそ・・・
「俺はお前を・・・あー・・・その・・・上手く言えないけど・・・」
顔を赤くし彼は・・・
「俺はアイツに比べればまだまだ何も持っちゃ居ない。知識もコネも・・・全てアイツの受け売りだ。
だが・・・お前一人受け入れるくらいの器は持っているつもりだ。・・・あー何言ってんだ俺は!!」
恥ずかしさが頂点に達したのか頭をかいて黒田はあーもう!!と声を荒げる。
「止めだ!!これ以上は俺的にもう無理だ。勘弁してくれ。」
57 名前:森本 2009/06/17 23:32 ID:Ab2vdaf3
>>56
リタは黒田をあっ気にとられて見ていた。そして、彼が普通のそこらの人のように顔を赤くしたのを見て驚くと同時に、彼女は笑った。
「ふふ。」
小さく一瞬だったが、手を口にあてて笑った。なぜなら、悪魔の親玉のように振舞う男が可愛く見えたのが、おかしかったのだ。そしていつもの、表情に戻ると、
「別に何も、私はしていない。」
と返事をした。
しかし、リタの表情は若干楽しそうだ。
58 名前:Ⅳ 2009/06/18 02:11 ID:vpUsN9YJ
>>57
「っく!あーそうだよ。1人で勝手にいいこと言おうと思って1人で勝手に自爆しただけだよ!」
ちょっと拗ねたような口調で言うものの、その口元は自然とほころぶ。
普段は司令塔の如く的確に指示を出し、人を駒のように使う彼もこうしていれば歳相応の少年に見えた。
「ったく。俺としたことがとんだ間抜けだ。」
だがいいものが見れた。一瞬ではあるが目の前の少女の笑顔を瞳に焼付け、それを思い起こしながら再び微笑んだ。
59 名前:森本 2009/06/25 23:58 ID:KB6w05iB
>>48
森本は隼人との会話を済ませると、校内を一めぐりした。
途端に、やる事がなくなった。
「退屈…。」
森本は黒田とリタを探すことにした。
>>58
清隆の笑う姿を見たリタは、心臓の鼓動が一瞬だけ早くなった。
そして無意識に自分に笑いかけてくれる存在を懐かしく思った。
「あら?まだ、いたの。」
森本が無遠慮にずかずかと廊下の向こうから近付いて行った。
「退屈なんで、戻ってきちゃいました。」
無神経に森本は清隆に向って言い放った。ちなみに、森本の顔は、ニヤついている。
60 名前:Ⅳ 2009/06/27 02:08 ID:/YFzBezP
>>59
「(っち!)・・・・・・・お帰り。そっちも暇だったか。」
微笑が一変、露骨に迷惑そうな顔+舌打ちのコンボで森本を迎える。
この野郎・・・コードネームを『KY』にしてやろうかと半ば本気で思いながらも咳払いをして普段の表情に戻す。
「まあ丁度こっちも暇してたところさ。そうだなぁ・・・授業後って思ったが、いっそのこと今から授業抜けて行くか・・・」
61 名前:ハバネロ 2009/06/27 23:41 ID:V2C4Z0UO
ナイアは学校の体育倉庫に一人忍び込んでいる。
学園祭が始まるまで、一人ここで待機しようと思ったからだ。
(学校はいい、隠れ場所が腐るほどある)
見つかる可能性もあったが、それもそれでなかなか面白い。計画が少し早まるだけである。
62 名前:西涼の錦 2009/06/28 09:36 ID:5D6HbbWS
「(ん、この気配は・・・)」
隼人は何かを察知した。
「(いや・・・今はやるべきじゃない)」
63 名前:森本 2009/06/28 11:07 ID:fk6VfsoO
>>60
「いいですよ。」
森本は、口調だけ素気なく答えた。しかし彼の表情は黒田の不機嫌さを感じ取ったのか、いきいきとしていた。
「……」
一方のリタは沈黙していた。そして、表情はいつもの無表情になっていた。
64 名前:Ⅳ 2009/06/30 00:29 ID:6KouN9Fz
>>63
蓮田高校の最寄の駅から駅二つ、オフィス街の入り口に位置する場所にその病院は存在した。
七海総合病院、遠目からもその名前が視認できるそこの入り口に黒田達は来ていた。
「先日急患で運ばれたカノン=リーデベルト氏のお見舞いに参りました。部屋を教えていただけますか?」
何気なしに受付のナースに尋ねるが、あれ?どうも様子がおかしい。「少々お待ちください」と言うとどこかと連絡を取り始めた。そして・・・
「お待たせしました。黒田清隆様ですね。先方から面会の許可が下りました。」
しばらくすると奥から医師らしき男がどう見てもテメェ病院関係者じゃねェだろう!!と突っ込みを入れたくなるガタイのいい男を二人ほど引き連れてやってきた。
「リーデベルト氏は別館にて入院中です。此処から先は我々がご案内します。」
医師らしき男がそう言うとさぁ行くぞと言わんばかりに医師が先頭を歩き、ガタイの男二人がリタと森本の後ろについた。
65 名前:森本 2009/06/30 02:56 ID:fmzj5vL1
>>64
「いやはや、まあ。」
森本は苦笑いをした。
「……。」
リタは無言だった。
二人はおとなしく医師の後について歩いた。
66 名前:Ⅳ 2009/07/01 01:58 ID:3Oypx66.
>>65
「む・・・確かお前は・・・」
「あ、どうも。」
別館の入り口付近まで行ったところで金髪にサングラスをかけた男と鉢合わせになる。
確かこの人は割りと初回から出てるのに、カノンやエリスさんの裏方に回ってばかりで出番喰われまくっている・・・
「ロバート。ロバート=クレヴァーだ。」
なかなか名前を思い出せないでいるのを察したのか、ハリウッド男優張りの整った面をしかめてロバートさんはぶっきらぼうに言った。
とりあえずすいませんと謝っておく。
「・・・見たところお前達もカノンの見舞いのようだな。
ついでだ。ここから先は俺が案内する。とりあえずそこの三名は仕事に戻っていいぞ。」
ロバートのその一言にこくりと頷き、医師らしき男と後ろの二名が来た道を戻っていく。
それはこの場においてのこの男の発言力を示しており、
「・・・そして此処から先は部外者は得物の持ち込みは禁止だ。
各自制服に隠している得物を提出しろ。」
それに見合うだけの実力を持っていることの現われだった。
俺は仕方なしとため息をつき、制服の内側に隠していた鞘入りのナイフを差し出す。
67 名前:森本 2009/07/01 13:48 ID:adk5xvjz
>>66
「あら?はあ、まあ、分かりました。」
森本は黒田のナイフを見て苦笑いをした。そして制服の中から、ゆっくりとデリンジャー四丁、五徳ナイフ二本、銃剣一本を取り出し、ロバートに両手で差し出した。
一方のリタはゆっくりと無言で、鞘入りナイフを一本、SIGP228を二丁、制服の中から出した。
「……。」
森本はリタの拳銃を見て、声を出さずに嘲笑った。リタは気がつかないふりをしていた。
68 名前:アス 2009/07/01 14:33 ID:MSt2ot7p
蓮田市 とあるビルの屋上
ここから、蓮田高校がいちぼうできる場所にアスカは立っている。
「アスカだ。狙撃ポイントに到着した。」
アスカは携帯ごしに竹原に連絡する
オーケー、と言う竹原の声を聞き、『リベリオン』を取り出す。
「まるで、どこぞのガ○ダムマイスターを思い出すな・・・」
ぼやきながら『リベリオン』にバッテリーを繋ぐ。
・・・見てたのかよ。ガ○ダム00。
69 名前:Ⅳ 2009/07/02 03:20 ID:h4dqEaYj
>>67
「・・・」
目の前の学生三名から渡された刃物や拳銃にロバートはあからさまに怪訝そうな顔をするが、あえて何も言わずにそれらを受け取る。
手馴れた様子で刃物を袖やスーツのポケットに収納、二丁のSIGP228も安全装置が掛かっているか確認し、懐にしまいこみ、デリンジャーもコートのポケットにそれぞれ1丁ずつしまいこむ。
「・・・では行くぞ。」
これ以上話すことはないと言わんばかりにそう言うとロバートは先行して無口になる。
それを見て黒田は・・・
「・・・」
チラッと一瞬リタのほうに視線を移し、
「無口キャラ・・・被ってる。」
「ッ!?」
「!?・・・すいません!!」
その一言に勢い良く+三白眼で振り向いたロバートに条件反射で謝る。
ああ、そういうとこ気にしてるんだ・・・
70 名前:森本 2009/07/02 22:53 ID:DaHbjbbk
>>68
「は?」
森本は素っ頓狂な声を出した。そして茫然とロバートの顔を見る。それからリタの顔を盗み見た。
「……。」
リタは相変わらず無言だった。森本は安心した。しかし、
「自分で無口だとは思っていない。必要がないから喋らない。それに、あなたよりは喋ると思う。」
リタはしっかりと返事を返した。ロバートの眼を見ながら。
「ば、馬鹿!」
森本は引き攣った笑顔でリタを見やった。
71 名前:Ⅳ 2009/07/03 00:53 ID:U44C4a3v
>>70
リタの返事にロバートは「む!」と反応を示し、ゴホンと咳払いをしてリタに向き直る。
「俺も無口というのは心外だ。お前と同じように無駄口を叩かないだけだからな。
しかし今のは聞き捨てならんな。何を根拠にお前が俺より喋ると言えるのだ?」
「ちょ!?あの~ロバートさん・・・」
「だいたい無口キャラなどこういったリレー小説では使いづらいことこの上ない。
他の参加者との交流もし辛く何よりキャラが立たない。非効率だ。俺はそのような存在に問題のあるものになった覚えは無い。」
「おまwwwメタ発言wwwwつかアンタ確かに全然無口じゃねェなオイ!!!」
おまけにいい大人が学生相手に必死だなオイ。
「とにかく俺は無口キャラではない。黒田と言ったな?速やかなる言葉の撤回と謝罪を求める。」
さらにいうならばかなり大人気なかった。
72 名前:森本 2009/07/03 12:20 ID:.E3cBBOP
>>71
「無口でないのだったら、性格的に同じではないはず。最初にあなたが『性格的に同じだ』と怒る理由はないはず。」
そこでリタは言葉を切った。森本は相変わらず引き攣った表情でリタを見ている。
「それと、私よりもあなたは喋るようなので憶測でものを言ってしまった事を謝罪します。」
森本の顔に?が浮かんだ。
「すいません。」
森本の表情が驚愕に変わった。
「ただ、清隆に撤回と謝罪を求めたのは大人げないと思う。私が言った事なんだから私に謝罪を求めなさい。」
森本の顔に絶望が浮かんだ。そして叫んだ。
「もう、やめろ。喋らないでくれ!」
73 名前:Ⅳ 2009/07/03 16:41 ID:U44C4a3v
>>72
「・・・もういい。」
リタの発言にプイッと拗ねたように背を向けたところで・・・
「病院内ではお静かに!!ってあら?」
急に病室から声がすると同時に髪の長い茶髪の女性が出てくる。
「ロバートさんに・・・黒田君?」
「どうも。こんにちはエリスさん。」
黒田は軽く会釈してエリスに挨拶し、
「全員カノンの見舞いだ。そこの二人は黒田の連れらしい。」
ロバートは見るからに不機嫌と言った様子でそう答える。
「ああ、そうですか。こんにちは。リタちゃんは以前特殊課の前でお会いしたわね。そこの軍帽の貴方は・・・はじめまして。
エリス=リーデベルトよ。」
それを聞いたエリスはひとまずリタと森本に簡単に挨拶をすると、
「しかし一体何を騒いでいたのかしら?病室まで響いていたわよ?」
74 名前:森本 2009/07/04 01:26 ID:Kx4F/024
>>74
「はじめまして、森本織部といいます。まあ、僕は黒田の護衛みたいなものだと思っていてください。」
森本はエリスに対してニコニコしながら自己紹介をした。そして、その顔を苦笑に変えると、
「いやあ、すいません。ちょっと僕が騒いだだけなんで大したことはありません。」
リタの代わりに謝った。肝心のリタは無表情で涼しい顔だ。しかし、その眼はしっかりとロバートに向けられている。
75 名前:Ⅳ 2009/07/04 02:57 ID:flNOKTB/
>>74
「そう、森本君ね。よろしく。」
穏やかにお姉さんな感じで森本にそう言うと、
「・・・まだ何か?」
リタの視線に対し再び機嫌が悪そうに口を開く。
「オイリタ・・・お前止め・・・」
まだ目で因縁つけているリタに対し黒田は止めようとするが、その前にロバートが続ける。
「言いたいことがあるならさっさと言え。俺もいつまでも子供の相手をしているほど暇じゃない。」
その態度に一瞬でその場の空気が最悪になる。ロバートの方もリタを睨み始めたからだ。だが、
「コラ」
スコーンとロバートの後頭部にチョップが入る。不意の出来事にロバートは一瞬倒れかけ、すぐに踏ん張りそれを入れた人物を見やった。
「・・・エリス。」
「せっかくお見舞いに来てくれたこの子達にメンチ切らないで下さい。まさかとは思いますが、さっきのはロバートさんも関係・・・」
「知らん!!」
「・・・本当ですか?」
「・・・本当だ。」
「私の目を見て言って下さい。」
「・・・・・・多少は・・・」
「多少はあるんですね。」
「・・・ああ。」
ジーッとエリスに見つめられ、少し顔を赤くして目線を逸らしながらそう答えると。
「じゃあ謝ってください。ロバートさんはいい大人なんですし、彼らと何かあったなら先に謝れますよね?」
「・・・」
「・・・どうなんですか?」
「・・・っく!!」
エリスに顔を覗き込まれ観念したのか、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悪かった。」
リタと黒田のほうに向けて頭を下げた。
76 名前:森本 2009/07/04 08:17 ID:Kx4F/024
>>75
「……ぇ。」
リタの目が少し大きく開かれた。
「おい。」
森本が後ろからリタを小突いた。リタは若干フリーズをしながら、
「…、すいませんでした。」
リタもロバートにならって頭を下げた。
77 名前:Ⅳ 2009/07/05 02:38 ID:eBseCV5Q
>>76
「よし。これで仲直りね。それじゃあ兄さんも待っているし入りましょう。」
満足そうに頷いてそう言うとエリスは出てきた病室に先に戻っていく。その後姿を見て黒田は・・・
「・・・あの人すげェ・・・」
素直に感心した。
「じゃあまぁ俺らも入るか。一応目的は見舞いだし。」
そう言ってエリスに続き病室に入る。そして・・・
「お!珍しい客だな。よく来たよく来た。」
病室に入ると同時に声がかかる。その視線の先には・・・目的の人物、カノン=リーデベルトが居た。
だが、
「・・・それは突っ込んだほうがいいのか?」
「・・・・・・・・突っ込んだら負けだ。」
黒田がそう質問し、ロバートがそれに答える。
「あー・・・コイツはちょっと事情があってな。出来れば気にしないでくれ。」
苦笑いでそう答えるカノンの服装は、
「気にしなくていいわ。これは自業自得だから。」
ベルトが三つついた拘束服だった。
78 名前:ハバネロ 2009/07/05 23:39 ID:oksrw1px
>>39
「クトゥルフの場所?」
「お父様、下がってて」
アリスのファザコンが発動した。
「貴方達は何なの? クトゥルフの居場所? 教えられるわけが無いでしょう?
どうせ録でもないことを考えているんでしょう?」
「アリス、落ち着けって」
「とにかくっ! あなた方のような人たちに情報は提供できない。
あれは人間が関わってはいけない事柄なのよ。分かってるかしら?」
ハバネロは興奮するアリスのエリを掴んで持ち上げた。
「お、お、おろして!」
「とりあえず、どーしてそんなことを聞くのか教えてもらえませんかねぇ、お二人さんがた」
アリスにタバコの煙を絡ませながらハバネロが聞いた。(アリスがかなりせきこむ。)
79 名前:特攻屋 2009/07/06 23:21 ID:wnYbFXhl
>>78
(録でもない、ね。
まあ他人からみたならそんなもんだろうな…)
(というか既に関わっているんだけどね、もうどっぷりと)
アリスの剣幕と物言いに拳護とルウは内心でつっこんだ。
「「………」」
ハバネロの問掛けに二人が口を閉じ
「「一身上の都合でちょっとクトゥルフに用があります」」
ユニゾンして答えた。
80 名前:森本 2009/07/07 08:23 ID:qTwO9O/3
>>77
森本は黒田に続いて病室に入るなりぴたりと足を止めてベッドに縫い付けられた男を見た。そして、その男が『気にしないでくれ』と言ってきた。
「ええ?はあ、…まあ、自業自得ですか…。」
森本は途切れがちにそれだけを言った。リタの方は見た当初こそ、また眼が若干大きくなったが、今はいつもの表情になっていた。
「まあ、取りあえず、命があって何よりですね。はい、見舞いの品です。お口に合うかどうか分かりませんが。」
森本はどこからか、学校祭の準備で手に入れた(がめた)ハトサブレをカノンに渡そうとした後に、エリスに差し出した。
81 名前:Ⅳ 2009/07/08 01:43 ID:5v/mbsDL
>>80
「これはご丁寧にどうも。今日はわざわざ学校帰りに来てくれてありがとうね。」
森本からハトサブレを受け取ると、エリスは人当たりのいい笑顔で森本に言う。
(ああ、こういうところだけ見てるとこの人いい姉キャラに見えなくもないんだが・・・)
そんなことを思いながら黒田がエリスを眺めていると、
「・・・・・・・・・・・・・」
なにやら不穏な視線でロバートが森本を見て・・・いや、あれ見る通り越して睨んでるわ。
「・・・俺からも見舞い品だ。ここに置いておく。」
「おお!サンキュー!!いつも悪いなロバート。」
そうやってカノンから返事があるとロバートはあからさまに舌打ちをかます。
とりあえずボソッと聞こえた「・・・・・お前じゃない。」って台詞は聞かなかったことにしておこう。
82 名前:森本 2009/07/08 02:01 ID:Yra60O5g
>>81
「いえいえ。」
森本がエリスに返事をした瞬間だった。森本は背筋に氷を当てられた気分がした。ぶるっと身震いをし必死にロバートの方に振り返ろうとする自分を抑制した。目があったらいい事が無いだろうから。
「……。」
リタは殺気満々のロバートをやや警戒しながら見ていた。彼女の足が一歩後ろに下がった。
「あの、その、エリスさん、あるいはロバートさんに質問していいですか?」
森本は体を強張らせながら聞いた。
83 名前:アス 2009/07/08 23:20 ID:bihhbQip
蓮田市 某ビル屋上
「此処に・・・アバドン・・・な。」
アスカは、屋上で独り呟く。
脇に【リベリオン】を置き、空を見上げる。
「えいな、お前は今何処にいる?
俺は、何時になったらお前の笑顔を見られる?」
蒼い空は答えてくれなかった。
某所 『ジャセス』施設
「研究は・・・失敗だ。」
白衣の科学者が嘆く。
「支配者遺伝子は、我々の手には・・・負えられないモノだった。」
科学者の目の前には、人と同じ大きさの、蟻に似た、大勢の異形のモノ。
そして、その奥に、巨大な羽蟻。
研究者が最後に見たのは、羽蟻の姿だった。
84 名前:Ⅳ 2009/07/09 02:45 ID:BVQEWCbi
>>82
「・・・・・・・・」
「え?いいわよ。私でよければ。」
ロバートは無言のまま睨み続け、エリスはそれに気づかずに「何かしら?」と人当たりにいい笑顔で森本に歩み寄る。
「・・・なぁカノン。」
「カノン『さん』だろ?目上のものは敬え。将来苦労するぞ?」
「・・・お前は年上だけど目上じゃないだろ?」
「・・・確かにそうだ。だが、エリスとロバートにはさん付けして俺にだけしないってのは気に喰わん。」
「俺はお前に米国で殴られたことを忘れてないからな。」
「奇遇だな。俺もお前に一発入れられたことをまだ覚えてるぞ?」
カノンがにやりと笑い、黒田もそれを見て同じように笑う。
「・・・そろそろ『アレ』返してもらいたいんだが。」
「あー・・・それは俺の一存じゃどうにもいかないな。そういうことはエリスに頼め。」
「・・・お前エリスさんの兄貴なんだろ?なんであっちの方が立場上なんだよ。」
「そりゃお前・・・」
チラッとエリスを見てカノンは、
「アイツはお前が思うより優秀だからだよ。」
一言そう漏らした。
85 名前:森本 2009/07/09 21:59 ID:DpGScwox
>>84
「えーと、自分の聞き間違いと見間違いでなければ、『呪いの十字』のかたですよね?しかも、記憶違いでなければ入院しているのは有名な『処刑人』ですよね?」
森本は冷や汗を(ロバートからの視線のせいもあって)流し始めていた。
86 名前:Ⅳ 2009/07/10 03:24 ID:midDLQgI
>>85
「ええ。そこの拘束服でベッドに横たわっている私の兄が『処刑人』よ。」
「おっスオラカノン、よろしくな☆」
キラっ☆とかやってみようとするが、両手使えなくて出来ない。
というかフランクに森本に話しかける様はとても『処刑人』等という物騒な名で呼ばれている人間には見えなかった。
「そんでもってお前の言うとおりここにいる連中は皆『呪い十字』所属だ。あーちなみに『呪い十字』っつーのは『Fluch Kreuz』を無理やり日本語訳した奴なんで変な名前とか言うなよ。」
んでもってハハハと1人で笑い始める。
「・・・織部、信じられないかもしれないが、マジでコイツが『処刑人』だ。
この女みたいな顔で一見華奢に見えるが、その実S&W M500を片手撃ちするような基地外野郎だ。」
「んだと!!もういっぺん言ってみろ!!」
「基地外野郎。」「・・・基地外野郎。」「確かに基地外よね。」
拘束されているのをいいことにその場に居た各々(ロバートまでも)がそれを口にした。
それを聞いてワーワー騒ぐ様はやはりそんなに凄い人物には見えなかった。
87 名前:森本 2009/07/10 08:19 ID:4wzKAsHM
>>86
「本当に女性みたいな方だったんだ…。」
森本はベッドに縛られているカノンをまじまじと見ながら言った。そして、困惑もした。
「なんで、こんなボロボロな事に?相手は誰ですか?」
噂が本当なら下手な軍隊よりも強い人物なのだ、この女性みたいな人は。それが、拘束具を付けてベッドに横たわっている。なかなか信じられないことだ。
「……。」
リタはリタでカノンをまじまじと見ている。
88 名前:Ⅳ 2009/07/10 15:02 ID:midDLQgI
>>87
「・・・」
「・・・『一にして千の軍勢』、名前くらいは聞いたことがあるでしょう?」
急に黙りだしたカノンに代わりエリスが答える。
「簡単に説明すると兄さんは盗聴して彼が『特殊課』に居ることを知るや否や私の許可も取らずに部下数名を連れて乗り込んできたのよ。
そんでもって彼に・・・Ⅳさんに負けたのよ。」
「負けてねェよ!!痛み分けだあれは!!だいたいその前のヘンリーとの一戦さえなければ・・・」
「・・・俺から言わせれば『義士』との戦闘があったのにもかかわらず『軍勢』に連戦を挑むこと自体ありえないのだがな。
そして慈悲をかけられてこの様では話にならんな。」
「五月蝿い!!テメエは黙ってろロバート!!」
割り込んできたロバートに怒鳴ってフン!!と鼻息荒く顔を背ける。
「結局そういうことになるわね。まあ詳しくは後で黒田君にでも聞くといいわ。彼も関係者だから。」
「・・・」
急に振られた黒田は分かっていたのか、
「否定は・・・確かに出来ないな。」
苦笑しながらそう答えた。
89 名前:森本 2009/07/10 20:09 ID:4wzKAsHM
>>88
「……何てこった。いや、まあ、びっくりな話ですね」
森本はすっかり困惑していた。
「『一にして千の軍勢』ですか。自分、一緒にいましたよ。短い期間でしたけど。」
森本は話すことにしたらしい。
90 名前:Ⅳ 2009/07/11 01:58 ID:w8JgjlML
>>89
「・・・」
「・・・」
「・・・」
森本のその一言ですぐにその場の空気が静かになる。
個人にあてがわれた病室が騒がしい団欒の場から・・・
「詳しく聞かせてもらえるかしら?」
尋問の場へと変貌した。
91 名前:森本 2009/07/11 02:26 ID:iYwsjfon
>>90
「い!?」
何だ?何だこの空気?
「いや、まあ、一緒にいたというか、銃口を向けたといううか、まあ、ロシアで会いました。十代半ばの奥さんがいるとかいう、デザートイーグル二丁持ちの男でした。」
そこまで、しゃべったあと、森本は少し落ち着いて、
「あの、何から言いましょうか?」
森本は何もかも喋る気になった。
一方リタは森本から距離を取った。そして、黒田に
「いいの?」
一言聞いた。
92 名前:Ⅳ 2009/07/11 02:36 ID:w8JgjlML
>>91
「間違いないな。」
「間違いないわね。」
「・・・」
エリスとカノンが同時にそう言って、ロバートはこくりと頷く。
「間違いないわ。その人が『一にして千の軍勢』・・・Ⅳさんよ。
しかしロシアとはまた意外な・・・まずはどういう経緯で一緒になったのかを教えてもらえるかしら?」
「かまわないさ。俺も『軍勢』のことは気になっていたからな。」
リタの問いに対し何でもなさそうにそう答えると、他の面子と同様に森本の話に興味を持つ。
『一にして千の軍勢』・・・文字通り一騎当千の異名を持ち『処刑人』すらも退ける実力者。そして・・・
「アイツの・・・七海幸太郎の弟・・・」
呟くようにある男の名を口にした。
93 名前:ハバネロ 2009/07/11 17:58 ID:0gnFvWys
>>34
「……が……あ……ぎ、いいいいいいいいっ!!」
京岡の精神と肉体の中に、クトゥルフが入り込む。
心臓は早鐘と化し、京岡の強く握り締められた右拳の甲にはアルファベットが刺青のように浮かんだ。
“Cthulhu”
「…………!」
京岡の体の動きが止まった。熱狂の終焉を告げるかのように。
「…………、」
京岡は上を見上げたままの姿勢で辺りを見回した。
「……人間の肉体か。
やや操縦が難しいが、まあよいだろう」
それはむくりと起き上がる。
「我、海底都市ルルイエの主にして、深き者どもを使役する旧支配者、クトゥルフである。
今、この贄の肉体にて、我の復活を宣言する」
京岡「だったもの」の口はそう動いた。
94 名前:ハバネロ 2009/07/11 18:04 ID:0gnFvWys
>>「特殊課」サイド
「ニュージーランドと南米大陸と南極大陸の中間付近、南緯47度9分、西経126度43分。
その場所に存在する海底都市ルルイエに、クトゥルフは居る」
沈黙を破って、アブドゥルがそう告げた。
「うぇぇ!? アブドゥルさん!」
「お父様!」
ハバネロとアリスがダブルで反応する。
「まあいいじゃないか。これしきのこと、教えても特に問題あるまい?」
「あるわッ! 軽々と情報を提供するな!」
「お父様のバカ!」
「バカ?! アリスに嫌われた! ガビーン!」
「もうやだこの親子!」
95 名前:特攻屋 2009/07/11 22:40 ID:WKUHJZ4W
>>94
「ふむふむ…なるほど…」
アブドゥルの突然の発言に慌てず懐から手帳を取り出しメモを取る拳護。
「要望にお応えいただき、ありがとうございま……す…」
メモを終え礼を言う拳護。
しかし最後辺りは目の前の混沌な様相にやや引き気味だ。
「さて、それでは我々は「拳護…」…うん?どうした?」
用向きも済み、この場を後にしようとする拳護だが、そこに割り込み話しかけるルウ。
「なんだか…急がないと不味いみたいよ…」
ルウは、自身の身体を抱きながら、その身から妖気とも邪気言えぬ物が滲み出ていた。
96 名前:天塚 2009/07/12 00:03 ID:/mevNIfl
>>93
深き者ども吠える。
主の完全なる帰還に、ルルイエの再興を告げる海神の復活に。
「我らが主よ、ご帰還心よりお待ちしておりました!!」
その中でも特に老齢と思われる男が前へと進み出る。
ルルイエの再興や神の為に完全な復活を施すために準備はしている…
深き者どもと似た体を持つ人間を魔術で血肉にかえ、深き者どもの死体、そして人間と深き者どもの血を引く【ツナギ】とともに京岡の肉体に時間をかけて捧げる…
大分劣るがクトゥルフの肉体は再生する。
死体と…ツナギを作るための人間の女を得るために襲撃をかける準備も…
…
「…バイバイ…京岡円華…でも汚い人間なんかやめられたし…よかった…よかったんだよね…」
97 名前:ハバネロ 2009/07/12 18:44 ID:3CAP2m8n
>>95
「……つーか、あんたら一体何なんでぇ?
要所要所にチョロチョロ出てきてるみたいなんだが。」
ハバネロが煙草を吸いながら二人に尋ねる。不信感たっぷりに。
「……え? まさかそのルルイエに行く気じゃないだろうな?」
>>96
「ああ、この時より再び時は廻りだす。
この私が再びルルイエの主として君臨するのだ」
京岡の意識は今、大いなる旧支配者の精神に解けてしまった。
その中で、濁流のようなクトゥルフの精神に飲まれ、波に揉まれる水草のように
漂うのみである。
「存分に働いてもらおうぞ、信仰者達よ」
98 名前:森本 2009/07/12 20:34 ID:12fmmVnQ
>>92
「いや、まあ、ナチスの残党が世界に喧嘩を売ったあとすぐのことでした。」
森本はとりあえず、話し始めた。
「その時、自分は個人的にロシアの方に行ってました。世界中を見てナチスの残党の爪痕を見ようと思っていました。そこで、特殊科のハバネロさんと、『森岸』とかいう女と一緒になりました。そこでのハバネロさんの目的は『エイボンの書』だったかの写しを取りに行っていたらしいですが、取られました。
たしか、『チカチィロ』とかいう強いロシアを作ろうとかいう連中にとられたんですよねえ。いやあ、襲われておっかなかった。
それでもって、そこからハバネロさんと二人でエル・シュパーギンからの頼みもあって、『チカチィロ』のボスであるラス・プーチンを殺しに行ったんです。そのときに、あほな作戦で「Ⅳを殺そうとするふりをして、ラス・プーチンを殺す」とか言う前代未聞な真似をしました。いやあ、怖かったですねえ。
まあ、結果、ラス・プーチンは殺せたと思っていたんですけど復活したみたいだし、まあ、ここは端折ります。
そのときに会った、Ⅳは何かどっかの調査をしていたみたいなんですよね。『シャッガイ・インセクト』とか言っていました。ここは推測ですが、そこから、いくと、たぶんアメリカ合衆国かロシアに、ないしはその系類に雇われていたかもしれません?それで最後に『エリス達に言わないでくれ』って、あ!」
森本はしまったという顔をする。
「しゃべっちゃったよ。ごめんなさい、Ⅳさん……。忘れてた。」
森本は苦虫をかみつぶした顔をした。
99 名前:Ⅳ 2009/07/13 02:07 ID:nvd/oqio
>>98
「成る程ね。事情はわかったわ。」
「あの野郎、またろくでもないことに首突っ込んでるみたいだな。」
呆れたようにカノンがそう言うとエリスも頷く。
「まあしかし・・・だ。ハバネロの奴がⅣのことを分かってて黙っていたのは確定だな。うん退院したらまずアイツに会いに行こう。」
カノンは笑顔でそう言うが、目はまったく笑っていない。
「まあ兄さんの私怨は置いといて・・・よく話してくれたわね。ありがとう。」
エリスも話をある程度聞くと、柔らかに微笑み素直に礼を言った。
「・・・」
え?あと一人の無口男?ずっと森本君を睨んでますが何か?
100 名前:森本 2009/07/13 18:38 ID:fDCoNEAx
>>99
「いや、まあ、どうも。」
無言のプレッシャーからか森本はどもりがちに返事をした。そして、リタが意外な事を言った。
「森岸?その人、口調が悪くなかった?それでいて、ちょっと美人じゃなかった。」
「ん?ああ、そうそう、口が悪かったねえ。男みたいだったなあ、ところどころ。んで、美人でって……。」
森本はハタと気付く。
「何で、知ってんの?」
リタは平然と言い放った。
「その人は、保健室の先生だ。」
森本は何も言えずリタを見た。それからすぐに、メモと鉛筆をポケットから出すと、サラサラと似顔絵を描き始めた。
「ちょっと、お待ちを。」
101 名前:森本 2009/07/13 18:57 ID:fDCoNEAx
>>61
村上は用務員として、体育倉庫の掃除に来ていた。そこでナイアを見つけた。
「あっしにもまだ、出番がありますようで、これ幸い。」
本篇からほぼ消えた、老人、村上は満面の笑みで言った。
「んでもって、おめえさんは一体何している?」
村上hが箒と塵取りを持ったまま、ナイアに尋ねた。
102 名前:ハバネロ 2009/07/13 19:02 ID:u1EgtSB/
>>34
「……あ……?!」
星宮はその女性の顔を知っていた。
京岡をつれさらった張本人―「信濃 沙耶」。
「……この、人」
星宮は体から血の気が引いていくのを感じた。
「しり……あい?」
103 名前:ハバネロ 2009/07/13 19:05 ID:u1EgtSB/
>>101
「ひゃあ」
ナイアは驚くそぶりを見せた。そぶりだけで、顔は全く平静を保ったままなので気味が悪い。
「何でって、『待ってる』だけです」
用務員をジト目で見ながらナイアは言った。口元は笑っている。
「学園祭が始まるのを」
クク、と少し笑い、言う。
「いや……五つ目のラッパを……」
104 名前:特攻屋 2009/07/13 20:00 ID:Emo4YZdW
>>97
「あ~、もうちょい持つか?」
「…無理ね、少し出て来るわ」
調子を崩したルウに小声で聞く拳護。
そして警察署から小走りで出て行くルウ。
「ええ、行くつもりですよ。
それと私たちが”なにか”ですが……」
そこまで言って拳護は間をあけて答えた。
「ヒミツです♪」
その時、この場にどこからともなく風が吹き抜けた。
105 名前:森本 2009/07/13 20:16 ID:fDCoNEAx
>>103
「ふーん。そうなのかい。まあ、何するつもりか知れんがゆっくりとしなすって。」
村上はナイアを放っておくことにしたらしい。その証拠に掃除を始めた。
「あっしは、邪魔はしないよ。」
106 名前:Ⅳ 2009/07/14 01:20 ID:R.Olb/gm
>>100
「あー・・・間違いないな。」
森本の似顔絵を見て黒田が頷く。つか絵上手いなオイ。
「森岸先生か・・・一度倒れたときに世話になったんだけどなあ・・・とりあえず文化祭のときもマーク決定だな。
あー・・・それよりちょっと一旦話の腰を折っていいか?」
今しかないと思い黒田が一言入れる。
「突然で悪いが、エリスさん・・・ちょっと返してもらいたいもんがあるんだが・・・分かるよな。」
「・・・やっぱり来たわね。ええ勿論。」
なんでもなさそうにエリスが頷く。
「『王座』のことよね。」
「話が早くて助かる。」
「でも今はまだ返せないわね。」
「はあ!?」
エリスのその返答に黒田の声色が変わる。
「ふざけんなよ。あれは元々俺のだろ!?」
「・・・あれは元々『コウ義兄さん』のものでしょう?」
「!?なんでアンタが七海を知ってんだ!?」
「答える義務はないわ。・・・と言っても納得はしないわよね。」
仕方ないとエリスはため息をつき、
「いいわ。表へ出なさい。」
真剣な目で黒田に向かって言い放った。
107 名前:森本 2009/07/14 12:17 ID:VLQsJw2A
>>106
「王座?まあ、自分らはここで待つことにします。」
森本は病室に残ることにしたらしい。
「難しい話は、当人同士でお願いします。もちろん、リタもね。」
森本はリタを見やりながら言った。
「……。」
無言でリタは森本を見返した。何も言わないとこから見て肯定らしい。
108 名前:Ⅳ 2009/07/14 22:05 ID:R.Olb/gm
>>107
「あーいや、そこのお嬢ちゃんは残してくれないか?ちょっと話したいことがあるんだ。」
リタが無言で肯定した直後、カノンが意外なことを口にする。
「出来れば二人で話がしたいんだ。だから森本は黒田に、ロバートはエリスについてくれないか?」
意外な要望に、
「俺はかまわない。リタ、俺のことは森本がついているから残ってやれ。」
「・・・もとより俺はそのつもりだ。」
「・・・仕方ないわね。」
黒田、ロバート、エリスがそれぞれ各々の表情で承諾した。
109 名前:森本 2009/07/14 22:42 ID:VLQsJw2A
>>108
森本はカノンを無言で見やり、リタは黒田を見やった。
「はあ、まあ、それなら。」
森本は戸惑いつつも了承した。
「分かった。」
リタも了承した。
110 名前:Ⅳ 2009/07/14 23:22 ID:R.Olb/gm
>>109
「それじゃあ一旦席を外しましょう。」
「上等だ。」
「ロバート頼んだぜ。」
「言われるまでも無い。」
エリスと黒田、ロバートに森本が即座に病室から外に出て行き、病室にはカノンとリタだけが取り残される。
「まあ楽にしてくれ。」
他の人間が居なくなったところでカノンが笑顔でリタに声をかける。
「そこに掛けてくれ・・・と椅子を勧めたいところだが、まあこの通り起き上がれない様だ。適当なところに座ってくれるとありがたい。」
「・・・さて、兄さんが何を考えているかは分からないけど、こっちはこっちでやらせてもらいましょう。」
「・・・」
病室を出てエリス達が向かった先は・・・病室の待合室だった。
「何呆けた顔してるのよ。まさか外に出て殴り合うとでも思ったの?」
「え?・・・違うのか?」
「・・・あのね。私はこう見えてか弱い女の子よ?」
「え~~~~~~」
「ああ?」
「・・・すみません。」
鋭い三白眼で睨まれ黒田は萎縮し反射的に謝る。「どこがか弱い女の子だ」と愚痴りたいところだが、小声すら出せないほどの威圧感だった。
「まあ勝負って言う意味では一緒だけど、使うには拳じゃなくて頭よ。そう・・・これでね。」
「・・・これは・・・は!」
エリスが椅子の脇から出したものを見て黒田はほくそ笑む。
白黒の盤面が両面にある鞄のようなもの、無論それは鞄ではなく・・・
「チェスか。」
「ええ、そっちも心得くらいはあるんじゃない?仮にも『魔王』の弟子なら。」
「成る程な。確かにこいつはいい。」
くくくくと笑い椅子に腰掛ける。
「ええ、勝負はシンプル。貴方が勝てば目的のものを渡すわ。」
「アンタが勝ったら?」
「別に・・・何も無いわよ。」
「はァ?」
エリスの返答に黒田は怪訝そうな顔をし、すぐに不快そうに舌打ちをする。
「・・・舐めてんのか?」
「ええ。仮にも組織の司令官が・・・『素人の糞ガキ』に条件突きつけるのも大人気ないし。
なんなら私が負けたときの条件に何でも言うことを聞くっていう条件を付けてあげてもいいわよ?どうかしら?」
「・・・上等だ。吠え面かかせてやる。」
キッとエリスを睨みつけ黒田は黒い駒を並べていった。
111 名前:森本 2009/07/14 23:32 ID:VLQsJw2A
>>110
森本はエリスと黒田が喧嘩でもするのかと思っていた。でも、それはそれで間違いだった。
「チェス?」
ある意味では平和的だが、
「二人とも、……。」
怖かった。
森本は逃避のために、ロバートを見やり、
「○×ゲームでもします?」
とよせばいいのに、ロバートを誘った。
一方のリタは、手近な椅子を引き寄せてカノン右隣に腰かけた。
「話って何?」
リタは静かに尋ねた。
112 名前:Ⅳ 2009/07/14 23:37 ID:R.Olb/gm
>>111
「・・・・・・」
コクリと頷きロバートは受付まで行きメモ帳とボールペンを借りてくる。そしてそれを無言で森本に渡し、
「・・・」
すぐ脇の椅子に座った。
「話って言うほど大層なものじゃないさ。あー・・・でもこの体勢で話すのもなんかあれだよな・・・」
芋虫のようにベッドに横たわるカノンはため息をつくと、
「これ・・・脱がしてくれないか?」
拘束服を外すようお願いしてきた。
113 名前:森本 2009/07/14 23:42 ID:VLQsJw2A
>>112
「ん!え?じゃあ、やりますか…。」
おっかなびっくり森本は、格子の真ん中に丸を書いた。
森本は心の中では絶叫していた。
『無口キャラは怖えええ!』
そんなこんなで、リタは
「どうして、着せられているか教えてくれたら。」
真っすぐにカノンの眼を見なが言った。
114 名前:Ⅳ 2009/07/14 23:49 ID:R.Olb/gm
>>113
「・・・」
ロバートは無言で右上のマスに×を書く。無言かつ無表情な大人というのはなかなか怖いものがある。
「・・・ところでお前・・・・」
×を書き終えたところでロバートが口を開くと、
「P90についてどう思う?」
いきなり突拍子もないことを口にした。
「命令違反の罰だ。『軍勢』の一件で独断行動をとってこの通り手負いで戻る羽目になった。
恐らくはこの状態で俺が無茶をしないようにという考えだと思うがな。」
「まあそこは妹の優しさだよ」とカノンは微笑む。
「理由はそんなところだ。で、服を脱がしてくれるか?」
115 名前:森本 2009/07/15 00:01 ID:SghsZz.7
>>114
「は?」
森本は突然の質問にびっくりした。そして
「まあ、悪くない銃だとは思いますよ。装弾数もあるし、威力もある。それに軽くて振り回しやすい。」
そこで、森本は言葉を切り、左上のマスに丸を書き込んだ。そして、言葉を続けた。
「でも、どこでも手に入るような弾でも部品でもないからお役所にでも入っていないと使う気にはなれないですね。」
「それを脱いだら、逃げないと約束してくれるなら。」
リタは微笑みに対しても無表情に返す。
116 名前:Ⅳ 2009/07/15 00:11 ID:8D/bLzA2
>>115
「・・・やはりそこに至るな。」
納得の出来る返答だったのか頷くと紙面に目を向ける。
当然のことながらこのまま放置すれば詰む。右下に×を書いてそれを阻止する。
「・・・」
そこからまた口をつむぐ。
「逃げないよ。仮に逃げるにしても手負いの俺じゃすぐに捕まる。さっきロバートっつー金髪の無口野郎が居たろ?
流石にこの状態じゃアイツからは逃げられねェよ。」
丸腰だしなと付け加え、
「だいたい今度捕まったら拘束服にワイヤーでベッドに縛り付けにされる。これ以上窮屈なのはホント勘弁。
つーかもうストレスで頭がどうにかなりそうなんだよ。なあ頼むよ。」
上目遣いで子犬のように目を潤ませてリタを見上げる。
117 名前:森本 2009/07/15 00:20 ID:SghsZz.7
>>116
「まあ、でも自分が言えた口じゃないですから。」
あ!やっぱりそこを塞ぐよな。じゃあ、真ん中の右、つまり×の間に丸を入れる。
「ボルトアクションの小銃については、どう思います?」
「それなら、分かった。」
リタはカノンの拘束服を脱がし始めた。いくつものベルトを手早く外していく。約一分後、カノンは自由の人になった。
118 名前:Ⅳ 2009/07/15 00:32 ID:8D/bLzA2
>>117
「命中精度を要求する狙撃に必要不可欠なのは勿論、素人が狩猟用等に使う際には丁度いいだろう。
何より堅牢かつ単純な構造はコスト面でも信頼性でも優秀だ。よく何も知らない素人が自動装填方式の出来る銃を上に上げたがるが、失笑ものだな。
ボルトアクション方式と自動装填方式に優劣は無い。単に用途の問題だろう。」
質問に対してロバートは口を開きペラペラと喋り始める。さっきまでの無口が嘘のように・・・
そして左下のマスに×を書いた。
「んー・・・いやァ自由っていい!!素晴らしいわ。」
くぅーっと背伸びをしてカノンはベッドに寝転がる。しかしその姿は・・・
「あー拘束服とか胸がキツイんだよ。ホント助かったわマジで。」
上半身下着姿、それなりの大きさの胸を露にしてカノンはごろごろと転がる。
119 名前:森本 2009/07/15 00:40 ID:SghsZz.7
>>118
「そうですか。それは良かった。」
森本は緊張がほぐれたのか少し笑いながら、下の段の真ん中に丸を書き込んだ。
「銃の事、詳しいですね。」
「え!」
リタはさっきまでの無表情はどこへやら、目をまん丸にし、声を上げぽかんと驚いていた。
「男じゃなかったの?!」
ついでに声も若干大きくなる。
120 名前:Ⅳ 2009/07/15 00:53 ID:8D/bLzA2
>>119
「・・・仕事上・・・というよりは唯一の趣味だからな。
もっとも趣味を超えて仕事にしてしまったため妙な異名がついてしまったのだが・・・」
勝負が引き分けになった○×ゲームから完全に意識を逸らし、森本の顔を見る。
「初めて銃を手にしたのは9つの頃だったな。使用人の指導の下ピースメーカーを両手で構え引き金を引いた瞬間は今でも忘れん。
その手に残る反動はあの頃の良き思い出だ。」
先ほどまで無表情だった彼の顔はいつの間にか微笑んでいた。
「男だよ。内面はな。聞いた事無いか?姓同一性障害っつーやつ♪」
その驚きがよほど面白かったのか愉快に笑うカノン。
「まあそういうことだよ。エリスもいつもは兄さんって呼んでいるが、二人きりのときは姉さんって呼んでいるよ。
ちなみにこのことはロバートも知っている。黒田の奴にはまだ秘密にしといてくれ。」
121 名前:森本 2009/07/15 01:02 ID:SghsZz.7
>>120
「それは、いい思い出ですね。」
森本はにっこりと笑いながら返事を返した。
「それじゃあ、あなたの愛銃は何ですか?ちなみに自分のは九九式小銃です。」
「分かった。秘密にしておく。」
リタは頷いた。ちなみに眼はまだまん丸だ。それでも一応落ち着いたのか、席に座って腰を落ち着けた。
「本当にびっくりした。」
122 名前:Ⅳ 2009/07/15 01:15 ID:8D/bLzA2
>>121
「俺の仕事は主に市街戦だ。高威力なアサルトライフルは使えん。故に先ほど上げたP90が愛銃だ。
弾薬や部品に関しては以前所属していたところからまわしてもらっている。」
心を開いたのか話せる範囲で質問に答える。
「だが、基本はケースバイケースだな。時と場合で持つ得物は代わる。拳銃のときもあれば狙撃銃のときもある。
場合によってはヘビーアームズの使用もありえるな。」
「そう言うな。俺だって好きで女に産まれたわけじゃねェ。
傭兵として活動していたときは結構大変だったんだぜ?女の身一つで戦地に行って野郎の中に紛れてみろ。
性別ばれたらエラいことになるだろ?まあそんな昔の苦労話は置いといて・・・」
ふぅ・・・と息を吐き、
「そっちとしても結構安心だろ?怪我人とはいえ、得物も無い空間で得体の知れない野郎と二人きりより、同姓のお姉さんのほうが気持ちが楽じゃないか?」
笑いながらリタにそう言う。
「まあお前にここに残ってもらった理由は至ってシンプル。少しお話がしたかっただけさ。お前とな。」
123 名前:森本 2009/07/15 01:24 ID:SghsZz.7
>>122
「へえ、じゃあ、ロバートさんは銃器だったらほぼ使いこなせるってことですね。」
森本の目に尊敬の文字が宿る。
「自分なんかは、使える銃器は二つだけですよ。いいなあ。」
「私と。」
リタは確認するように言葉を発した。
124 名前:Ⅳ 2009/07/15 01:31 ID:8D/bLzA2
>>123
「しかるべき教育としかるべき訓練を受ければ誰でもそれなりには扱えるものだ。
俺の実家はたまたまそういう家系で、その機会に恵まれたというだけだ。」
等となんでもなさげに言っているが、そのクオリティの高さには才能も関与していることは言うまでもない。
だがしかし、彼のいうこともあながち間違っていない。
「普通の家でも紅茶の淹れ方を教わるような年頃に機銃掃射の手ほどきをされてたくらいだからな。」
「ああ。お前とだよ。とはいえ話の内容はそれほど難しい話じゃない。雑談程度のレベルで・・・」
カノンは笑いながら、
「黒田清隆についてどう思うか・・・お話がしたい。」
はっきりと目的を口にした。
125 名前:森本 2009/07/15 13:10 ID:Tp1/uMmx
>>124
「それは、また家庭的なことですね。」
森本はそこでクスリと笑い、
「自分は、親から教えられてモノになったのは靴の磨き方だけですね。それにしても、実家は一体何を家業に?」
傭兵かな、それとも軍人、殺し屋?さて一体何だろう?
「清隆のこと?」
リタの表情はいつもの表情に戻っていたが、膝の上に置かれていた手はぴくりと震えた。リタは視線をカノンの足もとに落としながら清隆に関する考えを述べた。
「どうって、……。人でなしで、策略家で、意地が悪い。それでいて偉そう。」
リタはここで言葉を区切り、『でも』と続ける。そして徐々に視線を上げていく。
「実は照れ屋で、臆病で、寂しがり屋で、何だかんだ言って見捨てない人だと思える。」
そして、視線はカノンの目に合わされる。
126 名前:Ⅳ 2009/07/15 18:47 ID:8D/bLzA2
>>125
「・・・貴族だ。」
・・・周りの人間が聞いていたら「は?」の一言だろう。
「英国貴族・・・もっとも実家についてはあまり語りたくは無い。」
すぐさま笑顔を再び無表情にしてそう答えた。
「・・・そっくりだな。」
リタの話を聞いてカノンが微笑む。その笑顔は普段銃を取るときの獰猛なものではなく・・・
「そうか。やっぱ師弟似通ったところはあるんだな。」
女性的な優しいものだった。
「んでもってそういうの本人が自覚がないんだろ?どうせ。」
127 名前:森本 2009/07/15 20:22 ID:SghsZz.7
>>126
「ちょっと聞きすぎました。」
森本はバツが悪そうに、縮こまった。
「あー、そろそろチェスの方も見ましょうか?」
カノンの柔らかな顔をリタは見惚れていた。そして、はっと気付くと口を動かした。
「ない、そんな欠片も。」
リタは、きっぱりと言い切った。
「それと、あなたは清隆の何を知っているの?」
128 名前:Ⅳ 2009/07/16 01:20 ID:hyJeAc4d
>>127
「・・・見るまでもない。」
森本の提案に興味なさそうにロバートは呟く。
「若いとはいえエリスは組織の司令官、それも俺の認めた女だ。」
盤面のある場所、つまりエリスと黒田の居る位置を指差し、
「結果は見るまでもない。」
盤面は清清しいほどの出来栄えだった。
白と黒が入り乱れるチェス版、だがそこには、
「馬鹿な・・・」
しかるべき結果が存在した。
コトンと倒される黒のキング、そして白き駒の担い手は、
「話にならないわね。あの威勢でこの程度なんて・・・」
氷のように冷たい口調で敗軍の将にそう言い放つ。
盤面には白の軍勢がはびこり・・・
「・・・糞ったれ。」
黒い駒はクイーンを残して全て消えていた。
「何を・・・と聞かれると返答に困るな。アイツって言うよりはアイツに最も近しかった奴のことを知っているって感じだな。」
質問をはぐらかすような返答をするカノン、
「ただまぁ一つだけ。お前も知らないアイツの目的なら知っている。アイツが・・・今になって何故こっちの世界に首を突っ込み始めたのかをな。」
そして急に真剣な目でリタを見つめ、
「アイツは今も探しているんだ。かつてアイツに名を与え、知を与え、そして生きる意味を与えた男・・・七海幸太郎をな。」
その名を隠すことなく口にした。
129 名前:森本 2009/07/17 00:29 ID:/YlqOqBI
>>128
「どれどれ。」
森本は二人に近づいていく。そして、
「あら、まあ!」
森本はチェス盤の上の状況が分かるなり、素っ頓狂な声を上げ、すぐに顔からチェス盤を離す。そしてロバートを見やり、笑顔で言った。
「あなたの言う通りだ。あなたの上司はあなたの言った通りの人だ。」
そして、森本はエリスに、病院の待合室だというのも忘れて、もう一回エリスを見やる。
「そして、あなたの部下は、あなたに心底惚れ込んでいる!」
森本は満面の笑みで演説でもするかのように続けた。
「とても綺麗な関係だ。上司と部下の関係としては綺麗だ!」
森本の何か琴線に触れたのだろうか、その顔はとても晴れやかだ。
「ですが、少しばかり悔しい。うちの上司が他の上司に負けるのは悔しいものです。」
その晴れやかな顔を森本は少し崩した。
「探している?今も?」
その男は、大罪人。『クーデター事件』の主犯。あまりにも、大きな事件で私は何も知らない。それでも、教えられた名前と事件。ちなみに、七海の生死は不明だ。だが、たぶん、死んでいるだろう。
「なんだか、すごく寂しい話し。」
リタの口から出た言葉は誰に向けたものなのだろうか?
「清隆の探し物は、七海の落し物だった。そして、あなた達も探している。」
その言葉には疑問は含まれてはいなかった。ただ断定だけがあった。そしてリタはカノンの眼を見つめ返しながら、
「まるで、影との鬼ごっこみたい。」
そう言ったリタの顔は、少し悲しそうだった。
130 名前:Ⅳ 2009/07/17 14:42 ID:vpUsN9YJ
>>129
「というわけで今回はあきらめなさい。流石に勝負で負けておいてごねるなんて子供みたいなことはしないでしょう?」
「当たり前だ。これ以上恥を晒してたまるか。」
舌打ちして黒田は席を立つ。
「だが『今回は引き下がる。』だけだ。それだけは忘れるなよ。」
「ええ、望むところよ。」
エリスはその言葉にそう言って応じると、盤外に置かれた黒い駒を一つにまとめる。
「ふん・・・ちょっと外行ってくる。」
これ以上何かを言っても軽くあしらわれるだけだろう。そう思った黒田は一度席を外した。
「影との鬼ごっこね・・・違いないな。」
苦笑いしながらカノンは言う。
「結局は未練だよ。ああ未練だ。馬鹿らしいという自覚はある。だが止まれないんだよ。」
それは誰に向けられた言葉なのか分からない。ただ、
「黒田清隆は一見強そうに見える。だがそれを支えているものはそんな不安定でそれこそいつ崩れてもおかしくはないものだ。だから・・・」
真っ直ぐな視線そして真っ直ぐな言葉で彼は・・・『彼女』として言う。
「あの子を支えてあげて欲しい。多分それが出来るのは貴女だけだから・・・そして・・・」
最期の一言を言うとき彼女の目は・・・
「『私』にはそれが出来なかったから。」
今にも泣き出しそうなほどの憂いを帯びていた。
131 名前:森本 2009/07/19 01:41 ID:dnXcgGNg
>>130
「うちの大将はそっちの大将には、今のところ勝てそうもないようですね。」
森本は黒田が出払った事を確認してから、ロバートに向けて話し出した。
「強いなあ、エリスさんは。てことは、ロバートさんも強いでしょうね?」
そこで、森本はハタと気が付く。
「ロバート?銃?貴族?っつ、あ!」
森本は泰然として座っている男を畏怖して見た。
「『銃神』!?忘れてた。すっかり『処刑人』だけ目が行っていた。」
カノンの憂いを帯びた目は、リタの目を通り抜け胸に刺さった。
黒田清隆は強くはない。気が付いていた。頭は悪くないが、いつも自分で出来る以上の事を求め、力を求めている。それでいて、清隆はある意味で死んでいる。なぜなら彼は学校にいる間、ずっと黒田清隆として振舞っている。成長も後退もない。彼にあるのは設定だけ。過去に作られた設定どおりにしか動いていない。だから、どんな怖い状況になっても彼は冷静だ。彼は死んでいるのだから。彼が死人にならなかったのは、彼が探し物をしていたからだろう。でも、それでも彼は死んでいる。
カノンの言葉は、彼を生き返らせろというのに等しい。そんな事が出来るのだろうか?
そう言えば、この人はどうしてお願いするのだろう?こんなにも心から。まるでわが子のように心配してる。どうして、温かいのに寂しい。私のお母さんも、こうだったら……。
あれ?視界が……。
彼女は泣いていた。大粒の涙が両の眼からあふれ出し、顎をつたって組まれた手の上に落ちていった。
そして、彼女の顔は見る見るうちに泣き顔になっていった。そして、ぐずりながら言った。
「分かった。やってみる。」
彼女はシクシクと椅子の上で泣き出した。リタは必死に涙を止めようとするが、余計に涙が出てくるだけだった。
132 名前:Ⅳ 2009/07/19 03:13 ID:MpQZCcp7
>>131
「・・・何処の誰が付けたか分からんくだらん名だ。他所で名乗るたびにその通り名で騒がれうんざりしている。」
ふん・・・とつまらなさそうにロバートは言う。
「そもそも『神』というのが気に喰わん。銃は人の生み出した英知の結晶であり、それゆえに未完・・・故に無限の可能性がある文化の極みだ。
それなのにそれに携わるものを『神』等と言うのは俺からしてみれば侮辱に等しい。だいたい・・・」
「あら、私はカッコいいと思いますけど。」
「『銃神』大いに結構!!俺も気に入っているところだ。」
途中までの熱弁は一気に台無しになりました(笑)
「まあロバートさんの話は置いておいて・・・別に彼は弱くはないわよ。盤面を見る限りでは私の圧勝だけど、それほど差はないわ。」
そう言ってロバートの話を置いておき(本人もしっかり黙ってます。)、未だ盤面に残る倒れたキングと最期まで残ったクイーンを見る。
「見てなかった貴方達は知らないと思うけど、彼は最期までクイーンを危険な位置には行かせなかった。終始キングの傍に置いてやってたわ。
それ以外の動きを見る限り、クイーンさえちゃんと使っていればいい勝負になっていたとは思うわよ。ただ・・・」
口元を緩めて彼女は言う。
「打っていて人間らしさを感じたわ。以前よりもずっとね。」
目の前で泣き出したリタを見てカノンは安心する。
黒田清隆は死んでいる。米国で会った彼はかつての『彼』のようにその心は果てしない虚無であった。
『影との鬼ごっこ』、どれほど追いかけても手に入らないものを追いかける様は亡者の行進によく似た絶望があった。
だが、今は違う。確かに目的こそ変わらないが、彼は『彼』とは違う道を歩みつつある。何せ今の黒田清隆には・・・
「ありがとう。」
その傍らに涙を流してくれる人が居るのだから。
かつて『それ』をしてあげられなかった『彼女』は穏やかな口調で少女の頭を撫でた。
133 名前:森本 2009/07/19 16:04 ID:dnXcgGNg
>>132
「へえ、人間らしさですか。」
人間らしさねえ。そう言えば、リタも変わったかな?あー、嫌だ嫌だ。あいつらが人間らしく、気持ち悪いなあ。まあ、でも、いっか。無表情よりは。そこで、ふと疑問が生まれる。
「それにしても、いやに貴方方は黒田に良くしてくれますね。」
黒田清隆を守っているのは、事実上エリス達だ。エリス達がいなければ黒田は生きてはいないだろう。
頭をなでられた途端、リタの理性は吹っ飛んだ。リタはカノンに飛びつくように抱き付き。子供のように泣いた。
その時リタは忘れていた、そこが病室である事、相手がカノンである事、そして自分が泣きたがっていた事を。
二分か、三分経ったとき、リタは正気に戻った。
「あっ。」
状況を理解したのか顔を真っ赤にし、カノンから飛ぶように離れた。
「あ、その、すいません。」
もじもじと目を伏せながら、リタらしくはない態度でカノンに謝った。
134 名前:Ⅳ 2009/07/20 00:41 ID:bnqLXVrV
>>133
「別にただ彼に良くしているわけじゃないわよ。うちも裏の一組織・・・慈善事業じゃないからね。理由はいくつかあるわ。」
そう言ってエリスは指を三本立てる。
「まず一つ、彼自身を評価しているから。これは貴方方と同じね。
蓮田高校という問題の渦中の生徒という立場、その立場に見合わぬ能力、そしてこっちとの繋がり・・・どれをとってもこちらとしてはキープしておきたい人物なのよ彼は。」
そして二つ・・・と続く。
「二つ目は将来性ね。さっきも述べたとおり現時点でそれほどのものを持っている人間ならその先も期待できるわ。
願わくばこちらに。それが叶わなくても協力者として手を結んでおいても損はない人物だと評価しているわ。」
そして・・・最期に
「そして最期は・・・まあ二つ目と同じ将来性、でもこちらは逆の意味でね。」
その瞬間エリスの目が冷たいものに変わる。
「もし仮に・・・あの子が『彼』のように道を踏み外したとき・・・それを潰すためには今のうちに保護しておいたほうが都合がいいのよ。
分かるでしょう?この世界で一番怖いのはよく分からない相手。
黒田清隆という人物がそうなってしまった場合どれほどの被害が及ぶのか分からないからね。」
だから・・・そのときは瞬時に潰す。保護をしているということは手の中に有るということ。その手を握ってしまえばそれがどうなるのかは言うまでもない。
「気にしなくていいわ。今はああだけど、昔はエリス相手によく今みたいに抱きしめてあげたもの。」
ふふっとまるで姉のように笑うカノン、
「まあ今では噂どおり暴れているけど、昔はちゃんと女だった頃もあったのよ?
まあ今じゃこの通り男勝り・・・つーか男である時間ばかりだけどな。」
瞬時にいつも通りの口調に戻して笑う。
「ありがとう。兵として・・・男としての自分からも礼を言わせてもらう。少し・・・懐かしかった。」
そう口にするカノンの目は何処か遠い過去を懐かしむような、失ったものを思い出しているようなそんな色があった。
人は大人になるために色々なものを捨てていく。先ほどの女としてのカノン=リーデルトはきっと・・・
「未練か・・・人のことは言えないな。」
そのように失くしてしまったものの残滓なのだろう。
135 名前:森本 2009/07/20 01:04 ID:1nYkdEU2
>>134
「うわ。」
森本の顔が露骨に曇った。
うわ、どこも考えることは同じかよ。実際、自分だって黒田清隆が敵対行動した際に殺すように言われてるしなあ。
「なんて、難儀な人だ。」
森本の視線は無意識に黒田がいるであろう方向を向いていた。よくまあ、精神が持つものだ。そういえば、
「うちの大将はどこ行った?」
もうそろ夕方だ。そろそろ退散してもいい時間だ。
目と顔を赤くしたリタは、カノンの言葉に
「そうなんですか。」
と敬語で応じた。
夕日が病室内を赤く染め始めた。そして、カノンの
「未練か・・・人のことは言えないな。」
という、言葉の意味は分かりそうで分からなかった。
136 名前:Ⅳ 2009/07/20 01:29 ID:bnqLXVrV
>>135
「・・・此処に居る。」
缶コーヒー片手に黒田が戻ってくる。一息入れて落ち着いたのか、特にいらだっている様子も無い。
「そろそろ帰るぞ。あーリタの奴病室に置いていていったまんまだ。織部、迎えに行くぞ。」
そう言って森本に近づくとき・・・丁度エリスとすれ違う際に・・・
「また来る。次は負けないからな。」
「ええ、望むところよ。」
両者微笑みながら一言交わした。
「ああ、っと・・・迎えが来たようだ・・・ってやべ!!拘束服脱いだから俺上丸見えじゃん!!
悪い。すぐに出て黒田達が入らないようにして帰ってくれ!!」
やっと現状に気づいたのか、急に慌ててそう言うと、
「何かあったら・・・というか暇だったらまた来てくれていい。
もしかしたらさっきみたいに気まぐれで戻ることもあるから。」
最期に笑ってそう付け足した。
137 名前:森本 2009/07/20 01:44 ID:1nYkdEU2
>>136
「はい、はい。それじゃ行きますか。」
森本は、黒田にくっ付いて出ていく。その際にロバートに、
「それじゃあ、いつかまた銃の話でも。」
と行って黒田と共に去って行った。
「分かった!」
リタはすぐに廊下に出ようとした、そこに、
「何かあったら・・・というか暇だったらまた来てくれていい。
もしかしたらさっきみたいに気まぐれで戻ることもあるから。」
とカノンに言われた。
「また、いつか来させてもらいます。今日はありがとう御座いました。」
リタは微かに笑いながら、黒田に教わった日本式の礼をして廊下に出て行った。
138 名前:Ⅳ 2009/07/20 02:36 ID:bnqLXVrV
>>137
「・・・」
無言で頷くと片手を上げて「またな。」とロバートは返す。
それをエリスが少し驚いたように口を開ける。
「珍しいですね。気に入ったんですか?彼が。」
「・・・ああ。」
ふっと微笑みながらロバートはそう返した。
「・・・やれやれ。私ももう潮時かもしれないな。」
リタが去った後、再び口調を女性的なものに戻して苦笑いする。
「もしかしたら私も・・・」
腹部をさすりながらカノンは思う。もしあのとき、『彼』と一緒になり、銃を捨てていたならあるいは・・・
「いや・・・止めよう。」
そこまで思ったところで首を振り思考を戻す。
「あのときはもう帰らないし、あの人はもう戻らない。もう・・・もうどうしようもないのだから。」
139 名前:森本 2009/07/20 13:32 ID:1nYkdEU2
廊下の向こうから清隆が来た。リタは自分から清隆に向って行った。
「どうだった?」
リタは清隆に一言尋ねた。いつもの表情で尋ねた。
140 名前:Ⅳ 2009/07/21 02:23 ID:jS30oiX5
>>139
「・・・一方的にやられたよ。涼しい顔してとんだ食わせ者だった。」
それ以上は聞かないでくれと肩を落とす。
「そっちこそ何を話してたんだ?あのカノンがお前を指名して話なんてよくよく考えれば変な話だよな?何を話してたんだ?」
141 名前:名無しさん 2009/07/21 17:56 ID:gTdTUAvw
>>140
清隆は、あの人に負けたらしい、それも徹底的に。でも清隆が別に大した怪我もなく帰ってきたので安心した。それでも、元気のないさまを見るのは、ちょっとつらい。
「そう。」
私は短く返事を返した。
そこで、清隆から質問が来た。「カノンと何を話してた?」、と。
「……。」
何と言っていいのだろうか?話してはならない部分もあるが、それを抜かしても話したくはない。何の問題がある?だが、話したくない。頭は「話せ」というが、どこかで引っかかる。どうしよう?
「いつか、話す。だから、それまで待って欲しい…。」
歯切れの悪い回答をする事になってしまった。
森本はリタが清隆に対しての行動が不審なのがおかしく思った。いつもは打てば響くような回答をする奴なのだ。それと、言いたくないなら、「言いたくない」とか「秘密」とか言えばいいのに。自分なら嘘を吐くのに。
そもそも、こいつに嘘を吐く概念があるのか?
142 名前:Ⅳ 2009/07/22 02:53 ID:uRfwyn0O
>>141
「・・・」
黒田は一瞬驚いたような顔をし、やがて黙り込む。そしてすぐに頷き、
「・・・分かった。」
一言そう言うと踵を返し「帰るぞ。」と手で合図した。
143 名前:森本 2009/07/22 11:40 ID:xlzN4eUe
>>143
「は?!」
森本は事の成り行きが信じられなかった。
黒田に自分が同じ事をすれば根掘り葉掘り聞かれるのは確実だ。
森本はフラフラと黒田の後について行った。
「いいんですか?」
森本は半分無意識に黒田に尋ねていた。
リタはさっきから奥歯に物が挟まったような顔をしている。
144 名前:森本 2009/07/22 12:38 ID:xlzN4eUe
>>105
「さあて、この老いぼれに暇をよこしちゃくれやせんか?」
掃除を終えた村上はナイアの前に、畳まれたマットの上にヒョイと座った。
「あんさん、ずいぶん余裕だね。これから、あくどい事をやらかすようには見えんわ。」
老人はナイアを見ながら、胸ポケットから煙草の箱をするっと取り出した。そこで、村上は手を止めて、
「一本どうだい?」
右手に持った箱の中から煙草を一本覗かせながら、箱の口をナイアに向けた。
145 名前:Ⅳ 2009/07/22 16:40 ID:uRfwyn0O
>>143
「本来ならば駄目だな。俺の下についている以上訊かれたことには答えてもらうし、それがあの『処刑人』関連だったら尚更だ。」
だが、と黒田は続ける。
「今はそんな気分じゃないんだよ。まぁいいんじゃねえの?いつか話すって言ってるし、すぐに言わなきゃならないことならリタも言うだろ?」
なら問題なしと締めて黒田は先に歩いていった。
146 名前:森本 2009/07/22 18:14 ID:xlzN4eUe
>>145
「はあ。まあ、たしかに。」
森本は気の抜けた返事をした。
こいつ(黒田)は、こんなに人を信頼する奴だったか?いや、絶対してなかった!そして、こいつ(リタ)も、こんな奴だったか?こっちも絶対違う!
一体、どうしたんだ?
147 名前:Ⅳ 2009/07/23 00:51 ID:QHtNc7l4
>>146
「・・・」
やれやれ、織部の奴明らかに不審がっているな。
黒田は無言で歩きながらほくそ笑む。
らしくない。先ほどの対応は確かに自分でもおかしいと思う。自覚はある。だが不思議と間違ったことをしているとは思えなかった。
「(ま、たまにはこういうのも悪くないだろう。)」
たとえ理屈が通らなくてもかまわない。ぶっちゃけ一言で言えばさっき言ったとおり『気分』なんだが、それでいいと思う。
今まで合理性や理屈ばかり優先してきたが、
「(理屈じゃないんだよな・・・人の心ってものは。)」
現実はそれだけでまわるものではないのだから。
148 名前:森本 2009/07/28 10:35 ID:qfGH4ckU
>>148
夕焼けの中を三人は歩いて行った。森本は頭をひねり、リタはどこかしら満足そうに清隆の後を付いて行った。
>>146
「最近な健康のためにって、軽いやつにしたんだよ。そしたらウマくないこと。」
村上は苦笑しながら、手にはまだ煙草の箱を持ちながらしゃべっていた。
「世の中、軽いってことはいいことじゃないのかね。」
149 名前:ハバネロ 2009/08/09 22:39 ID:M4ruhdBw
>>144
「タバコですか」
ナイアはしげしげと煙草を見つめる。
「ではお言葉に甘えて」
その一本を引き抜いた。
しかし吸わない。
「…………ふ、」
軽く笑う。嘲笑に近い微笑。
「お祭りが始まったら会いに行きますよ、星宮ちゃん」
つぶやく。
150 名前:ハバネロ 2009/08/09 22:43 ID:M4ruhdBw
そして……学園祭の当日(の朝)。
「ひぃーーーまーーーーーだーーーーーーーーッ」
星宮は黒板に落書きをしながら盛大に叫んだ。
今から数十分後には学生以外の人間や学生で学校が埋め尽くされるというのに、
準備もしないで星宮はダラダラしている。
そしてウエイトレス姿だ。早速着替えてしまっていた。早い。
「だーれかこないかなー」
最終更新:2009年09月23日 20:51