※以下は講義の備忘録です。正式なテープ起こしはもうしばらく(数年)お待ちください。太田120524
- 『実体概念と関数概念』を読むに際しては、当時、数学、物理学において何が成立しており、何が成立していなかったかを頭に入れておくこと。科学史家でもあるカッシーラーは、当時の学説をふまえている。カントールの素朴集合論は既出。高校数学の教科書の内容のほとんどが19世紀後半までに出る。
- 数学だけでなく、熱力学から量子力学までの物理学(プランクの法則の発見が1900年)、化学、解剖や生理の生物学が、それぞれの領域のなかで、それぞれの統一性を明らかにしていったのが、1910年当時のドイツ。哲学は科学の展開のもとでの人間の尊厳という課題に対応できていなかった。
- 例えば、カッシーラーは新カント派であるけれど、当時、大脳生理学的なカント解釈を試みる人たちもいた(それに反対したのが、ヘルムホルツ。熱力学、生理学の研究もしていた彼もhttp://t.co/xwbDw2bz、新カント派)。分断した科学を、もう一度つなぎあわせる試みが、哲学的課題
- 分断した科学をどのようにつなぎ合わせるか?数式(精密科学」と論理学で。しかし、アリストテレスの論理学には限界がある。三段論法がリーマン幾何に対応できないのは明らか。そこで、論理学と形而上学における「実体概念」を、「関数概念」へアップデートする、というカッシーラーの仕事が始まる。
以下、『実体概念と関数概念』を読む予備知識のメモ。
○1879年、フレーゲが『概念記法』で、量化子(「∀」とか「∃」とか)を導入したのは、日常言語によって無限を扱う数学を語れるのか、という背景がある。無限を扱う場合には、外延的な記述と内包的な記述の差も大きい。
註:ある集合がどのようなものであるかを定義するとき、要素の全てをあげて決定するのが、「外延」(extension)。要素に共通する性質を示して決定するのが、「内包」(intension)。このサイト(
http://t.co/JDalUYh9)がラッセルのパラドックスと合わせて解説。ちなみに、量化子を用いて、自然数の集合Nを書こうとすると、外延的記述では N = {1, 2, 3,・・・} 内包的記述では、 N = {n | nは自然数} 無限を扱う場合には、内包的記述が求められる(厳密には、無限は外延的に書き表しようがない)。
○ラッセルがフレーゲに件のパラドックスを書簡で指摘したのは1902年、翌1903年に公開されている
http://t.co/TYFtuAjPので、『実体概念と関数概念』を記したカッシーラーは当然、チェックしている。そのうえで、「第2章 数の概念」も書かれている。
○同時に、「数」は、カントにおいては時間形式(cf.『純粋理性批判』「先験的図式」)である。カッシーラーはカントのその数の定義と集合論とを第2章で重ね合わせる。ちなみに、空間形式の方も、ちゃんと第3章で扱われる。
○『実体概念と関数概念』執筆時、ラグランジュの解析力学から、ハミルトン力学までは知られていた。プランクは知られていたが、ボーアまでは知られていなかった(水素原子モデルは1913年)。相対性理論は知られていた(1905年)が、不完全性定理(1931年)は知られていなかった。
最終更新:2013年01月26日 19:26