「日本の将来展望:リング計画 ⑤」
宇宙エレベータと比べてどちらが実現可能?
5.. リング計画の実現可能性 事故発生時の被害を最小にするには? 現在工事中
隕石との衝突や装置の不具合、人為的事故など、不測の事故が発生することは、極めて少ない確率でも、十分に事故対策を練ったとしても、いつか起こると考えるべきある。万が一の事故が起きた場合の対策を十分に考慮しておくことは極めて重要であり、不十分な対策しか取れないのであれば、このリング計画そのものを断念するしかない。予想される最大規模の被害を最小にするための計画を練ってみることにする。
(1) リング構造体(基幹リング)を大きくし、モノレールを最小化する
地表から見たリングのイメージ:
安定して公転している基幹リングを大きくし、上下のモノレールの大きさを小さくした。
基幹リングを巨大化、重量化することは、小さな隕石の影響を受けにくくする。上下のモノレールは、それ自体では不安定で、基幹リングとの接続を絶たれると、一方は落下し、もう一方は遠心力で外側へ飛ばされる。外側へ飛ばされた後どうなるかは、計算していないので不確かであるが、外宇宙へ飛んで行ってしまうのではなく、ある高さの位置まで上昇した後、地表への落下コースを辿るか、別の公転軌道に落ち着くなどが考えられる。上下のモノレール共に、地表へ落下する危険性が高く、その対策を考えておくことが必要である。様々な対策が考えられるが、
①モノレールに翼をつけておき、地表に不時着できるようにする。
②パラシュートにより降下できるようにする。
③地表に衝突し、甚大な被害が発生する可能性が大きいときは、自爆できるようにする。
などは、必要であろう。静止モノレールと地表とをつなぐケーブルはどうするかであるが、
・ケーブルの適切な中間ポイントにパラシュートを設置しておき、被害を最小にするよう考慮する。
が考えられるが、カーボン製のケーブルの場合、一部は燃えてしまうことも考えられ、被害の程度は比較的小さいかもしれない。しかし、350km以上の膨大な長さのケーブルが真下に落下することを考えると、いくら軽量ケーブルとは言え、人命を奪うような悲惨な事故が起きる可能性はある。ケーブルが落下する事態が発生した場合は、空気中で燃えてしまうよう、酸化剤と発火剤を埋め込んでおくことも一つの案であるが、逆に、何でもない時に発火する事故が起きる可能性もあるので、考え物かもしれない。やはり、パラシュートあたりが最善であろう。パラシュートが開かなかった場合のことも想定する必要があるが、その場合は、地上からミサイル攻撃などを使って、破壊すればよいであろう。しかし、カーボンナノチューブの軽量ケーブルとはどんなものだろうか?もしかすると、細い釣り糸のようなものなのであろうか?風に煽られ空中に浮遊し、気流に乗って流されるものかもしれない。その場合は、逆に、落下させるための重りをつけなければならないことになる。どのような形状のケーブルをどのようにして吊り下げるのかの議論をまだしていないので、後で、一つのセクションを設け、議論したい。
(2) 角運動量保存の法則と高速モノレールの排除 (現在、再考中)
以下の文章は、直観で書いたものであり、理論的検証がなされていないため、間違っている可能性が高い。現在、再考中であり、単なるひらめきとして読んでもらいたい。
地表から見て静止しているモノレールがなければ地上とリング構造体を繋ぐことはできないが、遠心力の働きをする高速モノレールを排除できれば、事故の危険性を引き下げることに大いに役立つ。空中で回転するとき、手や足を引っ込めて丸くなると高速に回転し、手や足を延ばすと回転がゆっくりとなることは、よく知られている。これは、角運動量保存の法則で説明される。そこで、高速モノレールのかわりに遠心力を発生させるための手段として、基幹リングから外宇宙方向にケーブルを伸ばし、遠心力アンカーをより上空へ移動させる方法がある。最初の状態として、基幹リングに下側モノレールが固定されている状態から、モノレールを回転方向とは逆方向に加速をつけて回転させていくと、反作用で基幹リングは加速されてしまう。そこで、基幹リングから下図のような遠心力アンカーを徐々に外宇宙方向へ押しやれば、回転体が腕を伸ばしたときに速度が落ちるように、基幹リングの回転速度をいつも安定底度となるよう一定に保つことができる。
この時、遠心力アンカーは下側の静止モノレールが重力により落下する力と同じ遠心力を働かせるようになり、リング全体は安定化するはずである。遠心力アンカーの重量とケーブルの長さは、ケーブルの耐久力やその他諸々から適切に決められるであろう。
遠心力アンカーの導入により、基幹リングより高速回転する高速モノレールの故障時の対応や隕石との衝突におけるレールの破壊などの様々な危険に対する対策を考える必要はなくなった。しかし、新たな問題として、遠心力アンカーを繋ぎ止めるケーブルの強度の問題とその最大長、突然のケーブル切断時の対策などを考える必要がでてきた。だが、高速モノレールの時よりは遥かに危険性は低くなったと思われる。しかしながら、静止モノレールと基幹リングを繋ぐレールの故障が起きた場合の最悪のシナリオをどのようにして回避できるか、この問題が残っている。
どの程度の重量の遠心力アンカーをどの程度外宇宙方向へ伸ばせばよいかは、静止モノレールの重量をどの程度にするのかの問題と大きく関わっているが、簡単なシミュレーション計算からすぐにわかるであろう。物理の基本を紐解いて、計算してみることにする・・・・
(3)リング計画の再考察 リング計画はトンデモ計画か?
このリング計画は、そもそも莫大な予算を必要としているトンデモ計画のような気がしてきた。長々と考えながら書いてみると、次第に現実味が薄くなってきたように思える。そろそろ潮時かもしれない。しかし、いいじゃないか、「夢を語る」なんだから。実現不可能と思えるからこそ夢であり、その夢を語っているのだから。
しかし、宇宙エレベーターよりは実現可能に思えるのだがなあ~。
そもそも、なぜトンデモ計画と言っているのかであるが、高度350kmの赤道上空を莫大な量の人工衛星を打ち上げてケーブルで繋いでしまおうということは、総延長約40000kmの軌道を人工衛星で埋め尽くさなければならない。1km刻みに衛星を配置した場合、40000個の衛星を打ち上げることになり、年間100個の人工衛星を打ち上げたとしても400年かかる計算となる。400年後の科学技術は今よりもはるかに発展しているはずであるから、そもそも危険なリングを作らなくても宇宙へ旅立つ方法が確立されているであろう。
しかし、リングの基本骨格部分のみを20~30年計画で作り、後は地上とリングをつなぐ軽量エレベータを使ってリングに資材を運びながらリングを完成させられれば、もしかすると、実現可能かもしれない。具体的には、約2000個程度の人工衛星を打ち上げ、20km刻みに衛星を配置し、20kmのケーブルで連結してリングの基本骨格を作るのであれば、20年程度で基本骨格が完成するであろう。世界中の国々の協力があれば、もっと早く完成するかもしれない。
しかし、より具体的な、より理論的に検証された計画案を作成しなければ、賛同する人は誰もいないであろう。今のままではトンデモ計画と言われても仕方がない。
現在、いくつかの問題点が浮上している。一つは、カーボンナノチューブのケーブルが大気圏内で安定しているのかの問題である。対流圏・成層圏・中間圏・熱圏で分類される大気圏内のすべての領域でケーブルが強度を保っていられるか全くわからない。-90°の低温領域から2000°と言われる熱圏の領域がある。熱圏は温度は高いものの、ほとんど真空に近い稀薄な空気が存在しているだけなので、燃える心配は少ないかもしれないが、太陽光の直接吸収で高温化し、溶けてしまう心配がある。-90°から-100°の低温領域が存在する中間圏ではケーブルが凍結し、ケーブル強度が著しく低下する可能性もある。さらに、雷などの影響なども無視できないであろう。電気を流して発熱させ、低温領域での凍結を防いだり、ケーブルの接続点で絶縁体を使用したり、避雷針を別に用意したりして雷の被害を防ぐなどの工夫が必要かもしれない。さらに、太陽光を吸収して高温にならないよう、ケーブル表面を白色にするなど、様々な工夫が必要になるかもしれない。(-196℃から1000℃の温度範囲で粘弾性を示すカーボンナノチューブが発見されているらしいが、詳しく調査しないと何とも言えない。) このケーブルの問題は、もしかすると、20年後には解決しているかもしれない。今は、この問題は真剣に考えなくてもよく、10年から20年かければ十分解決できる問題のようにも思えるので、また機会があれば議論する程度にしておこう。
初期の基本骨格部分のみの計画では、静止モノレールを1つのみにしようと考えている。つまり、最初の計画は地上とリングを結ぶのは1カ所のみで行う予定である。この場合、全体のリングの中で不安定な部分が一カ所できることになるので、これをどのようにして安定化させ、実現可能にするかの方法論がまだ問題として残っている。アイデアはあるが、まだ、十分に理論的検証が済んでいない。