子どもの権利条約
基本的人権が子どもにも保障されるべきことを国際的に定めた条約であり、子どもの生存や発達、保護、参加という包括的な権利を前文と54条に記している。1989年11月20日に国連総会において全会一致で採択され、1990年9月2日に発効された。日本は1994年4月に国会が批准、5月に公布した。
子どもの権利条約ができる起源は1948年の世界人権宣言が挙げられる。これにより全ての人は平等でそれぞれが同じ権利を持つとされた。そして1959年には子どもにも権利が認められるべきとして「児童の権利宣言」が発表された。このときから宣言だけでなく実際に効力があるものができないかと考えられていたそうだ。そこで1978年には「子どもの権利条約」の草案がポーランド政府によって提出された。
1979年は国際児童年とされ、児童の権利宣言からちょうど20周年であった。この年から世界中の人が子どもの権利条約を考えるようになった。そしてようやく1989年、「子どもの権利条約」が国連で採択された。国際児童年から10年にわたる努力が実を結んだのである。1990年には
国際条約として発行された。
条約では、第一条によって子どもの定義は満18歳になっていない者を指す。条約の54条は生きる権利・育つ権利・守られる権利・参加する権利という4つのテーマに分けることができ、差別や国の義務、親子に関する規定、医療制度の利用、麻薬や犯罪からの保護などが書かれている。
第28条では
教育を受ける権利が認められている。ここでの教育を受ける権利は既存の
国際法における教育上の権利にとどまらず、「保護」「エンパワーメント」「子ども中心」といった新たな側面が特徴である。
第28条
締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、
初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。
種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。
すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。
すべての児童に対し、教育及び職業に関する情報及び指導が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとする。
定期的な登校及び中途退学率の減少を奨励するための措置をとる。
締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
締約国は、特に全世界における無知及び非識字の廃絶に寄与し並びに科学上及び技術上の知識並びに最新の教育方法の利用を容易にするため、教育に関する事項についての国際協力を促進し、及び奨励する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。
このように子どもに教育をうける権利、機会均等をめざす一方で開発途上国の教育発展を国際協力によって促進させる必要があることも書かれている。開発途上国では学校に通えない子供、労働する子ども、徴兵される子どもなどが未だ存在する。また、充分な教育が受けられていないため、無知によって予防することが困難な状況もある。例えばエイズに対する知識が少ないため、エイズは偏見の対象となり、感染の恐れのある人でも検査を受けたがらないということもしばしばあるようだ。また、カンボジアでは字の読めない子供たちが地雷を呼びかける看板を認識することができず被害にあうこともある。つまり、開発途上国の子どもの権利を守るためにはある程度経済力のある国の教育援助が必要なのである。
しかし、裕福だからといって子どもの権利が守られているとは限らない。日本でも教育を受ける権利が侵害されていることもしばしばある。子どもの権利条約採択後、2000年5月には現行の子どもの権利条約を見直し、2つの選択議定書が提出された。それは「武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書」と「子どもの売買、子どもの買春および子どものポルノグラフィーに関する選択議定書」である。子どもの権利を守るためにはまず、大人が正しい知識を持ち、子どもを保護する立場に立たなければならない。そして子どもに力を与えてやるエンパワーメントの姿勢をとることが重要である。さらに、子どもの意見を聞くという姿勢も大切である。
◎附録
子どもの権利条約の中で教育に関係するもの
2条 一般被差別原則
3条 子どもの最善の利益
6条 生命・生存・発達についての権利
12条 子どもの意見
13~17条 「参加」に関する規定
19条1項 教員が行うあらゆる形態の不当な取り扱いから子どもを保護する
23条3項 障害児に対して効果的な教育を保証する
24条2項 健康教育に関する
30条 マイノリティまたは先住民族に属する子どもの権利に関わる
32条 児童労働
44条6項および42条 人間教育に関する=政府報告書の公開・利用=子供への条約の周知
最終更新:2008年03月09日 02:30