基礎理論③で地表へのCO2フィードバック増加は小さいというWebページを紹介したが、別のものを紹介する。パート1からパート8およびその他がある。急ごう。
*しかし、無意味に出すのも混乱するだけなので、重要と思われる要点のみ抽出することにする。
CO2 – An Insignificant Trace Gas? Part One November 28, 2009 by scienceofdoom
The sun is our source of heat. We are 150 million km from the sun, so how does that heat energy get here?
There are 3 mechanisms for heat transfer – conduction, convection and radiation. It’s a vacuum between the sun and the earth so energy from the sun can only arrive here through radiation. What does that radiation look like? A “body” emits radiation across a spread (a “spectrum”) of wavelengths, in a way that depends on that body’s temperature.
The fact that the wavelengths of the energy emitted vary with temperature is a key point, essential for understanding this aspect of climate science.
Here’s a few samples – each color represents a different temperature object. The blue line is a body at 5000K = 4727°C (8540°F).
太陽からのエネルギー
太陽は我々の熱源である。我々は太陽から150ミリオン㎞のところにいる。そして、ここでどれくらいの熱エネルギーを得ているのだろう?
熱輸送に関する3つのメカニズム-伝導、対流、放射がある。太陽と地球の間は真空であるので、太陽からのエネルギーは放射によってのみここにやってくる。放射はどのように見えるのであろうか?物体は、その温度に依存した様々な波長の広がり(スペクトル)の放射光を放出する。
放出されたエネルギーの波長は温度によって変化するという事実はキーポイントであり、気象科学のこの側面を理解するための本質である。
ここにいくつかのサンプル-それぞれの色は異なる温度の物体を表す-がある。青の線は5000K=4727℃(8540°F)の物体である。
Energy intensity versus wavelength for different temperature objects
英文はたいへん平易に書かれていたので、省略する。また英訳もエッセンスのみにした。
上図は太陽が表面近くで出す光の強度の波長分布と地球が放出する熱放射を示したものである。地球の熱放射は、太陽からの光が強すぎて小さくつぶれてしまっている。太陽光は5780Kの黒体放射で近似してある。
上図は、太陽光が地球に届いたときの光強度の波長分布と地球からの熱放射分布をプロットしたものである。太陽光が地球に届くころには広く薄くなっているので、地球の熱放射と比較可能なほどになっている。地球の熱放射は260K(-13℃)から300K(27℃)の黒体放射分布が表示されている。この図から、太陽光と地球の熱放射光にほとんど重なりがないことがわかる。4μm以下の光は太陽光であり、4μm以上の光は地球の熱放射であると識別できる。それゆえ、気象学の世界では4μm以下の光を short wave radiation(短波長放射)、4μm以上の光を long wave radiation(長波長放射)と呼ぶ習慣がある。ところで、赤外線は0.7μm以上の波長の光を指し、longwaveとは定義が全く異なる。それゆえ、短波長の赤外線(0.7~4μm)は太陽光の中に多く含まれ、地球の熱放射光には存在していないことがわかる。さらに、様々な温室効果ガス分子の基準振動バンドの内4μm以下の波長のものは、熱放射の議論で無視してよいことがわかる。
上図はWikipediaからの参照図であるが、大気が吸収する光の種類を示したものである。縦方向は不透明度を表し、0%は完全透明、100%は完全に吸収されて不透明になることを示している。横軸は波長であり、対数プロットとなっている。左に行くほど短波長光となりX線、紫外線はほぼ完全に大気に吸収されるため、地上に届かないことがわかる。(オゾンホールのために紫外線の一部が地上に届くようになったため、一時期大騒ぎしたが、現在オゾンホールは昔の状態に戻りつつあることがわかっている。)可視光領域は虹があるところであり、かろうじて大気はこの領域の光を透過し、我々人間にとって大気が透明であるように見せている。これから長波長領域は山あり谷ありであるが、途中まったく不透明になる領域を超えると、テレビ、ラジオでお馴染みの電波領域で大気はまったく透明になる。このように大気は常識をはるかに超えてたくさんの光を吸収する。このグラフは実際の太陽光の分布とはかけ離れたものであり、すこしばかり簡略化されすぎている。
上図は、大気の外(宇宙空間)で観測される太陽光と地上で観測される太陽光の波長分布を表したものである。大気中の様々な分子により吸収されて、灰色の部分のように虫食いだらけの太陽光が地上に届いていることがわかる。どの分子がどの光を吸収するのかは長年の実験によって科学者により確認されているので、図中に主に吸収する分子名が示されている。
上図は、大気の外から観測される地球からの放射スペクトルであり、衛星から観測されたものである。およそ275K(2℃)付近の地上からの放射が大気中の温室効果ガスなどに吸収され、複雑な構造をしている。観測されたスペクトル以外にいくつかの温度に対応する黒体放射スペクトルが描かれている。
Measured and theoretical spectra, from Goody & Yung (1989)
上図は、快晴時のメキシコ湾上空の衛星から観測されたスペクトルと理論計算により求めたスペクトルが少しずらして表示されている。(観測値が上へずらしてある。)どうやって理論計算されたのかは後回しにして、大気中の 水 H2O、二酸化炭素 CO2、オゾン O3、メタン CH4 の吸収が表示してある。
どのようにして研究者はそのような気体が原因だとわかるのであろうか?
長年にわたり科学者たちは大気中の分子の吸収特性を調べてきた。上図はその概要である。一番下は大気の吸収特性であるが、上の5つの分子の吸収を合わせたものであることがわかる。大気主成分の窒素N2が含まれていないが、これはほとんど透明であり、太陽光や地球の熱放射域には吸収がないためである。酸素O2とオゾンO3が一緒になっているが、大気圏上層部にチャップマンサイクルと呼ばれる化学サイクルがあり、オゾン生成に関わっている。酸素とオゾンは太陽光の0.3μm以下の吸収があり、オゾンは9.6μm付近の熱放射域に吸収がある。酸素は0.7μm付近の赤外線吸収があるが、4μm以上の長波長帯に吸収はない。
それぞれの分子の全吸収エネルギーに占める割合がそれぞれの分子の影響度を示しているわけではない。事態は複雑であり、後のいくつかの作品で触れる。
吸収について終わる前に、HITRANSデータベースから、いくつかの分子の実験室データを示そう。議論の中心となるCO2とH2O(水蒸気)の特性を知る上でその複雑さも含めて参考になるであろう。最初は普通のプロットである。
CO2は15μm、H2Oは6.3μmに強い吸収がある。
次に、対数プロットを示す。ついでに、参考のためN2とO2の吸収も示す。
注意点として、N2とO2は非常に吸収は弱く、H2OやCO2に比べてピークで10億分の1以下である。
大気が地表などから放射光を吸収すると、その辺一帯の温度が上昇する。放射光を吸収した分子は衝突によりその辺一帯の分子を温める。温度が上昇すると、水分子やCO2分子からより多く放射光が出る。大気はいったん温度が上昇すると、四方八方に放射光を出す。下図は下向き放射を地上から観測したものである。
これを見るとわかるように、大気圏を通り抜けて観測された上掲の6、7番目の図の大気に吸収された部分が大気からの発光として観測されている。大気は吸収した光と同じ光を発光していることがわかる。また、この大気からの発光を地上が吸収すると、地上の温度が上昇する。
*訳者:地上と大気との熱平衡状態(両者の温度が一般的に同じになることはないので、定常状態と呼んだ方がよいかもしれない)の結果としてそのように見えるだけで、地上から大気に放射され吸収されたエネルギーと大気から地上に放射され吸収されたエネルギーが一致しないことが放射による熱の移動を表している。つまり、その差が地上から大気への熱放射による熱伝達になる。大気中の分子の吸光度が小さい波長領域では、大気上空の冷たい空気の層と地上とが直接に熱放射のやり取りをし、吸光度が大きい波長領域では、地表に近いところの暖かい空気の層と地上とがやり取りをする。それゆえ、吸光度が極度に大きくなると、ほとんど温度差がなくなるので、大気への熱移動が起きにくくなる。つまりどういうことかと言うと、CO2が2倍の濃度になった場合、大気の吸収が飽和している特に吸光度の高い波長領域では、大気はほぼ断熱材として働くようになる。大気の吸収が飽和していても、大気上空へ地上からの放射が届く場合、大気が放出する放射光はその温度に依存して小さくなるので、地上が受け取る大気からの放射より大気に放出する放射光の強度がより大きくなるので、大気はその波長領域に対しては熱伝導体となり、宇宙空間へ熱を放出できるようになる。実際には、衝突と対流による熱伝達があるので、簡単ではない。
*訳者:もし、50%大気に吸収され、残りの50%が大気を通過して宇宙へ逃げるぐらいの吸光度の場合、対流圏でおよそ30%が吸収され、残り20%ぐらいがその上の成層圏で吸収される。地上へのフィードバック放射は成層圏約-60℃が40%、対流圏は-60℃から20℃ぐらいのどこかの平均値で、まあいい加減に、-10℃ぐらいにしておこう。-60*0.4+-10*0.6=-30℃が平均であろうか?まったくおおざっぱな計算であり、10℃以上の誤差がありそうであるが、おおよそ-30℃ぐらいの大気からの放射を地上が受け、地上から20℃ぐらいの熱放射を大気に与えるので、その差が放射伝達速度になる。この差の熱エネルギーがすべて宇宙空間へ流れるわけではない。対流により地上へ戻ってくる分があるので、事態は複雑である。
さて、そのようなことを考えながら、どのような熱伝達モデルを考えたらよいか、どのような方程式を組み立てたらよいかを模索しているところである。簡単な定常状態方程式ができそうに思っているが、さてどうなるだろうか? もうちょっと、資料をあたってみる。
*そろそろManabe氏の論文を読んだ方がよいように思う。sciencedoomの著者は資料は沢山用意しているので、たいへん重宝であるが、理論は途中で止まっているようである。これ以上読んでも無意味に思えてきたので、早速、真鍋氏の1964年の論文に目を通してみた。キルヒホッフの法則を適用して理論的に計算しているようである。しかし、一つ気になるのは、バンドの吸収を平均化してキルヒホッフの式を適用しているため、吸収が飽和している領域の計算に疑問点が残る。結果的には実測をシミュレートする結果を出しているので、かなり信頼性の高いものであろうと思われるが、かなり微妙であるという感想である。年代的には1960年代なので相当古く、この時代によくこのような計算ができたものだと、感心してしまった。おそらく、その後精度を高める理論が数多く出ているであろうと思われるので、この時代の論文の細かいところをどうのこうのとあまり批判しても仕方がないように思う。それより、後世の論文でどれほど改善され、現在の最新理論がどうなっているのかの方が知りたいのであるが、現在、適切な教科書が見つからない。