衛星データの赤外スペクトル②

2.地球の赤外観測データ その2

 その1での基礎を基にして、温室効果ガスの吸収だけではなく、発光のメカニズムをより詳細に調べてみようと思う。
その1の吸収スペクトルはHITRANデータベースから計算して求めたものなので、実測ではない。まず、実測データを調べてみようとは思うが、
その前に放射の上空への伝達を考えてみようと思う。

・キルヒホッフの法則を仮定した放射伝搬のメカニズム

二酸化炭素の鉛直分布は、東北大学のデータ(http://tgr.geophys.tohoku.ac.jp/research/jsps/jsps4)からほぼ2から3ppm程度の偏差なので、一定と見做せるであろう。圧力は上空へ行くほどほぼ直線的に減少すると考えることにする。

・キルヒホッフの法則で調べると、大気一層モデルで温室効果を説明する教科書があった。有名国立大学の教科書なので、学術的に認められているのであろうと思われるが、あまりにも簡単なモデルで、不思議なことに温室効果ガスの濃度が上がると温暖化が起きるようになっている。
 このモデルでは、上空へ行くほど対流により気温が下がることが全くと言っていいほど無視されている。一層大気温度の約1.2倍が地表温度というように関係が固定されている。本当にこれでよいのか?もう一つ気になるのは、発光が上と下で2倍にカウントされていることである。相当気になるので、もっと調査してみようと思う。
Manabe and Strickler, 1964 に理論があるようなので、後で調査してみようと思うが、その前に、ある程度、自分で考えてみようと思う。

*今のところCO2の温暖化の効果はそれほど高くはないのでは? という考えであるが、放射熱平衡はキルヒホッフの法則が厳然とあり、この理論にマッチしない理論はやはり間違いであろう。問題は地表近くの大気と地表との熱伝導と放射による熱伝導速度の比較であろう。気体の熱伝導は気体分子運動論からほとんど導き出せているのが現状なので、放射熱による熱伝導はかなり無視されている。なぜなら、おそらく、CO2の15μm付近の赤外領域のエネルギー準位の寿命が長く、衝突の回数ははるかに速いので、対流や分子同士の衝突の影響が熱伝達速度を支配していると思われる。しかし、温度が同じなら、放射熱も平衡になっているはずなので、吸収した熱放射は同じだけ放出されるはずである。赤外線を吸収してすぐに放出するわけではないが、衝突をいくつも繰り返したのち、熱的エネルギー分布はボルツマン分布になるので、吸収した熱エネルギーと同じ量の赤外線を放出しなければならない。

*それゆえ、ほとんど熱的に平衡状態となっていると近似できるような薄い層の大気間の熱伝達を考え、対流や衝突による熱伝達を考慮しながら、理論を構築すればよい。対流は熱を地表近くに運ぶ働きがあるので、衝突による熱伝達と熱放射による上層大気への熱伝達がまた下層へ戻されるが、近似的に熱平衡を仮定して、上層へ熱が運ばれる熱放射による伝達が上空の希薄な大気にまで達している可能性は否定できない。なぜなら、いったん熱放射が起きたら、対流速度または分子の運動速度とは関係なしに、光の速度で四方八方へ飛び去るからである。

 

最終更新:2016年01月04日 03:05