パラレルワールドはあるのだろうか? 現在編集中
―― コペンハーゲン解釈と多世界解釈 ③――


 

3.光の干渉実験の検証2

            
                図3-1.偏光板をスリットの直前においた実験

図3-1は、縦方向の偏光板を上のスリットの直前に置き、横方向の偏光板を下のスリットの直前に置いた場合の2重スリット実験の様子を示したものである。この結果、干渉模様は消失する。しかし、スクリーンの直前に45°方向の偏光板を置くと、その偏光板の部分のみ干渉模様が現れる。偏光した光の波の振幅は、偏光板によりcosθの角度依存性があり、同方向の場合ほぼ100%透過し、90°の場合はほぼ0%、45°の場合はcos245°=1/2 つまり半分の透過性がある。偏光が上と下で90°異なっているため、偏光方向を測定すればどちらのスリットを通ったのか区別される。それゆえ光子は干渉しなくなる。しかし、スクリーンの直前に45°の偏光板を置くと、縦と横の偏光のどちらも半分の透過性を持ち、偏光方向を45°に変えてしまうので、どちらのスリットを通ったのかの記憶が消されてしまうため、干渉模様が復活すると説明されている。
 これを、多世界解釈で考えてみよう。偏光の属性は電場と磁場の変異の方向なので、局所的波の属性として扱うべきであろう。さて、困ったことになった。2章で導入した大域的波は光子が偏光板を通過すると突然干渉しなくなった。干渉は大域的波の性質であり、局所的波の性質が途中で変更されてしまった場合、干渉しなくなったり、干渉が復活したりすることをどう考えればよいのであろうか?
 仮説1. 同じ局所的波の属性を持つもののみ干渉する。
 仮説2. 局所的波の重なり度に比例して干渉する。
上記の仮説以外に何か仮説を立てられるのかもしれないが、とりあえず、この2つの仮説で行こうと思う。しかし、この2つの仮説は同じような気がする。仮説2においては、局所的波の位相は大域的波の位相と一致しているはずなので、両者の位相を考慮して
干渉させると2重に位相を考慮することになる。それゆえ、局所的波の位相は重なり度に考慮しないことになり、偏光方向の重なり度のみを考えることになる。仮説1の場合、偏光方向がθずれている場合どうするのかであるが、偏光は3次元空間のベクトルで表されるので、同じ方向のベクトル成分で干渉させるという考え方もあろう。この場合、仮説2と同じ結果になる。しかし、偏光方向が少しずれただけで干渉しなくなることがあるのだろうか。方向が少しずれただけで干渉しなくなるのはおかしな話のような気もするが、どちらのスリットを通ったかがわかると干渉縞が消失するので、単純ではないような気もする。
 図3-1の場合は、仮説1でも仮説2でも同じ結果になる。スリットの直前に置かれている偏光板の角度をずらすと、仮説1と仮説2は異なる結果になりそうなので、どちらが正しいかすぐにわかる。

(ワイヤーグリッドの原理の偏光板の場合、ワイヤーの方向の偏光を吸収し、直交する成分の偏光を透過させるので、図3-1の偏光板の透過する偏光方向はワイヤーの方向とは直角である。)

4.EPR実験の検証

 偏光方向が同じ2個の偏光した光子を遠く離れた異なる場所で同時に観測して、同方向の偏光板を両方とも通過するか、通過しないかの2つしかない。もし発射された2つの光子が偏光板の角度から45°ずれていた場合、1/2の確率で偏光板を通る通らないが決まる。それゆえ、2つの光子が同じ方向に偏光していても、片方の偏光板は通り、もう片方は通らない確率が1/2ある。しかし、それは全く観測されず、常に両方とも通るか通らないかである。つまり、偏光板を通過したときか、偏光板を通過して光子が検出されたときに、実在性のない光の波が観測によってはじめて実体化したそのとき偏光方向も確定したと考えるしかないように見えるが、多世界解釈で説明できるであろうか?

 しばらくお休みする予定であったが、多世界解釈でEPR問題が簡単に説明できそうである。2日ほど冷静になって考えてみると、それほど難しい問題ではなかった。自信があるわけでもないが、あっ、そうか、みたいな発想の転換である。いままで、偏光板と光子の関係は物理的相互作用の結果、つまり、実在の局所的波と偏光板の実際の相互作用により偏光方向が変えられると考えていた。しかし、変な話である。波として偏光板の方向成分のみ通過し、それに直交する成分は吸収(もしくは反射?)されると考え、偏光した1個の光子の偏光方向が偏光板の方向に曲げられて通過するものの確率がcos2θとなり、吸収される光子の確率がsin2θとなるが、1個の光子は粒子であって波とは違うので、どちらか1つを選択し、もう片方は存在しない、通過するか吸収されるかである。(θは光子の偏光方向と偏光板のなす角。) 最初にいくつかの光子が通った後、ひとつの光子が吸収(反射?)されるとき、今まで貯金してきた偏光方向の変化分をまとめて返されたみたいなものである。偏光板と光子の相互作用は、1つの世界で行われる実在の相互作用と考えるのは間違っているのではないかとふと思ってしまった。そして、そのことをベースに考え直してみると、なんとEPRの問題は簡単に多世界解釈で解釈できてしまう。以下の文章は私の独断と偏見の勝手な説明であるが、同じような説明をしている文献があるかもしれない。ゆっくりと文献調査をしている暇もなさそうなので、書くことにした。

 後で、ゆっくりと様々な文献調査をしたいと思っているが、そこまで時間的余裕があるとも思えない。とにかく書けるときに書いておこうという気持ちで書いている。十分な理論の検証もされていない、かなりお粗末な状態であるが、そのつもりで読んでいただきたい。以下の文章ははっきり言って量子力学ではない。

4.1 偏光した光子と偏光板

             
              図4-1.偏光板と角度θの偏光方向で入射する偏光と透過する光子
             (偏光板の縦線は透過する偏光方向を示し、ワイヤーの方向ではない。)

 上図は、θ傾いた偏光が偏光板を通過するときのイメージを表したものであるが、cos2θの透過性を持つ。通常、波として考え、波の垂直成分と水平成分に分け、それぞれ、cosθとsinθの成分比で分配される。水平成分は吸収(または反射)されるので、垂直成分のみがcosθの波の振幅強度となって透過する。振幅の二乗がエネルギーなので、透過確率はcos2θとなると説明される。波として考えればこれでよいのであるが、入射するのも透過するのも光子である。1個の光子の水平成分のみが吸収されて垂直成分のみの光子が現われるのは、エネルギー保存則に反している。現実問題として、偏光板は水平成分の光を吸収しているのであるから、エネルギーを受け取っている。とても奇妙な話である。光を一個一個の粒子として考えると、たまたま吸収した光子があって帳尻合わせをしながら、膨大な数の光子を選別して初めて因果関係が成立している。偏光板は、一つ一つの光子をサイコロを振りながら、透過させたり、吸収したりし、さらに個数の帳尻合わせをしていると考えざるを得ない。このような現象は、多世界解釈で考えると、気持ち的にすっきりと説明できる。

 垂直方向に偏光した光子を||| 〉で表し、水平方向に偏光した光子を|=〉で表すことにし、θ傾いた偏光の光子を| θ 〉と表現することにすると、

               | θ 〉 = cosθ||| 〉 + sinθ |〉     (4-1)

と記述できるとする。波で成立している式をそのまま光子に当てはめたわけであるが、一つの世界で存在している光子| θ 〉は、別の2つの世界の光子||| 〉と |=〉の線形結合で記述されると解釈できる。cosθ、sinθはそれぞれの世界の共存度と解釈される。偏光板はどの方向にも置けるので、多世界の組み合わせは無数に存在する。つまり、偏光した光子は、任意の多世界の線形結合で記述することができる。(図4-2)

                    
                     図4-2.偏光した光子の多世界への分裂と共存

 多世界の中の |=〉の光子は偏光板に吸収され、残りの||| 〉で表される光子の世界のみが通過すると考えることができる。まとめると、

 1) 1個の偏光した光子の世界は、2つの互いに直交する偏光した光子の世界の線形結合で表される。
 2) 偏光板は偏光方向が同じ光子の世界の光子を通過させ、直交する光子の世界の光子を吸収する。

このように考えると、エネルギー保存則に抵触することもなく、確率的に光子が透過したり吸収されたりすることを説明できる。偏光板は、光子を多世界へ分裂させて透過と吸収(または反射)させる役割をもつ。

 さて、この解釈をエンタングルした偏光実験に適用してみることにする。

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最終更新:2014年07月12日 17:21