「日本の将来展望:リング計画 ②」
宇宙エレベータと比べてどちらが実現可能?
2. リングワールドからリング計画へ
SF小説ラリー・ニーヴンのリングワールドは、SF界では有名な小説であるが、太陽を中心とする超巨大なリングの世界で人々が生活する話である。とても実現可能と思える話ではないが、いつか人類はそのようなリング世界を人工的に作るであろうと、まことしやかに考えている人もいる。
さて、宇宙エレベータが実現可能とまことしやかにささやかれている昨今、太陽中心ではなく、地球を中心とするリングワールドの方が簡単ではないかと、ふと思い至るようになった。以下、その発想の過程を見ていただきたい。
① 人工衛星の低空領域(350kmから2000km、国際宇宙ステーションは400km)の中で、超低空(高度350km付近)で飛ぶ膨大な数の人工衛星を、地球を回転する一本の軌道上に打ち上げ、おおよそ数百mから数km間隔で数珠つなぎに飛行する人工衛星ベルトを作る。
② 接近した人工衛星のすべてをロープで繋ぐと、一本のリングが完成する。
③ ロープで繋がった人工衛星リングは安定に存在する。なせなら、単独の人工衛星が安定に軌道を回転しているからであり、安定に回転している人工衛星間を単にロープで繋いだだけだからである。ロープは緩く繋ぐことが基本で、隕石との衝突や何らかの事故に対応し、被害を最小限に留めるためにいつでも切断できるようにする。
④ この考え方を拡張し、緩く繋がったロープを、緩く繋がった橋桁にし、緩く繋がった道路へ、さらに緩く繋がった巨大リングワールドへと資材を投入しながら、補強していく。
リング生成の概念図② 人工衛星初期リングからの補強により生成されたリング構造体
リングは数百mから数kmの最小単位の構造物を緩く結合して構築される。
隕石との衝突時は、被害を受けた最小単位部分のみを切り離すことにより、
被害は最小に抑えられる。 :
⑤ このリング構造体が完成したら、このリングの地球から外側の領域の道路で車を回転方向と逆方向に走らせると、しだいに遠心力が小さくなるので、無重力状態から地球に落下する方向への重力が働くようになる。リングが赤道上にあるとすると、ある速度で地球の自転と同じ周期に達するので、地表から見てこの車は静止しているように見える。まさに静止衛星車である。しかし、車を走らせると反作用でリングの回転速度は加速されるので、リングの地球側で、同じ重量の2台目の車をこんどはリングの回転方向に走らせる。地球側の車は遠心力が重力より強くなるので、リングから落ちることはない。このように、リングの両サイドで同じ重量の車を同じ加速度で反対方向に走らせれば、リングの回転速度を不変に保つことができる。
⑥ 静止衛星車はいつも地球表面からは静止しているので、静止衛星車と地表を強力なロープで繋ぎ、地表から物資や人間を運んだり、逆にリングから物資を地表に運ぶことができるようになる。この距離は高々350kmぐらいで、宇宙エレベータの37,000kmの100分の1以下である。
どちらにしても強靭なロープは必要であるが、宇宙エレベータの必要とする強靭さと比べると、まったくたいしたことでなないと思われる。
静止衛星車はリングの外側を回っているが、重力を強く受けているため、落下する方向への力をリング構造体へ及ぼす。リング構造体は緩い結合でつながっているだけなので、リング自身にひずみが生じ不安定となることが予想される。逆に、地球側の車は遠心力が強いので、リングを外宇宙方向へ押し上げる力を及ぼし、同様にリング構造体にひずみを与え、不安定化を引き起こす。それゆえ、大量の静止衛星車群をリングに均等に置き、地球側の車も大量に均等に置いて、バランスをとるよう計算する必要がある。リングにかかる力をどのように分散し、安定化を図るかは、緻密な計算理論が必要であろう。