パラレルワールドはあるのだろうか? 現在編集中
―― 多世界解釈とは ① ――


 「パラレルワールドはあるのだろうか?」というテーマでこのWebノートを書き始めたが、SFに出てくるパラレルワールドというイメージとは程遠い、現実に、「多世界解釈の量子力学」が誕生しようとしていることに気付かされている。コリン・ブルース著、和田純夫訳、「量子力学の解釈問題-実験が示唆する「多世界」の実在-」は、2008年出版の原著(2004年)の訳本である。今は2014年であるから、原著が出てからもう10年経っている。しかし、日本における多世界解釈は遅々として認識されていないように思える。この本を何度も読み返したが、最初はなかなか理解できなかった。著者が何を言いたいのかよくわからなかったということと、すべてのピースを組上げてやっと真意が理解できるという代物であった。そして、得られた確証は、「多世界は存在する。」である。実験事実が多世界を示唆しているが、この多世界は平行世界やパラレルワールドというSFに出てくる話の世界ではない。純然たる粒子に対する物理学的実験が示唆している「多世界」である。この実験から示唆される多世界がどんなものかはまだわかっていない。しかし、少なくとも、我々がSFなどで思い抱いている世界とは根本的に異なっている純然たる「多世界」であろう。今後行われるであろうこの「多世界」を検証する実験から、様々なことがわかってくるに違いない。

 表題に使用した「パラレルワールドはあるのだろうか?」は、まったく「多世界解釈」を理解していない題であったことを、読者の方々にお詫びしたい。最初は、正直、パラレルワールド⇔多世界 と私自身、誤解していた。しかし、よくよく調べていく中で、パラレルワールドとは全く異なる概念であることに気付かされている。

 これまでの多世界解釈の議論から気づいたことは、量子力学の波動関数にある意味づけを行ったことと等価であるように思われることである。現代物理学最前線6「量子力学の多世界解釈」和田純夫著の解説にあるように、波動関数は粒子そのものの存在を表すものであり、多世界解釈の共存度を表していると思われる。多世界解釈を行うと波束の収束問題やEPRパラドックスが形式的ではあるが解消する。しかし、見方を変えると、波束の収束は多世界の選択へ、EPRは個々の多世界での物理量の保存へ、と問題をすり替えただけとも言える。だが、我々は、ほとんど量子力学と等価な、経路積分を多世界へと拡張した理論を手に入れようとしている。この新たな概念は、量子力学の世界感に新たな一石を投じるものであろう。

 水素分子イオンを解離させるとH+・・・・・・HとH・・・・・・H+の2つの状態ができることをプロローグで述べた。2分の1個の電子が2つの水素原子上に存在している状態であり、多世界解釈では、水素原子核(プロトン)と水素原子の状態の世界が等しく共存している状態と解釈できる。この共存状態がいつ単独の状態へと分離されるのかは、波束の収束問題と同様の問題を抱える。この2つの状態の水素原子に電場をかけると、片方は中性でもう片方は+の電荷を持つので分離される。この時点で、共存状態が解け、それぞれの多世界の状態が確定すると思われるが、分離したものをまた一緒にするようにしてやると、多世界の共存状態へと戻ってしまうように思われる。結局、観測問題が浮上することになる。観測によって波束が収束すると考えるのか、観測によって多世界の中のどれか1つを覗いているだけと考えるのかである。つまり、波動関数は収束しないという、エベレット流の多世界解釈を信じることになるのであろうか? どこかで波動関数が収束しなければ、粒子によって実在している我々の世界は出現しないことになるようにも見える。

 我々は、エンタングルしたEPR問題を多世界解釈によって解決を図ろうとした。ある意味成功したように思えるが、エンタングルした粒子の数は、粒子間相互作用により次々と増えていくように思われる。そして、我々の世界のすべての粒子は複雑にエンタングルしているとも言える。デコヒーレンスは、多世界解釈では、共存する多世界の減少で説明できるように思われる。そして、エンタングルした粒子のどれかの多世界が減少すると、すべてのエンタングルした粒子の多世界も減少する。共存する多世界の減少理由を考えることが、波束の収束問題を考えることにつながると思われる。つまり、多世界解釈は、今までの量子力学にはなかった新しい視点の考え方を提供し、実在する世界を説明するための強力な数学的道具を我々に与えてくれるように思う。しかし、多世界がどういうものかはよくわからないが・・・・

 一方では、トンネル走査型顕微鏡のように、原子1個1個を操作し、原子でできた文字を作ることができるようになっているのに、もう一方では、観測しなければ粒子は波となって正確な位置を予測することができない。両方ともに現実世界で起こっていることである。

A 2011 poll of 33 participants at an Austrian conference found 6 endorsed MWI, 8 "Information-based/information-theoretical", and 14 Copenhagen;[92] the authors remark that the results are similar to Tegmark's 1998 poll.

上記は、Many-worlds_interpretation(多世界解釈)をアメリカ版Wikiで検索したときの中に書いてある文章の1文である。 オーストリア学会の33人の参加者の内、6人がMWI(多世界解釈)を支持、・・・・・であるとのこと。14人がコペンハーゲン解釈支持ではあるが・・・・

最終更新:2014年07月25日 20:47