「日本の将来展望:リング計画 ④」
   宇宙エレベータと比べてどちらが実現可能?

 4. リング計画の実現可能性 2

リングの上下を走るモノレールで上を走るモノレールは遠心力で外宇宙方向へリングを持ち上げる働きをし、下を走るモノレールは静止衛星モノレールとして、地球表面に固定される。


リングの断面図: 内側モノレールと地表とをつなぐケーブルの総重量が
外側モノレールの重量と等しくなるようにする          :

上図は、リングの断面図を模式的に描いたものである。リング外側モノレールは、内側モノレール本体とケーブルや運搬装置などの重量の合計値とほぼ同じになるよう、重ために設定される。リング内側モノレール、リング外側モノレールは、リング構造体とは直接接触することはなく、非接触浮上式リニアモーターカーの原理で、リング構造体の表面を滑って行くようにする。つまり、強力な磁力により浮かせた状態で走るリニアモーターモノレールである。超伝導による超強力磁力の利用も十分考えられる。年間を通じて赤道が数mほどずれるので、地表ターミナルとケーブルを直接繋ぐことはしない。また、なんらかの事故が発生した場合には、簡単にケーブルが切断されるようにする必要があるので、地表ターミナルの近辺は安全対策を十分にとる必要がある


リングのある風景のイメージ図:リングは3重リングとなっている。

 上図はリングのある風景のイメージを表したものであるが、リングは地上350kmの宇宙空間にあるのでリングそのものをはっきりと目視することは難しいであろう。内側モノレールは地上に対し静止しているので、このモノレールからケーブルを地表に降ろして宙に垂らすことになる。この絵では、たくさんのケーブルを集約し、最後は太い一本の束にして、地表ターミナルで緩く固定するようにしている。このようにすれば、隕石との衝突などの不測の事故でいくつかのケーブルが切断されても、被害を最小限にすることができるであろう。外側モノレールと内側モノレールも、リング構造体と同じように小さなモノレールを緩く繋ぎ、リング全体に均等に分布するようにしておくことになる。大きな目で見ると、赤道上空を一周する約40000kmのリング構造体の内側には地球に固定されたリングがあり、外側では猛スピードで地球の自転方向に回転するリングがある、3重リング構造となる。
 ( 絵を描いたあと気がついたことだが、上の図のようにロープが斜めに緩いカーブを描いて垂れるのは物理的におかしいと思われる。それに、垂直方向に力を働かせなければならないのに、これでは水平方向の力も加わり不安定化している。構造力学的にロープをどのように垂らしたらよいのか、地表ターミナルにロープを集約するにはどうしたらよいのか、様々な角度から考えなおすべきであろう。)
 リング構造体の一部が損壊した場合、リングに対して高速回転する外側モノレールと内側モノレールがクラッシュすることが考えられる。この問題が恐らく最大の難関であろう。リング構造体を3重か4重にし、リング構造体の一部が損壊した場合、別ルートでモノレールの運航を継続できるようにする方法が考えられる。または、互いに反対方向に回転している内側と外側のモノレールを緊急停止させる何らかの方策を考え、最大規模の被害を回避する方策を考えておく必要もあるであろう。隕石との衝突は極力避けたいものである。小さな隕石を破壊できるような防衛システムを構築し、大きな隕石が接近した場合は予知システムにより、前もってモノレールの停止とケーブルの切り離しを行っておくことにより、大災難を避けるなどの対策も必要であろう。
 リング構造体そのものを極めて頑丈に作る方法もあるかもしれない。この場合、小さな隕石が衝突しても大した被害になることがないほど超巨大な構造物にしてしまう、という考え方である。しかし、巨大隕石との衝突の場合は、地球に甚大な被害を与える可能性が高い。
 サンドイッチ構造の真ん中のリング構造体そのものは、常に安定軌道を描いて地球上空を回っているので、隕石との衝突で一部が損壊しても被害はその部分のみに限定され、たとえばらばらになっても、ほとんどは無傷のまま安定に回り続ける。そのため、一部の修復のみでリング構造体を復元することができる。しかし、外側のモノレール構造体は、リング構造体との接続が絶たれれば、遠心力により外宇宙へ飛び去ってしまう。また、内側の地球表面に対して静止しているモノレール構造体は、リング構造体との接続が絶たれれば、重力により、そのまま落下してしまう。被害を最小限に食い止めるためには、内側の静止部分のモノレール構造体を外側の高速回転のモノレール構造体と急速結合し、落下部分を極力減らす工夫が必要になる。真ん中のリング構造体そのものの重量がモノレールに比べてたいへん大きければ大きいほど、安全策を講じる方法が増えるので、その工夫も必要であろう。

日本の将来展望:リング計画 ⑤

最終更新:2014年05月19日 19:32