地球温暖化vs寒冷化4      2016.1.26 updated

 COP21パリ協定で、温度上昇1.5℃以下に抑えるということに世界中の125ヶ国が合意した。近年の温度上昇が原因で島が海に沈むことが現実のものとなりつつあることを体感し始めたためであろう。今後は、石油や石炭などの化石燃料を使用しないように世界中で努力することになるであろう。そして、太陽光発電などに重点が移っていくことが予想される。地球環境にとってはたいへん喜ばしいことである。
 太陽活動が不活発化しつつあるが、せいぜい1℃程度の寒冷化を引き起こす程度と想定され、人為的起源の温暖化の方が大きく、今後は地球温暖化がますます進むことは確実になってきた。そこで、今後どのように気温が変化していくのかを予想してみたいと思う。NASAの公開データを基にいくつか解析をおこなった。(図1) このデータはGISTEMPとしてIPCCの基礎データの一つとして採用されている。しかし、以下の解釈は私の独自解釈であり、IPCCの解説は一切見ていない。後でIPCCの説明と比較してみようと思う。(他人の解説を見てから解析すると、どうしても他人の考えが先行してしまうので、自分自身のオリジナルの解析ができなくなる。イギリスかどこかの研究者は、他人の論文を読むな、と実践している話を聞いたことがある。他人の論文を読むのが苦手なことを隠したいがためと言われると、そうかもしれないが、・・・)

図1.北極圏から南極圏まで緯度で区分した気温の経年変化
Arctic (90.0 - 64.2°N), N. Mid-Latitudes (64.2 - 23.6°N), Tropical (23.6°S),
S. Mid-Latitudes (23.6 - 64.2°S), and Antarctic (64.2 - 90.0°S).

 図1は、上から北極圏、北高緯度圏、北中緯度圏、北低緯度圏、南低緯度圏、南中緯度圏、南高緯度圏、南極圏の8つの圏に分け、1880~1935、1935~1950、1950~2014の3つの期間に分けてプロットしたものである。この図を見ると、傾向は緯度によりかなり異なっており、1935年以前と最近の傾向もかなり違っている。また、1940年付近のピークはほとんどすべての緯度において見られるので、この部分も特別に分離してみることにした。1940年付近の事象として、第2次世界大戦が1939~1945年、1927年インドネシア クラカタウ火山の活動が始まった。(クラカタウ火山は南緯6度に位置し、南低緯度圏(24S-EQU)のピークが大きいことと関係がありそうである。この火山は1927年海底が隆起して海面上に現れ、火山活動が活発に起きながら現在400mの高さに成長している。)おそらく1930年代後半から起こった事象と関係があると思われるが、この付近を境にして赤道を含む南半球の寒冷化が一転して温暖化へ相転移が起きたように見える。しかし、かなり複雑な関係が見えるので、物事をシンプルにするために、まず、図1の左の部分から見ていくことにする。1880~1935年は、北極圏だけはかなり直線から外れ緩やかな上昇曲線に乗っているが、他のどの圏もほぼ直線的な変化をしている。よく見ると、北中緯度から赤道付近(北低緯度と南低緯度)そして南中緯度はほぼ直線と思われるほど緩やかな下に凸の2次曲線を描いていることがわかる(回帰2次曲線を表示)。南極圏だけは回帰直線を表示している。1900年以降は変動が激しく曲線回帰はほとんど意味をなさないためである。よく見ると、北極圏とその隣の北高緯度は気温上昇傾向に対し、北中緯度から南低緯度はほとんど横ばい、より南になるほど気温低下傾向が大きくなるという、北と南は逆相関となっていることがわかる。地球全体は極同士が互いに相殺し合って、ほほ横ばいの温度変化となっている。つまり、1880~1935年の55年間は、ほぼ全地球の平均気温は一定であったと言えそうである。しかし、NASAのデータでは1880から1910年まで寒冷化が進み、1910から1940年まで温暖化が進んだように見える。そこで、集計方法を工夫してみることにする。それぞれの8つの圏の面積比率で重みをつけて平均を取ることにする。
 まず、面積は地球楕円体を考慮して、赤道から緯度φまでの面積Sは、国土地理院時報 2013 No.124によると、

    ・・・(1)

離心率地球楕円体の長半径a = 6.378137E+06 m ,扁平率f = 1/298.257222101である。

表1.各圏の面積比率(S(φ1)-S(φ2))/2S(90度)

赤道圏 0-23.6 0.199
中緯度圏 23.6-44 0.147
高緯度圏 44-64.2. 0.103
極圏 64.2-90 0.05
0.5

         

                            図2.表1を使って図1のデータから求めた面積比率平均値のグラフ

表1は(1)式を使って計算した結果を小数点3桁表示したものである。この表を使って平均化をおこなうと、図2のグラフが得られた。地球温暖化vs寒冷化2のところで掲載したNASAの公開グラフと微妙な違いはあるがほぼ同じものとなった。NASAの公開資料も面積比率で平均化したものに近いものであることを確認したということになる。しかし、この結果は明らかに変である。1880~1935年の変化が激しく、1910年頃の極小から1940年ごろまで直線的に増加しているように見える。図1を眺めると、全部を合算して平均化するとほぼ直線になるように見えるのに、実際に計算すると急激な変化が現れるのは、どう考えてもおかしい。差の平均を取ることに問題があるのかもしれないと最初は疑ったが、温度そのものの平均を取っても同じことになることは数学的に容易に証明できる。とすると、問題は誤差の原因である。統計学の中心極限定理から、平均化すると誤差は1/√N で小さくなるので、常識的に考えると上記の平均作業からよりスムーズな変化が表れるはずである。しかし、実際はそうはなっていない。当時の温度計の精度と読み取り誤差が大きく影響しているのではないであろうか?年ごとに世界的に使用されている主要温度計の製造型番が変わり、読み取り誤差が一定方向に変異しているため、気温の年変化に表れた。気温測定器の平均的設置場所が年とともに変化した。時代が進むにつれ気温観測点が増えたことにより、平均温度変動の要因となった。などが考えられる。このような時代とともに変化する要因が平均化作業でより顕著に表れたと思われる。図2の1910頃の窪みは、単なるばらつきであろうと推測される。結論として、1880から1935年までの全地球平均気温の変化はほとんどないと言える。この間、北極に近いところは気温の上昇傾向にあり、南半球は気温の低下傾向にあった。トータルで見ると、ほとんど変化は見られない。
 1940から1945年の間にどの圏においてもピークが見える。(南極の場合はあまりにもばらつきが大きいため明確ではないが、うっすらとピークらしきものがある。) よく見ると、北極圏のピークと赤道付近のピークは独立しており、別物であるように考えられる。北極圏のピークは、両側の期間と連続的にスムーズにつながっており、それに隣接する圏も同様にスムーズな連続的変化のように見える。しかし、赤道付近と南半球の変化は、この期間にのみ生じた異常ピークという印象である。(見えるとか、印象とか、かなりあいまいな表現であるが、データのばらつきが大きいためこのような表現とならざるを得ない。0.1℃や0.2℃はほとんど誤差の中に埋没している。ばらつきの一貫性を調査するための分散分析が必要と思われる。) 1945年頃にはこのピークはほぼ終了しているように見えるので、第2次世界大戦の赤道付近での戦いが大きく影響したようにも見える。しかし、より南側に影響があり、北側には影響が及んでいないことを考えると、インドネシアのクラカタウ火山などの南半球の火山活動が影響した可能性も否定できない。しかし、何よりも不可解なのは、この時期を境にして、南半球の気温低下が気温上昇に転じたことである。自然変動の変節点がたまたまこの時期であったのか、それとも戦争のさなか人類が何かを破壊し、南半球の気温上昇にスイッチが入ってしまったのであろうか? 原因はよくわからないが、この時期は地球気温の変節点であり、この時期を境にして、地球全体の気温変動が大きく変わった。
 1950~2014年の気温変化はガラリと様相が変わった。北極圏に周期的変動が見え、その影響が北中緯度圏にまで影響しているように見える。しかし、北低緯度圏から南半球は、南高緯度圏を除き、およそ100年間に1.3℃程度の傾きで直線的に増大している。南高緯度圏だけは奇妙なふるまいをしており、1980年以降ほぼ一定か、若干の温度低下傾向にある。

 北半球に見られる周期的変動と1940年頃の赤道付近の異常ピークを取り除き、1880年から1935年の地球全体の気温変化はないという、かなり大胆な地球全体の平均気温の変化を、南半球赤道付近24S-EQUのデータを基準にして見積もってみた。

図3.南半球赤道付近のデータを基におおざっぱに見積もった地球全体平均気温の直線的変化

緑色の太い折れ線が地球全体の気温変化を表すという、かなり大胆な近似をしたものである。背景の水色の点は南低緯度圏の温度変化を1880-1935の平均値を基準にプロットしたものである。1880から1950年は気温の変化は0であり、1950年から温暖化が始まり、直線的に気温が上昇していることを示している。北半球の温度変化は、この基本変化に北極圏約70年周期変動を付加すれば得られるであろう。南半球の変化は、この基本変化に1880~1935年頃の寒冷化を少し付加すればよい。

*この解釈は私の独自解釈であり、IPCCの解釈とは違うので十分注意していただきたい。 ちなみに、地球全体平均気温の1910年ごろの極小は海上気温のデータにあり、地上の平均気温には見当たらない(IPCC第5次報告書第1作業部会報告書のp.38 図TS.1を参照)。また、気候モデルによるシミュレーション計算結果(CMIP3,CMIP5)でも1910年頃の極小は再現できていない(IPCC第5次報告書第1作業部会報告書のp.60 図TS.9(a)を参照)。1910頃の極小を無視することの合理的理由がかなり高い確率であるように思える。また、1940頃のピークは、CMIP5シミュレーション計算では存在せず、1915年から1960年の間ゆるやかな増加直線である。1940年頃のピークを無視することの合理的理由もかなり高い確率であるように思える。しかしながら、IPCCの第5次報告書の中に私が述べたような記述は見つからない。ところで、北極圏の周期的変動を大西洋数十年規模振動(AMO)と関係があると地球温暖化vs寒冷化3で述べたが、CMIP5ではAMOの全地球平均気温への寄与は0.1℃より小さいとして考慮していない。しかし、太平洋数十年規模振動(PDO)の影響は考慮しているようである。AMOもPDOも周期的変動なので地球温暖化とは直接関係しない。図3では最初から無視している。
 ところで、IPCCでは1998から2012年の平均気温の停滞がCMIP3およびCMIP5の予測から大きくずれたことに言及し、深海への熱の蓄積が進行していた可能性に触れていたが(IPCC第5次報告書第1作業部会報告書のp.61 Box TS.3を参照)、図3のグラフからは、単なるばらつきにしか見えない。というよりも、直線によく符合しているように見える。2015年はかなり大きく上側に振れる予想であるが、過去数年は下側に振れていたので、予想されるブレの範囲にあるであろう。

 図3の結果は人類のCO2排出量が1950年頃より急上昇したこととほぼ一致している。CO2主犯説をますます高める結果になったようで、私自身としては困惑気味である。CO2主犯説の欠陥を探すところが、逆に証明しているようである。(IPCCの分析は、1860年頃からのシミュレーションCMIP5を根拠にしているので、CO2の1950年頃からの急上昇は細かな話を無視したおおざっぱな話である。) 下図は、環境省のIPCC第5次評価報告書の概要 -統合報告書- [PDF 4.1MB]からの抜粋である。1950年頃から急激に伸びているのは下図bのCO2排出量であり、CO2濃度のグラフ(下図a)からはよくわからない。ハワイのマウナロア観測所がCO2濃度の観測開始したのは1958年であり、それ以前のデータにどれほどの信頼性があるのかよくわからない。

図4.環境省のIPCC第5次評価報告書からの抜粋

* 図4上のCO2濃度の経年変化よりも図4下のCO2排出量の経年変化の方が図3の直線関係と一致するということは、CO2の温室効果で地球温暖化が起きているのではなく、人類が排出する熱エネルギーが原因で地球温暖化が起きていることの証拠ではないであろうか? 人類が排出する熱エネルギー量は人類が排出するCO2量に比例することは明らかである。(若干、セメント製造で発生するCO2量は放出される熱エネルギー量と異なる比例関係にあるので補正が必要である。)

 しかし、CO2の赤外領域の吸収が飽和状態に近いのにどうして温度上昇が起きるのであろうか? 宇宙の外から見れば、大気の窓と呼ばれる領域の赤外スペクトルはCO2濃度が上がってもほとんど変化はないはずである。とすると、何か他に変化するものがないと説明がつかない。CO2濃度が上がれば、より地表に近いところの大気を温める。そのフィードバックが大きくなり、地表温度が上昇するのであろうか?エネルギー収支を考えると、定常状態を保つメカニズムにより、宇宙空間へ逃げる放射エネルギーは変わらないので、地上からの熱放射が大きくなれば、他の領域の熱放射は小さくならなければならない。つまり、地表温度の上昇だけが起きては困ることになる。とすると、雲と地上の間のCO2に熱放射の一部が吸収されたために、雲の温度が低下し、雲から宇宙空間への熱放射エネルギーが少なくなったため、エネルギー収支を合わせるために、地上の温度上昇が起きたということであろうか? しかし、雲と地上との間の大気のCO2赤外線吸収が飽和していれば、直線的温度変化は示さなくなるようにも思える。

*飽和と言っても完全に飽和しているわけではない。濃度が増えると吸収もいくらか増える。飽和度がどれくらいなのかの詳細なデータが必要であろう。また、ランベルト・ベールの法則 I1/I0=10-εclで、透過光の強度はモル濃度cの指数関数的減少関数となる。このことに関しては、別のページで議論したい。

*2016.1.26 2015年度の結果が公表されたので関連する図のアップデートを行った。やはり予想通り、2015年度は図3の予想直線の上に突出してい た。しかし、過去のブレの範囲内にあり、特段どうということもなさそうである。今年、来年もさらに暑くなるというより、確率的には逆に昨年度より今年は寒 くなると思われる。しかし、あくまでもサイコロを振ったような予想なので、今年は0.3℃程昨年度より寒くなる可能性が高いが、さらに暑くなる可能性もあるというようなものである。つまり、昨年はサイコロが6であったから、今年は1から5の目が出る可能性が高いと言うようなものである。続けて6が出る可能性は低かろう。

*2015.1.27 昨年は異様に暑かったという印象であったが、暑かったのは赤道付近から北半球高緯度圏の範囲であり、両極は寒かったようである。

最終更新:2016年01月28日 11:54