2015.08.24~執筆 勉強しながらなので長引いている。
吉田信夫著「光の場、電子の海―量子場理論への道」新潮社を読むと、いままでディラック方程式を十分に理解していなかった自分にとって、目から鱗が落ちるようであった。ほとんどこの本を参考にして、自分なりに理解したことをまとめている。まだ勉強不足であるが、間違いがないことを祈る。(吉田氏は場の量子論に観測問題はないかのようなことを述べている。果たしてそうなのか自分自身で確かめたいと思っているが、どこまでできるかわからない。やるだけやってみようという気持である。ただ、場の量子論を学べば観測問題が本当になくなるのであれば、これだけ多くの人が観測問題を問題視することはなかったように思っている。つまり、場の量子論を勉強しても観測問題は曖昧になるだけで、本質的問題解決には至っていないのではないか、という思いがあるが、実際のところ勉強不足が祟っている。正直場の量子論は難しい。)
当時、ディラックは、c数、q数の考えを発表し、通常の変数は交換関係を満足するのでc数と呼び、量子力学的変数はこの関係を満足しない
なので、q数と呼ぼうという提案をしていた。この当時、数学の世界で行列数学が既にあり、行列A、Bの積は一般的に非可換であることが知られていた。q数を行列のようなものという直感がディラックにあったと思われる。アインシュタインの特殊相対論から、
(1)
(2)
(4)
と一般的参考書には記述されている。運動量pに関しては、と変換すれば量子化できるということがわかっていたので、
(5)
と書けることになる。時間発展のシュレーディンガー方程式との類推から、
を得る。この式がディラック方程式である。
(1’)式と(2’)式の両方を満足させるためにはα、βはどんな行列であればよいかは、すでにディラックによって求められているので、これ以上の導出はやめることにする。ちなみに、αx,αy,αzとβは4×4の行列となる。それゆえ、αは3個の行列からなるベクトルというものになる。
ディラックがαとβをq数と考えたのかどうかは私の勝手な思い込みかもしれないが、そう考えるとなぜか納得してしまった。ディラックは最初からこれは行列と直感したのかもしれないが、後にクリフォード代数学へと発展した。シュレーディンガー方程式は、理由はよくわからないがなぜだか実験事実に合う結果を出すので正しいのだろうと言われてきたが、ディラック方程式にも同じことが言えるように思える。とにかく、相対論と量子論を融合させる式が得られた。後は、この式をどう解釈するかである。
面倒なので、(2)式の1次元で考えることにする。(6)式を参考にして、
(7)
と書けることがわかる。α、βは2×2の行列なので、Ψはスカラーではなくベクトルと考えればつじつまが合う。つまり、
(8)
と書け、
(9)
と連立方程式になる。
αとβの組には任意性がある。得られた方程式をどう解釈するのかについての指針は、以下の議論からいくらかわかるのではないかと考える。(以下の議論において、ベクトルを導入しない場合の計算とベクトルを導入した場合とで大きく異なることがわかった。要注意である。しかし、以下の議論は全く不十分であるので、後で書き直すことにする。)
次の円の方程式
(10)
を
(11)
と書けるとする。α、βは2x2の行列である。同様に、とすると、
(12)
と展開でき、x=±r,y=0の部分解が得られるかのようにも見えるが、解なしの結果である。あまり使い道のない計算法のような気がしてしまうが、難解な問題を解く場合は威力を発揮するのかもしれない。とにかく、我慢して深く掘り下げてみよう。
行列のユニタリー変換を考えてみる。αおよびβをユニタリー変換したものをα'、β'とする。回転行列もユニタリー行列の一つなので、回転変換を一般化したものと考えればよい。
(13)
から、
(14)
が導かれ、α'、β'も同じ性質をもつことがわかる。さて、が成立することから、
=1となる2x2行列
を導入し、
(15)
も、式(10)の解となる。
(16)
のユニタリー変換した行列に対する方程式も解になることがわかる。しかし、
=I とすると、U
U†=Iとなり、(11)式に戻ってしまうので、要注意である。
しかし、ディラックの方法は行列とベクトルを組み合わせて方程式を作っているので、それに対応した計算法を考えてみることにする。