昨日の「文の要素」に関して、少し考えてみました。
具体例として、こんな風ならどうでしょう。学年はあまり気にしないことにしましょう。(2年はこんなことわからない、というのは、ここでは不便なので。)
板書「メロスは激怒した。」
先生 さあ読んでみよう。
生徒 メロスは、----- 読めない!
先生 ゲキドした、と読みます。(板書して、フリガナをふる。)
生徒 メロスは、ゲキドした。
先生 そうだね。メロスはゲキドした---ゲキドというのは、すごく怒っていることをいいます。みんなも怒ることあるでしょう。お父さんやおかあさんもあるよ。
生徒 点数悪いと怒る。(口々に)
先生 そう、メロスは怒っているんだね。
生徒 メロスって誰。変な名前。
生徒 なんで怒ってるの?なんにもないのに怒ってるの?
先生 そうだね、メロスって誰だろう。名前なんだけど、どんな人かわからないね。でも、メロスが怒っていることはわかるね。
それから、なんで怒ってるんだろう。不思議だよね。じゃ、次読んでみようか。
「必ず、かの邪智暴虐《じゃちぼうぎゃく》の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。」
先生 ちょっと難しい言葉を使ってるけど、簡単にいうと、酷いことばかりしている王様ってことだね。王様が酷いことしているらしいね。それで、その王を「除かなければならぬ」って、決意して、つまり、思っているんだね。だから、メロスは何故怒っているのかな。
生徒 王様がひどいことをしているから。
先生 そうだね。ひどいことって、どんなことをしているのかな?まだ書いてないけど、これからわかってくるから、注意していようね。王様はどんな酷いことをしているのか。
それで、メロスって誰だかわかったかな?
生徒 メロスは、村の牧人。
先生 そうだね。「メロスは、村の牧人である。」って書いてあるね。牧人ってわかるかな。これは、牛とか羊とか飼っていて、乳や肉やその他牛や羊からとれるものを売って生活している人だね。
では、メロスはどこに住んでいるのかな。
生徒 村
先生 そう、村だね。メロスは村に住んでいるんだね。じゃ、王様はどこに住んでいるのかな。
生徒 書いてない。
先生 そうだね、ここには書いてないね。書いてないとわからないかな。普通王様が住んでいるところは
生徒 お城。
先生 そう、お城だね。それで、普通はお城は、「村」じゃなくて
生徒 町にある。
先生 そうだね、城は町にあるんだよね。そうすると、メロスと王様は、近くにいるのかな?
生徒 近くじゃない。
先生 そうだね、村と町は近くじゃないことが多いよね。じゃ、メロスは、「今は」どこにいるんだろう。町なのかな、村なのかな。
生徒 わかんない。
先生 そうか、わからないかな?じゃ、次を読んでみようか。
「笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此《こ》のシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿《はなむこ》として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。」
先生 さてどうかな?いまメロスはどこにいるんだろう。
生徒 シラクサ
先生 そうだね。それで、シラクサって、どんなところなのかな。
生徒 いろんなもの売ってる。
先生 そうだね。メロスの妹が結婚するので、その花嫁道具を買いにきたみたいだね。だから、町だよね。
じゃ、いつ村から町にやってきたのかな?
生徒 きょう
先生 うん、きょうなんだけど、もっと書いてあるよね。
生徒 きょう未明。
生徒 未明ってなに?
先生 未明って、「明」は明るいってことだけど、「未」というのは、「未完」とか、「未来」とか、って言葉があるけど、「未完」というのは、「まだ完成していない」、「未来」というのは、「まだ来ていない」という意味で、まだ**していない、という意味なんだ。だから、「未明」というのは、「まだ明るくなっていない」という意味で、まだくらい朝早くということです。わかったかな。
それから、まだシラクサってどんな町か、別の表現で書いてあるね。
生徒 ----
先生 メロスは買い物をしてから、どうしたの?
生徒 ぶらぶら歩いた。
先生 どこを?
生徒 都の大路。
先生 そうだね。都の大路というのは、まず都というのは、王様がいる町のことを言います。それから、大路というのは、大きな道路ってことだね。だからシラクサという町は、王様がいるところ、つまり都で、そこに、メロスは村から、やってきて、妹の結婚の品々を買って、その後散歩しているんだね。
さて、ではここまででわかることを整理してみよう。
だれか整理できるかな。
優秀な生徒 牧人のメロスが、村から、きょう未明、シラクサという都の町に、妹の結婚道具を買いにいって、王様の酷いことに怒っている。
先生 そうだね。簡単にいうと、そういうことがわかるね。
メロスが これは「誰が」ということですね。
きょう未明 これは「いつ」のことかを示していますね。
村から町に これは「どこ」という場所を指していますね。
そして、メロスは、買い物をして、ぶらぶらしていた。そして、何があったわからないけど、「ゲキド」しているんだよね。どうして、怒っているのか、怒って何をするのか、それはこれから楽しみだね。注意して読んでみよう。
このように、文章は、「誰が」「いつ」「どこで」「何をした」がちゃんと書かれていています。そうすると、意味がよくわかるし、何が起こっているのか、正確に理解できるんですね。みんなも、文章を書くときは、こういう「必要な要素」をちゃんと書きましょう。
生徒 はーい
最終更新:2008年05月03日 14:51