CO2主犯説に対する疑問点

1.アイスコアの分析に見るCO2濃度と気温の関係における疑問

 IPCC第5次第1作業部会(自然科学部門)報告書の英語版はhttp://www.ipcc.ch/report/ar5/wg1/にあり、下図はその中の5章から抜粋したものである。気象庁の日本語訳報告書は要約であるためか、この図はないようである。

図1(Figure5.3).過去80万年のCO2濃度と気温

上図は過去80万年間のCO2濃度と気温を調査したものであり、アル・ゴア氏が地球温暖化のCO2起源説を主張するために用いた資料に対応する。CO2濃度変化と気温の変化はほとんど一致している。

以下は章5.3.2 Glacial–Interglacial Dynamics からの文章の抜粋である。(英訳に自信があるわけではないので英文も載せている。)

5.3.2.1 Role of Carbon Dioxide in Glacial Cycles

Recent modelling work provides strong support for the important role of variations in the Earth’s orbital parameters in generating long-term climate variability. In particular, new simulations with GCMs (Carlson et al., 2012; Herrington and Poulsen, 2012) support the fundamental premise of the Milankovitch theory that a reduction in NH summer insolation generates sufficient cooling to initiate ice sheet growth. Climate ice sheet models with varying degrees of complexity and forced by variations in orbital parameters and reconstructed atmospheric CO2 concentrations simulate ice volume variations and other climate characteristics during the last and several previous glacial cycles consistent with paleoclimate records (Abe-Ouchi et al., 2007; Bonelli et al, 2009; Ganopolski et al., 2010) (see Figure 5.3).

5.3.2 氷河期-間氷期の力学
5.3.2.1 氷河サイクルにおける二酸化炭素の役割
 最近の気候モデルの研究は、地球の軌道パラメータの変化が長期気候変動に重要な役割を持っていることを強く支持している。特に、GCMsによる新しいシミュレーション(Carlson et al., 2012; Herrington and Poulsen, 2012)は、ミランコビッチ理論の基本的根拠を支持している。この理論により、北半球の夏(NH summer)の日照時間の減少は氷床を成長させるための十分な寒冷化をもたらす。気候氷床モデルは、複雑さの度合いを変えながら、軌道パラメータの変化に強制されつつ、大気CO2濃度を再構築して、最後といくつか前の氷河サイクルの間の氷河体積変化と他の気候特性を古気候記録(Abe-Ouchi et al., 2007; Bonelli et al, 2009; Ganopolski et al., 2010)と一致するようにシミュレートする (参照 図1 Figure 5.3)。
*訳者注) ミランコビッチ理論は太陽系の地球の公転軌道と自転運動および地軸の傾きが数万年から数十万年の単位でわずかにずれることにより、日射量が変化する理論。氷河期の形成はこの理論と重要な関係があると考えられている。

There is high confidence that orbital forcing is the primary external driver of glacial cycles (Kawamura et al,. 2007; Cheng et al., 2009; Lisiecki, 2010; Huybers, 2011). However, atmospheric CO2 content plays an important internal feedback role. Orbital-scale variability in CO2 concentrations over the last several hundred thousand years covaries (Figure 5.3) with variability in proxy records including reconstructions of global ice volume (Lisiecki and Raymo, 2005), climatic conditions in central Asia (Prokopenko et al.,  2006), tropical (Herbert et al., 2010) and Southern Ocean SST (Pahnke et al., 2003; Lang and Wolff, 2011), Antarctic temperature (Parrenin et al., 2013), deep-ocean temperature (Elderfield et al., 2010), biogeochemical conditions in the North Pacific (Jaccard et al., 2010) and deep-ocean ventilation (Lisiecki et al., 2008). Such close linkages between CO2 concentration and climate variability are consistent with modelling results suggesting with high confidence that glacial–interglacial variations of CO2 and other GHGs explain a considerable fraction of glacial–interglacial climate variability in regions not directly affected by the NH continental ice sheets (Timmermann et al., 2009; Shakun et al., 2012).

軌道強制力が氷河サイクルの主要な外的要因であることは高く信頼されている (Kawamura et al,. 2007; Cheng et al., 2009; Lisiecki, 2010; Huybers, 2011)。しかしながら、大気中のCO2成分は重要な内部フィードバックの役割を担っている。最後の数十万年にわたるCO2濃度の軌道スケール変動は、全地球の氷床体積の再構築(Lisiecki and Raymo, 2005)、中央アジアの気候状況(Prokopenko et al.,  2006)、熱帯(Herbert et al., 2010)、南氷洋SST(Pahnke et al., 2003; Lang and Wolff, 2011)、南極の温度(Parrenin et al., 2013)、深海の温度(Elderfield et al., 2010)、北太平洋の生物地球化学的状況(Jaccard et al., 2010)、deep-ocean ventilation深海の換気 (Lisiecki et al., 2008)などを含む代理気候記録(proxy records)における変動と一緒に共変する(図1)。CO2濃度と気候変動のこのような密接な連携はモデリング結果と一致し、CO2や他のGHG(温室効果ガス)の氷河期-間氷期における変化は、北半球の大陸氷床による直接の影響がない地域の氷河期-間氷期気候変動のかなりの部分を説明する (Timmermann et al., 2009; Shakun et al., 2012)。
*訳者注) 代理気候記録(proxy records) :古気候学において、間接的に地層や年輪、アイスコアなどから推測される記録のこと

5.3.2.2 Last Glacial Termination

It is very likely that global mean surface temperature increased by 3°C to 8°C over the last deglaciation (see Table 5.2), which gives a very likely average rate of change of 0.3 to 0.8°C kyr–1. Deglacial global warming occurred in two main steps from 17.5 to 14.5 ka and 13.0 to 10.0 ka that likely reached maximum rates of change between 1°C kyr–1 and 1.5°C kyr–1 at the millennial time scale (cf. Shakun et al., 2012; Figure 5.3i), although regionally and on shorter time scales higher rates may have occurred, in particular during a sequence of abrupt climate change events (see Section 5.7).
For the last glacial termination, a large-scale temperature reconstruction (Shakun et al., 2012) documents that temperature change in the SH lead NH temperature change. This lead can be explained by the bipolar thermal seesaw concept (Stocker and Johnsen, 2003) (see also Section 5.7) and the related changes in the inter-hemispheric ocean heat transport, caused by weakening of the Atlantic Ocean meridional overturning circulation (AMOC) during the last glacial termination (Ganopolski and Roche, 2009). SH warming prior to NH warming can also be explained by the fast sea ice response to changes in austral spring insolation (Stott et al., 2007; Timmermann et al., 2009). According to these mechanisms, SH temperature lead over the NH is fully consistent with the NH orbital forcing of deglacial ice volume changes (high confidence) and the importance of the climate–carbon cycle feedbacks in glacial–interglacial transitions. The tight coupling is further highlighted by the near-zero lag between the deglacial rise in CO2 and averaged deglacial Antarctic temperature recently reported from improved estimates of gas-ice age differences (Pedro et al., 2012; Parrenin et al., 2013). Previous studies(Monnin et al., 2001; Table 5.A.4) suggesting a temperature lead of 800 ± 600 years over the deglacial CO2 rise probably overestimated gas-ice age differences.

5.3.2.2 最後の氷河期の終了
 全地球平均表面温度が最後の氷河後退期を通して3℃から8℃上昇したことはたいへん確からしい。そのことから、0.3から0.8℃/千年の温度上昇率がたいへん確からしく見積もられる。氷河後退期の地球温暖化は17.5から14.5ka(千年単位)と13.0から10.0kaの2つの主要ステップで起こった。そのときの最高温度上昇率は1℃から1.5℃/千年に千年単位時間スケールで到達したらしい(cf. Shakun et al., 2012; Figure 5.3i)。しかしながら、局部的およびより短い時間スケールにおいて、特に一連の急な気候変化の出来事の中では、より高い上昇率であったかもしれない (参照Section 5.7).。
 最後の氷河期の終了に関しては、大スケールの温度再構築(Shakun et al., 2012)はSH(南半球)での温度変化がNH(北半球)の温度変化に先行すると証拠だてている。この先行は2極温度シーソーの考え (Stocker and Johnsen, 2003) (参照 Section 5.7)と関係する半球間の海洋熱輸送における変化で説明できる。この海洋熱輸送における変化は、最後の氷河期の終了の間の大西洋子午線逆転循環(AMOC)の弱化によって引き起こされた(Ganopolski and Roche, 2009)。SH温暖化がNH温暖化に先行することは、南方の春の日射への素早い海氷の応答によっても説明できる(Stott et al., 2007; Timmermann et al., 2009)。SHの温度がNHの温度に先行することは、氷河後退期の氷床体積変化のNH軌道強制力(高い信頼性)と氷河期-間氷期 遷移における気候炭素サイクルフィードバックの重要性と十分に一致している。この堅い連結は、氷河後退期のCO2上昇と平均化された氷河後退期の南極温度の間のほとんどゼロのラグ(時間的遅れがないこと)によってさらに強調(ハイライト)される。このことは、気体-氷床年齢の差異の改善された見積りから、最近報告された (Pedro et al., 2012; Parrenin et al., 2013)。以前の研究(Monnin et al., 2001; Table 5.A.4)で温度が800 ± 600年ほど氷河後退期のCO2上昇より早かったことは、たぶん、気体-氷床年齢の差異を過大評価していた。

----------------------------------------------------------------------------------

少し長かったが、南極のアイスコアからのデータは、気温とCO2濃度が一致していたが、その一致がより強くなったこと云々が述べられている。実は、以前のデータでは、細かく見ると、気温の上昇時にはCO2もほぼ同時に上昇していたが、気温の下降時にはCO2はやや遅れて下降していた。そのため、CO2濃度が上がったので気温が上がったという論理に矛盾が生じていた。気温が上がったのでCO2濃度が上がったの論理であれば、気温が下がって遅れてCO2濃度が下がることに矛盾はない。しかし、CO2濃度の上昇で気温が上がるの論理では、CO2濃度は変わっていないのに勝手に温度が下がってしまうのは困ったことになる。鶏が先か卵が先かの話ではあるが、最近ではその両方つまり、
1.気温が上昇すると海水中の溶解度が下がるので大気中のCO2濃度は増加する。
2.CO2の温室効果によりCO2濃度が上がると気温が上昇する。
この2つが連動していると考えられている。
しかし、アイスコアのデータが一致していたとしても、1または2のどちらが原因かを証明することは不可能である。


3.3-domefuji4

図2.ドームふじ氷床コアより得られた過去34万年にわたる大気組成の変動
東北大学大学院理学研究科 大気海洋変動観測研究センターより参照)

上図は東北大学大学院理学研究科 大気海洋変動観測研究センターの南極観測ドームふじの氷床コアのデータから調査した結果である。青が温度、赤がCO2濃度、灰色が海面の高さである。黄色の部分に着目すると、気温の変動に遅れてCO2濃度が追随していることがわかる。海面の高さは気温の変化よりCO2濃度の変化との一致度が高い。気温が上昇して遅れてCO2濃度と海面上昇(大陸氷床の融解による)が起きているように見える。CO2濃度が上昇すると温室効果により気温が上昇する効果よりも、気温が上昇して海水中の溶解度が減少して大気中CO2濃度が上昇する効果の方が大きいように見える。

 確かにCO2の温室効果はあるが、その効果はさほどないのではないかと疑いを持たざるを得ない。 現代のCO2濃度は400ppm近くであり、昔のデータの200ppm付近の変動の約2倍ほどもあるのは異常であり、人為的要因(化石燃料の大量消費によるCO2放出)が主因であることは明らかであるが、そしてCO2の温室効果が現代の気温の異常上昇の要因となっているであろうことも否定できないが、地球温暖化の他の要因の可能性もまた否定できないのではないであろうか。
 昨今の地球温暖化は異常であり、南極の氷が融けると、過去のデータが示すように、数メートルから数十メートルの海面上昇が起きることが予想され、また、異常気象と農業への被害や都市部の水没が起こる可能性が高い。何らかの早急な対策が必要である。それゆえ、なおさらCO2の温室効果のみに焦点を当てた対策だけではなく、他の要因の可能性の追求をし、それらの対策を考えることも重要であろう。

 地球温暖化vs寒冷化4の後の方の*で述べたように、人類の排出した熱エネルギーが原因で地球温暖化が起きた可能性が高い。そのメカニズムはよくわかっていないが、局所的熱だまり効果と局所的ヒートアイランド効果が大きく影響している可能性があると考えている。

*現在、先進国の熱エネルギー排出は他国に突出して高い。当然、原子力発電もその中に入る。ゆえに、この結論は先進国にとって非常に不利となる話であり、CO2主犯説のほうが発展途上国への牽制効果もあり先進国側に有利に働く。しかし、CO2や他の温室効果ガスの削減はほとんど効果はない可能性が高い。地球温暖化はいよいよ現実問題として我々人類の生存に関わる切実な問題となりつつあり、政治的駆け引きがどうのこうのと言っておれない状況へと来ていることは確かである。原因がわかれば、その対策も必ずある。地表からの熱放射を促進し、溜まった熱エネルギーを宇宙へどう効果的に排出するかに焦点を絞った対策が必要である。また、不必要な太陽光の吸収(砂漠や岩石地帯または都市部や舗装道路での太陽光の直接吸収など)をなくし、地球のアルべド(太陽光の反射率)を上げる早急な対策も必要である。しかし、太陽光発電はアルべドを下げる働きがあり、地球温暖化に寄与する可能性があるが、人類の科学技術の向上を促すものであり、慎重に取り扱う必要がある。(こう考えてはどうだろうか。太陽光発電パネルはアルベドを下げる働きがあるが、発電により化石燃料の消費を抑える働きもあるので、地球温暖化にはほとんど寄与しないであろうと。それゆえ、太陽光発電は大いに推奨すべきと。黒っぽい屋根に太陽光発電パネルを設置することは、地球温暖化対策となり得るであろう。エネルギーの分散活用は、送電ロスを減らす効果もあるであろう。2016.0506)

2.CO2の赤外線吸収が飽和している可能性について

最終更新:2016年05月06日 13:32
添付ファイル