エゴグラム


エゴグラムは性格の理解を目的とし、主に現在(検査時)の自我状態のバランスを視覚的に棒グラフで表現したものである。考案者であるデュセイ(Dusay,J.)は、被験者が一番多く使うと判断した自我状態を棒グラフに書き込み、また同様に一番少なく使うものを書き込んだ後、この2本を基準に他のものを相対的な高さで書き込むという直観的に描くことを提唱した。その後、質問紙法エゴグラムが開発された。

◎質問紙法エゴグラム
 1974年、1977年にそれぞれ杉田、岩田によって研究され、以来日本では10数種類の質問紙法エゴグラムが開発された。その中でもTEG(東大式エゴグラム 1984年)は比較的よく取り扱われる。この質問紙の目的は性格の理解、つまり自分の自我状態に気づき自己分析をするためのものであり、被験者が正常か異常かを判断するものではない。その後、1993年に開発された新版TEGは臨床のみならず教育界、産業分野でも使用された。
 背景理論は、パーソナリティを個人間の程度の差であると判断する特性論であり、特にアメリカの精神科医バーン(Berne,E.)が開発した交流分析に対応している。交流分析とは互いに反応し合っている人々の間で行われている交流を分析することを目的としているためこう呼ばれている。(心理学辞典、有斐閣)心の構造や機能を記号化しわかりやすく説明するところに特徴があり、対人関係上の問題を解決するのに役立つ。例えば心の中に親(P)大人(A)子供(C)の三つの自我状態が存在し状況に応じて優位となる自我が異なると考え分析する。親(P)には批判的な親(CP)と養育的な親(NP)、また子供(C)には自由な子供(FC)と適応的な子供(AC)が存在する。質問紙法エゴグラムはCP、NP、A、FC、ACのバランスを視覚化し、現在の自我状態を理解する検査法である。

◎検査方法と新版TEGⅡの特徴
 エゴグラムの形式は53問を「はい」「どちらでもない」「いいえ」の3件法で回答していくものである。そして「はい-2点」「どちらでもない-1点」「いいえ-0点」として採点し、男女別の得点配置図に棒グラフ化する。パーセンタイルが75以上、もしくは25以下の項目が特徴を表しており、中でも95以上、5以下の項目は特に強く個性を表している。また、所要時間は20分程度と比較的簡単にできるところも特徴である。
 また自己記入式の質問紙であるので、妥当性尺度(Low Frequency Scale)が3点以上のものは信頼性が乏しく、疑問尺度(Question Scale)が32点以上のものは判断を保留する。このような工夫によってより信憑性を高めている。
 対象年齢は16歳から成人である。(男性34.6 ±14.6歳 女性29.2±13.8歳程度)

◎エゴグラムを受ける際の注意点と利用
 結果として表れた棒グラフには正しい形はない。どんな形であろうとその人の個性でありあくまでも参考にすることが望ましい。また、交流分析を学びモデルを理解することでさらに深くエゴグラムを理解することができる。モデルにはユニークな名前が付けられているがそのネーミングに惑わされレッテルを貼る、その結果細かな差異を見逃しがちになることに注意する必要がある。
 そして、低い尺度程注目し上げる努力をすることが望ましい。自我状態は生活や関係によって変化するものである。エゴグラムの結果を踏まえて、自分にはどんな特性があるのか、これからどうなりたいか、という指針として利用することができる。


 質問紙法により目に見えない性格を数値化することで、標準化して特徴をつかむことができる。それには状況に合った質問紙を使用すること、また、結果の信憑性を保つ工夫がされている。検査結果は単に結果として受け止めるだけでなく、これからの自己実現のひとつの道具として利用することができる。


最終更新:2007年12月16日 01:16