文章完成テスト(SCT)
SCTは不完全文章を示し、それを被験者が自由に補って完成させることで被験者の情動が多面的に喚起されるように工夫されており、補足部分に被験者のその人らしさが投影されるというものである。Ebbinghaus(1897)が知能検査の一種として開発したのが最初で、後にPayne(1928)がパーソナリティーとの関係づけから
人格検査として位置づけた。
刺激文は高校(15~6才)、成人用のMF版ではPart1、Part2の各30項目であるのに対し、小学生、中学生用のBG版ではPart1、Part2の各25項目で構成されている。
テストを受ける者は教示を理解し、文章を完成させることができる程度の知能でなければならない。しかし、文章を書くことが出来なくても口述させて検査者が筆記する方法をとることやインタビューの手がかりとしてこのテストを用いることも可能である。
評価項目
SCTの評価項目はパーソナリティーを構成する知的側面、情意的側面、指向的側面、力動的側面と決定要因である身体的要因、家庭的要因、社会的要因の7つによって構成されている。(表1)
まず、知的側面では精神的分化、その一側面である時間的見通しと評価の客観性などを評価する。時間的、場面的な見通しがいかにきくか、また自己や環境を客観的に評価でき、そこから生じる自信や安定の強さによってその人の精神面の分化・未分化を把握し、さらに分化が理論面もしくは実際的な面にすぐれているのかなどを捉える。
次に、情意的側面では性格類型あるいは性格特性を精神医学的性格類型の方法を原則として評価する。これは
クレッチマーの研究をもとにして発展したものであり、彼の大別した分裂気質(S)、循環気質(Z)、粘着気質(E)にヒステリー気質(H)、神経質(N)を加えた5つの類型に当てはめる。中心的な特性としてSの内閉、両面、Zの同調、両極、Eの粘着、爆発、Hの小児性、顕耀、Nの不安定、劣等感などがあげられる。
同様に、3つめに指向的側面は価値観や目標などその人の心がどのような面に指向しているかを評価する。そして4つめの力動的側面は被験者の内的状態が安定しているか不安定であるか、不安定ならばどのような問題を抱えているのかというような直接適応にひびいてくる点を評価する。
決定的要因に関しては、身体的要因では容姿・体力・健康の3点がそれぞれパーソナリティーに影響を与えるほどかどうかを分析する。家庭的要因については家族並びに生育歴と生活水準について評価する。父親、母親の人格や兄弟の有無、家庭の雰囲気、被験者の家庭内での地位に加え、家庭の社会的地位や経済的な条件の豊かさなどを検討する。そして、社会的要因では被験者の対人関係や社会的環境を評価する。友人はどんな人か、職場はどうか、仕事に満足しているかなどがそれにあたる。
評価方法
SCTは機械的、数量的に処理するものではなく、評価者の判断に重きをおいて評価するという方法をとっているため、評価者はある程度の素質と習熟が必要である。そのためには、多数のデータを読み、その中で一般的傾向を把握しなければならない。さらに、文章の書き方や長さ、筆跡などの癖に注目してそれぞれの特性に当てはめることも考慮する。
最終更新:2008年08月09日 01:39