秋葉原の事件について



 6月8日、歩行者天国でにぎわう秋葉原で死者7名にいたる無差別殺傷事件が起こった。犯人は派遣社員として働いていた25歳の男性。彼はトラックで歩行者天国を歩く5名を引き、その後刃渡り13センチのナイフを持って警官を含む10名を刺した。

 事件から1週間、報道の中で目につくのは犯人が残した掲示板への書き込みである。犯人は犯行に及ぶ以前からその掲示板へ数千件にも及ぶ書き込みをしており、犯行当日は静岡から秋葉原までの移動中のことも事細かに書き込み、「これから秋葉原で人を殺します」という書き込みを行い犯行に及んだ。犯人は犯行予告を書き込んだことについて、「誰かに止めてもらいたかった」と供述している。

 このように、犯人が犯行予告をインターネット上で行う事例は多く存在する。犯人たちは、不特定多数の人間が見ると思われるホームページなどに犯行を連想させる動画や今回のような犯行自体を予告するものなどを残す。犯人たちは何故このようにインターネット上に犯行予告をするのだろうか、そして犯行を未然に防ぐことはできないのだろうか。

 ネット上での犯行予告については、警察もすべてを把握することは難しい。たとえば、「殺す」などの言葉が掲示板などに書き込まれた場合、掲示板の管理者が警察に通報するなどの義務を課したとしても、その数は膨大なものになるだろう。それをひとつひとつチェックすることは不可能ではないが、難しい。今回の秋葉原のような犯行予告も、閲覧者は多数いたはずで、警察に通報した人がいたかもしれない。しかし、警察も犯行が実行されるかどうかもわからない書き込みに対して出動するかどうかはわからない。警察は掲示板などの管理者との連携を強化する必要があるだろう。インターネット上の犯行予告を見逃さず、事件を未然に防ぐようにしなければならないと思う。と同時に、閲覧する側の我々も、そうした書き込みを見てみぬ振りせず通報しなければならないと思う。今回の秋葉原の事件を受けて、掲示板に犯行予告を書き込むという模倣犯が増えてきている。広島でも某商店街で秋葉原のような無差別殺人を予告し、商店街の業務を妨害したとして19歳の少年が逮捕された。犯行の行われた場所が、秋葉原という有名な場所であったことも模倣犯を増やす原因であったと考えられる。

 インターネットは、ひとつのコミュニケーション手段として用いられているが、それは不特定多数の人間を相手にしている場合が多い。また、今回の犯人が書き込んでいた掲示板では、当初は犯人へのレスがあったものの、犯行日前後ではまったくレスが書き込まれていなかった。まったく相手にされていなかったということである。閲覧者も狂言程度にしか考えなかったのであろう。そして犯人が誰かに止めてもらいたかったのならば、周囲の誰でも、生身の人間に相談すればよかっただけのことである。コミュニケーションは人と人とが反応しあって成り立つものである。返事がくるか来ないかわからない掲示板でのコミュニケーションはこの場合崩壊していたのだろう。誰からも返事をもらえなければ、犯人の孤独感は増幅され、また、所詮狂言で、そんなことはできないと考えていた閲覧者へのあてつけの意味もあったのかもしれない。さまざまな環境が犯行へのきっかけとなり、事件が起こってしまった。誰かが危険性に気付き、犯人を止めるような書き込みをしていれば、もしかしたらあの残虐な事件は起こらなかったかもしれない。

 こうしたインターネット上での犯行予告はこの先も増えるであろう。インターネットという仮想現実の中で行われる犯行予告に適切に対応し、犯行を未然に防ぎ犠牲者を減らす努力が必要であると考える。

ゆき
最終更新:2008年06月20日 01:29